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『バーチャファイター』鉄人座談会──esportsの名を冠する新作『バーチャ』を彼らはどう見ているのか

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鉄人から「スタープレイヤー」を発掘する立場に

池袋サラ:
 「スタープレイヤー」は『VF5』だっけ?

ブンブン丸:
 『VF5』かな。『VF4』の頃から新しいプレイヤーの人も入れるようにしていて。オレはずっと「新しい人をどんどん入れてください」と言っていたんだけど。自分はぜんぜん出なくなってもいいんで。

池袋サラ:
 あれは盛り上がったの? ふ~どとかも入ってたよね。

キャサ夫:
 盛り上がりましたよ、金色にピカーンと名前が光る人たちは。

ブンブン丸:
 新道ジャッキーとか、強かったよね。

キャサ夫:
 『VF5』の時、オレは北海道の旭川にいたんだけど、滝川かどっかのゲーセンにスタープレイヤーが来るっていうんで、旭川のバーチャ勢と一緒に行ったから。そうしたら札幌の人たちも来ていて。

『バーチャファイター』鉄人座談会──esportsの名を冠する新作『バーチャ』を彼らはどう見ているのか_024

──キャサ夫さんが先ほど、「当時YouTuberだったら」という話をしていましたけど、当時の鉄人はまさにストリーマーやYouTuberの走りと言える存在でしたよね。

ブンブン丸:
 インフルエンサーだよね。

池袋サラ:
 でも、今はYouTubeがありますけど、あの頃はそれがないからこそ、あんなふうになったというのもあるじゃないですか。

キャサ夫:
 だからそれをやりかけていたのが、『VF5』の「VF.TV」【※】ですよね。セクシー齋藤ブルース・リーの格好をして、ちび太と一緒にどっかの崖っぷちでなんかやってます、みたいな(笑)。あのノリでしょ?

※VF.TV
『バーチャファイター5』で導入されたサービスで、アーケードの専用モニターで『VF5』の対戦動画が放映された。さらに「バーチャ神ちび太とセクシー齋藤が行く!ぶらり組み手の旅」などの独自コンテンツも制作された。

──セガさんから「鉄人はこうあれ」みたいなことを言われたりしたんですか?

池袋サラ:
 ないですね。

キャサ夫:
 一切ないですよ。

ブンブン丸:
 契約書はありましたよ。守秘義務の。

キャサ夫:
 あったっけ?

ブンブン丸:
 お前が忘れてるだけだよ(笑)

キャサ夫:
 でも、ああしてください、こうしてくださいというのは、特になかったですね。

ブンブン丸:
 自然にやってたね。

TVに出演したことで、すっかりスターのような状態に

──あの当時は『バーチャ』やそのプレイヤーが、社会現象として採り上げられていたんですよね。

池袋サラ:
 もう、スゴかったよね。

ブンブン丸:
 TVとかに出たからね。

池袋サラ:
 TVに出たといっても、そんなにしょっちゅう出ているわけではないんですよ。なのにみんな知ってて、話しかけてくるんですよね。

ブンブン丸:
 吉嶺さん(池袋サラ)とオレは、一緒に『ASAYAN』【※】に出たから。

※『ASAYAN』
1992年に『浅草橋ヤング洋品店』としてスタートし、1995年に『ASAYAN』へと改題して、2002年まで放送されたテレビ東京系のバラエティ番組。『浅ヤン』時代は中華料理人やディスカウントストアの社長といった一般人が活躍するお笑い番組だったが、『ASAYAN』へと改題してからはオーディション番組へとシフト。この番組からアイドルグループ「モーニング娘。」が誕生した。

池袋サラ:
 そうそう、『ASAYAN』がヤバかった。

ブンブン丸:
 オレは他にもいろんな番組にチョコチョコ出てたけど。

池袋サラ:
 僕は『ニュースの森』に出ましたよ。夕方5時か6時の。そうしたら、親戚のおばちゃんから電話がかかってきちゃって(笑)。

ブンブン丸:
 あと『GTO』

※『GTO』
『週刊少年マガジン』に連載された人気コミックをTVで実写化した、1998年放送の学園ドラマ。反町隆史氏の演じる主人公・鬼塚がゲームセンターでゲームをプレイする場面では、実際にはブンブン丸氏が操作しており、その手だけが画面に映っている。

キャサ夫:
 手タレね(笑)。ラーメン屋さんに行ったら店主が知ってて、「サインください」って言われたのは誰だっけ?

ブンブン丸:
 それはオレじゃないよ。

『バーチャファイター』鉄人座談会──esportsの名を冠する新作『バーチャ』を彼らはどう見ているのか_025

──そんなふうに、街を歩けば声をかけられるし、電車に乗れば声をかけられる、みたいな状況だったんですよね。

池袋サラ:
 タレントさんやアーティストさんだったら、それも分かるんですよ。ただゲームをやってるだけの人間がこんなに持ち上げられるというのが、僕としてはすごく気持ち悪くて。

キャサ夫:
 『バーチャファイター』って、ゲームをそれまで一切やらなかった人たちが、新規で入ってきた数がもうハンパないんですよ。

ブンブン丸:
 そのへんは、オレはけっこう割り切ったかな。割り切ったというか、ゲーマーの地位をもうちょっと高くしたいなと思いながらやってた。

池袋サラ:
 最初は気分が良かったんですよ。それはそうじゃないですか。ただのパンピーがいろいろTVに出させてもらったりしてたので、最初は気持ちよかったんですけど。でも、とにかくいろんな人に話しかけられて。その中には態度の悪い人とかもいるわけですよ。礼儀のなってない人とかがいっぱいいたんで。あれはツラかったですね。

『バーチャファイター』鉄人座談会──esportsの名を冠する新作『バーチャ』を彼らはどう見ているのか_026

──組手の時もそうですけど、ふだんスポット21とか池袋GiGOに行った時でもギャラリーが、平日でも数十人、休日になると誇張じゃなく100人以上いて。

ブンブン丸:
 スポットは100人じゃないでしょ。店員が2、300人って言ってましたよ。

キャサ夫:
 筐体にたどり着けなかったから。

ブンブン丸:
 僕らは空くけど(笑)。

池袋サラ:
 僕らが行くと、モーゼの十戒みたいにダーッと人の波が左右に分かれて、道ができるんですよ(笑)。それで「どうぞ、どうぞ」みたいに筐体へ誘導されて。

ブンブン丸:
 「まだやる気なかったんだけど」みたいな(笑)。おもしろかったよね。

池袋サラ:
 僕はもともと池袋GiGOでやってたんだけど、「LIVE UFO」で優勝してからは、ほぼほぼ新宿のスポットに行くようになってたんです。でも名前が一応「池袋」なので、たまに池袋GiGOに行くじゃないですか。そうしたら集まってくるんですよ。どこでどういう情報を得ているのか、人がワーッと集まってきて。

『バーチャ』をプレイしている人が「カッコイイ」と言われた時代

──さっきお話が出ましたけど、それまでゲームをやっていなかった人が『バーチャ』を新規に始めたというのは、なぜなんですか?

ブンブン丸:
 『バーチャ』をやってる人がカッコイイっていうイメージが、めちゃくちゃ定着したんですよ。それで一般の人とか、芸能人とかがやるようになって。

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──ゲームが上手い=カッコイイじゃなくて、『バーチャ』が強い=カッコイイ、みたいなイメージなんですね。

キャサ夫:
 画面に映っているキャラクターがカッコイイんですよ。その勝つ様(さま)が。それで「誰がやってんの? あっ、ブンブン丸じゃん」みたいな。

ブンブン丸:
 それが上手い感じにリンクして、相乗効果が起きて、跳ねた。

池袋サラ:
 『ストII』では、そういうのはなかったよね。

ブンブン丸:
 なかった。プレイヤーとしての盛り上がりは、『ストII』もスゴかったんだけど。

──スーツを着た人が格闘ゲームをやっているというイメージがついたのは、やっぱり『バーチャ』からですよね。

池袋サラ:
 そうですね。あと、女の子とかもやるようになって。やってた人は基本的に腐女子なんですけど。

キャサ夫:
 その補足、いる?(笑)

池袋サラ:
 いやいやいや。そこが入口になって、その後から「カレシがやってるから私もやる」みたいな女の子も増えてきたので。

キャサ夫:
 『バーチャ』は女子もけっこういますからね。「『バーチャ』で知り合って結婚しました」っていう人も、けっこうな数いるので。

 当時「ラスベガス」っていうゲーセンが、けっこういろんなところにあったんですけど、そこは『バーチャ』しか設置しなくなったんですよ。1980年代に『テトリス』が大ヒットした時は、「ラスベガス」の店内の筐体が全部『テトリス』になったんですけど(笑)。

──分かりやすいゲーセンですね(笑)。

キャサ夫:
 『ストII』の時もけっこうそうなってたと思うんだけど、『ストII』だけにはたしか、なってなかったと思うんですよね。そんな店が、店内に『バーチャ』しかなかったんですよ。

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──それは『VF2』の頃ですか?

キャサ夫:
 そう。

ブンブン丸:
 新宿には「ゲームスポット21」があったから、そんなに極端ではなかったけど。

ファミ通の記事がきっかけで、新宿西口の「スポット21」が『バーチャ』の聖地に

キャサ夫:
 新宿西口のゲームスポット21が、なんで『バーチャ』の聖地みたいになったんですか?

池袋サラ:
 あれは羽田君(新宿ジャッキー)がファミ通に書いたから。

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ブンブン丸:
 『バーチャ』の対戦台のある店がそもそもそんなになくて。それで羽田さん(新宿ジャッキー)や渋谷(洋一【※】さんがスポットでやり始めて、そこから。

※渋谷洋一
ファミ通の元編集者で、ハイローラー元帥の呼び名でも知られる。ムック本『バーチャファイターマニアックス』などの編集を担当している。

キャサ夫:
 スポットの向かって左に「フロンティア【※】もありましたよね。

※フロンティア
正式名称は「ゲームプラザ フロンティア」。新宿西口で、ゲームスポット21の数件隣に存在していた。

ブンブン丸:
 フロンティアもあったし、「スポラン」【※】もあった。スポランでもやってたんだよ。羽田さん(新宿ジャッキー)が98連勝したのはたしか、スポランだったはず。

※スポラン
新宿に数店舗あったゲームセンター「新宿スポーツランド」の略称。ここではゲームスポット21の近くにあった新宿西口店を指している。2021年現在、同店舗は「クラブ セガ 新宿西口」となっている。

キャサ夫:
 そうなんだ。それはたぶん、誰も知らないぞ(笑)。

ブンブン丸:
 でもメインのゲーセンはスポット、みたいな。

池袋サラ:
 ファミ通でそれを書いたがために、スポットが有名になって。

ブンブン丸:
 そう。オレもその記事を見てスポットに行ったからね、最初は。「対戦できるんだ」って。

池袋サラ:
 しかもあの頃は、雑誌しか情報源がなかったから。

キャサ夫:
 ネットはniftyぐらいだもんね。

ブンブン丸:
 東京BBSとniftyぐらい。

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──町田アテナがあって、スポットがあって、池袋GiGOがあって……

ブンブン丸:
 アテナはもっと後。『VF2』からだもん、あそこは。

キャサ夫:
 そう。『VF2』から。

ブンブン丸:
 町田勢はK.K.雪風ぐらいしかやってなかったんじゃない? 『VF1』は。

キャサ夫:
 一応、オレもやってたんだよ。だから『ゲーメスト』=町田、みたいな。

池袋サラ:
 新宿=『ファミ通』(笑)。でも最終的には、みんな『ファミ通』に入ってるからなぁ。

キャサ夫:
 オレに至っては『ゲーメスト』と『ファミ通』の両方に行ってるから。『ゲーメスト』がなくなる寸前に、1年だけ。

初期の大会は、みんな本名で参加していた

──キャサ夫さんのプレイヤーネームは、どこから来ているんですか?

キャサ夫:
 僕は本名が「佐谷」なんですけど、町田で山岸(勇【※】さんに「はじめまして。北海道から来た佐谷です」と挨拶したら、「キャサリン?」って聞かれて(笑)。そこから「キャサリン」があだ名になったんです。でも、満員の小田急線の中で「キャサリ~ン」とか呼ばれるのが本当にキツくて(笑)。

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 それでその当時、ゲーメストでハイスコアのページを担当していたんですけど、スコアラーネームで「○○夫」っていう人がけっこういて。「イガ夫」とか「カズ夫」とか。それで自分も「キャサ夫」にしたんです。

※山岸勇
1990年代に「ゲームスポットアテナ 町田店」の店長を務めていた。同店で『バーチャファイター』の大会「アテナ杯」を企画・運営し、『バーチャ』の対戦シーンを大いに盛り上げた。山岸氏は2018年より、池袋の「ゲーセンミカド」で店長を務めている。

──K.K.雪風の「K.K.」は?

キャサ夫:
 あれは本名のイニシャルですね。

ブンブン丸:
 「K.K.」はたぶん、スコアラーネームだね。

キャサ夫:
 それで雪風は、彼は軍艦マニアだから。

──ブンブン丸という名前は、雀荘で名前を書く時につけられたんですよね?

ブンブン丸:
 新宿の常連で麻雀を打ちに行った時に、その頃すでに羽田さん(新宿ジャッキー)は新宿ジャッキー、吉嶺さんは池袋サラという名前が定着していて、オレは特になかったんですよ。そうしたら「お前はジャイアントスイングしかしないから、ブンブン丸だ」って。それが由来です。

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池袋サラ:
 オレは誰に言われたのかなぁ。

──そもそも地名+キャラ名を名乗りだしたのは?

ブンブン丸:
 羽田さん。新宿ジャッキーですね。

池袋サラ:
 『ファミ通』の記事に「新宿に強いジャッキーがいるらしいぞ」という記事が出て。

ブンブン丸:
 その流れで吉嶺さん(池袋サラ)も「池袋はサラだ」って言われるようになったんじゃないですかね。

池袋サラ:
 そうかもね。オレは最初、よく分からなくて。

ブンブン丸:
 別に自分から名乗ったわけじゃないですからね。その頃には吉嶺さん(池袋サラ)は「池袋で強いサラだ」というのが定着しちゃってたから。

キャサ夫:
 『バーチャ』はそういう地名キャラがあったけど、『ストII』の時ってありましたっけ?

ブンブン丸:
 ないね。結局『ストII』のブームって『ゲーメスト』が主流だったじゃん。『ゲーメスト』に掲載されていた『ストII』プレイヤーの名前は、そういう形じゃなかったから。『ストII』の時も当然、ベースになるゲーセンはあるのよ。でも当時『ゲーメスト』を読んでいた限りでは、地名で呼ばれていたプレイヤーはいなかったね。

キャサ夫:
 『バーチャ』でそういう地名キャラが出てきて、その後から『ストII』とか他の格ゲーでも、地名で呼ばれるようになったのか。

池袋サラ:
 そういうことだね。

 でも『VF1』とか『VF2』の初めのあたりの大会だと、みんな本名でエントリーしてたんだよ(笑)。

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キャサ夫:
 「LIVE UFO」で優勝した時も「優勝者、吉嶺豊彦!」ですよね。オレも『VF2』の最初の大会は「優勝者、佐谷崇!」でしたから(笑)。

ブンブン丸:
 そもそも初期の頃の『ストII』や『餓狼伝説』の大会は、プレイヤーネームっていう概念がなかったから。前に『餓狼伝説』の昔の大会の映像を見たんだけど、オレも含めて全員本名(笑)。運営がまだ慣れてなくて、本名でしかエントリーさせなかったの。

池袋サラ:
 僕が「LIVE UFO」で優勝した時の記事を羽田君(新宿ジャッキー)が書いた時に、「池袋サラこと〜」みたいに書いたんですよ。それで一気に広まって。

ブンブン丸:
 そうするとカッコ良く見えるんですよ。実際、カッコ良かったんですけど。

池袋サラ:
 「オレ、男なんだけどね」みたいな。それがすごくイヤだったんですよ。当時病んだ理由のひとつに、それもあって。オレは男なのに「サラさん」って呼ばれて

キャサ夫:
 「キャサリン」よりはマシでしょ(笑)。

ブンブン丸:
 「サラ夫」でよかったんじゃないですか(笑)。

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副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。
編集
新聞配達中にトラックに跳ね飛ばされたことがきっかけで編集者になる。過去に「ロックマンエグゼ 15周年特別スタッフ座談会」「マフィア梶田がフリーライターになるまでの軌跡」などを担当し、2017年4月より電ファミニコゲーマー編集部のメンバーに。ゲームと同じぐらいアニメや漫画も好き。
Twitter:@ed_koudai
ライター
過去には『電撃王』『電撃姫』『電撃オンライン』などで、クリエイターインタビューや業界分析記事を担当。また、アニメに関する著作も。現在は電ファミニコゲーマーで企画記事を執筆中。
Twitter:@ito_seinosuke

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