裏サクセスで忙しすぎて表サクセスの記憶がない【パワポケ11】
※『パワプロクンポケット11』
2008年12月、ニンテンドーDS用ソフトとして発売。表サクセスは「新球団ナマーズ編」。新球団にドラフト下位で入団した主人公が、手に入れたランプから現れた魔神に対して「1年目に1軍に昇格」「2年目で年俸5000万」「3年目にリーグ優勝」という3つの願いを伝える。しかし、この3つを地力で叶えないと死ぬ呪いをかけれてしまい、実現のために試練に立ち向かう。
裏サクセスは「怪奇!ハタ人間編」。宇宙人に倫理観を破壊されて操られた「ハタ人間」がうろつく街からの脱出を目指す、学園サバイバルRPG。
キャッチコピーは「たのしさあふれるプロ野球ゲーム!」。
西川:
『パワポケ10』がめっちゃ売れたけど、調子に乗ってこけたっていうタイトルやね。魔神って……(笑)。
萩原:
表サクセスの魔神にイライラした人が多かったかもしれないですよね。「そうでマジン」って、語尾に「マジン」をつける喋り方もイラッとする。
西川:
昔からある知略合戦の3つの願いネタをやってみようと思ったんですけどね。自分で願いを叶えないとアカン呪いをかけられてしまうっていうのが、最悪の展開じゃないかと、昔から思っていたんです。ただ、振り返ってみると、それだけでまるまる1話やるのは無理があったのかなと。ネタがなかなか決まらなくて、苦しくて強引に決めた記憶があるんです。ちょっと早計やったかな。
三浦:
魔神のところ、裏サクセスで忙しすぎて、記憶がないんですよね……。
萩原:
私も……。
西川:
たぶん、裏サクセスの「ハタ人間編」のほうがしっかり作ってたのかも。こっちは映画『ゾンビ』をもとに、だんだん仲間がゾンビになっていく恐怖を描こうと。ただ人間は殺したらアカンやろうということで、ハタを刺されるとハタ人間になって、目の下にクマができたり、本性がむき出しになる。ハタに水をかけると動けなくなるという設定でした。
萩原:
主人公たちが中学生で『ぼくらの七日間戦争』みたいな設定もあって。藤岡さんがゾンビ大好きで、『クリープショー』とか『ドーン・オブ・ザ・デッド』をずっと見せられて「おもしろいやろ?」って言ってたのを覚えてます。
私はずっとホラーをやりたかったんですけど、「これも一応ホラーやで」と丸め込まれた記憶がありますね。
──ハタ人間の食料はハタ人間の死体を加工したものだったなど、映画『ソイレント・グリーン』のようなダークな設定もありました。
西川:
リメイクされるときにはカットされるかもしれへんけど、そこまで重要なポイントではないので。最終的に円盤と巨大ロボットが戦うところがメインかな。あれはかなりびっくりする。
三浦:
ものすごいデータ量でしたね。楽しんで作ったし、完成後も楽しく遊びました。
西川:
でも、売上がイマイチやった……。それで、『パワポケ12』を始めるときに、裏で力を入れすぎたと反省をしたはずやねんけど。
「前作でもっとこうしたらよかったのに」と思っていた部分をすべて詰め込んだ【パワポケ12】
※『パワプロクンポケット12』
2009年12月、ニンテンドーDS用ソフトとして発売。表サクセスは「電脳野球編」。内定先の会社が倒産してフリーターとなった主人公が、とあるオンライン野球ゲームを知る。そのゲームをプレイする友人が失踪したり、パソコンに取り込まれる現場を目撃。友人を探すため、電脳世界と現実世界を行き来して、呪いの野球ゲームの謎を解くため奔走する。トラウマエンディングのひとつ、メロンパンENDは今作で登場。
裏サクセスは「秘密結社編」。『パワポケ11』の「ハタ人間編」をベースに『パワポケ7』の「大将冒険奇譚編」のクエストシステムを混ぜた、クエスト型ファンタジーRPG。中世をベースにした人間と魔族の戦いを描いたダークな世界観で、世界を守る秘密結社の戦いが展開する。
三浦:
その結果、なぜか『パワポケ12』も裏にめちゃくちゃ力が入ったという流れですね(笑)。
西川:
『パワポケ12』の会議の初回で、みんなで最近やったおもしろいゲームを話したあとに反省して、今回の売りはRPGにしようとなった。あれ……? 会議の議事録を見ると、裏サクセスが白熱の議論になって、第21回まで裏サクセス「秘密結社編」の話のみだった。
三浦:
「前作のあの部分、もっとこうしたらよかったのに……」と思っていた部分を『パワポケ12』ですべて詰め込んだんですよね。前作で作り始めたシステムが『パワポケ12』で完成した感じなので、作っていて「いいものが作れた」、「やりきった」と感じていました。
萩原:
ハタ人間から始めたクオータビューの画面や継承されて、グラフィックも洗練されて。
西川:
戦闘システムもこれで完成されたという感じがありましたね。強いて言うなら、難易度が少し高かったかなというのと、例の裏技があったくらいですね。
電脳編のネタは、2回目の会議で決まって。魔神に比べたら話はおもしろいと思うんです。現実世界ではブサイクな男やけど、電脳世界の野球では頼りになる感じの話やったかな。ラスボスで『パワポケ3』の彼女キャラを使ったり、昔のキャラが再登場して不幸になるパターンでした。
最初、渦木(淳二)警部に逮捕されないようにするのがめちゃくちゃ難しいんです。あそこをもう少し簡単にしたらよかったな。間違えた。
山本:
序盤が難しいのは、印象が悪くなった原因かもしれないですよね。
西川:
リメイクではよろしく頼む! あとヒーロー編のやり直しポイントも試合のあとにしよう。あ〜、続きを作ってほしいなあ。そしたら、このあたりの不快な部分が快適になって、評価も上がるはず。そのためには『パワポケR』が売れないと、みんな買って!(笑)
シナリオの下敷きになっているのは大航海時代の探検家、マゼラン【パワポケ13】
※『パワプロクンポケット13』
2010年11月、ニンテンドーDS用ソフトとして発売。表サクセスは「逆襲球児編」。野球エリートの主人公が不慮の事故で握力がなくなり、名門校の分校へ飛ばされてしまう。本校の豪華設備を維持するために予算を奪われる分校で、仲間とともに立ち向かう。
裏サクセスは「海洋冒険編」。伝説の冒険家が隠した宝を求め、仲間と世界の大海原を船で冒険する、クエスト型海戦RPG。『パワポケ11』の「ハタ人間編」と『パワポケ12』の「秘密結社編」をベースに進化を遂げた内容。
キャッチコピーは「うおおおおおおお 激アツ!野球」。
西川:
このころは油が乗り切っていて、いちばんよくできたのは『パワポケ13』やったと思う。『パワポケ14』は開発期間が短くて、どうしても駆け足な部分があったので。
表も裏もサクセスの完成度は高いと思うんですけど、残念ながら売上が良くなかったので、シリーズはいったん休止ということになりました。とくに裏サクセスはいろいろな要素を入れて、ミッションクリア型の、これまでの集大成的なゲームになりました。
三浦:
『パワポケ12』でいったん戦闘システムが完成したと思ったので、『パワポケ13』では少し変えて、リアルタイムバトルにしてみました。回復も無限にできるとおもしろくないので、ひとつのクエストの中で回復できる総量を決めたんですよね。戦闘が終わると回復するけど、総量が決まってるので、うまくやりくりしてください、というシステム。
──船の旅という、資源が限られた環境とマッチしたシステムですね。
西川:
これは『ONE PIECE』の空島編にかなり影響を受けていて。リアルタイムではないんですけど、「あのネタ良かったよな〜」と思っていました。ただ、シナリオの下敷きになっているのは大航海時代の探検家、マゼランです。じつはかなり悲惨な人生で、故郷に帰ってきたらみんなほぼ死んでいたり、彼自身も旅の途中にフィリピンで死んでいる。
──『パワポケ2』の部分で話していただいた、下敷きがあるからこそのリアリティがあるシナリオになっていると感じてします。船の大砲を打ち合う戦闘もありました。
三浦:
じゃんけんのような3すくみに、ユーザーの思考が少し入る余地を入れてみようというコンセプトのゲームですね。
西川:
また新しいゲームを作るにあたって、どうやったらあの時代の海戦を再現できるかを考えました。あの当時は相手の船の後ろのポジションをとったら勝ちなんです。
三浦:
大砲を船の横にしか打てないので、どうやって相手から攻撃されない、かつ自分たちが攻撃を当てられるポジションをとるか。その戦いをアクションで動かすと大変そうやったので、じゃんけんのシステムでどうかとなりました。
──あのゲームをやって初めて、船どうしの戦いでは、後ろをとったら勝ちということを知りました。
三浦:
最終的にあの形になるまで、船の動きを勉強しました。
──野球ゲームを開発しているのに(笑)。
三浦:
横で並走して打ち合うアイデアもあったんですけど、それだと装備の良し悪しだけで勝ち負けが決まってしまうのでボツに。そこで、当時はどんな戦いだったのかを再現する方向になりました。
とはいえ、メインはあくまで世界中を冒険する話で、海戦はあくまでその一部です。
──では続いて「逆襲球児編」について。
西川:
最初はキャラが強くて、そこから弱くなっていくっていうアイデアは以前からあって。今回は、将来を嘱望される選手がケガをして、僻地に飛ばされるという話を下敷きにして、成り上がって復讐を遂げる話です。
──実際の育成画面ではゲームスタート時点からキャラが強いので、「あれ、なんでこんな強いの……?」って二度見してしまうんですよね。
西川:
そこから、ガーンと下がる。
──ダイジョーブ博士の手術に失敗したかのような下がり方で。シナリオだけで表現するのではなく、サクセスのシステムを絡めて表現されるので、かなりガックリ来ました。
西川:
ユーザーを驚かせようと思ったんでね。……『パワポケ11』の魔神も驚かせるつもりやったけどな。裏サクセスに集中しすぎたのかも。リメイクではきっとおもしろくはず。
──『パワポケ11』の後悔がちょこちょこ顔をのぞかせますね(笑)。
「風呂敷をたたまないとアカン」となって禁断の必殺技を出すことに【パワポケ14】
※『パワプロクンポケット14』
2011年12月、ニンテンドーDS用ソフトとして発売。表サクセスは「魔球リーグ編」。小学6年生の主人公が試合中に魔球を投げ、一躍有名に。以降、魔球が溢れるようになったリーグで、世界一を狙うのだが……。シリーズ1作目から続いてきた一連のシナリオが完結を迎える。
裏サクセスの「札侍」は、野球札と呼ばれるカードを使って江戸時代を駆け巡る、野球カードバトルゲーム。
キャッチコピーは「今度のパワポケはド派手!」。
──ついに、最後の『パワポケ14』です。
西川:
最後なので風呂敷をたたまないとアカン、どうしようとなって。
萩原:
で、禁断の必殺技を出すことになった。
西川:
必殺技を使うなら大の大人よりも小学生のほうがいいということで、メガネ3人が大結集して親代わりにした。
──主人公の母親も明言されず。
西川:
私の中では決まっていますけど、それぞれの彼女候補キャラに思い入れがあるユーザーもいるはずなので、明言しないほうがいいやろうと。ただ、確定できないようにはしてるけど、情報を整理すると「この子ではないな」ということがわかったりします。
三浦:
基本的に、次のナンバリング作品が出たときに、なんとなくこういう感じで続いたんやろうとわかる感じだったんでね。『パワポケ14』でいったん終了しているので、わからない状態になっているわけです。
これ、最後の『パワポケ14』の表サクセスのタイトル決めの資料、おもしろそうなので持ってきたんですけど。アホなアイデアを含めて、かなりの量がありますね。
萩原:
あ、ここに快傑ズバットが描いてある。
西川:
「快傑ズバット魔球」…? なんやそれ。「魔球旋風」もあるな。
三浦:
これ、僕のイチオシでした。「決めるぜ魔球最前線」。
西川:
わけわからん(笑)。
西川:
この「0」とか「1」って数字が書いてあるのは、多数決で挙手した人の数やね。「謎の必殺魔球」。「轟け必殺少年野球」。
──三浦さんのイチオシは何票入ったんですか?
三浦:
これは勝手に推してただけなので、投票に進めなかったです。
西川:
結局何になったんやっけ?
山本:
「魔球リーグ編」みたいです。
西川:
この中にないやん!
一同:
(爆笑)
西川:
まあ、ここで終わる前に、本当はこプロ野球編を挟んでゴールに向かう道のりを整えたかったんやけど、余裕がないので仕方ない。売りがないとだめなので、魔球やと。
三浦:
あのシステム、すごく好きでしたね。ランダムに左右されてしまう勝敗に、自分が介入できる。ゲージさえ貯めれば一発逆転できるシステム。
西川:
ホンマ、『パワポケR』には夢がいっぱいやな。幻の「パワポケ15」も作ってほしいけどね。
山本:
そんな新展開もやりたいですよね。
萩原:
「パワポケ15」はやりたいですね。『パワポケ14』のときに「終わりだけど、次はある」と思いながら作っていたのを覚えています。結局ダメやったけど、まだ終わりとは決まっていない。
西川:
でもリメイクがあと14連勝しないとアカンのか。
萩原:
ふたつずつ入れていけば、あと7回。
三浦:
どんどん容量が増えていったので、ふたつずつ、入りますかねえ。
山本:
今回の『パワポケR』でも、『3』まで入れたいとみんなで言いながら、断念せざるを得なかったんです。
西川:
話が進むにつれて、オリジナルからあまり変えなくても大丈夫になっていくはずやから、がんばってくれ!
開発陣にとって『パワポケ』とはどんな存在だったのか?
──『パワポケ11』からは「グッピー(※)」、『パワポケ13』、『パワポケ14』では「センシュクラッチ(※)」が加わるなど、サクセス以外のモードも充実していました。
※グッピー
試合を勝ち抜くことで選手を強くしていくモード。『パワプロ99』の冥球島や『パワプロ2016』以降のパワフェスなど、試合のみで育成するモードのパワポケ版ともいえる。『パワポケ14』ではグッピーはなくなり、「トツゲキ甲子園」が導入。
※センシュクラッチ
最大10枚のスクラッチカードを削って選手を作るモード。完全にランダムでハズレやマイナス得能がつく事もあるが短時間で選手を作れる。スマートフォンアプリ『パワフルプロ野球TOUCH2013』にも逆輸入された。
萩原:
たしか、お手軽に選手を作れるようにしようという感じで作ったんですよね。ここで作った選手はそこまで強くないので、「俺のペナント」にもっていけば、楽しく遊べますよ、と。
そういえば、「俺の基地」ってありましたよね……?
山本:
ありましたね。
西川:
通信対戦でなにかできないかと言われて、一瞬で勝負が決まるゲームを考えたのかな。
萩原:
俺ペナで稼いだお金で基地を作れる。その基地どうしで打ち合って、1秒で決着がつくという。すごい時間をかけて作った基地が、一瞬でパタッと。
西川:
やっぱり戦争はダメやと(笑)。戦争をしたら、それまで積み上げたものがみんななくなってしまうんです。
三浦:
どこで出したんやっけ。
山本:
いま調べたら『パワポケ7』だけみたいです。兵器を扱って対戦するモード。
三浦:
アドバンス時代なんですね。いま言われるまで、存在をすっかり忘れてた。
西川:
作りながらひどいモードやとは思ってたけどね。でも作ったものが一瞬でなくなるようにしないと、「俺ペナ」で稼いだお金の使いみちがなくなってしまうから。お金の使いみちを考えた結果、基地を作るんやとなって、戦争をして、潰れる。
──さて、約3時間に渡ってシリーズを振り返ってもらいましたが、最後に、『パワポケ』シリーズとは、みなさんにとってどんな存在だったのかをそれぞれ語っていただきたいです。
西川:
やっぱり、遊んでくれる人に喜んでもらいたいと思って作っていたので、その意味ではサービス精神溢れるゲームやと思います。
自分にとっては……いうなれば、なぜゲームをするのかということですよね。テーブルトークでは、ゲームマスターは世界そのものであって、プレイヤーを楽しませる立場です。僕にとって『パワポケ』は、テーブルトークのマスターをやっているときとそんなに変わらないものやったと思います。
ユーザーを楽しませる道具であり、自分もそれを楽しんでいたという感覚です。あともちろん、メシの種ではあります(笑)。
萩原:
前にもお話したかもしれないですけど、人生そのものです。このチームで、ゲーム作りを通して、いらない知識も含めて、いままで知らなかった世界を教わりました。若くて重要な時期を、それこそ人生の半分くらいは『パワポケ』で過ごしたので。
──変な絵を描きたくて入ったチームで、とくに印象に残っているイラストはあるのでしょうか。
萩原:
……全部です。キャラクターもUIも、すべて。選べないです。
西川:
ゴキブリとシロアリが合体してるやつは?
萩原:
あれも好きですけど(笑)。
三浦:
僕は昔からゲームを作るのが好きで、小さい頃からアナログのカードゲームやボードゲームを作ってはみんなで遊んでいたんです。もちろん、きっちりしたものではなくて、画用紙に描いたレベルでしたけど。
中学時代にテーブルトークで遊ぶようになり、物足りないから自分でルールを作るようになって。その後、テレビゲームに興味を持って会社に入りました。新人として入った『パワポケ』チームは、自分が心からおもしろいと思えるものを表現できる環境でした。
いわば、デジタルゲームで自分を表現させてもらった場なので、すごく大切なタイトルやと思っています。
山本:
三浦さんと近い内容になってしまいますが、僕にとっても理想のゲーム制作の場でした。いまは大人数になってできないこと──プログラムを作って、シナリオを書いて、プランニングもして──ができたのは、本当に貴重な場だったと思います。
いろいろな職種に触れられたことで、いまプロデューサーという立場になって、経験が生かせているので、素晴らしい作品でした。
──その経験を経て担当されているのが『パワポケR』ということですね。今回の鼎談で「みんなが買ってくれたら続きが出るぞ!」と伝わったと思いますので、つぎのリメイク作が登場することを期待しています!(了)
『パワポケ』シリーズの攻略本である『パワポケ完全公式ガイド』シリーズには、開発陣の座談会が載っているものと、載っていないものがある。そして最終作『パワプロクンポケット14 公式パーフェクトガイド』には掲載されていないため、公の場で開発陣がシリーズ全体を振り返ったインタビューは存在しない。その意味では、普段は陳腐ゆえに避ける「あなたにとって〇〇とは」という質問を、あえてぶつけてみたのだが、意味は小さくないと思う。
“『パワプロクンポケット大全』のネット版”というハードルを超えられたのかはわからないが、これだけ尖った作品を作り出した開発チームの雰囲気やシリーズに対する熱い思いが、『パワポケ』を愛するユーザーたちに届けば幸いだ。
そして、『パワポケ』をプレイしたことがない人にとっても、興味深い事実があったはず。それは、熱意やイズムを共有した一定以下の少人数で、自分の裁量で仕事をすることによってのみ、尖った作品が生み出され、ユーザーの心に残る体験が実現するということ。
『パワプロ』という超人気タイトルの派生作品が、一時期の携帯ゲーム機で作られたという絶妙なバランスによって、それが成り立っていたということだ。
奇しくも現代のインディーゲーム業界では、スペックを絞って少人数による制作を行うことで、尖ったタイトルが生まれ、世界的なヒットに結びつくこともある。そういった事象と重なる部分は大きいうえに、熱意とイズムを共有した者たちで作ることの価値は、どんな業界でも同じなのかもしれないと思わされた取材だった。
そして最後に、少しでも“幻の15作目”実現のために、この記事がきっかけで『パワポケR』を手にとってくれる人が、ひとりでも増えることを願う。