『Virtua Fighter esports』のためだけに、PS5を買いました
──周りの反応はどうですか? 同じ世代が戻ってきているとか、若い人が入ってきているとか。
ブンブン丸:
正直舐めてたんですけど、やったらやったでゲーム自体がおもしろかったから、やっちゃうんだよね。
池袋サラ:
やっぱり完成はされてるんですよ。『VF5FS』のゲームシステム自体はすごく完成されていて、バランスもぜんぜん取れている。
ブンブン丸:
取れてないヤツもいるよ。一部、令和の時代にいちゃいけないヤツも何人かいるから。
池袋サラ:
そうなんだけど、それにも勝ってきている人がいるわけじゃん。
ブンブン丸:
そうそう。
池袋サラ:
だから『ストII』とかもそうだよね。強キャラがいても、最終的には人によって、違うキャラで勝ったりしているから。だからバランスは決して悪くはない。
キャサ夫:
僕は今日、PS4とPS5を買ってますからね。『VFes』だけのために。
ブンブン丸:
キャサ夫が家庭用のゲームを買うって、事件だからなぁ。
キャサ夫:
事件だよね。オレはファミ通で働いてた時ですら、家庭用のゲーム機は持ってなかったのに。
──いつ以来なんですか?
キャサ夫:
PS1ぶりですね(笑)。
──これまでプレイした印象で、新しい人たちは入ってきているようですか?
ブンブン丸:
最近はストリーマーがやってるのを見て流行るから、プロゲーマー連中がけっこうやってるのはいいなと思うけどね。
池袋サラ:
やっぱりね、板ザン(板橋ザンギエフ)とふ~どの力がスゴくて。彼らに影響を受けてやり始めている人は多いと思うよ。
キャサ夫:
『ストリートファイターV』方面とか、『ギルティギア』方面から、人が来ているのは感じますね。
池袋サラ:
『ストV』は『ストV』でちょっと煮詰まってきているじゃないですか。そこでふ~どと板ザンが配信をしていると、やっぱりそっち方面の人がけっこう入ってきているんでしょうね。
ブンブン丸:
それぞれのコミュニティで、最近は横のつながりができてきていますから。ジャンルやタイトルに限らず。それ同士で新しいゲームをやる時の選択肢の一環として、『バーチャ』が普通に入ってきて、「じゃあみんなでちょっと」ってやってる感じですよね。最近だと、かずのことかハイタニ君とか。
池袋サラ:
僕の知り合いが小学校の先生をやってるんですけど、「ゲーマーになりたい」って子どもたちからのアンケートに答えてくれって言われたの。今、多いらしいんですよ。ゲーマーになりたい小学生が。
ブンブン丸:
プロゲーマーとYouTuberですね。
池袋サラ:
今後『VFes』のプロゲーマーが出てくれば、そういう若い子の目も向くだろうし。
ブンブン丸:
現状は同窓会なんで。同窓会と老人ホーム(笑)。我々はそれを楽しめているからいいんだけど。「どうもお久しぶりです」みたいな感じで。
池袋サラ:
ただ、今のプロゲーマーの人たちもやってたりすると「なんだ、なんだ」ってなるし。それで始めた人も多いと思うよね。
キャサ夫:
『VF5FS』の段階で、「家庭用しかやってません」という人がけっこうアーケードに入ってきていて。その中にはけっこう強い人もいるよ。
これから行われる『バーチャ』の大会を、どう盛り上げるのか期待したい
──『VF2』の時に、ぜんぜんゲームに興味のなかった人たちが大勢入ってきた盛り上がりを見てきた上で、今の『バーチャ』に足りない部分だとか、それをもう一回復活させるには、どういうところが求められていると思いますか?
キャサ夫:
それは『バーチャ』の話に限らずだから。単純に、見てスゴさを感じるかどうかの問題で。逆にそれを、すでに『バーチャ』を知っちゃっている人に聞くのは難しい話ですよ。
ブンブン丸:
『バーチャファイター』って、『VF1』『VF2』『VF3』の時は特にそうだったんだけど、新しい技術と一緒に登場したじゃないですか。3Dポリゴンだったり、テクスチャだったり。
キャサ夫:
カードシステムだったり。
ブンブン丸:
今は当たり前にあるものを最初にやったのが『バーチャ』だ、と言っても過言じゃないようなことを毎回やっていたから。そこのインパクトって本当にデカくて。『VF2』のムーブメントは間違いなくそこに乗っかっていただろうし。
キャサ夫:
オレは家庭用のゲームをやっていないから疎いけど、「esports」って部分を言うんだったら、『ストV』とか『鉄拳』とか他にもいろんなタイトルがあると思うんですけど。それらのゲームを大幅に上回った大会であるとかトーナメント方式であるとか、「このゲームってこんなことができるんだ」というものがあればね。
池袋サラ:
もうね、TV番組を作ればいいんですよ(笑)。大会に特化した番組を。そういう番組ってないじゃないですか。今はYouTubeがあるからそっちでやってるけど、それは他もやってるから、TVで流しちゃう。
──さっきの話にもあったように、昔の『バーチャ』ってプレイヤー同士のドラマがあったじゃないですか。
キャサ夫:
それはもう、オンラインでは求められないと思う。まったく知らないっていう人がいないから。いや、いないわけじゃないけど……。
ブンブン丸:
そうなると『VF2』とかの盛り上がりではなくて、ある程度成熟した状態で出す『VF4』みたいな盛り上げ方をしていかなくちゃいけなくて。『VF4』の時は原点回帰して、ゲームの魅力で引っ張っていくみたいなやり方をして。アイテムの効果もけっこうデカかったけど。
キャサ夫:
『VF4』の時もさっきみたいに「プレイヤーに焦点を当てていこう」っていう話があって。それもあってブンブンが言ってたように、新人発掘みたいなこともやろうとして。でもちゃんと転がらなかったんだけど。
ブンブン丸:
結局さ、『VF2』の頃も「あいつを倒して有名になりたい」とか、そういう歪んだ欲望が根底にあったんだよ。ユーザーに。「鉄人を倒して有名になりたい」とか。
キャサ夫:
絶対にあった。一回勝ったら「イェ~ッ!」とか(笑)。
ブンブン丸:
それって今のゲームでもあるじゃん。ウメハラさんを倒して有名になりたいとか、ふ~どを倒して有名になりたいとか。そういうのを今の『バーチャ』で利用しない手はないわけで。
今ってさ、強いプレイヤーを倒したいというよりも、「ストリーマーとして有名になりたい」とか、そういう方向性にスイッチしてるわけじゃん。時代の流れ的に。だったらそこにメリットを見出せばいいわけで。『VFes』をプレイすることである程度視聴数が稼げます、みたいな。もしそうなったら、それこそ有象無象が大量にやってくるので。
池袋サラ:
これから『VFes』の大会があるじゃないですか。そこをセガがどう盛り上げていくか次第ですよ。賞金もないわけじゃないですか。
キャサ夫:
そう、そういうトコだけセガは真面目なんだよ(笑)。でも、現状は盛り上がっているから。
池袋サラ:
今は本当に盛り上がっていて。ランクマ配信だけでも、すごい数があるでしょ。
キャサ夫:
ただ、強い人たちのチャンネルがそれぞれあるんだけど、その人たち同士の対戦が見られないから微妙、って話も聞いたよ。
ブンブン丸:
ランクマで当たった時しか見られないって話でしょ。それなら今時は「コラボしま~す」って一緒にやればいいだけだから。それこそキャサ夫も始めたら、3人で一緒にやればいいじゃん。
池袋サラ:
ブンブンとはたまに10戦の配信をやってるから。
ブンブン丸:
「まだ身体が戻ってない」とか言いながら(笑)。
池袋サラ:
今は乱立している状態だけど、そういうのが今後出てくると思うんですよ。
ブンブン丸:
今はまだゲームが出て一週間じゃん。みんな普通にランクを上げるのが楽しいから、ランクマを楽しんでるけど、それが落ち着いて「ただ対戦するんじゃなくて質のほうを求めたい」って話になった時に、「こいつとやりたい」っていうのが出てくるから。そうなったら上手い人同士の対戦を見るとかも、ぜんぜんアリなんじゃない。
池袋サラ:
今はルームマッチに不完全なところがあるんだけど、それもアップデートでだんだんブラッシュアップされていく【※】と思うので。
※だんだんブラッシュアップされていく
この座談会の取材が行われた6月10日に、ちょうどルームマッチの検索に関するアップデートが配信された。
ブンブン丸:
トーナメントもバグがあるから、さっさと直してくれと思うけどね。<※7月8日配信のVer.1.04にて対応されました。>
キャサ夫:
じつは他の格闘ゲームも一緒の状況なのよ、アーケード版は。だからそもそもの物理的な話で。
池袋サラ:
でも、出てまだ10日(※取材時)じゃないですか。大会までにブラッシュアップしてくれるといいなぁと。僕なんかはもう止めることはないんで。
完全新作ではない『バーチャ』でも、ここまで反響が大きいとは思わなかった
ブンブン丸:
なによりも、思っていたより『VFes』の反響が良かった。そこなのよ。たぶんこれは、セガも予想外だと思う(笑)。
オレの配信を見ていると分かると思うけど、休眠ユーザーの掘り起こしが、相当に上手くいったから。
キャサ夫:
しかもスゴイ同時視聴者数がいるよね。
ブンブン丸:
1000人超えたからね。同窓会で。
池袋サラ:
オレさ、『VFes』が出てからYouTubeで配信を始めたんだけど、もう収益化が可能になったから。
キャサ夫:
へぇ~。オレもやろうかな。
ブンブン丸:
お前は絶対にやったほうがいいよ。だってお前は24時間配信ぐらいできるだろ。
キャサ夫:
48時間稼働の48時間睡眠ぐらいならできるよ(笑)。
ブンブン丸:
自分の配信で「オレはこんなにヘタレてるけど、キャサ夫はまだ現役だから」って相当ハードルを上げてるから、期待に応えてほしい(笑)。
──予想以上というのは、完全新作を期待していた人が多かったわりには、ということですか?
ブンブン丸:
そうですね。実質『VF5FS』なのに、こんなに人が来るんだっていう。
池袋サラ:
そう思ってるのは、ほんの一部なんだよ。実際やれば楽しいんだから。見ても楽しいし。
ブンブン丸:
やれば楽しいのはもちろん分かってるんだけど、こんなに反響があるんだっていう。
池袋サラ:
一般的な反響としては、これが普通なんだと思うよ。
キャサ夫:
細かいことを言うと、『VF5FS』では決まらないコンボが決まるとか、決まっていたコンボが決まらないとか、けっこうあるよね。
ブンブン丸:
やっぱあるよね。
池袋サラ:
それはラグじゃなくて?
ブンブン丸:
いや、この技は1フレ消費がいらなくなったんだ、とかけっこうあるよ。
池袋サラ:
もともとPS3の『VF5FS』って、入力が甘かったんですよ。そのタイミングでアーケードに行くと、出ないの。たぶんラグも考慮して、受付時間が若干長くなってるんじゃないかと思う。
ブンブン丸:
根本のシステムは同じなんだろうけど、そういう、チューニングとも言えないけど……みたいなのがあるんだよね。
キャサ夫:
だからアーケード勢が気にしているのは、今はコロナ禍でできなくなっちゃっているけど、ゆくゆくはビートラ杯(ビートライブカップ)をやるわけじゃん。ビートラ杯をはたして『VFes』でやるのか、それとも『VF5FS』でやるのかっていうことだよね。
ブンブン丸:
それは松田(泰明【※】)さんと山岸さんのご意見待ちでしょう。
※松田泰明
株式会社ユニバーサルグラビティー代表取締役。東京・板橋でゲームセンター「ゲームニュートン」を経営する一方、アーケードゲーム系イベントやesportsイベントの制作も請け負っている。
キャサ夫:
セガさんがやる大会はどうなるの?
ブンブン丸:
あれは基本、オンラインだから。ハイテクランド我が家(笑)。でもプレシーズン以降はまだ分かんないですよね。
自分たちの人生を左右した『バーチャ』が、新たなスタートに向かっている
──そろそろまとめに入ろうかと思っているんですが、やっぱりこうして話していて、みなさん『バーチャ』をやり続けるんだろうなというのがよく分かりました。
ブンブン丸:
復帰したら、やっぱおもしろいわ。
池袋サラ:
愛はありますよ。これだけ文句を言ってて、超やってますからね。
ブンブン丸:
ここ10年でいちばんやってますからね。週7でやってるから。
池袋サラ:
ブンブンは配信を8時間とかやってるからね。
ブンブン丸:
それで会社も真面目に行ってますから。
──この座談会をきっかけに、セガさん公式の企画とかもできてくるといいのかなと。
池袋サラ:
盛り上げるために呼んでくれるんだったら、なんでもやるし。そもそもずっとやってきていたし。
キャサ夫:
なんでもやるよ。
ブンブン丸:
僕の場合は今、ガンホー所属なので……。
──でも『バーチャ』は別腹じゃないんですか?
ブンブン丸:
なので、社長に企画書を見せて出てきてるんですけど(笑)。他のゲームでは難しいところもあると思うんですけど、『バーチャ』に関しては個人的には、できる限り協力したいなと思います。
キャサ夫:
「オレを誰だと思ってるんだ、ブンブン丸だぞ!」とか社長に言わないの?
ブンブン丸:
言わないよ(笑)。
──みなさんと『バーチャ』とのお付き合いも、もう30年近くになりますからね。
キャサ夫:
えっ!? ファミ通で『Virtua Fighter 10th Anniversary』って作ったじゃん。そこからもう18年も経ったの!?
池袋サラ:
だって25周年も、もう3年前だよ。
ブンブン丸:
オレと吉嶺さん(池袋サラ)で合計で100歳超えるんだぜ(笑)。
──では、みなさんにとって『バーチャ』とはどういう存在なのか、改めて聞かせてもらって締めましょうか。
池袋サラ:
自分はもう半分『バーチャ』みたいなものですよ。だって僕は今56歳ですけど、ということは僕の人生のちょうど半分が『バーチャ』に染まっているわけですから。
『バーチャ』に出会ってから人生が凄く変わったし、そのおかげで今があるので。だから感謝しかないですよね。
ブンブン丸:
僕は最近、吉嶺さん(池袋サラ)とけっこう対戦していて。18歳の頃と同じことを、この歳になってまたやってるというのに、驚きを感じます。そういった付き合い方ができるのも、『バーチャ』のおかげかなって。こういう感覚はたぶん、オッサン臭い言い方で言うと、今1世代でゲームを触れている人には体感できないところへ足を踏み入れてしまったなという実感があるので。その環境を自分たちなりに楽しみたいと思います。
逆に自分たちが楽しそうにゲームをやってると、人って勝手についてくると思うので。僕の場合は昔からずっと、そのスタンスでゲームをやっているので、たぶんこれからもそのスタンスは変わらないのかなと。あと、チャンネル登録よろしくお願いします(笑)。
キャサ夫:
カッコ良く言うんだったら、さっきの吉嶺さん(池袋サラ)と同じで、『バーチャ』はもはや人生だよね。だけどコミュニティツールっていうのは、オレの中では最初からずーっと変わらなくて。この2人もそうだし、なんだったらこの場の全員もそうだし、海外の人もそうだし、『バーチャ』がなければ出会うことのなかった人が本当に大勢いて。
自分は30歳の時にファミ通を辞めて、人生の岐路みたいなところに立たされたんですよ。海外へ行くか、実家に帰るか、東京に残るか、あともう一個の選択肢が、大阪の会社に勤めるかだったんですけど。その大阪の会社に勤めるきっかけは、香港人の『バーチャ』プレイヤーとつながったことで生まれたんです。それで大阪に引っ越すことになったので。それぐらい自分は、『バーチャ』というコミュニティツールに人生を左右されたなぁと。それが良いのか悪いのか分かんないですけどね(笑)。
ブンブン丸:
リメイクの『VFes』が今、良い上昇気流に乗っていると思うので。これが反響を呼んで完全新作の『バーチャファイター6』が出てくれたら、その時に『バーチャ』はやっと、esportsとしてのスタートラインに立てると思うんです。だから僕にとってはそこがゴールでもあり、新たなスタートですね。(了)
今回の座談会では、『バーチャファイター』や「鉄人」が社会現象となった1990年代中盤の思い出が語られた。その内容は、当時を知る人には懐かしいものだっただろうし、また当時を知らない10代や20代のゲームファンにとっては、新鮮なものとなったはずだ。
だが今回の記事は、「昔は良かった」という後ろ向きな内容では決してない。なぜなら今回ご登場いただいた3名の鉄人たちは、『Virtua Fighter esports』のリリース直後から、積極的にオンライン対戦に参加し、生配信やそのアーカイブで対戦の模様を多数披露している。その意味で彼らは“元”鉄人というよりむしろ、現役の鉄人と呼ぶべき存在だ。
そして、彼らのようにこれまで『バーチャ』の歴史を彩ってきたスタープレイヤーたちと、今回の『VFes』で初めて『バーチャ』に触れる新しいプレイヤーたちが、オンラインという同じリングの上でいつでも戦うことができるのが、11年ぶりに『バーチャ』が復活した最大の意義だと言えるだろう。かつてのゲーセンで『バーチャ』と出会った人も、2021年の新作として『バーチャ』と出会った人も、ぜひこの機会に自分自身の力を試してみてほしい。
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二人のクリエイターが世代を超えて、ゲームにおける「挑戦」を語り合った。