『桃鉄』は最初の5分で「これもう負けるの確定だからつまらないー」とならないのがいい
『桃鉄』のおもしろさをもう少し具体的に聞きたいんだけど、どういったところが楽しいと感じるのかな?
最後まで勝ち負けがわからないところ。
えー、このあいだ対戦したときは最初のほうで、もうほとんど勝負ついてたじゃん。
あれは3年決戦だったから。でも、ボンビーをなすりつけたり、シンデレラカードが出れば逆転できたし……。
あと、『桃鉄』はキャラがかわいい。
えー、スリの人(スリの銀次)、気持ち悪いじゃん(笑)。
「いやーん」(ブーイング機能)も気持ち悪いよね(笑)。あと、オナラマンとかボンビーとか意味がわからないし、なんで歴史の人が出てくるのかもわからないけど(笑)。
ボンビーは貧乏の意味で(真面目な回答)……。
それはわかってるけど、なんで逆さ言葉にしてるのかとか。
それは昔のテレビ業界人的な言葉遊びで……。
ぜんっぜんっ、意味がわからない。
ですよねー。
キャラといえば、冬休みのときにももクロ(ももいろクローバーZ)が『桃鉄』に出てきてめっちゃかわいかった。
紫の子がかわいかった。
私は赤の子。
ほかに『桃鉄』を遊んで思ったことは?
あとはソフト1本でみんなで遊べるのがお得。友だちが遊びにきたときにできるから助かる。
ひとりひとり買わなくていいもんね。
オンライン対戦はしないの?
えー、しなーい。
『スプラトゥーン』とか『フォートナイト』はオンラインで遊んでるよね?
『桃鉄』だと一発逆転があるけど、知らない人とやるのはちょっと怖いかな。
なるほどね。と、さっき歴史の人の話(歴史ヒーロー)があったけど、『桃鉄』が歴史の勉強になったり、気づいたら地理(駅)の勉強になったりとかは?
歴史の人はたまに知らない人が出てくるから、そういう意味では勉強になってるのかも。駅は覚えてないですね。何県にどの駅があるのかはわからない(笑)。特産品とかはなんとなく覚えたかな。あ、駅はすごく遠いところは覚えました(笑)。
最果てカードで飛ばされるもんね。五島、対馬、利尻、大間とか。
でも物件の特徴を覚えないとお金稼ぐのたいへんじゃない?
(収益率の)パーセントの高いのを選んで買う。
それ脳筋プレイ! どんなふうにプレイすることが多いの?
お兄ちゃんは物件優先だけど、私はカード優先。とにかくいちばんにゴールしたい。
私もカードがほしいかな。サイコロいっぱい振りたい。
ちょっと『桃鉄』から話が逸れるけど、いまどきの小学生、中学生はどうやって情報を入手してるの? 実際にどんなものが流行ってるのかな?
私はYouTube。
それって誰かのチャンネルを登録してたり、おすすめや急上昇に出てきた動画を観てる感じ?
最初のころはそうしてたり、友だちに「この人おもしろいよ」ってオススメされた人の動画を観てたけど、いまは自分が気になるものを検索して観てて。K-POPだったり、オーディション番組だったり。
K-POPだとなにが流行ってるの?
周りで流行ってるのはGirls Planet 999かな? 私が好きなのは、解散しちゃったけどIZ*ONE。
ヤヨイさん、小学生ですよね?(笑)
私はTikTok。見てて楽しいので。学校だと、女の子はネットを見てる子がほとんど。男の子はテレビのアニメだったり、ゲームだったり。ゲーム機を持ってない子もいるから、そういう子たちはテレビだと思う。
持ってるゲーム機はスイッチが多いの?
小学生まではスイッチで、中学生になると大人びた子がPS4を買ったり。PS4を持ってる子はマウントとってくるからウザイ。
(笑)。どうやってマウント取ってくるの?
「いっしょに『フォートナイト』やろうぜ、オレはPS4だけど」とか。
いるいるー。あれムカつくよね。
みんな仲良くして(笑)。
でもスイッチは持ち運べるし、こっそり部屋でYouTubeを観られるから超便利。ヘッドホンで音楽を聴きながら宿題もできるし。
部屋でこっそりスイッチで遊んでたらお母さんにめちゃくちゃ怒られた。
サツキちゃんの家、基本的にゲームにはきびしいもんね。遊ぶ時間も決められてるし。でも『桃鉄』はスイッチだから、どんな場所でもみんなでプレイできるからいいよね。
キャンプやスキー旅行のときに持っていったりとかね。
なるほどー。いろいろ勉強になりました。
あとは『スプラトゥーン』とかだと、一回ピンチになったら心が折れちゃうけど、『桃鉄』だと最後の最後でも逆転できるし、最初の5分とかで「これもう負けるの確定だからつまらないー」とならないのがいい。
友だちどうしで遊ぶから、ひどいことされても笑って済むし、「『桃鉄』は買っても負けても楽しい」ってなる。だから何度遊んでも楽しいし、「またやろっか?」ってなるから飽きない。
でも、一瞬ギスギスするよね(笑)。
うん、ムカつくときはめちゃくちゃムカつく(笑)。
ふたりがうまくまとめてくれたので、取材はここまでで。今日はありがとうございました。
終わり? お母さーん、じゃあいまからヤヨイと『桃鉄』遊んでいい?
このあとふたりは終始笑いながら対戦を楽しんでおり、夕飯の時間までその光景は続いていた。夕食前のひと時に、ゲームを通じて笑い声が響く家庭。絵に書いたような理想的なケースだったが、いかがだっただろうか?
正直、取材を行うまでは、ここまで見事に『桃鉄』ヒットの理由の見解を確かめられるとは思っていなかった。小学生、中学生に話を聞く機会はなかなかないと思うが、子どもたちが赤裸々に『桃鉄』の魅力を語ってくれたことで、一定の答え合わせが行えた。
あくまでもふたりのケースではあるが、
・テレビCMでゲームの存在を知り、
・配信者の動画で楽しさを知って、
・昔『桃鉄』を遊んでいたお父さんが子どもに買ってあげて、
・スイッチで気軽に楽しめる対戦ゲームとして友だち、家族と遊ぶ。
という事実。
取材中の発言にあったように『スプラトゥーン』などの直接的な対戦ゲームとは異なり、運が絡み、揺らぎがある『桃鉄』だからこそ、子どもにも大人にも受け入れられ、友だち、家族と長く飽きずに楽しめるゲームとして評価されているのだろう。
サツキさんとヤヨイさんのふたりが楽しそうに『桃鉄』のことを語る姿を見て、「やっぱりゲームってすごいな」と改めて感じる取材だった。『桃鉄』を通じて、万人を楽しませるエンターテインメントとしてのゲームの凄さと深みを再認識することできた。