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【ひろゆき × 小沼竜太 対談】”童貞”力がコンテンツの伸びしろの鍵を握る!? ネット時代のコンテンツの売り方とは?

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 電ファミの記事に度々登場する、リュウズオフィス代表取締役・小沼竜太氏による著書『伝え方は「順番」がすべて: 分単位のコミュニケーションが心を動かす』が発売された。

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(画像は伝え方は「順番」がすべて~分単位のコミュニケーションが心を動かす~ (光文社新書) | 小沼 竜太 | 産業研究 | Kindleストア | Amazonより)

 本書は『Fate/Grand Order』『ペルソナ』シリーズ、『真・女神転生』シリーズなどのマーケティング戦略に携わる小沼氏が”ゲームの宣伝屋”として、このご時世にどのようにゲームを売ればよいのか、それを「伝え方」に特化して綴ったものである。

 今回はなぜか「2ちゃんねる」の開設者で知られるひろゆき氏をお呼びして対談を行い、本書の宣伝をすることになった……のだが、本書の話題以上にコンテンツやコミュニティに関する議論が白熱。

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ひろゆき氏

 『ドラクエ』新作を売るための最強のキャッチコピーとは? コンシューマゲームと違って、なぜソーシャルゲームはIPとして成長しにくいのか? あまり自分の仕事を語らないひろゆき氏が語った、「2ちゃんねる」をゼロから育てるためにしたこととは? 小沼氏がひっそりと語る「そのコンテンツがその後伸びるかどうか」を見極める指標とは?

 示唆に富む話題がアクロバティックかつ高速に展開していくなかで、インターネットやSNSが極度に発達した現代で、どうやってコンテンツを売り出していけばよいのかという本書のテーマも掘り進められていく。
 小沼氏はゲームプロモーション、ひろゆき氏はウェブサービスと全く異なる分野にも思えるにもかかわらず、それぞれのプロとしての視点が交差することで意外な共通点が見えてくるという、大変興味深い内容となった。

聞き手/TAITAI
文/tnhr
編集/実存


「3秒で」パッと目に止まってパッと気にさせないといけない

ひろゆき氏:
 どんな感じで始まるんですかこれ。

小沼竜太氏(以下、小沼氏):
 とりあえず今回の対談の目的は、「僕の本の宣伝をしたい」ということですね。川上量生さんと雑談していたときに「誰かと対談したいです」って言ったら、「ひろゆきさんと対談なんかどう?」というところから始まっています。

ひろゆき氏:
 はあ。でも川上さんって”ひろゆきさん”って呼ばないですよね(笑)。

──そうですね(笑)。

小沼氏:
 正確には「”ひろゆき”でいいんじゃね」と言われました。

ひろゆき氏:
 小沼さんの本なのに、なんで平さんと川上さんが協力しているんでしょうか。

小沼氏:
 僕がN高等学校で、この本を元にしてゲームのプロモーションについての授業を担当する予定なんですよ。率直に言えば、その授業が盛り上がるためにも本が売れてくれた方が良い。そういう流れですね。

──僕の方は、インタビューや対談するならってことで、声をかけられて。小沼さんひろゆきさんの対談なら面白そうだからいいかなって感じでした。

ひろゆき氏:
 なるほど、了解です(笑)。

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ひろゆき氏

──ひろゆきさんが小沼さんの本を読んで、「ここはその通りだな」とか「ここは違うんじゃないの」と思った箇所がありましたら聞いてみたいです。

ひろゆき氏:
 一通り読んで、「大体そうだよね」という感想で落ち着いちゃったんですよね。細かい現場まで知っているわけではないので、具体的にどうこうというより、全体や前提の話になっちゃいますけど……。

 小沼さんの仕事は、もうキャストが揃ってて製品もある程度出来上がった状態からお願いされるから、関わるのが後半の方じゃないですか。僕の場合は事業組み立て型なので、そもそもパーツを作る人がいないし完成させなければならないというところから始まるんですよ。

 なので、「順番が全て」と言ってしまえる程に恵まれている環境やプロジェクトって、果たしてそんな多いのかな、と疑問に思っています。

小沼氏:
 ものづくりやものを売るという大きな流れで言うと、ひろゆきさんはまさに一番最初の工程の担当で、僕は一番最後の工程担当ですよね。だからこそ、伝え方の重要性を強調しています。

ひろゆき氏:
 小沼さんに「作品の制作に関わらない」というポリシーがあるから、そういう切り分けかたができるのかなって気もするんですよね。

小沼氏:
 そうかもしれないですね。

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小沼竜太氏

ひろゆき氏:
 あとから制作に口を出し始めると、「もう少しクオリティ上げた方がいいよね」とか「これできる人材居ないよね」とか、足りないものが目につくようになってくるので。

──話題を作るとか、何かを仕掛けるという観点で言うと、ひろゆきさんって話題そのものをゼロから考えて、足りないパーツを組み合わせるところから始めるじゃないですか。

 一方で小沼さんは今ある素材を解釈して、伝え方をちゃんと順序立ててやりますよね。ふたりに共通するのは、「何か話題を仕掛けることが得意」だという点なんだと思います。

ひろゆき氏:
 そんなにやり方違いますかね?

──違いませんかね。

ひろゆき氏:
 ゲームでは発売期間が終わっちゃえばプロモーションもいったん終わりですけど、僕が作るネットサービスの場合は、口コミの回転をいかに一生懸命作れるか、それが10年間でどう育つかです。プロモーションをやるにしても、10年間テレビCMを打ち続けるのは無理じゃないですか。

 ネットサービスの場合は、SNS上でどう伝わるかというか、「その人がどう感じて、それを他人にどう伝えたいと思うか」というコアがないと、ネットサービスって広がらないんですよ。その辺りの考え方は、小沼さんと似ているのかなと思いますけど。

──そういう仕掛け方みたいなものって、ひろゆきさんの場合はどう作るんですか。

ひろゆき氏:
 ドワンゴ時代とかによく言っていたのは、「このサービスを3行で説明して」ですね。面白いものって、「こんなとこがいいよ」とか「女の子が可愛い」とか、ゲームで言ったら「爽快感が凄い」とか「難しいから面白い」とか、必ずキーワードで短く説明できるはずなんですよね。

 それができないサービスって、やってみたら面白いかもしれないですけど、まず伝わらないです。なので、「分かりやすくする」というのは何かとスタッフに言っていた気がします。

 その点で言えば、リュウズオフィスが担当していた『世界樹の迷宮』みたいなマニアックなゲームってやってみないと面白さが伝わらないので、ウェブサービスプロモーション系の僕には不得意な分野な気もします。

小沼氏:
 そういう意味で言うと、僕は「3秒で伝える」のが大事だと思っています。特にSNSなんかでは、3秒も見ないじゃないですか。それぐらい短い瞬間でも、パッと目に止まって、パッと気にさせる。どんなめんどくさいゲームであっても、そのようなポイントを見つけてあげないといけないんです

 分かりやすい例えを挙げてみようと思います。今から僕は、最強の『ドラクエ』新作のキャッチコピーを言うので聞いてください。

 『ドラゴンクエスト12発売決定』

ひろゆき氏:
 まあ、買いますわな(笑)。

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小沼氏:
 でもそういうことなんですよね。

ひろゆき氏:
 そうですよね(笑)。

小沼氏:
 でも、これが最強なんですよ。それぐらい端的に伝えなければいけないんですよね。こういう伝え方を、常に悩みながら探しています。

──『ドラクエ』の例はたしかにわかりますけど、逆に何者でもないゲームを伝えていくためには、どのようなことをしているのでしょうか。最初はそのタイトル名を出しても響かないし、3行で説明するにしても他との差別化まで含めて説明するのは難しいじゃないですか。

ひろゆき氏:
 まあ、やりようだと思うんですよね。僕はスクエニの『ブレイブリーデフォルト』が割と好きなんですけど、あれは「『FF3』みたいなゲーム」という触れ込みで知ったんですよね。だからすぐに「好みに合いそうだな」と思いました。「何々みたいなやつ」って売り出し方は、割と伝わりやすいんじゃないかなと思うんですけど。

小沼氏:
 そこはひろゆきさんの言うとおりですね。全く新しくない、シリーズものでもないゲームを売るときは、そのゲームを構成している要素の中で一番わかりやすいもの、たとえば「『FF3』みたいな」とか、そういうものから探してあげます。つまり、「すでに世の中にある言葉」に置き換えてあげるイメージです。

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「これ面白いよ」と伝えるのが仕事なら、マーケターよりインフルエンサーになったほうがいい?

──ここ10年から15年、それこそインターネットが出てきてから今日までで、情報の伝わり方というものはかなり変わってきていると思います。おふたりはその変化をどのように捉えているのでしょうか。

ひろゆき氏:
 誰もがネットに書くようになったので単に情報が可視化されるようになったというだけで、情報の伝わり方の基本構造はネット以前とさほど変わっていない気がしてます

 たとえば地方のちゃんとした情報を得ることのできない人たちが住むところでは、アムウェイみたいな商売が流行ったりするじゃないですか。そんなん買ってもしょうがない、お金払ってもしょうがないよって、情報強者の人は思うんだけど、情報弱者コミュニティーは必ずどこかに存在するし、未だにそのようなものが売れてしまう。

──これだけネットが発達して、情報もオープンになっているのにも関わらず、まだまだ情報弱者的な人々がいるのってなぜなんでしょうかね。

ひろゆき氏:
 人類ってそういうもんなんじゃないんですか。

──今はフェイクニュースだとか、正しくない情報も増えてしまったじゃないですか。そういう影響もあるのかなという気もしますが。

ひろゆき氏:
 「正しい」と「正しいと信じる」は別のことなんですよね。「神様は居ないよね」というのは正しいじゃないですか。でも、「みんなが正しいと信じているもの」というのは、その証拠がなかったとしても居るものは居るということになっていますよね。人間ってそういう生き物なのかなという気はしていますけど。

──正しい情報があっても、間違った情報を信じてしまう人たちが一定数いると。

ひろゆき氏:
 間違った情報でもないんですよね。「正しいと信じたい情報」なんですよ。

 たとえば「親子の愛情は必ずあるか」という議論で、愛情はあると人は信じたいけど、一方で本当に愛情なんて感じていない人もいるんですよね。そのような感じで、信じたいと思っているものを実際に検証してみようというのも別の話なので。

──小沼さんの本にも書いてあるように、「情報の揮発性が高くなってしまった」ということについてはひろゆきさんはどう思いますか。

ひろゆき氏:
 揮発性と言うか、情報の変化は速くなったなと思います。でも、なんだかんだ言って判断基準は変わってない気がするんですよね。

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 同じ趣味趣向の人が集まっているのって、その中で「良いと言われたものは良い」と信じたい気持ちがあるからじゃないですか。友達が「これ面白いよ」と言っていたから、それに手を出すみたいなことです
 つまり、他人の言ったことを真に受ける方が、人間楽だよねというのがずっと続いているんじゃないかという気はします。人によって言葉は違いますけど、そういう集まりを「トライブ」とか「クラスター」と呼んでいますよね。
 逆に、トライブやクラスターに所属しないで、毎回毎回自分で調べて判断している人の方が少数派だ思うし、もっと言えばそんな人は全体の1%も居ないと思いますよ。

──とはいえ、ネットやSNSの発達によって、ネット以前の時代よりは人同士の繋がりや集まりの精度は拡張しているじゃないですか。

ひろゆき氏:
 規模は大きくなったと思います。だけど、たとえばゲームブログを書いている人の言うことを信じるか、近所のゲームに詳しいお兄さんの言っていることを信じるのかって、「どっちの信憑性高いか」はあんまり関係ないと思うんですよね。客観的な信憑性よりも、結局はその情報を正しいと信じたいかとどうか、というところに行き着くと思うんですよ。

──この辺の話を聞いて、ゲームのプロモーションに関わっている小沼さんはどう考えますか。これを踏まえて取り組んでることとか、打っている手はあるんですか。

小沼氏:
 今ひろゆきさんがお話されたことには、100%同意です。僕も、人間は大昔の洞窟で暮らしていたときから変わっていないと思っています。自分の村の部族の誰それさんが言っていたから、あそこの狩場にはマンモスがいっぱいいるだとか。

 でも、これって厳密には信憑性があるかどうか分からないじゃないですか。でも現実的には、自分の部族の人間の言うことなので、信じると思います。逆に言うと、自分の部族じゃない人の言うことは信じないですよね。

 ただ、インターネットとSNSの発達によって、情報の伝達速度がとにかく上がったのは確かです。場合によっては個人の発言であっても、それが世界中に広まることもある。
 僕の仮説ではその速度が変わったから、単純に情報の変化や消滅のスピードも速くなったんじゃないかと思うんですけど、情報の伝わり方の本質は変わっていないはずです。未だにこの仕事ができているのも、世の中の変化は速いけど本質は変わっていないからだと思いますね

ひろゆき氏:
 その話で言うと、小沼さん自身が部族の長になって部族を大きくしちゃったほうが、仕事はめっちゃ楽になりませんか。

 要は「小沼さんが『これ面白いよ』って言うなら信じる」という層ができればよいのでは、ということです。いわゆるインフルエンサーと呼ばれている方々はみんなそれをやっているわけで。現にインフルエンサーに勧められたものは「本当に良い商品だ」ってみんな喜んで買って、みんな幸せという状態になっているじゃないですか。

小沼氏:
 僕がやっていることって、“オススメ”ではないんですよね。その作品の魅力を見つけてあげて、それを人に伝えられるようにするという仕事なんです。だから、それって僕自身が発信者になることとは全然違うんですよ。

ひろゆき氏:
 小沼さんがやっていることって、「こういう風な視点で見ると面白いよ」という視点の提供じゃないですか。何も情報がない状態で面白いってこともあるんですけど、大体は「こういう風に楽しんだら面白いよ」と教えてあげる場合が普通ですよね。
 小沼さんがその視点を与えて「このゲームはこの視点でやってください。」「ほら楽しいでしょ。」というのは、部族の長がやっていることじゃないの?という疑問があります。

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小沼氏:
 舞台で言えば、僕は芝居をする役者ではないですよね。インフルエンサーが役者なんですけど、僕はそうではなくて脚本家だったり、演出家だったりです。

ひろゆき氏:
 映画監督って、出演しないけどみんな映画監督の名前で映画を観るじゃないですか。裏方の名前の方が人を動かすようになってくる状況というのは、すでに発生していますよね。

 だから、小沼さんブランドを徐々に大きくしていった方がビジネス的にも楽なはずなのに、それはしたくないみたいなオーラをさっきからずっと出していますよね。

小沼氏:
 そういう意味でいうと、宣伝というカテゴリーでは自分自身は陰に潜んでいるべきものだと思っている節があるかもしれません。

ひろゆき氏:
 でも表に出た方が上手くいくんだったら、表に出た方が良くないですかね。

小沼氏:
 ゲームの場合はあくまで作り手が主役だと思っているので。作り手を差し置いて、自分が前に出ようという気は全然ないですね。

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ひろゆき氏:
 ゲームってプロデューサーやディレクターは名前が出ますけど、本当の意味で作り手であるエンジニアの名前が表に出ることってほぼないじゃないですか。

 たとえば『ドラクエ』で堀井雄二さんが実際どこまで関わっているかって、ユーザーからは分からないですよね。本当に「作り手を表に出す」ということが正しいのであれば、もっと出るはずだと思うんですけど、実際はそうじゃないのかなって気はするんですよね。

──僕もそこはひろゆきさんの意見に賛同します。今ゲームを売るという観点で言えば、ゲームのプロデューサーが喋るより、人気のYouTuberが紹介したほうが効果が断然に高かったりするじゃないですか。小沼さんはそのへんはどう捉えているんですか。

小沼氏:
 インフルエンサーの出現と発達は、ゲームにとってはすごくいいことだと思います。しかし一方でビジネスの観点から言うと、裏方のマーケターの仕事を否定する存在であるとも思っています。

 あれこれ細かいこと考えて緻密な作戦を練るより、有名なあの人に紹介してもらった方が分かりやすく売れるという時代が来てますよね。

 だからすごく難しいんですよね。インフルエンサーは僕の知っている世界とは別のところから誕生してきた人たちだと思っています。もちろんそういう人とも仕事はしますし、お願いもしますけれども、根本的に僕がやっていることとは異なる道だと思っています。

 インフルエンサーが良い悪いというより、インフルエンサーがフィットする製品もあれば、フィットしない製品もあるということです。

なぜソーシャルゲームのIP化は難しいのか?

──ゲーム業界でソーシャルゲームが台頭してきて、社会現象と呼べるくらい人気になりましたよね。そのタイミングで『パズドラ』や『モンスト』がIP化に挑戦したじゃないですか。

 サービスとしてはすごく人気だけど、巨大IPとして育ったかどうかとして見ると、まだまだ微妙な立ち位置ですよね。結局、スクエニや任天堂のようなメジャーなコンシューマメーカーが会社として強いのは、ゲームそのものの品質もあるんだけど、「資産としてのIP」がかなり積み上がっているからだと思うんです。それが旧来のゲーム会社と新興の会社の大きな違いではありますよね。

 『パズドラ』や『モンスト』だって、相当たくさんの人の目に触れて遊ばれているのに、IPとして定着することが難しいのはなぜなんだろうって疑問なんです。

小沼氏:
 旧来型の会社と新興の会社という対比というより、どちらかというとビジネスモデルの違いに起因しているんじゃないですかね。

 たとえばですけど、『ポケモン』にお金を払うタイミングっていつだと思いますか。

ひろゆき氏:
 『ポケモン』だとゲームを買うときですね。

小沼氏:
 ですよね。つまり、体験の”前”に払うか、”後”に払うかなんですよ。パッケージゲームはゲームを遊ぶ前にお金を払うけど、いわゆるソーシャルゲームは遊んだ後に、ガチャを回したくなってからお金を払う。

【ひろゆき × 小沼竜太 対談】”童貞”力がコンテンツの伸びしろの鍵を握る!?  ネット時代のコンテンツの売り方とは?_010

ひろゆき氏:
 お金を払うってことは、「これを買う価値があるんだ」って自分自身に思い込ませちゃっているわけですよね。「そのゲームが面白かった」と思い込みたい、なぜならもうお金を払っちゃったから。

小沼氏:
 そういうことです。つまり、「前払い」の場合は事前に幻想を作らないといけないんですよ。これは「俺の求めている体験に合致する何かだ」という幻想を持ってお金を払ってもらう。

──なるほど。映画などもそうですけど、「面白そう!」という期待値そのものをマネタイズするって話ですよね。

ひろゆき氏:
 僕の仮説だと、ソーシャルゲームやネットゲームは最終的に死ぬ運命にあるんですよね。逆にパッケージだと、同じシリーズでも全然違うものを出せるから死なない。たとえば同じ『FF』シリーズでも、『13』『14』では全然違うゲームじゃないですか。

 ソーシャルゲームやネットゲームって、リアルな数字がいつでも見れちゃうから、だんだん減っているとか飽きられているみたいなことも見えてしまう。つまり、「いつか死ぬよね」というのが見えているんですよ。
 だからパッケージという形で作り変えて、「永遠に残る形にしたい」と思っているんじゃないでしょうか。

小沼氏:
 その視点はヒントになるような気がしますね。つねに数字が見えるなら、その都度KPIを設定することになるし、そうするとゲームを永久に作り変え続けることになりますよね。
 つまり、今遊んでいるユーザーや新規ユーザーに合わせて作り変えることろになるので、ロイヤリティが高い古参のユーザーを切り捨てていくことにもなってしまう。

 僕よりもずっと若いクリエイターに聞いた、心に残っている言葉があるんです。ソーシャルゲームやネットゲームが、ゲームを終えるときってエンディングが来ないじゃないですか。 だから、ソーシャルゲームやネットゲームのユーザーにとってのエンディングって、「なんだよこのクソゲー、やってられっか!」という気持ちか、「飽きた」「忘れた」という気持ちなんだと。

 パッケージゲームの場合は「面白くない」と投げるときもありますけど、エンディングまでやれば、「楽しかった」と思ってお別れするじゃないですか。ソーシャルゲームでお別れするときって、「関心が無くなった」がほとんどなんですよね。

ひろゆき氏:
 基本的にマイナスの感情しか残らないですよね。続編が出たとしても、「もう飽きたよ」ってなります。

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──たしかに。ソーシャルゲームやネットゲームはその構造的に、必然的に飽きられて終わってしまいますね。それがIP化しにくい理由のひとつかもしれない。

 昔、4Gamerで読者レビュー機能を作ったとき、『ラグナロクオンライン』のレビューがたくさん来たんですよ。当時としてもまだかなり人気のゲームでユーザーもたくさん居たはずなんだけど、投稿が軒並み低評価で。「5年遊んだけどアップデートがクソだったので辞めました」「もう飽きました」とか。

 でも、「5年遊んだ」って普通に考えたらクソじゃないはずですよね。だって5年も遊び続けたんですから。だけど、そういう投稿を投げ捨てて去っていく。そういう事例、たしかにあったなと思い出しました。

ひろゆき氏:
 「楽しかった」じゃなくて「つまんなくなった」になってお別れしちゃうんですよね。

小沼氏:
 パッケージゲームの場合は、一度ちゃんと終えているんです。そういうものって積み重ねていくと大きなものになりますよね。

ひろゆき氏:
 クリアしたゲームって、いい思い出になりますもんね。クリアまで行っていると、面白いと思ってやっているから逆に消化不良なんですよ。

 面白いからもっと続けたい、けど終わっちゃった。その消化不良を残し続けて、それがプラスのブランドになっていくはずです。

──たしかにそうですね。もっと遊びたい、足りないという渇望や、次回作への「期待」の積み重ねが、IPやブランドというものを育てていくのかも。オンラインゲームだと、逆にそこが弱いからどんなに多くの人が遊んでいたとしても、IP化しづらいってことか。。

小沼氏:
 「ネットゲームは死ぬ運命」はかなり真実に近いと思います。

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