CG技術や技の滑らかさに魅了されて、『バーチャ』に引き込まれた
──みなさんは『バーチャ』の前に、格闘ゲームをやられていたのですか?
池袋サラ:
僕はやってないです。そもそも僕はゲームプログラマーをやってたんですけど、ゲームがあんまり好きじゃなくて。
──そうなんですか!?
池袋サラ:
ゲームを作るのは好きなんですよ。ただ、ひとりでゲームをやるのはすごくイヤで。だからゲームをやるのも、対戦モノや協力モノはすごく好きなんです。『ストII』とか『桃鉄』とか。
でも『VF1』って技術的にスゴかったじゃないですか。リアルタイムに3Dで動いていて。そうすると、すごく刺さるんです。技術者として。そこから入ったんですけど。
キャサ夫:
オレもゲームはそんなに好きじゃないんだけど、でもゲーマーなんですよ。どちらかというと、ひとつのゲームを極めるというか。
ゲーメストには全国のゲーセンのハイスコアを集計したページがあったから、「九州の○○ってゲーセンの□□には負けたくない」みたいな感じで、いろんなゲームをやっていたんです。『ストII』も最初はハイスコアを目指していたんですけど、それの息抜きに対戦もやるようになって。それで当時、何をやってもライバルみたいな人がいて。そいつに「すげぇ面白いゲームがある」って見せられたのが、『VF1』だったんです。
見てるぶんには超スゲェけど、実際に操作したらぜんぜん動かせなくて。でも、そのライバルには負けたくないから練習して。それでいちばん最初からカゲを使っているんですけど、カゲの一本背負い、ただのP+G投げなんですけど、あの一本背負いと旋蹴りに魅せられて。そこからですね。
池袋サラ:
技に魅せられるというのはあるよね。
キャサ夫:
技に魅せられた人は、かなりいるんじゃないですか。
ブンブン丸:
オレもそうだもん。でも最初はジャイアントスイングじゃないんですよ。
キャサ夫:
違うの!?
ブンブン丸:
最初にデモ画面を見たら、ジェフリーがパワーボムをやってて。そのモーションがめっちゃ滑らかで「うわっ、スゴっ!」と思って。それでゲームをやってみたら、パンチやキックのモーションが超滑らかで。それでマジに感動したんですよ。
ただゲーム的には、最初はそこまで刺さらなくて。やっぱり動かしにくいし。オレはその頃、『ストII』で普通に対戦をやっていたから、「ガードがボタンなんだ」みたいな感じで、ぜんぜん慣れなくて。
キャサ夫:
ぜんぜん慣れないよね。
──今、ちょっとホッとしました。鉄人でも最初はやっぱりその感想がまずあるんですね。
ブンブン丸:
慣れないっていうか、最初から普通の人には勝てていたんだけど、『スーパーストリートファイターIIX』のロケテを探しに行った時に、『VF1』の都内限定の大会をやっていて。せっかくだし腕試しで出てみようと思ったら、上のほうで負けちゃって。それきっかけで、ちゃんとやろうかなと。それでやっているうちに、羽田君(新宿ジャッキー)の記事を見て新宿に行く、みたいな。
──フレームの概念とか、すんなり入れました?
ブンブン丸:
最初はみんな、そこまで意識はしてないよね。有利・不利は見てたけど。
池袋サラ:
なんとなく「この技を出してこの技を出せば、相手は何もできない」というのが、けっこう最初から分かって。それだけで勝てるんですよ。
キャサ夫:
フレームを意識したのは『バーチャファイター3』(以下『VF3』)かなぁ? ヘタしたら『VF4』かもしれない。
ブンブン丸:
だって別に、セガから資料とかは出たりしないから。フレームに関しては。
キャサ夫:
何かの技をガードして、Pだったら勝てる、肘だったら負ける、肘以上膝だったら負ける、とか。だからフレームじゃないかもしれない。
ブンブン丸:
この技で割れる・割れない、カウンターで差し込める・差し込めない、みたいなものを一個一個チェックするというか。
池袋サラ:
あと、あの当時は見えたんですよ、技が(笑)。『VF1』って遅いじゃないですか。
キャサ夫:
『VF1』はね。(秒間)30フレームだから。
ブンブン丸:
30フレームだけじゃなくて、技全体のフレーム数もあると思う。だからある程度、予兆が分かるというか。あと、『VF1』の頃のフレームはムチャクチャだったから。「なんでこの技はガードできて、こっちは不利なんだよ」みたいなのが、すげぇいっぱいあるから(笑)。
池袋サラ:
あるある。
ブンブン丸:
ゲーム的に「この技からこの技にはいけないでしょう」みたいなのは、『VF2』からだから。『VF1』の時は無法だったんで。強い技はホントに強かったので。
──みなさん、メインキャラを変えたりはしていないんですよね?
池袋サラ:
僕以外はみんな、いろいろやると思うんですけど、僕は他のキャラを覚えるのが面倒くさいので。「サラ」って名前がついてるんだから、サラでいいやと。
それに他のキャラを使い始めたら、最初は負けるわけじゃないですか。負けるのはイヤなので。だからずっとサラですね。
キャサ夫:
僕は何度、キャラ変えを考えたことか。でも強いキャラに移ろうということよりも、カゲに対する愛が勝るので。サブキャラはいじるけど、でもメインは変えない。
ブンブン丸:
そうだね。オレも基本はそうかな。
キャサ夫:
『VF2』の大会はこれで、『VF3』はこれで『VF4』はこれって、コロコロ変えて出てくる人もいるじゃない。それはスゲェなって思うもん、逆に。
池袋サラ:
ちび太とかね。あいつはもともとアキラだっけ?
キャサ夫:
アキラ。でもアキラは使っている人が多いという理由で、リオンに変えた。
ブンブン丸:
ちび太はリオンに変えてからはそのままだから、アイツなりにこだわりはあるよね。
鉄人6名の中では、柏ジェフリーがいちばんストイックで強かった
──6人の鉄人の中で、いちばん強かったのは誰なんですか?
池袋サラ:
いちばん強いのは、柏(ジェフリー)かな。
ブンブン丸:
キャサ夫も強いんだけど、純粋な強さだと柏のほうが強いと思う。ストロングさで言うと。
池袋サラ:
柏はストイックだからね。
キャサ夫:
柏は見た目と裏腹なところがあって。今考えると、意外にフレーム『バーチャ』をやってるんだよね。
ブンブン丸:
そう。柏は今で言うところのモラル行動をしてた。
キャサ夫:
『VF2』の話なんだけど、相手にしゃがパン(しゃがみパンチ)を出させてマシンガンニーを決めるっていうのは、柏が見つけてるの。あれはスゴイことだと思う。
ブンブン丸:
『VF1』でオレと柏がよくやってたのは、しゃがパンアッパーって、アッパーをやった時の距離感が、ちょうどしゃがパンがスカるのよ。そこでガードするとアッパーをガードしちゃうんだけど、ノーガードだとしゃがパンがスカるの。そこを下段投げするっていうのを、よく柏とふたりでやってて。それは『VF2』でもできたから。まぁ、ノーガードはあまりにもハイリスクすぎるんだけど(笑)。でも決まると気持ちいいので。
それは抜きにしても、柏は有利・不利をけっこうちゃんと見てたね。
池袋サラ:
隙がないんですよ、柏は。
キャサ夫:
柏の『VF3』の組手は、マジで早かったもん(笑)。
ブンブン丸:
逆に言うと、ウチらみたいにヘンなこだわりがないから。いや、柏の中ではちゃんとあるんだけど、囚われていないから。
──絶対に魅せなきゃいけない、みたいなのがない?
キャサ夫:
ない。1ラウンド3秒(笑)。「早く終わらせたい」って(笑)。
ブンブン丸:
オレで言えば、何も考えないでやったのはいちばん最初の組手だけで。それから後は勝ち負けよりも、どう内容をまとめるかのほうが大事だから。5ラウンドをどう使うかみたいな感じで試合をするから、勝率がけっこう安定しないんだけど、柏は安定してたよね。マジで抑えのエースみたいな感じで。
キャサ夫:
たぶんアイツは、ゲームは上手くないんだよ、絶対に。
ブンブン丸:
上手くない。だって『VF2』の初期とかヤバかったもん。ステップの仕方とか、すげぇ教えた記憶があるから。
キャサ夫:
「えっ、そんな感じなの!?」みたいなプレイもしているんだけど、画面だけを見ているとスゲェことをやってるんだよね。強かった。
──キャサ夫さんもブンブンさんと同じで、魅せるタイプじゃないですか。5ラウンドあったらその5ラウンドをどう使うか、みたいな。
ブンブン丸:
イベントの時は、ですけどね。大会の時はまた別なので。
池袋サラ:
オレはいつのまにか、サマー(ソルトキック)がオレの代名詞になっちゃって。あれはなんでなんだろう?
キャサ夫:
使いすぎなんですよ(笑)。
池袋サラ:
でも『VF1』の頃って、ほとんど使ってないよ。だって『VF1』の頃はサマーが弱いんだもん。というか、他に強い技が多すぎて、サマーなんて打ってる場合じゃなかったから。
たぶん『VF3』とか『VF4』から、サマーが代名詞になったと思う。
ブンブン丸:
『VF3』ぐらいは単発のサマーが強かったから。
池袋サラ:
『VF5』になったら、サマーが弱くなっちゃって。
ブンブン丸:
あれは十分強いって。
池袋サラ:
いや、ジャッキーのほうがぜんぜん強いよ。
ブンブン丸:
それ言ったらさ、ジャイアントスイングはどうすんだよ。
キャサ夫:
たしかにジャイアントスイングはかわいそう。
池袋サラ:
『VF5』の前投げ(バーニングハンマー)はすっごい減るじゃん。ジャイアントスイングと逆だよね。
キャサ夫:
だいたいジャイアントスイングと孤延落に関しては、投げる方向が変わってますからね(笑)。
ブンブン丸:
後ろだったのが前になったし、減らねぇし。
キャサ夫:
『VF2』の時の大門ラウとのアテナ杯でも、ジャイアントスイングを前に投げてたら勝ってないでしょ。
ブンブン丸:
その前に、前に投げるならやんねぇだろ。普通にP+G押すわ(笑)。
新宿勢で京都に遠征して、大門ラウの立ち斜上に衝撃を受けた
──先ほど、京都の大門ラウという名前が出ましたけど、昔は地方のすげぇ強いヤツ、っていうのがあったと思うんです。
ブンブン丸:
まだインターネットがなかったから、地方の中で独自発生することが本当に多くて。
──地域ごとに技術が違うということですか?
ブンブン丸:
基本的にプレイヤーって、上手い人の真似をするじゃん。その地方ごとに上手い人がいるんだけど、そこから遠征してまで技術を持ってこようとする人が、そんなにいなかったから。
キャサ夫:
強いヤツの文化ができあがるんですよ。
ブンブン丸:
たとえば「北海道でジャッキーが強いです」となったら、そのジャッキーの亜流とかジェネリックなんちゃらが出てくるんですよ。北海道はジャッキー・サラだったし。
キャサ夫:
そう、ブライアント兄弟。
ブンブン丸:
京都に行ったら大門の亜種みたいなプレイヤーが大量に出てくるの。
──この地方ならではというので、いちばん衝撃を受けたのは?
キャサ夫:
どう考えても大門ラウ。
ブンブン丸:
だって、オレと柏があんなに負けたの、見たことないもんね。
池袋サラ:
なんで京都に行ったんだっけ?
ブンブン丸:
その前に大門は一回、全国大会に来ていて。その時はまだ、中段キックとかで二択を仕掛けてくるタイプのラウで。「上手いラウだなぁ」ぐらいだったんだけど。でもどっかのタイミングで、大門の友達が立ち斜上【※】を発見して。そこからだね。
※立ち斜上
ラウによるコンボ技。通常はしゃがんだ状態から繰り出す「斜上掌」をしゃがみダッシュ時に入力することで、立った状態から斜上掌を繰り出し、反撃した相手をカウンターヒットで浮かせることができる。本文にあるように京都から全国に波及した。
キャサ夫:
ナチュラル立ち斜上というか、基本レバガチャなんですよ(笑)。なんせ戦ってる途中にガガガッってやったら、立ってる状態で突然、斜上が出たらしくて。
ブンブン丸:
だから操作としてのしゃがみダッシュの発見だよね。
キャサ夫:
で、最初は「何これ、勝手に出るんやけど。ハハハッ!」って、いろんな人をなぎ倒していったらしいんですよ。そのうち、まわりにZAPさんとかブルンブルン丸さんとかいろんな人がいたので、ちゃんと出し方を調べて身につけて。
さっき言ったように、大門ラウが最初に全国大会に出てきた時は、まだ立ち斜上を見つけていなかったんです。全国大会の前日に前夜祭というのがあって、オレは手の内をバラしたくないから、前夜祭は1試合もしなかったんですけど(笑)。それで前夜祭を観戦したら、大門が全国大会に出場しているヤツらを相手に数十連勝してるんですよ。その時の大門ラウは、相手を肘でよろけさせて、状況判断で斜下掌を出して浮かせていたんです。それがすごい強かった。
ブンブン丸:
それも強いんですけど、その強さはたぶんセガの想定内なんですよ。
キャサ夫:
じつはその時は、肘をしゃがみで喰らった時のよろけ回復を、まだ北海道勢しか知らない状態だったんです。だから北海道の2人、相馬ジャッキーと川崎サラだけは、肘よろけ回復を身につけていて。それで、たしか相馬ジャッキーが大門ラウを全国大会で倒してるはず。前日にあれだけ大門が連勝していたのに。
ブンブン丸:
肘よろけ回復、あのあと超練習したもんなぁ。北海道のヤツに聞いたら「肘よろけはそこまで怖くない」と言っていて。あれがなかったら、大門が勝ってるよね、たぶん。
キャサ夫:
しかも相馬ジャッキーが大門を倒してくれたおかげで、オレが相馬ジャッキーを倒して優勝してるから(笑)。たまたまだね、ホントに。
その後で、大門が立ち斜上を身につけて。その噂を聞いて20人ぐらいで京都に行ったんだっけ。オレもその時はスポット21でちょっと仲良くなっていて、「キャノンボールだ!」って、20人ぐらいで東名を車で爆走して。
そうしたら、ブンブンと柏が2人がかりでワーッとやってるんだけど、ぜんぜん勝てなくて。
ブンブン丸:
最初は勝負になったの。3-2ぐらいで負けて。でもその試合だけで、後はボロ負け。
池袋サラ:
オレなんか、5回ぐらい負けたら諦めたから。
ブンブン丸:
早すぎる(笑)。オレと柏の2人で、50連敗ぐらいしたからね。この2人がワンセットでそんなに負けるって、史上初だよね。2人でボコボコにされてるんだから、マジでフリーザだった。
キャサ夫:
オレは大門はけっこう得意で。というのは単純に、当て身があるから。あと、その時に、ブンブンと柏が大門とやってるのをずーっと見てたら、その当時は大門本人も気づいてなかったことに、オレは気づいたんですよ。それは無敵起き上がりで。大門は絶対にその場起きするんです。それに対して技を重ねにいくんですけど、重ねる技がちょっと早くて当たらないんですよ。で、逆に斜上を当てられるっていう。だから大門は、立ち斜上と無敵起き上がりを見つけているんです。本人は自覚していないけど。
ブンブン丸:
ヤバイよね。
キャサ夫:
なのでブンブンと柏が諦めて、代わりにオレが入ったら、起き上がり時にちょっと遅めに肘を出すと、簡単によろめいて。
第3回アテナ杯で、大門ラウとブンブン丸が対決!
──そうやって京都で衝撃の邂逅を果たした大門ラウさんとブンブン丸さんは、1995年6月に開催された第3回アテナ杯のチーム戦で、衝撃の再戦を繰り広げるわけですね。この時の対戦は『バーチャ』の歴史に残る名勝負として、今なお語り継がれています。
キャサ夫:
だってこの人(ブンブン丸)、その後もアテナ杯まで、大門に1回も勝ってないんだよ。それがあんな緊張バリバリの大会で当たって、大逆転で勝っちゃうんだから。
だからブンブンに関しては、もう完全にストーリーが出来上がってたよね。あれは間近で見られて、おもしろかった。
池袋サラ:
しかもあれは、トーナメントの抽選から始まってるんだよね。
ブンブン丸:
「13番(※京都チームと直接対決になる番号)、引きます」とかわざわざ言って。
池袋サラ:
それで本当に直接対決を引いて、しかも自分で勝って。すごいストーリーだよ。
ブンブン丸:
でもあのチーム戦、オレが出る前に終わりそうだったんだよね。ウチのチームのMAN次郎が京都チームのZAPさんを倒して、その次のブルンブルン丸も倒して。MANちゃんがなぜか超ノリノリで大将の大門ラウまで勝ち進んで、なんなら大門も倒しちゃうぐらいの勢いだったんだけど、負けて。次の葛西ラウもいいところまでいったんだけど、P+G中にタイムアップで負け、みたいな。
池袋サラ:
それで出てきたブンブン丸。
キャサ夫:
整いすぎ。
ブンブン丸:
整ったよね、場所が。
キャサ夫:
そんな感じで、実際に京都まで行かないと知り得ないことが、あの頃の『バーチャ』にはあったし。北海道もそうだし、地方ごとにぜんぜん違う。その場に行って対戦して、初めて分かることがありすぎた。そう考えると、今のネットは偉大だよね。
ブンブン丸:
初見殺しのハンパなさはヤバイよね。
──その感じは『VF2』までだったんですか?
池袋サラ:
『VF3』もネット対戦はなかったけど、ちょっと下火になっちゃったから。というか、古参があんまりやらなくなった。
ブンブン丸:
『VF2』の中期以降に入ってきたプレイヤーが『VF3』をしっかりやって。それこそセガールとかの世代が引っ張っていった感じですね。数的には『VF4』でまた復活した感じだよね。『VF3』もスゴかったけどね、闇よだれとかちび太とか、超強かったし。
キャサ夫:
『VF3』も、ずっと最後までやってたら、超スゴいゲームだったらしいっすわ。
池袋サラ:
らしいけどねぇ……。
キャサ夫:
知ってます? 『VF3』ではしゃがんでいる状態から出すしゃがパンと、立ってる状態から出すしゃがパンでは、有利フレームが違うって。……そんなん覚えられっかよ(笑)。
池袋サラ:
理には適ってるよ(笑)。『VF3』はリアルを追求した結果だからね。アンジュレーション(※高低差)とか。
キャサ夫:
オレはそこまでたどり着けなかったですよ。
池袋サラ:
たしかにリアルって大事だけど、そこまでやったら選択肢が増え過ぎちゃって、それでオレとしては「まぁいいや」ってなっちゃったね。もうゲームじゃないじゃん、って。
ブンブン丸:
アンジュレーションはいらなかったね。最後はみんな土俵だったから。土俵か砂漠。
キャサ夫:
たしかに土俵は多かったね。リングアウトもあるし、アンジュレーションはないし。
そんなわけで『VF3』はあんまりやってなかったんだけど、『VF3』の最後のビートラ杯(ビートライブカップ【※】)を見に行ったのよ。そうしたら当日の寄せ集めで大会に出さされて、何もできずにやられたんだけど。でも最初から最後まで大会を見てたらね、『VF3』は10年ぐらいやってたんでしたっけ?
※ビートライブカップ
アテナ杯の流れを汲む形で2000年から開催されている、「バーチャファイター』シリーズの大会。全国のゲームセンターなどが協力して、ユーザー主導で行われているコミュニティ大会であり、今なお多数の『バーチャ』ファンが集結する一大イベントになっている。
ブンブン丸:
5年かな。
キャサ夫:
だから最後の『VF3』の大会を見て「5年ぐらいずっと続けていたらこういう動きになるんだ」と、感動した記憶があって。
ブンブン丸:
さっき名前を言った連中は、ホントにスゴかったよ。
キャサ夫:
『VF3』って、「Ready, Go!」って言う前にもう動けたじゃん。だから「Ready」の段階でもう、相手のほうに走ってんの(笑)。で、「Go!」って言った瞬間に、相手のそばで止まりきれないモーションになってて、すげぇおもしろかった(笑)。
ゲーセンで対戦する感覚は、オンラインではなかなか再現できない
──上手い下の世代が出てきた時は、名前が売れる前から知っていた感じなんですか?
キャサ夫:
ちび太は小学校の時からすでに、突出していた部分があったよね。
池袋サラ:
オレはちび太のこと、あんまりよく知らないんだよね。
ブンブン丸:
だって、そっから町田勢と仲良くなって、すぐアテナのほうに行っちゃったから。
池袋サラ:
みんな仲良くなるじゃない。オレはあんまり仲良くならないから。
ブンブン丸:
一定の距離を置いてましたよね。新宿勢の初期メンバーぐらいじゃないですか。
池袋サラ:
とはいえ、羽田君(新宿ジャッキー)とも別に仲良くはないですよ。強いゲーマーと仲良くなるよりは、普通のサラリーマンとかとご飯を食べたりするほうが楽しいかな、みたいな感じですね。
だって僕は、『バーチャ』を始めたのが30歳ですから。当時10代のブンブンとかと、話がまったく合わないから。
キャサ夫:
そりゃそうですよね。
ブンブン丸:
ただまぁ、鉄人というよりはプレイヤーとして「イベントに出てください」というのは、『VF3』以降も定期的にあって。
──活動としていつぐらいまで、そういった感じが続いたんですか?
ブンブン丸:
『VF4』まではバリバリやってましたね。『VF4』の時は大会の解説とか、そういう立ち位置で。コメンテーターみたいな。
『VF5』の時は、たまに回ってくる感じで。オレは『VF5』では、セクシー齋藤とかと一緒にイベントをやって、新しいスタープレイヤーを発掘する人、みたいな。そっち側ですね。
池袋サラ:
オレは『VF3』で組手はやったかな? 最初の頃はやったか。『VF4』はもうやってないと思う。
キャサ夫:
オレは『VF4』の時もゴリゴリやってるよ。『VF2』の時みたいなノリで、組手をガンガンやってて。それで全国大会の予選に出られなかったの。
ブンブン丸:
オレとキャサ夫がそうだったよね、たしか。
キャサ夫:
『バーチャファイターキッズ』の組手とかもやったよ。「なんでもやらせりゃいいってもんでもねぇぞ」とか言いながら、でもやった(笑)。
──実際に対戦するという意味では、オンラインでの対戦はやっぱり違いますか?
池袋サラ:
相手の顔が見えないからね。ある意味AIとやってるのと一緒だから。
キャサ夫:
知ってるヤツが出てくると「おっ!」と思うんだけど、現状は知ってるヤツが多すぎて(笑)。結局、毎回「おっ!」ってなるんだよね。
池袋サラ:
会話もできないし。
ブンブン丸:
試合だけで完結しちゃうからね。でも「こいつ、強ぇな」と思う人は、ぜんぜん名前を知らない人でもたくさんいるし、おもしろい動きをする人もいるから。
──終わった後に会話できたりとか、そういう現実のゲーセンの感覚を今の『バーチャ』に採り入れられたら、また変わってくるんでしょうかね?
池袋サラ:
どうだろう。『VFes』のオンラインは、『バーチャファイター5 Final Showdown』(以下『VF5FS』)のオンラインよりも、戦ってる感じが逆にないんですよ。『VF5FS』の場合は、戦って負けたらその相手が次のリストに出てくるんですけど、『VFes』はそれがないので。
ブンブン丸:
『VF5FS』は通常のランクマッチだと、自分のランクに近い人が優先的に見えるモードしかなくて。試合が終わってまたマッチングしても、出てくる人がほぼほぼ同じなんです。自分でタイミングをズラして入り直したりしたいと、人が変わらなくて。
池袋サラ:
だからある意味ゲーセンと一緒で、さっき戦ったヤツがとりあえずリストにまた出るから、勝ったら入ってこられるし、負けたら入るしみたいな感じで、ずっと2人でやったりできるんですよ。だから1人を相手に100試合とか、普通にやってましたね。
ブンブン丸:
だから『VF5FS』は、ラグの少ない相手とずっと戦えるんですよ。ラグの酷い相手には次は入らないし、向こうも入ってこないから。
池袋サラ:
『VFes』も前のようなモードが欲しいよね。
キャサ夫:
やっと何を言ってるのか理解した。『VFes』は拒否れないもんね。
池袋サラ:
ただそれができちゃうと、逆に嫌がらせも多くなるから。入ってきて、こっちがOKを押してるのに、向こうは何も押さないとか。キャンセルしても、それをひたすら繰り返してくるとか。
今の『VFes』は相手が先に分からなくて、切っちゃったら負けになる。いいシステムではあるんですけど、ゲーセン感はないよね。