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【ドラゴンクエスト 36周年記念インタビュー】「ずっと共通言語でいてくれた」職業・声優、そして会社代表 岡本信彦がドラクエと歩んだ36年

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「クロコダインはボラホーンより強いんだ!」

──岡本さんが初めて仕事で関わるようになった『ドラクエ』作品は何でしょうか。

岡本氏:
 3DS版『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』のナレーションに関わらせていただいたのが最初です。

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──最初にお話が来たとき、めちゃくちゃ嬉しかったんじゃないですか?

岡本氏:
 嬉しかったのと同時に僕でいいのかな?と思いました。それまでは中田(譲治)【※1】さんや安元(洋貴)【※2】さんなど、声が低めの方がナレーションをやられていたので、「本当にいいんですか?」とスタッフさんに聞きました(笑)。よろこんでやらせていただきました。

※1中田譲治:
1954年生まれ。声優。「ドラゴンクエスト」シリーズでは、ニンテンドー3DS版『ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君』でモリー役を演じる。

※2安元洋貴:
1977年生まれ。声優。「ドラゴンクエスト」シリーズでは、『ドラゴンクエストヒーローズII 双子の王と予言の終わり』でハッサン役を演じる。

──『ドラゴンクエストモンスターズ2 イルとルカの不思議なふしぎな鍵』の公式大会にもゲスト解説で出演されていましたよね?

岡本氏:
 はい、イベントにゲストで参加させていただいて。エキシビション・マッチで優勝者の方と1回だけ戦わさせていただきました【※】
 たしかアスラゾーマを使っていたんですけど、ボコボコにやられましたね(笑)。バイキルトからの連打で勝とうと思ったら、一瞬にして“いてつくはどう”を出されました。まさかこんなにボコボコにされるとは……! というくらいやられました(笑)

※『ドラゴンクエストモンスターズ2 イルとルカの不思議なふしぎな鍵』スクウェア・エニックス公式 Great Masters’ GPチャンピオン大会:
2014年8月2日、東京・渋谷のアイアシアタートーキョーにて開催された「ドラゴンクエスト夏祭り」内の一コーナー。安元洋貴氏と岡本信彦氏がゲスト解説を務めた。

──(笑)。

岡本氏:
 作品としては『ドラゴンクエストX 天星の英雄たち オンライン』でキャラクター(レオーネ)を演じさせてもらって。そのキャラクターがなかなか闇深かったのが印象に残っています(笑)。

──そして現在は、『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』(以下、『ダイの大冒険』)に出演されています。

岡本氏:
 はい。嬉しく思います。『ドラクエ』で最初に触れたのは、マンガの『ダイの大冒険』だったかもしれません。親が漫画を読んでいたのがキッカケで『ダイの大冒険』と出会って、めちゃくちゃハマりました。アニメも好きでよく見ていましたし、声優を目指したひとつのキッカケでもあります

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──『ダイの大冒険』のどんなところに惹かれたのでしょう。

岡本氏:
 いまでこそ“自己啓発”という言葉がありますが、それに近い感じがして。子どもながらに成長させてもらえたんですよね。がんばったり、努力したりすることは決してダサいことじゃない、と教えてもらえた作品なんです。
 あとはやっぱりデザインも好きで。『ドラクエ』のナンバリングタイトルにもバーンやミストバーン、ヴェルザーは登場するんだろうと思っていたら、いなかったんですよね。クロコダインすらいないんだ、と知ってちょっとガッカリしたり(笑)。ギガブレイク、獣王会心撃、メドローアも、『ダイの大冒険』で出てきた特技なんだと、あとで知りました。

──『ダイの大冒険』の特技は『ジョーカー』に多数取り入れられていますよね。

岡本氏:
 『ダイの大冒険』オリジナルの要素が『ドラクエ』の原作世界に逆輸入していくってすごいことですよね。そんな感じで、至るところに『ドラクエ』の因子を感じつつ『ダイの大冒険』としてのオリジナル要素があって、子どもの頃はすごく熱かった気がします。

──『ダイの大冒険』で好きなキャラクターは?

岡本氏:
 いまはポップなんですけど、子どものころはヒュンケルやクロコダインが好きでしたね。「クロコダインは絶対にボラホーンより強いんだ!」って思っていました。

──その言葉、記事の見出しに使わせてもらいます(笑)。

岡本氏:
 子どものころ、ヒュンケルがボラホーンに「オレの仲間には おまえの倍は 腕力の強いやつがいるぞ」と言ってたもん! って思ってましたから(笑)。いまでこそ、クロコダインのためを思ってヒュンケルはそうやって言ってくれていた可能性もあるのかなと思うんですけど、でも子どもの頃は、クロコダインがボラホーンより強いと信じて止まなかったですね(笑)。
 「VSバラン編」でギガブレイクを受け続けて、タンクとしての役割を担っているクロコダインも最高ですよね。

──令和のいま、クロコダインがまさかのトレンド入りを果たしていました。

岡本氏:
 「ギガブレイクでこい……‼︎」は名セリフですよね。アニメでは前野(智昭)【※】さんがクロコダインを演じていましたが、ずっと「ぐわあああ──ッ!」と言っていて、前野さん大変だったろうな……と思いました(笑)。何回も「クロコダイーン!」と名前を叫ばれていますし(笑)。

※1982年生まれ。声優。アニメ『ダイの大冒険』でクロコダイン役を演じる。

──(笑)。話を戻しますが、岡本さん演じるノヴァもすごくいいキャラクターだと思います。

岡本氏:
 北の勇者として戦って成長していく姿やロン・ベルクさんとの今後の関係についても考えさせられて。ずっと師匠としてあがめるんだろうなというエモさがあります。
 でも子どもの頃はあんまり好きじゃなかったんですよ(笑)

──そうだったんですね。

岡本氏:
 子どものころはロン・ベルクのほうが好きでしたね。漫画で「もうひとりの勇者」の話を読んだときには、もうひとりの勇者=ロン・ベルクだと思っていました。

──でも大人になると印象が変わった、と。

岡本氏:
 大人になってからノヴァの良さがわかりましたね。生命エネルギーをオーラブレード(闘気の剣)へと変えて戦う姿はカッコいいなって思います。

声優から会社経営は「遊び人」から「賢者」と同じ

──ちょっと子どもっぽい質問ですけど、声優という職業を『ドラクエ』世界の職業にたとえるとしたらどんな感じだと思いますか?

岡本氏:
 魔法使いに近いのかなと。声優さんが『ドラクエ』の職業にあったら大声で戦うしかないですから。「言霊師」みたいなイメージですかね。だから、MPが重要な気がします。安元さんみたいなタイプはモンクでいけそうな気がしますけど(笑)

──安元さん、会心の一撃を連発できそうですもんね。

岡本氏:
 出せそうですよね。ずっと魔神斬り、みたいな(笑)。

──(笑)。『DQⅢ』から「職業」が登場しましたが、岡本さんは今年から声優業だけではなく会社代表という職業に就かれました。まだ代表になってから間もない状況だと思いますが、声優と会社の代表という「職業」を振り返ってみていかがですか?

岡本氏:
 いままでプレイヤーとして仕事をしてきて、社会勉強を全くしてこなかったですし、社会に溶け込むのが苦手な部分もあり役者をやっていたんです。でも、会社を立ち上げて一気に社会へと関わらざるを得なくなったわけですから、「遊び人」と「賢者」くらい差がありますね(笑)

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──でも「遊び人」は「賢者」になれるわけですからね。

岡本氏:
 そんな感じで変化したイメージです(笑)。声優だけのときは自分の演じる役のことだけを考えればよかったのですが、この歳になって「常識とは?」など悩み出す感じでした

 いまは所属するメンバーたちには、健康で過度なストレスがない範囲でがんばってもらえたら一番いいなと思っています。

──ご自身の中で考え方がだいぶ変わってきたと。

岡本氏:
 だいぶ変わりました。
 あと、マネジメントやデスクなどに対して、こんなに大変な仕事をやってくれていたんだ、と職業の見え方も変わりました。役者だけのときはマネージャーがどんな仕事をしているのか、やっぱりあまり考えていなかったんですよ。そういったことを考えずに意見をぶつけていたんですけど、マネージャーの仕事を知れば知るほど頭が上がらないです

──「ガンガンいこうぜ」だけじゃダメだ、となったわけですね。

岡本氏:
 はい。「いのちだいじに」で健康を大事にして、「いろいろやろうぜ」で幅広く、という感じになりました。役者だけだったころは、自分ひとりで何とかなるんじゃないかと誤った考え方をしていたかもしれないです。

──「おれにまかせろ」だけではなく、周りの力があってこそということですね。その考え方は年齢を重ねて気づいたというよりも、立場が変わったことで気づいたのでしょうか?

岡本氏:
 立場だと思います。「会社とは」、「組織とは」を理解したことで、これまでどれだけ会社や組織ががんばってくれていたのかを知ることができました。それはすごく良い機会だったと思います。マネージャーやデスクなど、支えてくれる人たちがいて、初めて声優はプレイヤーになれるというか

 『ドラクエ』にたとえると声優は「キャラクター」、マネージャーが「武器」、デスクは「防具」なんですよね。「武器や防具なしで戦えますか?」という話に通じるわけです。一定の呪文は使えるかもしれないですけど、MPには限界がありますから。まあ、なかには生身でボコボコにできる人もいるとは思うんですけど(笑)。

──“やみのころも”を剥がさなくてもゾーマを倒せる人はいるかもしれないけど、“ひかりのたま”を使ったほうがいいよね、という感じですね(笑)。

岡本氏:
 そうですね(笑)。でもそんな人は一握りだと思うんです。普通は“やみのころも”を剥がさないとダメージが通らないですからね。武器や防具が強ければ、クエストをドンドコ進められる。そういうことに気づけてよかったなと思います。

岡本信彦にとって『ドラゴンクエスト』とは──。

──いま振り返ってみて、岡本さんにとって『ドラクエ』はどんなタイトルなのでしょうか。

岡本氏:
 子どものころからずっとそばにいたコンテンツであり、ずっと共通言語でいてくれていたコンテンツだと思います。小学生のころも『ドラクエ』の話が誰とでもできましたが、中高大、そして社会人になったいまでも、延々とその話ができるっていいなと。「どの呪文が使いたい?」とか、共通言語だなって(笑)。

──疲れているときに「ホイミ」と言えば通じるってすごいことですよね。

岡本氏:
 そう思いますね。
 『ドラクエ』は「少年の冒険譚」の感じがいいなって僕は思っていて。いつまでも小2の心でできるのがいいなって

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──話が逸れますが、岡本さんは『ファイナルファンタジー』シリーズも遊ばれていたのですか?

岡本氏:
 幼少期に「『FF』を買ってきて」と親にお願いしたんですけど、うちの両親は『ファイナルファイト』【※】を買ってきたんです。

※ファイナルファイト:
1989年にカプコンよりアーケードゲームとして発売されたベルトスクロールアクションゲームの家庭用機種移植版。「横スクロールアクションの代名詞的作品」と称されている。

──たしかに“FF”ではありますね(笑)。

岡本氏:
 アクションゲームでしたので、1週間に1時間しかゲームができない僕にとってはちょうどよかったです(笑)。そんなこともあり『ファイナルファンタジー』はやっていなかったですね。

──(笑)。すみません、話を戻します。たしかに『ドラクエ』はピュアな心でプレイできますよね。

岡本氏:
 大人になっても純粋な感情のままプレイできる気がしますよね。
 ゲーム自体のわかりやすさというか、学ばせてくれるところもいいなと思います。ちゃんとレベル上げをしないと、しっかりやられるっていう。橋を渡ったら強いモンスターが出てくるところとか、わかりやすく勉強させてもらっている感じがしますね。いろんなことを教えてもらったと思います。

──それでは最後に『ドラクエ』36周年のお祝いメッセージをお願いします。

岡本氏:
 36周年、おめでとうございます! もう36周年なんだ、と意外な気持ちでいます。それは自分に対して思っているせいもあると思うのですが……(笑)。

 そんな36年の中でデザインやゲーム性、コマンドバトルの先駆者として一番わかりやすいものをずっと作り続けてくれた気がします。僕が『ドラクエ』に求めているものって美麗なイラストというよりも、作品の世界観や物語を通じての学び、「明日からもがんばろう」って思わせてくれる王道感なんです。
 だから、ずっと王様でいて欲しいなって思いますね。これからもずっと王座に座していただきたい、王道でいてほしいタイトルなんです。

──『ドラクエ』の立ち位置ってゲームの中でも「勇者」ですよね。

岡本氏:
 まさにそうだと思います。トリッキーなゲームに魅力を感じるのも、王道なゲームがあるからだと思うんです。野球でたとえるなら、ストレートがあるから、カーブやフォークが強くなるのと同じだなと。
 『ドラクエ』には鋭いストレートをずっと投げ続けてほしい。みんなを率先して引っ張っていく王として、君臨し続けてくれたら嬉しいなと思います


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編集部から「『ドラゴンクエスト』シリーズよりも16歳年下のキミから見た『ドラゴンクエスト』について何か書いてくれたまえよ!」とのことで私に白羽の矢が立ったらしい。

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副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。
ライター
アニメ・音楽・映画・漫画・商業BLを愛するインタビューライター。Webメディアのディレクター・編集を経て、フリーライターとしてエンタメ・ビジネス領域で活動中。共著「BL塾 ボーイズラブのこと、もっと知ってみませんか?」発売中。
Twitter:@abyou0926

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