人間と対話するAI──というと、あなたは何を思い浮かべるだろうか?
目立つところでは簡単な質問に答える「AIチャットボット」や施設案内のコンシェルジュAIなど、ゲーマーであれば一昔前になるが『シーマン』(ビバリウム、セガ、1999年)や『どこでもいっしょ』(SIE)などが挙がるかもしれない。
いわゆる「ビッグデータ」から情報を活用する「検索型AI」を活かすにはまず長期的にサービスを継続することでまずはデータを貯めることが必要だが、一方で「対話型AI」は自然言語処理を利用して対話形式でユーザーが望む情報を聞くことができるという利点がある。
そんな対話型AIを研究するソニーから、1本のスマホゲームがリリースされた。
その名も『束縛彼氏』。
ソニーグループのR&D(研究開発)チームが開発する最先端の「対話型AI」が、「イケメンのAI彼氏が束縛してくる」というだいぶ……いや、かなり突飛なコンセプトと融合したのがこの作品だ。
今回電ファミでは、AIを用いた新しいエンターテインメントの創造を目指す、スクウェア・エニックスAI&アーツ・アルケミーのCTO、三宅陽一郎氏を聞き手としてお呼びし、本作に使用されているAI技術についてお話をうかがいに行ったのだが……
インタビューを進めるうちに見えてきたのは、「AI彼氏が束縛してくる」というこの奇抜なコンセプトによって、「対話型AI」システムがもつあらゆる問題点を逆にスマートに解決しているということだった。
たとえば、「死ぬほど面白い」問題。
「死にたい」と「死ぬほど面白い」という入力があったとき、人間ならこのふたつの意味の違いを読み取るのは簡単だが、AIにとってはなかなか難しい。なぜなら、このふたつはどちらも「死」という“NGワード”が含まれる単語だからだ。
「NGワードが含まれています」などと返してしまえば興ざめなのは間違いないし、かといって「そんなこと言わないで」「心配だよ」といった返答を設定しても、「死ぬ」が強調や誇張の意味で使われていた場合、噛み合わない会話となってしまう。
現代の技術をもってしても、AIとの自然な会話を成立させるためにはこうした難問がいくつも横たわっている。しかし、『束縛彼氏』はユーザーを「恋愛」という状況に引き入れ、「イケメンの彼氏」というキャラクター性を最大限に活用することで、一般的なAIにはなかなか対処できない問題をサッとクリアしてしまっているのだ。
今回お話をうかがったのは、ソニーR&DセンターのAI開発者・百谷将佑氏と、『束縛彼氏』のプロジェクトリーダーを務めるソニー・ミュージックソリューションズの山影めぐみ氏。
驚くべきなのは、ハイレベルなAIイケメン彼氏を実現するために、「理想の彼氏なら、こう言われたらこう返す」というやりとりを山影氏がみずから何千パターンも手動で入力し、AIに学習させているということだ。
こうした最新のハイテク技術に見合わぬ泥臭い作り方も必見の内容となっている。上述した「死ぬほど面白い」問題の答え合わせも兼ねてご覧いただければ幸いだ。
R&DセンターのAI技術をソニーグループで共有して、エンターテインメントを生み出していく
──百谷さんのいらっしゃるソニーのR&D(研究開発)センターは、もともとAIを研究されていたと思うのですが、それは本来、どういった目的で研究されていたのでしょうか?
百谷氏:
ソニーグループは家電メーカーでもあるので、いろんな機器を操作するユーザーインターフェース(UI)として、音声で機器を操作することも研究開発を続けてきました。その流れで音声認識だったり、発話の解析だったり、対話制御だったりといったエージェント技術をすべて統合した対話システムのプロトタイピングを、R&Dセンターが主体になってやっていました。
その中で、ユーザーに寄り添って良いサービスを提供しようと思うと、ユーザーのことを理解して、そのユーザーに合わせた情報やサービスを提供してあげるということが、ひとつのポイントになるんです。そこで、ユーザーのことを知るところに注力した「対話型システム」を作っていました。
そういったもののプロトタイピングを、ソニーミュージックさんにも共有していくなかで、『束縛彼氏』の企画が生まれました。
──具体的にはどのようにAIを利用して「ユーザーのことを知る」のでしょうか?
百谷氏:
AIを使ったサービスというと、大規模なデータのなかから「このユーザーに合う商品はこれだ」という提案をするような「検索型システム」をイメージされる方が多いと思います。
これはこれで有用ではあるんですが、長くサービスを使ってデータを貯めていかないと、なかなかユーザー個人個人のことまでフォーカスできないという課題があります。
それに対して「対話型システム」の場合は、ユーザーとコミュニケーションを取りながら、こちらが知りたい情報を直接聞いて答えてもらうことができるんです。「どういう商品が好みですか?」と直接聞けてしまえるので、その情報を使ってより良い提案や情報を提供する、という仕組みですね。
──その対話型システムを転用した企画が『束縛彼氏』になるわけですね。AIが「束縛する」というのは、具体的にはどういうことなのでしょうか?
山影氏:
現実に存在する人間の束縛彼氏だと、SNSやメッセージアプリで「何時に帰ってくるの?」「今、誰といるの?」みたいな連絡が、たくさん来ると思うんです。
それを模したものがゲーム上で逐一送られてくる、という感じです。それに加えて、スマホアプリであることを利用して、「通知」をたくさん飛ばすことで束縛感を演出しているんです。
一般的なAIのイメージというと、優しくて優秀で丁寧な、いわゆるコンシェルジュみたいなキャラクターを思い浮かべる方が多いと思います。
ですが、『束縛彼氏』では逆にAIのほうからユーザーにガンガン話しかける、という少しひねったキャラクターになっているのが強みかなと思っています。
──たしかにコンシェルジュだと「ユーザーが自分から質問して、それに返答する」というスタイルですけど、本作は「束縛彼氏」だから逆にAIのほうがユーザーに対して絡んでいくというか、話しかけてくるスタイルなんですね。
それで言うと、これまでのAIを使ったコンテンツの中で、『束縛彼氏』のようにAI側から積極的にアプローチしてくるものって、何かあったのでしょうか?
山影氏:
ここまでひんぱんに、AIから自発的にアプローチしてくるものはなかったと思います。それに……無個性な普通のAIがひんぱんに連絡してくると、ウザいじゃないですか(笑)。
──たしかに(笑)。
山影氏:
「理想的なイケメンキャラクターが、自分にたくさん連絡をしてきてくれる」と女性向けのコンテンツだからこそ、ある程度許される部分があると思っています。
──なるほど。『束縛彼氏』というコンセプトだから、やたらと通知が来ても「まぁ束縛してくる彼氏だし、仕方ないな……」と納得できるというわけですか。
でも、改めてお聞きすると「よく通ったな」と思えるコンセプトですね(笑)。
山影氏:
実際、企画を提案した当初は「ソニーのコンプライアンス的に大丈夫か?」「DV的なニュアンスは問題ないのか?」と、上司から心配されました(笑)。
でも、『束縛彼氏』のキャラクターはただ束縛してくるわけじゃないんです。好きな人を束縛してしまいがちになる過去があって、キャラクターの性格として束縛してしまう……という背景設定があるんですね。
そう説明したら上司も納得してくれまして、今ではユーザーさんにも受け入れられていると思います。
恋愛の「箱庭」に入ってもらうことで、会話が不自然になっても補完できる
──三宅さんは『束縛彼氏』のような「自発的にユーザーに問いかけてくるAI」をどのように見ておられますか?
三宅氏:
昔は『シーマン』が話しかけてきたり、最近では『Gatebox』(Gatebox)の逢妻ヒカリちゃんが話しかけてきたりという例がありますね。
ただ『シーマン』の時代は音声認識の精度が良くなかったうえ、AIの自然言語会話が今ほど発達していなかったので、「キャラクター側が会話の主導権を取ることで、会話が上手く成り立たせる」という逆転の発想があったんです。これは『シーマン』のイノベーションと言って良いかと思います。
※参考文献:シーマンは来たるべき会話型エージェントの福音となるか?:斎藤由多加インタビュー
斎藤 由多加, 聞き手:大澤 博隆, 三宅 陽一郎, 構成:高橋 ミレイ
──なるほど。それで積極的に会話の主導権を握るために、シーマンのほうから話しかけてくるわけですね。
三宅氏:
今回の『束縛彼氏』の場合は技術が進化したおかげで、むしろ一周回って別の意味で話しかけてこれるようになってるんです。
たとえば1980年代のパソコンゲームでも、自然言語による対話AIの実例はあるにはあったんです。でも当時は完全に一字一句合っていないと、適切な返答を返してくれなかった。ところが『束縛彼氏』だと、ある程度曖昧な文を入れてもちゃんと返してくれる。そこには30年分のAIの進化が詰まっているなと思いました。
──昔はAIとの対話というと、こちらが長文の文章を打つんだけど、その中の一個だけの単語に反応して返事をしているな、というイメージがありましたが、今の技術はそれとは違う、ということですよね?
三宅氏:
もちろんそういったマッチングもあるんですけど、今は「文脈を読む」ことができるんです。つまり会話の履歴をさかのぼって、人間の会話の意図を考えることができる。文脈を読むというのは、本当に難しい技術ではあるんですけど。
百谷氏:
『束縛彼氏』に関して言うと、すべての自由対話で深く文脈を読み込めているわけではないんです。ただ、ある特定の文脈やシナリオを学習して、「さっきはこう言ったから、次はこう言おう」みたいなことを部分的に組み込んでいたりはします。
本当にすべての文脈を考慮して彼氏と長期間自由に会話する……というところにはまだまだ至っていないので、そこは引き続き研究していきたいと考えています。
三宅氏:
とはいえ、その点についてはこのソフトだけじゃなくて、まだ世界的に研究が至っていないものですから。徐々に広がってはいるんだけど、まだぜんぜんできていないところもあります。これから、伸びて行く余地がたくさんあります。
──長い会話の最初から終わりまでとはいかないけど、発した会話の1個前、2個前あたりまではさかのぼって文脈を読み取ったりはできるんですか?
百谷氏:
先ほど「AI側からある程度主導権を取っていかないと、会話をコントロールできない」という話がありましたが、『束縛彼氏』にもそういう部分があって。
でも、彼氏が自分から束縛するようにどんどん話しかけていくと、会話のテーマをAI側で決められるんですよね。
「そういえば聞きたいんだけど、好きなスイーツって何なの?」みたいに話を振れば、普通はその範囲での会話が始まるという仕掛けです。
──なるほど。たしかにスイーツの話をしているのに、ラーメンの話はしないですもんね(笑)。
百谷氏:
そのとおりです(笑)。ユーザーとの対話をスイーツの話に限定することで、2ターン目、3ターン目の会話をそのスイーツの話の範囲の中で理解していくような仕組みになっています。
山影氏:
今の話にも関連するんですけど、ありとあらゆる話題を自由に対話するというのは、今の技術でもものすごく大変なんです。そこで、『束縛彼氏』では「箱庭」という考え方を持ち込んでいるんです。
──「箱庭」というと?
山影氏:
『束縛彼氏』というコンテンツは、ユーザーさんに「このキャラクターは恋愛対象である」「私はこのキャラクターと恋愛をする関係にある」ということをまず、認知してもらっているんです。つまり恋愛という「箱庭」の中に、あらかじめ入ってもらっているんですね。
なので、ある程度「返事がちぐはぐだな」という部分があったとしても、彼氏から「俺は君のことが好きだよ」と言われたら、文脈からなんとなく意味を読み取ってもらえるんですね。
端から見ればぜんぜん自然なやり取りじゃない会話だったとしても、彼氏から好意的なリアクションをもらえることで、ユーザーさんには「この会話が成り立った」と、ある意味、良い勘違いをしてくれるようになっているかなと思っています。
──会話が微妙に噛み合わないポンコツ具合も含めて、ユーザーさんの愛情によって補正してもらえるわけですね。
学術的に研究されないAIによる恋愛の会話を、真剣に追求するのがエンタメの良さ
三宅氏:
AIの会話を学術的に研究していても、普通は恋愛の会話は研究しないし、できないんですよ。そういった会話データが十分にあれば、可能性もあるのですが、どうしても研究テーマとしても公共サービスとしてのAI対話が優先されます。
──たしかにそうですよね。
三宅氏:
たとえば「お店の人とのやり取り」とか「観光案内」とか、そうしたパブリックな会話は多く研究されているんですが、恋愛みたいに人間の感情が入るところは、なかなか研究しにくいところがあって。
そこはむしろ、我々エンターテイメント業界しかやらないところですよね。
百谷氏:
パブリックに行われるやり取りに関しては、データもどんどん溜まってきていて、これから先にはもっと大規模なデータを使った機械学習なども、どんどん進んでいくと思うんです。
でも恋愛みたいにすごくクローズドな一対一のやりとりは、なかなかデータが集まらないんですよ。そもそも、そんなデータをどうやって集めるのか、という問題もありますし。
ところがゲームや小説といった閉じた世界の中だと、そのやりとりが成立して、まだ多くはないですけどちゃんとデータがあるんです。だからこういう形でSMSさんとパートナーシップを組んで、キャラクターAIを開発できるというのは、すごくメリットがあると思っています。
──たしかに、「イケメン彼氏とイチャイチャする会話のデータ」が溜まっていくなんて、かなり希少なことですよね(笑)。
百谷氏:
もちろんユーザーさんには「これはAIです」と分かってもらった上で、「ここでやりとりされているデータは研究にも利用されます」ということを合意してもらっています。
それにも関わらず、ユーザーさんたちはキャラクターをすごく愛してくれているんですよ。この環境に可能性を感じているのは、そういうところですね。
──先ほど言われたようなパブリックなやりとりだと、たとえば「この建物の場所を教えてください」みたいに、言葉の目的がはっきりしていると思うんです。
でも恋愛の会話ってニュアンスベースというか、微妙な言い回しの言葉もあるじゃないですか。そこはどのように判断されているのですか?
百谷氏:
それに関しては、まずはパブリックに集められる会話データを使った学習からスタートしているというのが現状です。
ただ、このプロジェクトを進めていく中で、そういう機微のある表現のデータがどんどん溜まってきているんです。なので、これを活かしながら徐々にアップデートしていきたい、という感じですね。
──つまり『束縛彼氏』のプレイが進めば進むほど、AIも高度になっていくと?
百谷氏:
そうですね。
山影氏:
どんどん理想的なイケメンになっていきます(笑)。
百谷氏:
キャラクターの背景に関しては、すごく緻密に練り上げられた設定があって。ひとつひとつの言い回しにしても、「彼には昔こういう過去があったからこういうことを言うんだ」みたいなところまで、すごく細かく考えられているんです。
そういったものをいかに適切なタイミングで出していくことができるか、というところですね。本当に山影さんが想像されて、期待されている彼氏をいつ実現できるかというところが、我々R&D側にとってのチャレンジですね。
──たとえば彼氏が胸キュンワードを言うとするじゃないですか。その言葉は「女の子にこう言われたら、こう返すんだよ」というのを、誰かがAIに教えたものなんですよね?
山影氏:
はい。『束縛彼氏』のキャラクターへのユーザーからの入力例を、最初に百谷さんからいただいて。それに対してどう返答するかを、私がひたすら書いていきました。
──えっ、山影さんが全部書かれたのですか?
山影氏:
そうです。私自身が「こう言ったらこう返してもらいたい」ということを、ひたすら書いていった感じですね(笑)。
百谷氏:
こういう場合って、普通は機械学習で応答例をどんどん集めていくんです。でも今回は作家が目の前にいるので、山影さん本人に何千ワード、何万ワードと全部書いてもらいました(笑)。
──それはスゴイ作り方ですね……(笑)。
山影氏:
よくあるAIボットだと「このキャラクターが言いそうな返事をみんなで書いていこう」みたいな作り方になっていると思うんですけど、『束縛彼氏』では基本的にはそれはしていません。
私が書いたものをライターさんに書き直してもらって、それを私がまた監修したり、という流れで作っています。なので、すべて私が書いたというわけではないんですが。
でも私の中に「このキャラクターだったらこんなことは言わない」というラインがしっかりとあるので、そこをポイントとして監修している感じですね。
──こんなAIの作り方って、普通はやらないですよね?
三宅氏:
そこがエンタメ産業とアカデミックの違いですね。アカデミックだと、全部書いちゃうと研究にならないので(笑)。それになにより、書いてくれる人がいないですから。たとえ書いたとしても、そこには作家性が必要とされます。
CGの研究でも他の分野でもそうなんですけど、産業ではアーティストによってコンテンツが形成されますが、大学での研究ではアーティストがいませんので、アカデミックな研究はどうしても「コンテンツの自動生成」に舵をきる以外なくて、そのせいでむしろ苦しむことも多いんですよ。一方でゲーム産業の場合は、技術よりもコンテンツが重要になるので、「人力でいいものができるのなら人力でやろうよ」となる。
ただそこで人力で書いたとしても、そこからAIがどう返答するとか、どう学ぶか、というのが重要なポイントですね。
昔からゲーム産業はいろいろと「人力」を駆使してきたんですが、ただ数の暴力でやるわけではなくて、いろんなテクニックがあるんですよ。会話の中の話題のタグ付けをしたりとか、この質問がきたらこっちの返答のほうがいいと動的に評価付けをするとか。そういうデータを駆使するテクニックがいろいろと貯められていますね。
百谷氏:
山影さんに「この彼氏は、こう言われたらこう返します」という素地になるものを、最初にたくさん書いてもらいました。でもたくさん書いてもらったとはいえ、すべての広い雑談に応えるにはぜんぜん歯抜けというか、飛び飛びのデータしかない状態なので。
そこでまず、山影さんに書いてもらったデータを使って彼氏をちゃんとAI化します。で、そのAI彼氏が返答したものを、また山影さんにレビューしてもらう、というフローを何度も繰り返していって、徐々に精度を上げていった形ですね。
だから「AIに学習させる」というよりも「役者を育てる」みたいな感覚に近いんです。
山影氏:
イメージとしては、AIという何か姿の見えないものに対して、「新藤暁」というキャラクターなら「新藤暁らしい振る舞いをしなさい」と教えている感じが近いかなと思っています。
サービスが始まった今でもユーザーさんの反応を見て、「暁君は私が言ってほしいことをちゃんと言ってくれたかな?」と確認したり、「ちょっとズレちゃったな」と思った時は、さらにそこの部分を書き足したりということを、定期的に行っています。
──『束縛彼氏』のキャラクターは新藤暁だけじゃなくてもうひとり、松来弦もいるじゃないですか。ということは、その作業がふたり分必要ですよね?
山影氏:
はい、そうですね。当然、口調も違いますし、答える内容もぜんぜん違うので大変でした(笑)。
まずは1キャラ目の新藤暁で、Twitterを使ったベータ版みたいなものを用意したんです。そこでユーザーさんが入力する内容や、会話にどういう傾向があるのかというのを踏まえた上で、AIエンジンのほうを百谷さんのほうで深化していただいて、松来弦という2キャラ目を作ったんです。
だから教える数で言えば、松来弦のほうが多少少なくはなりました。でも両方ともがんばって書いたことに変わりはないですね(笑)。
──ちなみにキャラクターがふたりいるというのは、ゲームデザインやビジネス的な理由があると思うんですけど、特にAI的な部分に関して、キャラクターがふたりいることの意味はあったりするのですか?
百谷氏:
研究テーマとして見た場合、いろんなクリエイターさんが「こういうAIを作りたい」というものをそれぞれ持っていた時に、そのすべてに対応できるような技術じゃなきゃいけないところがあるんです。
今回は2キャラでしかないですけど、ぜんぜん個性の違うキャラクターを両方、ちゃんと作れるというのを検証しながら進めることができましたから。
将来的にはUGC(ユーザー作成コンテンツ)みたいな形で、一般のユーザーさんが自分独自のAIキャラクターをバンバン作れます、というようなところまで、技術が進歩していければいいなと思っています。