『パワポケ』はなぜこんなにも尖っているのか? 極秘資料とともに開発陣が語る開発哲学と『パワポケ』らしさ

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『パワポケ12』は22回目の会議まで裏サクセスの話しかしていなかった

――もう少しだけ『パワポケ』らしさについてお聞きしたいのですが、過去のインタビューで『パワポケ』はシナリオが売り物だから、ゲームモードの選択画面でも「サクセス」がいちばん左上に配置されているというお話がありました。そのほかに、そういった意識が現れていた部分はあったのでしょうか。

西川:
 ああ、例の話を忘れてましたわ。開発に関して、表サクセスができて、余った時間に裏サクセスを作っていたと思われているんですが、そうじゃなかったパターンもあったんですよ。

 『パワポケ12』の資料を見直してみたら、全33回の会議のうち、1回目から20回目まで、毎日裏サクセスの話しかしていないんです。22回目の会議でようやく表サクセスの話が始まっている。

三浦
 あのときはみんな「秘密結社編」に興味がありすぎて、その話しかしたくないモードになっていたんですよね。

西川:
 2ヵ月が経ってようやく「あ、表サクセスどないしようか」と。21回目でいろいろとアイデアを出して、22回目で「謎の野球ゲーム」と決まってますね。表の「電脳編」は速攻で決まってる。時間がなかったから(笑)。

※画像挿入

山本:
 「魔法編」というアイデアもありますね。魔法編はアイデアとしてはいつも出てくるけど、結局最後までやらなかったですね。

萩原:
 すごい。ここに裏サクセスの仕様が大きすぎたゆえの「納期の遅れ」という反省点が第1回会議で書いてあるのに、結局20回目まで裏の話をしてたということですね。反省がまったく活かされていない、これはひどい(笑)。

――チームの雰囲気がぎゅっと凝縮されたスライドですね(笑)。

西川:
 『パワポケ11』でひどいめにあったのに、なぜ同じことを……。攻略本の校正や他の作業、他のタイトルの手伝いをしながらこの会議をやっている期間なんですけどね。

三浦
 結局めちゃめちゃ大変でしたよね、『パワポケ12』は。でもめちゃめちゃおもしろかったな。

萩原:
 おもしろかった。

西川:
 開発しながら、自分でも遊んでたなあ。「このトカゲ、つえ〜」とか言うて。

――サクセスのシナリオを考える過程で、どのタイミングで野球と結びつけるのでしょうか。

西川:
 まずテーマを考えて、あとからなんとか結びつける。

萩原:
 「やきゅう……? なにそれ、おいしいの?」なんて言ってたときもありましたね(笑)。ただ、大前提は野球ゲームだから、野球のルールからは絶対に外れたらアカンという鉄の掟もありました。

 藤岡さんは部活で野球をずっとやっていた方なので、冗談で「野球はいったんおいとこう」と言いつつ、野球には真剣に向き合うという大前提がありました。

西川:
 確かに。『パワプロ』で女性選手がプロチームに入る設定ができたとき、『パワポケ』ではほとんど出しませんでした。小中学生ならOKだけど、プロの女性選手はいませんでしたから「リアルな野球ファンたちから見てリアリティがない」とよく言っていましたね。

――リアリティのラインをどこに置くかということですね。サイボーグや超能力者が出てくる点については、どう捉えていたのでしょうか。

西川:
 サイボーグや超能力者は探したらおるかもしれへんと(笑)。悪魔の証明ですけどね。

萩原:
 ちょっとは真面目な部分もあったんですよね。結局『パワポケ14』でやってしまったけど、魔球や必殺技も絶対にアカンと言っていましたよね。

西川:
 「まあ、最後やからええやろ」と思って、やってしまいましたね(笑)。

――現実を超越した者たちが出てくるけれど、高校野球、社会人、プロ野球と大枠の部分はあくまで『パワプロ』からの型を崩さずに続けていたことも印象的でした。

西川:
 『パワポケ3』を作ったときに、『パワポケ4』からはローテーションでいこう、となったんです。ガンダーロボを2回出したら、3回目も出さなアカン気がするっていうのもありますし。

――産みの苦しみでいうと、どのタイトルがもっとも苦労したのでしょうか。

萩原:
 50回くらいまで会議をやったときがありましたよね。

三浦
 『パワポケ14』かな。開発期間がいつもより短かったので、かえって難しかったんですよね。

萩原:
 ネタも出尽くして、みんなが納得してやりたいものがなかなか出てこなかった。

西川:
 もういったんシリーズが終わることは決まってたんですが、いつかまた続編があるかどうかはわからへんから「勝手に終わるつもりでいるな?」と言われていました。

 開発期間は短いけど、質を下げないためにどうしようかと。裏の「札侍編」、大変やったなあ。めちゃめちゃたくさんテストをしたよな。

三浦
 本当に大変でしたけど、作ってるときはめちゃくちゃおもしろかったですよね。まずは遊びが成立するのか、リアルのカードを作ってプレイしたのを覚えています。

『パワプロ5』で感じたサクセスの可能性【パワポケ】

――ここからは第1作目から14作目まで、セルフライナーノーツのような形式で、各作品を振り返ってもらいたいと思います。まずは初代の表サクセス「極亜久高校」から。前回の記事でも語ってもらいましたが、『パワプロ5』に出てきた悪役の極亜久高校の視点で描かれたシナリオでした。

※『パワプロクンポケット』
1999年、ゲームボーイカラー用ソフトとして発売。収録シナリオは「極亜久高校編」。『パワプロ5』の外伝であり、本編では悪役だった極亜久高校へ主人公が入学し、野球部を立て直して甲子園を目指す。その影では謎の組織が暗躍しており、展開によっては彼女キャラが死んだり、NTR要素があったりと、のちのシリーズに続く独自色が色濃く見られるシリーズ1作目。
キャッチコピーは「いくぜ甲子園! めざせ、プロ野球!!」。

西川:
 改めて説明すると、『パワプロ5』で初めて高校野球のシナリオに挑戦して、ストーリーを強くしたサクセスを作って、まだまだ可能性が広がると感じていたことが前提にありました。僕が中心になって作っていた当時、周りからは「パワフル“プロ野球”なのになんで高校やねん」とボロクソに言われましたが、なかなかうまくいった。

 そこで藤岡さんから「高校とプロだけじゃなくいろいろやったらどうや」と言われて。これで成功したらあと10年はいけるなと思っていたら、それどころじゃなかったですね(笑)。

 そんな話をしていたら、上から「君たち『パワプロ』チームから外れてゲームボーイで作りなさい」と言われて、「あれ?」となり……。ゲームボーイでアクションは無理だから、ストーリーがメインのゲームにしたらいけるやろうということで、『パワポケ』が始まった、という流れです。

 そこで『パワプロ5』の話を引き継いだらキャラも流用できるし、極亜久高校の外藤侠二(がいどう・きょうじ)【※】がボロクソに言われていたので、彼にも理由があったかもしれへんやろうと、善人として描いた。

※外藤侠二(がいどうきょうじ)
『パワプロ5』以降、『パワフルプロ野球』シリーズ及び『パワプロクンポケット』シリーズに登場。極亜久商業(のちに極亜久高校に変更)の主力メンバー。サクセスでは主人公に対する妨害工作を行い、ケガをさせるような危険行為もある。また主人公のライバルキャラのひとりである猪狩進が、外藤のしかけたバナナの皮で転んで、クルマにはねられる展開もあった。

 あと、いま思い出したんですが、猪狩進【※】に関しても、交通事故に遭ったあとになにもフォローがなかったので、少しフォローしようかと思って野球マスクとして活躍させました。そのあとに後遺症に悩んでいるから、結局救われてないか。

※猪狩進
『パワプロ5』以降、『パワプロ』シリーズおよび『パワポケ』シリーズに登場。あかつき大附属高校のキャッチャー。ライバル校ながら主人公とふたりでゲームセンターに行ったり、トレーニング方法を語り合う関係。外道のしかけたバナナの皮で交通事故に遭い、秘密結社プロペラ団に拉致されて改造手術を受け、野球マスクとして主人公の前に現れる。

――その後、野球マスクは『パワプロ』シリーズに逆輸入されましたよね。

西川:
 はい、ただ髪の毛が緑色になっていて、びっくりしましたけど。1作目がそこそこ売れたから『パワポケ2』ではシステムをそのまま使えるということで、浮いた時間をどうするか考えていたときに、さきほど言ったように藤岡さんが凡田の日本兵姿をいたずら書きして。それがあまりに似合いすぎていたので、会議に参加していた全員が「これや!」と。戦争ネタに関しては、僕が喜んで書きました。

テーブルトークRPGのゲームマスターの経験で培われた作家生【パワポケ2】

※『パワプロクンポケット2』
2000年にゲームボーイカラー用ソフトとして発売。表サクセスは「ドリルモグラーズ編」。万年赤字の弱小チームを切り捨てようと、突然のリストラなど横暴の限りを尽くすオーナーのもとで、主人公たちが日本一を目指す。
裏サクセスは「戦争編」。悲惨な戦争の中、主人公が補給部隊の一員として北方戦線、西方戦線、南方戦線など、危険度の違う戦地を奔走し、200週まで生き延びることを目指す。ちなみに、藤岡氏は200週クリア未達成。公式ガイドによると、100人挑戦してひとり生還すれば良いほうだったという。

──『戦争編』に限らず、『パワポケ13』の「海洋冒険編」など、現実味のある描写が多いですが、もともと歴史モノがお好きなのでしょうか。

西川:
 はい、僕は歴史モノが好きなので、そういう趣味がシナリオに反映されているところはあると思います。ファンタジーやSFの世界観でも、実際に生活している人たちは綺麗事では済まない部分があるはずですよね。

 「海洋冒険編」ならビスケットに虫がわいたり、大砲を打ち合って鉄球が飛んできて、人間に当たると一瞬でジャム状態になる。そのあたりはネタが決まったあとで、文献を調べたうえで、かなりマイルドにしてテキストに落とし込んだ記憶があります。

 テーブルトークRPGが好きでよくマスターをやっていたので、そういう描写をするクセがついているというか。プレイヤーたちは、ゴブリンが何を食べているか、みたいな情報をけっこう喜ぶんですよ。

──その趣味が『パワポケ』の世界観を形作る作家性となっているわけですね。とても腑に落ちました。テーブルトークRPGは昔から好きなんですか?

西川:
 そうですね。いまでもときどきネットでやっています。『ダンジョンズ&ドラゴンズ』、『ローズ・トゥ・ロード』など、いろいろと。その経験はシナリオにも多少は活きているかもしれないです。

 たとえば、『トラベラー』というSFのゲームが、妙にリアルで嫌なところがある。「二等くじ」というものがあるんですけど、これは宇宙船に乗る際に一等船客には船室があるけど、二等船客は冷凍されて貨物室に詰め込まれることになっているんですね。ただ、技術が完ぺきではないので、そのうち何割かは起きてこないんです。

──おそろしい……。

西川:
 二等船客は全員が「二等くじ」を買っておいて、これがなにかというと、起きないで死んでしまった人の財産を、生き残った人が分けるためのくじなんです。その財産を持って新しい世界の元手にすると。

 なんかありそうと思わせる、妙なリアル感がありますよね。こういう設定があると、ユーザーが喜ぶ。そういう経験はベースにありますね。

──『パワポケ10』の「装甲車バトルディッガー編」でも、第二次世界大戦を下敷きにしてあり、戦争ネタが存分に書き込まれています。

西川:
 やっぱり戦記物は好きですね。最初は「ゼロ戦ってかっこええ」、「T34重戦車が強そう」と読みだしたら、「戦争ってひどいなあ……」と。

 趣味の世界ですけど、T34は大砲を撃ったあと、振動が収まるまでどうせ撃っても弾が当たらないから仕方なく体当たりをする、とか。口径が違う弾をライフルに詰めて打ったりとか、冗談のようなホンマの話がいくらでもあるんですよ。

──ちなみに「戦争編」を取材をするにあたって数時間やりましたが、クリアできませんでした……。

西川:
 ゲームボーイのときに比べたら、『パワポケR』では生き残る確率がかなり良くなってるはずですけどね。

山本:
 『パワポケR』の戦争編では最初のツキが上がっているので、過去作よりは序盤で死にづらくなっていると思います。とはいえ、中盤以降の難度は変わっていないので、なかなか難しいかもしれません。

西川:
 過去作は、そもそもクリアさせる気がなかったんですね。『ウィザードリィ』でロストするのが当たり前だと思ってる世代の年寄りが作っていたので(笑)。運良くクリアした人は、この一枚絵を見て楽しんでねっていう。いまのユーザーには合わないと思うので、そこは山本くんがうまくリメイクしてくれたと思います。

──表サクセスの「ドリルモグラーズ編」について、いかがでしょうか。

西川:
 順番が前後するのですが、『パワポケ3』からゲームボーイアドバンスになって若い人が増えたので、チームの雰囲気がだいぶ明るくなったんですよ。そこと比べると、『パワポケ2』のころは年寄りばっかりで「給料が上がらへん! モグラーズめ!」と嘆きながら作っていたので、シナリオも凄惨な部分が多い(笑)。

──ドリルモグラーズ編は、球団の悪徳オーナーが好き勝手やって現場が疲弊するという話でした。自分たちの状況を当てはめる気持ちで作っていたわけですね。ミニゲームで失敗すると、選手がどんどんチームを去っていき、試合に勝てなくなる。

西川:
 まさに貧すれば鈍するという状態です。このシナリオでは、会社の鶴の一声で、部下たちが右往左往する……というのがやりたかった。あの経営者はひどいですよ。急に「2軍は全員クビ!」と言い出したりする。

 彼女イベントも、リメイクのタイミングでシナリオを見返してみると、「うわぁ……」となりました。だから初代『パワポケ』と『パワポケ2』からリメイクされることに危惧はありましたね。『パワポケ3』以降のほうが一般受けするんちゃうかと。ただ、過去作に触れた人のことを考えると、あんまり変えられないから。

山本:
 これまでのあらすじを用意しても、ニュアンスが伝わらないですからね。

「ゲーム業界はこんなところ」というイメージ通りだった理想の職場【パワポケ3】

──では『パワポケ3』からチームに加わった萩原さんと三浦さん、当時はどんな雰囲気だったのでしょうか。

※『パワプロクンポケット3』
2001年3月に発売されたゲームボーイアドバンス用ソフト。表サクセスは「サイボーグ編」。事故死した主人公がサイボーグとして蘇生され、人間の体に戻り、記憶を取り戻すための資金を集めるべく、野球の闇大会に潜入する。初代『パワポケ』〜『パワポケ3』は「プロペラ団三部作」と呼ばれている。パーツを集めて能力が上がるシステムが導入され、のちのシリーズにも引き継がれることとなった。アルバイトをしてパーツを買い、能力を上げるという、野球ゲームなのに練習をしない異色の仕組み。
裏サクセスはマインスイーパー系ゲームの「ドキドキ地雷パニック」。以降、新ハードに移った際には地雷ゲームがお約束となる。
キャッチコピーは「手のひらにおさまる本格野球ゲーム!」。

三浦
 入社して最初のプロジェクトだったので、「社会ってこういうところなのかな」と思っただけなんですよね。

萩原:
 私は最初、バスケットボールのゲームを作るチームに配属されて。チームの人たちはみんな優しくていい人たちだったんですが、ゲーム的にあまり興味を持てなかったんです。「あ〜、なんか変な絵、描きたいな〜」と思っていたら、藤岡さんが「変な絵、描けるよ」と拾ってくれました。

 もともといたチームは普通にきれいなオフィスだったけど、『パワポケ』チームのところに行ってみると、机の上にわけのわからんフィギュアや資料が大量に積み上がっていて……。
 よく世間で「ゲーム業界はこんなところ」ってイメージされる散らかった空間があるじゃないですか。それが、部屋全体に広がっていて……。

 「うわ〜、ここ理想や!」と思ったのを覚えています。

一同:
 (爆笑)

西川:
 嫌そうな言い方しとったのに、理想やったんかい(笑)。

三浦
 でもわかる。まさに想像してたゲーム業界のイメージ通りやったから、僕も「ああ、やっぱりこんな感じなんや」って思いました。

──そして「変な絵を描きたい」という願いも早々に叶っていくと。『パワポケ3』はサイボーグの主人公が生きるためにアルバイトをするシーンが多いので、イラストのバリエーションも豊富でしたよね。

萩原:
 野球とも関係ない、流しでギターを弾いたり、花を売ったり、警備員をしたり、ドリルを手につけて穴を掘る……。描いていて、楽しい!

三浦
 『パワポケ3』はサイボーグならではのめちゃくちゃな感じがありますからね。原子力発電機とか。

萩原:
 荒井3兄弟が「キムチを入れてみるんだなぁ〜」と主人公の口のなかにキムチを詰めて、バチバチ……と壊れてしまうとか。

西川:
 水の中に沈んでゲームオーバーとかね。まあ、そのあたりはリメイクの際にうまくやったってください(笑)。

絵やシステムをカットしてテキストベースで展開できるからすごろく形式を採用【パワポケ4】

──続いて、『パワポケ4』について、お願いします。

※『パワプロクンポケット4』
2002年3月、ゲームボーイアドバンス用ソフトとして発売。表サクセスは「日の出高校編」。本土から離島に引っ越してきた主人公だが、慰霊碑を倒して呪われてしまう。野球の試合に負けると部員が消滅していき、最後には自分が消えてしまう神隠しに遇うハメに……。呪いを解く唯一の方法である甲子園出場を目指して、弱小野球部を立て直していく。
裏サクセスは「RPG風ファンタジー編」。キングダム王国に使える勇者となって、野球をやるために作られたゴーレム「野球人形」を作るべく冒険に臨む。過去作品のキャラクターが登場したり、表のキャラが別の性格や役回りで登場するといった、裏サクセスの基礎が形作られた。
キャッチコピーは「ゲームがもりだくさんだ!!」。

西川:
 『パワポケ3』でひと区切りついたので、全然違うことをやってみようとなって、のんびりした島でホラー調でいこうと。1作目のように仲間集めをやろうとなり、バラバラだった仲間を呼び戻していくけども、試合に負けるたびに人が減っていく……。

 「増えるだけじゃなしに減ることもあるんかい」と思って作っていった覚えがあります(笑)

──そして最後には自分も消えてしまう……という。

西川:
 呪いで消えてしまうっていうね。いつもなにかインパクトがほしいと考えて、写真から人が消えて、その存在すら忘れられたらおもしろいかな、と。バッドエンドの場合は、最終的に、周りの人たちが「なんでこんなところに部室があるんや」と疑問に思う、悲しい終わり方。

 印象に残っているのは、裏サクセスで初めてファンタジーを作ったことですね。

──SFとファンタジーが多いですよね。

萩原:
 みんなファンタジーがけっこう好きだったんですけど、藤岡さんだけは西洋のファンタジーが大嫌いだったんです。『パワポケ4』の裏サクセスも某国民的RPGみたいな王道を……という話で説得したのかな。
 私はずっとRPGが作りたくてゲーム業界に入ったのでうれしかったけど、藤岡さんは微妙な顔をしていた気がします(笑)。

三浦
 僕はテーブルトークRPGのファンタジーをイメージしてテキストを書いてましたね。

萩原:
 グラフィック的には定番のRPGのように、マップがあって、戦闘があって、という世界観で絵を書いてみようと進めていました。

西川:
 すごろく形式のRPG、新鮮でおもしろかったなあ。

三浦
 なんですごろく形式になったんやろう。元ネタがあったんですかね。

西川:
 当時、会社にゲームで遊べるコーナーあったよね。ひょっとしたら、ボードゲームを見て、ひらめいたのかも。

三浦
 僕らが入社したときは、そういうコーナーはなかったと思います。

萩原:
 経緯は覚えていないですけど、簡易にRPGを表現できる方法としてああなったんじゃないですか。私はホンマのRPGを作りたかったけど、時間がないと言われて。

西川:
 表サクセスのシステムを流用して作れる範囲がこの形だったのかな。すごろく形式にすると、マップ移動の絵やシステムをカットして、テキストベースで作れるので。

三浦
 そうそう。練習するコマンドの代わりにRPGのマップで動く感じで。

萩原:
 マップもふざけた名前つけてましたよね。チャーチ教会、クリフの丘、キングダム王国……。

──ほぼ全員がプログラムも企画も理解しているので、この形ならできるという意思疎通が早いわけですね。

三浦
 そうですね。振り返ってみると、そういう利点に気づきますが、当時は必死でがんばっていただけでした(笑)。

西川:
 このあたりから、最後の敵はガンダーロボっていうお決まりの流れができた(笑)。

三浦
 毎回姿を変えてね。お決まりって大事ですから。

『三国志』好きなスタッフがいたから「忍者戦国編」が生まれた【パワポケ5】

※『パワプロクンポケット5』
2003年1月に発売されたゲームボーイアドバンス用ソフト。表サクセスは「大神モグラーズ編」。『パワポケ2』の「ドリルモグラーズ編」の続編であり、懐かしのキャラが多数登場。球界のスターが万年2軍の選手と廊下でぶつかり、中身が入れ替わってしまう物語。
裏サクセスは「忍者戦国編」。前作の「ファンタジーRPG編」を進化させた、三国志風RPG。初心者用の「水虎」、高難度の「火竜」、さらに難しい「月光」のいずれかの陣営に属し、戦いに参加する。陣営によって仲間に出来るキャラも変わってくる。
キャッチコピーは「ゲームがいろいろ盛りだくさん!!」。

西川:
 次は『パワポケ5』ですね。あれは映画『転校生』の定番ネタ、体が入れ替わる話。主人公が2軍から成り上がるだけじゃおもしろくないから、1軍のスターが2軍の選手と入れ替わってどん底からスタートするという流れはすんなり決まった気がします。

 そして、このあたりから裏サクセスにかなり力が入ってきた印象がありますね。前回はRPGだったから、今回はシミュレーションにしようということで「忍者戦国編」。
 魏・蜀・呉みたいに3つの国に分かれて、難易度が違う。蜀は難しいけど、強い選手ができるって話にして。

萩原:
 あれは力入れてましたね。『三国志』が大好きなスタッフがいたので。

萩原:
 『三国志』みたいにパラメータがたくさんあると、子どもたちが理解できないから、簡単にとっつきやすくしようと話してましたね。

西川:
 火の国の爆弾忍者を使った戦術が好きやったな。超・非人道的な下忍の命を消費する作戦で、たしか下忍100人を消費すると、エンディングで大量の幽霊に取り憑かれるひどいエンディングになる(笑)。

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ライター
毎日ウルトラ怪獣Tシャツを着ているフリー編集・ライター。インドネシアの新聞社、国会議員秘書、週刊誌記者を経て現職。意外なテーマをかけ合わせた企画とインタビューが得意。守備範囲は政治・社会からアイドル、スポーツ、お笑いなどエンタメまで。30歳を超えてなお、相変わらず「マリオ」「ドラクエ」「パワプロ」「スパロボ」「ロックマン」の最新作をプレイしている現状に、20年前から精神年齢がまったく変わっていないことを痛感している。
Twitter:@mori_yusuke
副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。
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