会社を追放され多額の借金を背負いながらも、公園でMacBookを広げてゲームを作り続けた開発者が『FGO』の宝具演出に携わり、オリジナルゲームを作るまで

会社を追放され多額の借金を背負いながらも、公園でMacBookを広げてゲームを作り続けた開発者が『FGO』の宝具演出に携わり、オリジナルゲームを作るまで

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またしても災難。オリジナル1作目『EARTH WARS』を作れたものの……

──NHN JAPANでの仕事は10人くらいのチームになって、その後はどうなりましたか。

小村氏:
 無事完成には至るんですが、その懇意にしていただいた取締役の方が退任されまして、別の方が担当になったんです。

 その方は「こういう風にしたい!」という思いがある方で、それまで我々が作っていたものではなく、簡単に遊べるものにガラッと作り変えることになり、完成までも紆余曲折がありました。

 しかし結果的には鳴かず飛ばずで……。すぐサービスは終了したはずです。

──なかなか、うまく物事が進んでいかないですね……。

小村氏:
 その仕事が終わったあとに間借りしていた身である我々はすぐにオフィスを出て行きました。そのときにアートディンクさんから声をかけていただいて、「ウチの地下があるんだけど間借りしない?」と言われて、月島に行くことになりました。
 アートディンクさんには大変お世話になりました。けっこう広い部屋だったんですが「光熱費込で家賃10万円でどうだ?」「わかりました!でも初年度は2割引きしてください」みたいな感じで助けてもらいました(笑)。

 そういう恩を受けたこともあって、今はうちの会社がベンチャーに間貸ししたりしています。

──NHN JAPANの仕事が終わったあとも、会社としてはまだ小村さんと開発部長のふたりだけだったんですか。

小村氏:
 そうですね。ただ、辞めた直後くらいからイメージエポックの社員から連絡がたくさんあって、ポツポツとスタッフとして入ってもらってまた仕事するようになります。

──事業が上向いていく契機みたいなものはあったんですか?

小村氏:
 ワンオアエイトが設立して、1年目が終わる直前、2013年くらいですかね。そのころに投資家の方から1億円の出資が受けられるという話が来たんです。

 ゲームの開発って我々の名前と同じで「当たるかどうかわからないものですよ」といいう話はさんざんしたんですが「それでもいい」と言ってくださって。それを元に自分たちのタイトルを作るようになりました

──その方はゲーム業界とは関係がない人ですか?

小村氏:
 はい、先ほどのお話しした税理士事務所の方の紹介で知った方です。

 ゲームとかまったくわからない、ITのことも知らないという方だったので、口だしすることはまったくないという話でした。「この1億円で好きなもの作ってぜひがんばってください」みたいな感じで言われました。

──良い流れが来ましたね!

小村氏:
 しかしこれも破綻するんですけど……。

──厳しい世界ですね……。

小村氏:
 その1億円で作っていたタイトルがなかなか当たらなかったんです。それと一緒に『EARTH WARS』というタイトルも作れたは作れたんですけど、当時はどちらも売れなくてくすぶっていた状況でした。

 そうしたら出資者の方から「話が違う!」と言われまして。なかなか納得していただけなくて「取締役に入れろ」という話になったんです。その方には1億円で7割の株を買ってもらっていたんです。なので結果的には断れず、役員報酬を支払うかたちに落ち着きました。

 ただその件を開発部長はとても嫌がりまして。「当たるも八卦当たらぬも八卦という条件でやっていたのに、当たらないから今さらダメだというのはおかしい」と。
 とはいえ1億円って大金じゃないですか。回収したいという気持ちはわかるし、それで返せるものは返したいという話をしたんですが、結局のところこの件で開発部長とは袂をわかつことになってしまったんです……。

 当時ワンオアエイトは15人くらいの会社だったんですが、5人が開発部長についていって、5人が辞めて、5人が残って、最終的に5人の会社になったんです。
 これは出資を受けて2年後、2015年くらいのことでした。

──出資した方は今も会社にいらっしゃるんですか?

小村氏:
 今はいないです。正確にいうと株主として残ってはいますが、比率はだいぶ下がっていて、再来年にはワンオアエイトは100%僕の会社になります。今もまだ借金を返しているところなんですよ。

 開発部長は「会社を潰せばいいじゃないか」と言っていたんですが、「本当は潰れるはずだった会社が潰れずにここまで生きているんだから、潰したくない」という思いがあって。『EARTH WARS』含め、作ったタイトルたちをどうしても残したかったんです。

『FGO』の宝具演出に携わるように。スケジュールを取るかクオリティを取るか

──5人体制になってから、今に至るまでどのようなことがありましたか。

小村氏:
 まず『Fate/Grand Order』の案件が始まりました。まだリリースをする前で、まさに開発中の段階でした。
 我々がいま請けているのは宝具演出なんですけれど、未完成の状態で引き継ぎという状態でスタートしました。

 当時TYPE-MOONの武内さんから、「鉄火場へようこそ」と言われたのは印象的でしたね(笑)。

──(笑)。

小村氏:
 とにかく、『FGO』の宝具演出の案件は厳しいスケジュールでした。しかも、すごく珍しいツールを使って作られていたんです。
 で、それを使う前提だったので、使い方をイチから勉強する必要があったんです。

 このツールは未だにブラックボックスな部分が多くて、もはや我々の会社でしか触れないんじゃないかというくらいです(笑)。

──間に合わないのならどのように危機を脱したのでしょうか。

小村氏:
 我々はできないと言っているわけではなく「できるんだけど時間がない」ということを説明するために、最初にものすごく豪華な宝具演出を作ったんです。「固有結界」というものです。

 それで実力は認めていただけたんです。そこから僕らがお話ししたのは「スケジュールに間に合わせるためにはいったん全ての演出を『キラキラ、ドン!』にします。」ということでした。
 キラキラーっと光って、ドンとレーザービームが出るみたいな、言ってしまえばシンプルな演出ですね。

初期の宝具演出

──とにかく実力は示したのですね。

小村氏:
 それで、「スケジュールを取るかクオリティを取るか」を尋ねたんです。「キラキラ、ドン!」なら間に合わせられる。それで最初は全部その同じ演出にすることで、なんとかリリースまでに間に合わせることが出来たんです。今でも宝具演出のグラフィック面をワンオアエイトが制作しています。宝具演出を後から徐々に作り直すことが出来たのは、我々にとってもよかったと思ってます。

 その後、『FGO』がリリースしたあと3ヶ月くらい、『FGO』の仕事は無かったので、待つことにしました。結果、ウチの担当チームにポカンと空白の期間が生まれました。

 その時期にババっと集中して作ったのが『EARTH WARS』なんですよ。それまでも細々と作っていたんですが、その3か月でデザインのリソースを揃えて完成させて、出したんです。さきほど言った通り、売上はあんまりだったんですが……。

──その割には、30万ダウンロードもいってますよね。

小村氏:
 はい。でも最初は全然だったんです。宣伝も一切打っていなかったですし、「知る人ぞ知る」みたいな扱いだったんです。
 潮目が変わったのが、しばらくして出したNintendo Switch版からですね。僕らも『EARTH WARS』をSwitchで出すといっても「そんなに売れないだろう」と感じていて、思い切って500円で販売したんです。「ワンコインで買えたら面白いんじゃないか」みたいな軽いノリで(笑)。

『EARTH WARS』

 そうしたら週間ダウンロードランキングで1位か2位を獲って、とたんに売れだして、一気に開発費の回収ができました。
 そのときは任天堂さんの担当の人に呼び出されて、「あんな売り方するなら一声かけてくださいよ」って言われるくらいに売れました。

 そのおかげで『EARTH WARS』というタイトルをいろんな方に遊んでいたいたことが、今作っている『LOST EPIC』にもつながっていきます。そのあたりから、口コミで実力が広がっていき、「仕事をやってもらえませんか」みたいな感じで依頼されることが多くて増えていった感じです。

──ワンオアエイトの会社としての強みはどういうものなんでしょうか。

小村氏:
 まず一番はデザインが強いというところです。何かをゼロからつくるというときに、それを自分たちできちんと提案して「提案型のデザイン」みたいことができるのが強みですかね。「こういうのどうですかね?」と自発的に訊くことができるところかなと思います。

オリジナルゲームへの挑戦。「挑戦しない方がリスク」であると覚悟

『LOST EPIC』

──『EARTH WARS』と『LOST EPIC』のディレクターは同じ人なんですか?

小村氏:
 はい。彼は黒岩太一郎というプログラマーで、元イメージエポックのスタッフなんですよ。いまはフリーランスですね。
 彼は自分で好きなようにやりたい方で、どこかに所属してやるというよりは自分で同人でもいいから作っていきたいタイプです。ただ、デザインやビジュアル面では自分ひとりでは弱いので誰かと組みたい。ということで『EARTH WARS』は実は彼から持ち込まれた企画なんですよ。

──持ち込まれたときの企画はどんなものだったんですか。

小村氏:
 「2Dの横スクロールアクションを作りたい」と。僕自身も2Dのアクションすごく好きだったし、彼が途中で投げ出したりすることなく、完成させる人だということはわかっていたので「わかりました一緒にやりましょう」ということではじまったのが『EARTH WARS』というタイトルです。

──その黒岩さんと作るゲームの第2弾が『LOST EPIC』ということですか。

小村氏:
 そうですね。『LOST EPIC』は『EARTH WARS』の開発が終わったあと、すぐ作りだしていました。最初は少ない人数で細々と『EARTH WARS』と同じように作り始めていたんですが、最近になってようやく目途が立ってきたので、一気に作りましょうということでスパートをかけているところです。

──なぜオリジナルのタイトルを作ろうと思ったんですか? デザインのお仕事に比べて、リスクも大きいかと思うんですが。

小村氏:
 はい、リスクがある、確かにそうです……。でも、僕は作らない方がよっぽどリスクがあると思っています

 ワンオアエイトを立ち上げたときもそうですが、自分たちがやりたいと思うことをやれないと、どっかでモヤモヤしたものが残っちゃって。「俺、明日死ねるのかな?」って悩みながらやっていくのは、いずれどこかで後悔すると思うんですよ。

 だから、僕としては挑戦しない方がリスクかなって思いますね。

──その場合って、小村さんがやりたいことってなんなんでしょうか? ご自身が直接ディレクションや開発をしているわけではない、つまり「自分のゲーム」ではないじゃないですか。

小村氏:
 確かに「自分のゲーム」ではないですね。

──たとえば、さっきの黒岩さんのように「ゲームを作りたい」というのはわかるんです。でも、小村さんの「ゲームを作りたい」というモチベーションは黒岩さんのそれとはちょっと違うような気がしていて。それって、もうちょっと言語化するとどんな感じなんでしょうか。

小村氏:
 そうですね……。僕がゲームを作りたいと思う一番のモチベーションは「僕がそのゲームで遊びたい!」ということかなと思います。

 これはウチに入社する方たちや、辞めていく方たちにも話すことなんですが、ワンオアエイトはその人にとって「腰掛け」でも全然かまわないと思っているんです。ウチでなくても、この業界に残り続けて「いつか面白いゲームを作ってもらえたらいい」と思っているんです。そして、僕はその方が作ってくれるであろう面白いゲームを遊びたい。

 だから、どちらかというと僕自身は本当にユーザーの立場に近いというか。僕は「自分で作る」というのを一回あきらめている人間なんですよ。

──なるほど。そのような姿勢というか、モチベーションにいたったきっかけとかはあったりするんでしょうか?

小村氏:
 僕はイメージエポックのときに、一回現場を離れたんですよ。自分が関わっていたプロジェクトで失敗したこともあり、経営戦略部に移ってバックオフィスの統括をしていました。
 とはいえ自分のなかでは、「まだ自分はデザイナーだ」という意識があって、なんだったらちょっとデザインの仕事を手伝おうとかしていたんですけれど、そのときに同僚の新納さんから言われた言葉があったんです。

 「小村さん、一回筆を置いた人間がもう一回やり始めるというのは、中途半端にやるんだったらダメだよ」と。

 僕はそれを聞いて、「本当にそうだな」って思ったんです。中途半端にやるんだったらダメだ、本気でやるんだったら会社辞めて、自分で別の会社に行くなりなんなりして、デザイナーをやるべきだと思ったんです。そういった気持ちがあったんで、もう筆を置こうと決めたんです。

 だからそのときから、僕は基本的には現場にはノータッチを貫いています。もちろん一番上の人間としてジャッジをしなきゃいけない部分もありますが、僕が直接現場の作業をすることはないです。

──ディレクションは退いて、最終的なクオリティチェックだとか、プロデューサー的な立ち位置に専念しているんですね。

小村氏:
 そうですね。『LOST EPIC』に関しては特にそうなんですけど、どちらかというと座組のセッティングや予算の調達だとか、そういうところがいちばん大事かなと思ってやっています。

 『EARTH WARS』の開発チームは高いクオリティを出せると思っているし、彼らがキチンと面白いものをつくれる環境を用意することが、僕がいちばん貢献できることかなと思っています。
 
 なおかつ、『LOST EPIC』に関しては、もっと知られて売れてほしい、正統に売れてほしいと思っているので、今回は宣伝などにも力を入れてやっていこうと思ったんです。

こだわりの強いプログラマーがひとりで支える『LOST EPIC』は要素てんこ盛りの新感覚2Dアクション!

──紆余曲折ありながらも、ワンオアエイトの第2弾オリジナルタイトルとなる『LOST EPIC』ですが、どういうゲームになるのでしょうか。

小村氏:
 2Dスクロールアクションに、ハクスラ要素とキャラクタービルド要素を足し合わせたゲームですね。ガンガン敵を倒してガンガン武器を強くして、スキルを自分の好きなようにビルドしていく感じです。

 あと特徴的な点としては、開発を手掛ける黒岩自身が格ゲー好きなこともあって、技のキャンセルだとか、先行入力でのコンボのような格ゲー的な要素もアクションに盛り込まれていますね。

──取材前にα版を触らせていただいたのですが、確かに格ゲーっぽい感覚はありましたね。たとえば、ボスの攻撃を対空の昇竜拳みたいな感じで落とせたりだとか。実際の格ゲーで昇竜拳で対空を落としたときと同じ様な気持ちよさがあって、2Dアクションゲームの体験としては新鮮でした。

小村氏:
 まさにそうです(笑)。

──実際にプログラムを書いているのは黒岩さんなんですか?

小村氏:
 そうです。今回はプログラムは完全に黒岩ひとりで書いています。なので、彼ができないというものはできないです(笑)。

──えっ、これ全部ひとりで書いているんですか!?

小村氏:
 そうです(笑)。黒岩は、イメージエポック時代からの凄腕プログラマーで。まさに技術の要でしたね。

──すごい人がいるものですね……。

小村氏:
 当時、黒岩を含めてイメージエポックには3人凄腕のプログラマーがいて。彼らが「宗派」になっていたんですよ。最初にどこに配属されるかによって、どこの技術に染まるかが決まる。

 で、みんな原理主義者なんで、ほかの宗派のところにはいけなくなると。黒岩はその源流のひとりですね(笑)。

──開発は「Team EARTH WARS」とクレジットされてますが、何人ぐらいのチームなんですか。

小村氏:
 正確に言うと黒岩ひとりと言っても過言ではないのですけれど、それを我々がサポートするという体制になっています。多いときは10人くらいで、ミニマムだと2〜3人くらいですね。

 『LOST EPIC』を「Team EARTH WARS」として制作している理由には、『EARTH WARS』のリベンジという部分もあって。「自分たちがこだわりすぎたなというところを、もっとユーザーに歩み寄ってみよう」というのがコンセプトですね。

──『EARTH WARS』でうまくいかなかったというのはどういう部分なんですか?

小村氏:
 いちばんの反省点は宣伝ですね。これまでは「自分たちが面白いと思えるものを作れれば、売れなくてもいい」という極端な考えを持っていたんですよ。

 外注の仕事で日々のお金は稼げるので、オリジナルタイトルは趣味で作るつもりでもいいかなと思っていたんですが、最近になって「それじゃいかん」と思うようになって。まあ、今更なんですけど……(笑)。

 だから、『LOST EPIC』では宣伝にも力を入れています。去年の「INDIE LIVE EXPO」で紹介してもらったこともあって、おかげさまでまだウィッシュリスト数も1万2000ぐらいになって。

──インディーゲームとしてはかなりすごい数字ですね。でも、どうして宣伝に力を入れようと思うようになったんでしょうか?

小村氏:
 「せっかくここまで一生懸命作ったものが、多くの人に知られていない」というのは罪だと思ったからです。汗水流して作ったものであるなら、やっぱりみんなに知ってもらいたい。そのための努力をこれまではまったくしていなかったので、そこはしっかりとするべきだろうと。

 これまではほとんど広告費をかけていなかったんですよ。多少はやってみようかという感じでTwitter広告にちょっと手を出したぐらいだったので。

──そこは我々のようなメディアとしても共感できる部分ですね。「記事を書き上げたところで満足しちゃう」というのはけっこうありがちなことで。「そうじゃなくて、きちんと多くの人に届くように工夫するところまでが仕事だよ」とは僕もよく編集部内で言ってることなんです。メディアでさえもそんな感じだから、ゲームを作っている方はもっと歯がゆく感じていらっしゃるんだろうなと。

小村氏:
 そうですね。結局、僕らも自分たちで面白いと思うところで満足しちゃっていた部分があったんだと思います。

──あともうひとつ、会社でも人でも、「お金を持ったときに何に使うか」でその人となりが見えるじゃないですか。
 小村さんのお話を聞いていて興味深かったのが、やっぱり作るところにお金を使っていく人なんだなあと。やっぱり小村さんは作りたい人で、作ることがゴールの人なのかなと思います。

小村氏:
 たぶん僕は憧れているんですよ。1回筆を折りましたけど、やっぱ心の中ではくすぶっていて、「いつかなにか作りたいな」という気持ちは正直あったりするんです。

 ただ、今それをやれるタイミングではない。会社もまだまだ小さいし、安定もしていません。まだまだ僕がやらなきゃいけない仕事があって、自分が自由に好きなようにやっていけるという状況でもないので、そこはもう淡々とやるしかないなって思っています。

 そんな一方で、うちのスタッフはキラキラと一生懸命作っているんですよ。それを見ると、「ああ、いいな」と思ったりもする。だから、僕はうちのスタッフに憧れているんだと思います。

──その感覚はちょっとわかります(笑)。上の立場になってしまうと、「ひたすら目の前のものを作り続ける」ような仕事ができる機会は少なくなっちゃいますよね。

小村氏:
 僕も「あんな風にひたすら一途に作りたい!」なんて思ったりすることもあります(笑)。

ワンオアエイトの目標は、「熱狂されるコンテンツを作る」こと

──はじめは5人くらいだったころから40人くらいまで会社が成長したわけですが、これから会社としてはどうしていくことが目標なんでしょうか?
 僕は最近、「ゲーム会社のゴールってなんなんだろう」とよく考えるんです。
 どこがゴールなのか。人によっては自分が作りたいものを作りつづけるというのがゴールで、それが維持されていればいいという人もいる。
 それで言うと、ワンオアエイトのゴールはどこなんだろう?と疑問に思いました。

小村氏:
 ゴールという点でいうと、我々は「熱狂されるコンテンツを作る」というのが目的になります。

──ゲームで人々を熱狂させるということですか?

小村氏:
 「熱狂されるコンテンツ」という意味では、ゲームじゃなくてもいいと思っていて。実はVTuberのようなバーチャルタレントの事務所運営みたいなことも並行して進めているんです。

 ゲーム以外のコンテンツでも、いろいろな角度でエンタメの要素を入れることができると思うので。お客さんが喜んでもらえるものや、クライアントさんに「どうしてもウチに頼みたいんだ」と言ってもらえるようなものを作っていこうというのが目的ですね。

 まあ、あとはそのために、トラブルがあっても無くならない、生き残り続けるということもミッションですね(笑)。熱狂されるコンテンツを作るために、生き残り続ける。生き残りさえすれば、ウチのスタッフはいつかそういうコンテンツを作れると思っています。

──小村さんの人生は中々すごいですね……。まさに「人に歴史あり」なお話でした。

小村氏:
 別れ方はすごく残念なものになっちゃったんですけど、イメージエポックや、御影さん自身に僕は感謝の念を感じています。とってつけて言うわけではなくてですね(笑)。

──それもいいですね。愛憎ありながらも、感謝というのは……。

小村氏:
 彼がいなければ、イメージエポックという会社がなければ、僕は今、こういうことをやっていない。昔みたいに、同じようなことをずっと繰り返していたんじゃないかと思います。(了)


 ゼロどころかマイナスからのスタートを切ったワンオアエイトは、紆余曲折ありながらも、2作目のオリジナルゲームをリリースできるまでに「生き残る」ことができた。
 小村氏が歩んできた道のりは過酷極まりないものであったが、それでも「ゲームを作りたい」という気持ちが──あるいは、一度筆を置いた人間としてのゲームを作る人たちへの憧れ、そして「彼らが作るゲームを遊びたい」という思いが彼を支え続けた。

 どんなに苦しくても、生き残りさえすれば、いつか多くの人々に熱狂されるコンテンツを作ることができる。小村氏が語るその信念の力強さは、公園からPCひとつでゲームを作ってきたという不屈の経験に裏打ちされている。
 「明日死ぬかもしれない」と頭で思っても、その覚悟を日々維持し続けるのはそう簡単なことではない。しかし、小村氏は人生のどん底からその思いとともに歩み続けた。だからこそ、リスクを負ってでも「作らないよりも作る」ことを選ぶことができたのだろう。

 そんな氏が率いるワンオアエイトの新作ゲーム『LOST EPIC』も、黒岩氏という凄腕プログラマーがひとりで開発を一手に担っているというのだから驚きだ。ワンオアエイトという会社に流れる不屈の魂が生み出すクリエイティブが『LOST EPIC』という作品でいかにして発揮されるのか、楽しみでならない。

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電ファミニコゲーマー編集長、およびニコニコニュース編集長。
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ライター
『プリパラ』、『妖怪ウォッチ』ありがとう。黙々とゲームに没頭する日々。こっそりと同人ゲーム、同人誌を作っています。
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編集
ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

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