「シノギ」を英語で言うと何? 主人公の春日一番の名前はローカライズすると“ナンバーワン”? 『龍が如く』欧米版ローカライズプロデューサーに日本文化、極道世界をどう翻訳したのかを聞いてみた

 東京の架空の街「神室町」を舞台に、熱い人間ドラマが描かれる『龍が如く』シリーズ。シリーズの累計出荷本数は全世界で1400万本を超え、日本のみならず海外でも人気を博している。海外ではアジア地域、北米、スペインで人気が高く、RPGにジャンルが刷新されたシリーズ最新作『龍が如く7 光と闇の行方』『Yakuza: Like a Dragon』というタイトルで発売。レビュー集積サイトMetacriticでは84と高スコアを記録しており、英語圏でも人気の高さが見て取れる。

 ただ、ご存知のとおり、『龍が如く』は極道世界に生きる人々の生き様が描かれているタイトル。日本独特のカルチャーをどのようにローカライズしたのか? また、「カシラ」「シノギ」といった、任侠世界の用語はどのように翻訳されているのかなどは、気になるところだろう。

 そのほか、『龍が如く7』はこれまでのシリーズ作と同様、現実と非現実が入り混じったような、ちょっとおかしなサブストーリーが展開するのも特徴のひとつ。なかには主人公の春日一番が外国人に英語で話しかけられて、カタコトの英語でやりとりをする、といったサブストーリーも。登場人物が流暢な英語で話す欧米版では、カタコト英語はどう表現されたのだろうか?

『龍が如く7 光と闇の行方 インターナショナル』

 これらの疑問を解決するべく、欧米版のテキストや台本、英語音声の制作を指揮したセガ・オブ・アメリカのシニアローカライズプロデューサーにインタビューを敢行。どのようなアプローチで翻訳を行ったのか、“龍が如く”らしさを残すためにどのような対応をされたのかなど、考え方やアイデア、哲学について話をうかがった。

 なお、今回のインタビューはメールベースで行ったため、回答は英語でいただいている。原文の英語も合わせて掲載してみたので、英語圏の方にもぜひ読んでいただきたい。

取材・文/豊田恵吾


ローカライズにあたっての哲学は、日本文化の一端を欧米に持ち込むこと

──本日はよろしくお願いします。

スコット・ストリカート氏(以下、スコット氏):
 セガ・オブ・アメリカのスコット・ストリカートです。プロジェクトの欧米ローカライズを監督しました。よろしくお願いします。

スコット・ストリカート氏

──『龍が如く7』は任侠という日本独自の文化が描かれているタイトルで、日本の伝統やトレンド、ファッションや流行などを理解していないと翻訳を手掛けるのは非常に難しいのではないかと感じます。ローカライズチームは日本語に精通している方やもともと日本で暮らしていた方々が集まっているのでしょうか?

スコット氏:
 ローカライズチームのメンバーの多くは、さまざまな英語教育プログラムを通じて、短期間ですが日本に滞在した経験があります。また、日本に住んだことがない人でも、頻繁に日本を訪れていますね。日本の文化や伝統、トレンドに精通することも私たちの仕事ですが、仕事だから日本に行く、日本を知るというだけではなく、日本の文化や日本のクリエイターが生み出すゲームに純粋に魅力を感じています。

Many members of our localization team have had brief stints of living in Japan, most often through the various English teaching residency programs. And those of us that haven’t go to visit often. It’s our job to be up to date with Japanese culture, traditions, and trends, but we do so not only because it’s work – I think it’s safe to say all of us are genuinely fascinated by Japanese culture and the games Japanese creators produce.

──『龍が如く7』のボリュームは膨大で、ボイス・テキスト量も尋常ではない量だったと思いますが、どのような計画を立て、ローカライズを行ったのでしょうか?

スコット氏:
 『龍が如く』スタジオが制作するゲームは、映画作品の音声・文字量を超えると言っても過言ではありません。なので『龍が如く0 誓いの場所』以降、すべての作品をローカライズしてきた私たちにとって、その規模の大きさは想定内のことでした。ローカライズ作業については、スクリプトライター、メインストーリーライター、サブストーリーライター、ミニゲームテキストライターなどというサブグループに分けたうえで、チームとして翻訳に取り組んでいます。

It’s not an exaggeration to say that RGG Studio creates games that exceed the voice and text volume of a movie, so after localizing every release since Yakuza 0, the large scope is something we’ve come to expect and plan for. We tackle the text volume as a team, dividing ourselves into sub groups, such as script writers, main story writers, substory writers, minigame text writers, and so on.

──ローカライズを行ううえで、どのような部分を重視されたのでしょうか? また、日本文化で理解するのが難しい部分はどのようなところだったのでしょう?

スコット氏:
 『龍が如く』シリーズをローカライズするにあたっての私たちの哲学は、日本の文化の一端を欧米に持ち込むことです。踏み込みすぎず、かといって誤解を招かないようにしています。たとえば、日本食好きの人はゲームに登場する「カツ丼」を知っていますが、誰もが知っているわけではありません。「カツ丼」と呼んで大丈夫だろうか? そんな会話がローカライズチームでは毎日のように交わされていました。
 私の考えでは、一般的な欧米プレイヤーにとって、『龍が如く』は意図的に少し異質なものであるべきだと思っています。「日本ではこうなんだ」と思ってもらえればいいと考えているわけです。しかし、理解できないほどの異質さを感じさせてはいけません。これは非常に微妙なラインです。

 「春日一番」の名前自体、欧米にとっては困ったジレンマがありました。日本語では、英語にはない方法で「ナンバーワン」や「ベスト」を台詞の中でダジャレにすることができるからです。しかし、英語でも私たちはこのダジャレを示唆する方法を見つけました。
 例えば、欧米版では、ドラゴンカートで春日が1位になったときに「俺の名前を言ってみろ!」と叫んでいます。これは、一般的にはただの煽りだと思われるかもしれませんが、彼の名前が「一番」という意味であることを知っていれば、ちょっとした特別な意味を持つことになるのです。

Our philosophy for localizing the Ryu Ga Gotoku series is that we are bringing a slice of Japanese culture to the West. We don’t want to overstep, but we don’t want to confuse, either. For instance, many fans of Japanese food know what “katsudon” is, but since not everyone does, should we call it a “pork cutlet bowl”? These are the types of conversations we have daily. My philosophy on it is that the game should intentionally feel a little foreign to the average Western player. They should think, “So that’s how it works in Japan.” But it should not feel so foreign that it’s not understandable. It’s a very fine line to walk.

Ichiban’s name itself was an interesting dilemma for the West, because the Japanese can make it pun off “number one” and “best” in ways the English can’t. But we still found ways around this. For instance, in the dub, when Kasuga is in first in Dragon Kart, he shouts “Say my name!” which people probably think of as just a taunt, but if you know his name means “first” it has that little extra meaning to it.

──ローカライズチームの皆さんは、ゲームはもちろん、日本の映画やマンガもお好きなのでしょうか? 好きな作品があればお聞かせください。

スコット氏:
 『龍が如く7』の主人公、春日一番と同じように、日本のゲームがなければいまの私はなかったと言っても過言ではありません。『ファイナルファンタジー』は、エンディングがないモバイル版以外のコンシューマ作品はすべて最後までプレイしました。先日『君の名は。をようやく観たのですが、とても美しい映画だと思いました。マンガは追いつくのがたいへんで、とくにアメリカでは日本のマンガが手に入らないのであまり読みません(笑)。

Much like Kasuga, I can safely say I wouldn’t be who I am today without Japanese games! I have played every FINAL FANTASY game to completion except the mobile ones that don’t really end. It’s a little old now but I finally watched 君の名は。 and I thought it was beautiful. I don’t read much manga though because they’re difficult to keep up with, especially in the US. Haha.

──日本の極道を描く映画は、世界的に人気があると思います。たとえば、北野武監督作品や深作欣二監督作品など。『龍が如く』シリーズをローカライズするにあたり、参考にした作品はありますか?

スコット氏:
 変な話ですが、“極道の世界”を英語にローカライズするのが私の仕事なので、日本の文化と海外の文化とのギャップを埋めるために、英語のインスピレーションの源を探すことがあります。たとえば、春日一番と『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』“スターロード “を比較して、春日一番がどのようなキャラクターなのかを海外のチームに説明することができました。
 これにより、欧米地域でのターゲット客層をどのように見極めればよいのかが一目瞭然になってくるのです。 とはいえ、私は『ソナチネ』などの北野監督作品も好きです。一番好きなのは『座頭市』のリメイク版です。

This may sound strange, but since it’s my job to localize the “Gokudo world of Japan” into English, I actually look for English sources of inspiration to help me bridge the gap from Japanese culture to overseas. For instance, I was able to draw a comparison between Kasuga Ichiban and “Starlord” from Marvel’s Guardians of the Galaxy to explain to our teams over here what kind of character he was. This helps them understand at a glance how to best identify target markets in our region.

That said, I enjoy Kitano classics like Sonatine but my favorite is his remake of Zatoichii.the Blind Swordsman.

──『龍が如く7』をプレイした英語圏のユーザーからは、サブストーリーのクレイジーさや、いい意味でのバカバカしさ、「ビデオゲームらしくあることを貫いている」という部分が高く評価されています。ローカライズを行っている中で、「これは絶対に英語圏で受ける!」と確信したシーンやシチュエーションがあればお教えください。また、ローカライズチームから見た『龍が如く』のおもしろさとはどのような部分でしょうか?

スコット氏:
 『龍が如く0』のニワトリ【※】が教えてくれたことは、プレイヤーが何に反応してくるかを予測することは不可能だということです。とはいえ、ザリガニのナンシーや、保育士姿の女性と幼児プレイを楽しむ権田原組長の復活、そして個人的には名画座での羊の頭をした睡魔による眠気との攻防のミニゲームが人気になる予感は、何となくしていました。例を挙げればきりがありません。

※『龍が如く0』に登場するニワトリ、コケ太郎。ボウリング場に現れ、サブストーリーをクリアすると「神室町マネーアイランド」のマネージャーとして雇用することができる。突拍子もない突き抜けたキャラクター性が欧米で人気を獲得した。ちなみに、『龍が如く7』にはコケコッ子というニワトリも登場。デリバリーヘルプでバトル中に呼び出すことができるほか、会社経営の株主総会でも活躍してくれる。

If the chicken from Yakuza 0 taught us anything, it’s that it’s impossible to predict what the audience will latch onto. That said, sometimes you just have a feeling about things – like Nancy the crawfish, or the return of the kink-nurse yakuza group, and for me personally, the sheep slapping minigame in the old theater. There are almost too many to name.

──ハローワーク、キャバクラ、ホスト、資格学校など、『龍が如く7』には日本独自の要素が満載です。どのようなことを心がけて、これらを訳されたのでしょうか? そのほか、「カシラ」、「シノギ」、「東城会」といった、極道作品独特の単語はどのように訳されたのですか? また、訳すのに苦労された単語やシチュエーションがあればお聞かせください。

スコット氏:
 これらの施設の多くは、日本の文化を欧米のプレイヤーに紹介するための良い機会となっています。前作のコンセプトを踏襲してその上で追加をしているものもあれば、開発チームが新しいものを導入して翻訳チームの能力の限界を試すものもやはり登場します。具体的にどう訳したのか、いくつか紹介しましょう。

●シノギ:文脈に応じて「ビジネス」「コレクション」と訳すことが多いですね。

●東城会:『龍が如く』1作目において「Tojo Clan」と呼んでいたことに由来します。あえて言えば、初代ゲームの英語吹き替え版では、「クラン」という言葉が「カイ」という言葉の口の形に合うように見えることから、ボイス収録の制限上は都合が良かったと思います。

●親っさん:「ボス」と訳すことが多いのですが、これは上下関係を明確に指す表現です。

●頭(カシラ): 極道の階層を表現するために、軍人と家族の用語を混ぜています。頭は大尉(Captain)若頭は中尉(Lieutenant)組長は家長(Patriarch)といった具合です。ローカライズを重ねるうちに、英語の組織図が一通りできてしまうのではないでしょうか。

A lot of these institutions are neat opportunities for us to introduce Japanese culture to Western audiences. Some of these concepts return from previous games and build upon them, and others are just new ways that the development team keeps us on our toes.

Oyassan: We often translate this to “boss”, which paints a clear picture of a hierarchy.
Kashira: We mix military ranks with family terms to lay out the Gokudo hierarchy. A kashira is a “captain,” a wakagashira is a lieutenant, and a kumicho is a patriarch, and it continues. Over the years of localization, I bet we could lay out a whole organizational chart in English.
Shinogi: We often translate this as “business” or “collections” depending on context.
Tojo-kai: This was a legacy term from the first Yakuza, that we called the Tojo Clan. I would venture a good guess that it was called this because the word “clan” can appear to fit the mouth-shape of the word “kai” for the English dub of the original game.
Oyassan: We often translate this to “boss”, which paints a clear picture of a hierarchy.

──春日一番が外国人から道を尋ねられるシーンでは、ゲーム中に英語で話しているのに英語がわからないという、ローカライズ版だからこそ対応が必要となるシチュエーションとなっています。翻訳難度の高いシーンですが、どのようなアプローチで翻訳を行ったのでしょうか。

スコット氏:
 日本語の音声でキャラクターが英語を話し始めると、翻訳者はちょっとしたジレンマに陥ります。春日一番が流暢な英語を話しているのに、「英語がわからない!」と言うのは違和感がありますよね。そのあたり、何らかの調整をしなければならないと考えた私たちは、この問題から逃れるのではなく、その不条理さに寄り添うように、いくつかの調整を行いました。
 まず、外国人の「たちの悪さ」を強調しました。アメリカ人であっても、アメリカ人観光客が海外では「たちが悪い」ことは知っているし、外国の人に話しかけるときには、ゆっくりと大きな声で話すことで、何とか理解してもらおうと考えるかもしれません(笑)。

 ふたつ目は、開発チームと協力して欧米版においては春日一番が「Oh ****, it’s English!」と言ったときに、作品の枠を破ってカメラを直視し、プレイヤーに親指を立てるアニメーションに変更しました。これは、「英語を話す春日一番が、英語に戸惑うのはおかしいんだよね」ということを意識していることをプレイヤーに伝えるためです。作品の世界観に沿ってキャラクターは実際日本語をしゃべっているけど自分だけに英語で聞こえている、という不信感をプレイヤーに与えないことです(笑)。

It’s an interesting dilemma for translators when characters start speaking English in the Japanese audio. It comes off as strange for Ichiban to say “I don’t understand English!” while speaking perfectly fluent English. We knew we had to make some kind of adjustment though, so instead of trying to escape it, we leaned into the absurdity of it by making a couple tweaks.
First, we amped up the foreigner’s obnoxiousness. Even as Americans, we understand that American tourists can occasionally be obnoxious, and when they speak to people in a foreign country, they might think that speaking slowly and loudly will somehow make them easier to comprehend, lol.

Second, working alongside the dev team, when Ichiban says “Oh ****, it’s English!” we changed the animation for him to break the fourth wall by looking directly into the camera and giving the player a thumbs-up. This lets the player in on the fact that we are aware that it’s absurd for an English-speaking Ichiban to be confused by English. We are sort of asking the player to suspend their disbelief, and that the characters are actually speaking Japanese, but only they can hear it in English. Haha.

──吹き替え用のセリフ作成においては、オリジナルの尺がブレないようにローカライズ版のセリフを作られることが多いですが、本作では吹き替え用のセリフに合わせてカットシーンを変更するという、真逆のアプローチを行ったとうかがいました。通常、このような手法は、開発チームと連携が取れていないと対応は難しいと思います。どのような手順で実現されたのでしょうか。

スコット氏:
 カットシーンの変更は、私たちにも開発チームにとっても大掛かりな作業で、とても重要なステップでした。英語として不自然になるくらいまで余分な言葉や間合いを入れない限り、8割型、英語の方が日本語よりも早く喋り切ることになります。そのため、開発チームのツールを使って、ゲーム内のデータに入り込み、英語の台詞尺を中心にシーンを切り直し、ときにはアニメーションを動かしたり、フレームを切り取ったり、カメラのパンを短くしたり、まれにシーンを延長したりします。
 これらの調整を経て、英語版は日本語版よりも1時間ほど短くなっていると思います。とはいえ、この作業には細心の注意を払わなければならず、開発チームには少々緊張を強いていると思いますが(笑)、彼らの協力もあって、とても自然な形で英語版が完成しました。

 開発チームの信頼と協力がなければ、私たちが行うローカライズの高い品質を実現することはできません。ローカライズの過程では、脚本家やデザイナーに多くの質問をし、サウンドチームと協力して英語の台本を作成し、ツールチームと協力して英語のテキストやスピーチを組み込むという作業を行います。毎週のようにミーティングも行われています。私は通訳なしで日本語を理解することはできませんが、開発チームのメンバーは同僚のように感じられるようになりました。

It’s actually a massive undertaking for both us and the development team to do this, but it’s a very important step. In 80% of the cases, the English language will finish a translated sentence faster than the Japanese performance, unless we add a lot of superfluous words or pauses into the dialog, which can make it sound unnatural in English. As a result, using the development tools from the dev team, we go into the game and re-cut the scenes around the English dialog, occasionally moving animations, cutting out frames, shortening camera pans, and in rare cases, extending scenes. Overall, the English version of the game, after we make all these adjustments, is probably about a full hour shorter than the Japanese, to make a guess. That said, we have to be very careful not to mess things up when we do this, and even though I think we make the development team a little nervous, lol, with their help, the game comes out feeling very natural in English.

It would not be possible to achieve the localization quality that we do without the trust and cooperation of the development team. During the localization process, we have many questions for the writers and artists, and then we work with the sound team for the English scripts, and then we work with the tools team to incorporate the English text and speech. We have weekly meetings too, and even though I can’t speak Japanese well enough to understand them without an interpreter, the members of the dev team have begun to feel like colleagues.

──欧米版では、戦闘メニューの項目が「Skill・Etc.・Guard・Attack」となっており、頭文字で「SEGA」と読めるように調整されています。Twitterに書かれた意見を柔軟に取り入れたとうかがっていますが、このような遊び心はローカライズ全般に見受けられます。遊び心のさじ加減はどのように決められたのでしょうか。

スコット氏:
 そう、その提案は、日本にいるローカライズ担当の同僚からのものだったのです!この慣用句はうまく翻訳できないかもしれませんが、木の間から森を見るような外部の視点が必要な場合もあります。また、このような遅いタイミングで取り入れてくれた開発チームにも感謝しています。しかし、全体的には主人公の楽しそうな態度や振る舞いに合わせて、『Yakuza: Like a Dragon』を少し遊び心のある方向に進ませることにしました。

Yes, that suggestion came from a localization colleague based in Japan! This idiom may not translate well, but sometimes it takes an outsider to see the forest through the trees. I’m also grateful to the development team for being able to implement it so late. But overall, we chose to take Yakuza: Like a Dragon in a slightly more playful direction to match the protagonist’s fun attitude and demeanor.

──”デリバリーヘルプ”を”Poundmates”という、セクシャルにも用心棒的にも聞こえるような訳にし、日本語ならではの言葉遊びを英語でも伝わるようにするなど、随所に絶妙な英訳が見受けられました。もととなる日本語の意味と、ゲーム中のシステム的な意味を理解しなければ実現できない英訳だと感じましたが、英語圏の方にオリジナルのイメージをより強く伝える絶妙なローカライズは、どのような発想から生み出されているのですか?

スコット氏:
 最初のアイデアが最終的にゲームに入ることはあまりありません。私たちはとてもクリエイティブな集団なので、しばらくじっくり考えていると、チームの誰かが必ず完璧な解決策を思いつくのです。

Oftentimes it is not our first ideas that make it into the final game. We’re a very creative group of people, and after sitting on it for a while, someone on the team always seems to come up with something perfect.

──2020年7月には、『龍が如く5 夢、叶えし者』の「Baka Mitai」【※】がインターネットミームとなりました。『龍が如く』のポテンシャルの高さを表す事例でしたが、この流行をどのように捉えていらっしゃいましたか?

※『龍が如く5 夢、叶えし者』のカラオケソングのひとつ「ばかみたい」。主人公の桐生一馬のほか、秋山や冴島が歌うバラード。海外では「Baka Mitai」、または曲中の歌詞から「Dame Da Ne(だめだね)」の名称で知られている。2020年に、なぜか有名人の顔を使って「ばかみたい」が歌われたり、インフルエンサーが歌う動画がミーム化した。2020年8月には、チャンネル登録者数が1億人を超えるPewDiePie氏が自身の動画にて「Baka Mitai」を紹介。日本語歌詞で自身の歌声を披露している。

スコット氏:
 ちょうどシリーズ史上初めて英語の歌詞を収録しているときに起きた出来事で、私たちにとっても興味深い出来事でした。「ばかみたい」はシリーズの中でも特に好きな曲なので、ミーム化したときには、ディレクターの堀井(亮佑)さん【※】に対して失礼なことをしているのではないかと心配しました。だから、堀井さんが「自分の曲がネットで話題になるのは嬉しい」とおっしゃっていたとき、安心しました。

※堀井亮佑
『龍が如く7』ではディレクター、『龍が如く5』ではメインプランナーを務め、「ばかみたい」の作詞も担当。

It was an interesting time for us too, because this happened just as we were recording English lyrics for the first time in series history. Bakamitai has always been one of my favorite songs in the series, so when it became a meme, I was worried that Horii-san might find it disrespectful. So when he mentioned that he was happy to see his song all over the internet, I was relieved.

──『龍が如く』の英題は『YAKUZA』ですが、これはローカライズチーム(SEGA of America)が決めたのでしょうか? 決定までに候補に出たタイトル名があれば、お伝えいただける範囲でお教えください。

スコット氏:
 これは2006年にセガのチームが決めたものですが、残念ながらいまはオリジナルのメンバーは残っていません。キャッチーな名前ではありますが、『龍が如く』の本質を捉えていないという意見も多く、本作では最終的に「Like a Dragon」としました。ただ、ナンバリングタイトルの数字をどうするかはいぜん問題が残っています。

This was decided by a team at SEGA back in 2006, of which there are no original members left, unfortunately. While it’s a very catchy name, many of our team have felt that it doesn’t capture the true essence of “Ryu ga Gotoku”, which is why we finally changed the name to “Like a Dragon” for this title. The only problem now is what to do about the number…。

──最後に、日本人プレイヤーが英語音声で遊ぶとした場合、注目してほしいシーンがあれば、ぜひ教えてください

スコット氏:
 エンディングは特に感情が高まるシーンだと思いますが、エンディングなのでその理由は伏せておきます。ただ、中谷一博さん(春日役の俳優)が国内版においてみずから非常に高いハードルを設定していたので、欧米版ではそれに応えようとローカライズチームがベストを尽くしたということです。(了)

I think the ending is a particularly powerful scene, but since it’s the ending, I won’t spoil why. I’ll just say that Nakaya-san (the Japanese actor for Kasuga) really set the bar high and we tried very hard to meet it.


 いかがだっただろうか。欧米での『龍が如く7』に対しての感想をもっと具体的に知っていただくには、以下のTweetを見てもらうのがいいかもしれない。

 「ビデオゲームらしくあることを恥じていないのが『龍が如く』のすばらしさだ」と述べられたTweetで、コケコッ子のデリバリーヘルプシーンの動画が添えられている。この投稿に対し、「だから私はこれらのゲームが大好きだ。私は、ゲームであることを最大限に活用したり、映画やテレビや本ではできない体験を提供するビデオゲームが大好きです。ゲームは映画になろうとするべきではない」、「『龍が如く』はこれまでにプレイしたゲームの中で最高のシリーズ」、「もし自由にビデオゲームを作ることができたとしたら、と考えることがある。どれだけ考えを重ねたとしても、私が行き着くのは『龍が如く』だ」など、『龍が如く』が表現するもの、その確固たる信念に称賛の声が多数寄せられているのがわかる。

 これはひとえに、“『龍が如く』が持つ異質さ”を国や言語の壁を超えて提供できているからこそにほかならない。スコット氏を代表とするローカライズチームは縁の下の力持ち的な存在かもしれないが、彼らのクリエイティブがあったからこそ、『龍が如く』は海外でここまで受け入れられるタイトルに成長したのだろう。

 海外のゲーマーと会話する機会があったときは「『Yakuza』をプレイしことはあるか? あのゲーム、最高だっただろ?」とぜひ語りかけてみてほしい。

 なお、『龍が如く7 光と闇の行方 インターナショナル』はゴールデンウイークに30%セールが実施されている。『龍が如く』シリーズの過去作もセールとなっているのでお見逃しなく。

【あわせて読みたい】



『龍が如く』主人公をキャラ崩壊させた男に訊く“やって良いこと”と“悪いこと”──「ミニゲーム」と「サブストーリー」にエンタメ性を加え、IPの可能性を広げた【新世代に訊く:セガ・堀井亮佑】

 「カラオケ」は、キャラ崩壊のそしりをものともしないド肝を抜く演出で、プレイヤーを爆笑の渦に叩き込み、その後のシリーズの方向性にも多大な影響を与えたことで知られる。しかし堀井氏はそれを、革命志向や海外展開への意識からではなく、ただただ「情熱の結晶」として作り上げたのだという。

 「新世代に訊く」は、新時代のゲームクリエイターにスポットを当て、“次世代のレジェンド”たちの姿を追う連載である。
 第二弾となる今回は、ゲームの「オマケ要素」開発からIP自体のイメージをも変えることになった、新時代の革命児とも言うべき堀井氏の精神に迫りたい。

取材・文
電ファミニコゲーマー副編集長。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

新着記事

新着記事

ユーザー協賛プロジェクト

世界征服大作戦

電ファミの記事は協賛者の皆さまの支援によって成り立っています!

世界征服大作戦とは?

電ファミのファンクラブです。ゲームを中心にしながら、ひいてはマンガやアニメなど、エンタメ全般を扱うファンクラブへの成長を目指します。主要メンバーとして、元週刊少年ジャンプの編集長・Dr.マシリトこと鳥嶋和彦氏なども参加。面白いコンテンツによる世界征服を本気で企むコミュニティです。

詳しくはこちら

ピックアップ

連載・特集一覧

カテゴリ

その他

若ゲのいたり

SNSで更新情報をお届け!

カテゴリーピックアップ