謎に包まれていた「桜井政博のゲーム作るには」の制作手順とは!?
──桜井さんは「桜井政博のゲーム作るには」を制作される以前から、YouTubeをご覧になられていたのでしょうか?
桜井氏:
いや、それがじつは最近までそうではなくて……YouTubeを積極的に見始めたのは岡本吉起さん【※2】のチャンネルや「わしゃがなTV」【※3】が開設されたタイミングだったりするので、2020年代になってからですね。
※2「岡本吉起」
『ストリートファイター』シリーズや『モンスターストライク』に携わったゲームプロデューサーの岡本吉起氏。岡本氏はYouTubeチャンネル「岡本吉起 ゲームch」で発信を行っており、桜井氏がゲスト出演した動画もある。
※3「わしゃがなTV」
声優の中村悠一氏とフリーライターのマフィア梶田氏がMCを務め、構成作家に『ポプテピピック』などでお馴染みの漫画家の大川ぶくぶ氏が参加しているYouTube番組。こちらも桜井氏が何度かゲスト出演をしている。
──そうなのですね。そこも合わせてお聞きしたいのですが、「桜井政博のゲーム作るには」を制作するにあたり、動画のテーマや更新頻度、編集や構成など、すべて桜井さん自身が考えて作られているのでしょうか?
桜井氏:
番組の作り方をイチから順を追って説明したほうがいいですよね。
まず最初に、「テーマ」を決めます。ファミ通で連載していたコラムも同じ手法だったのですが、どういうネタを話すのか決めてから「テーマ」を1行書きます。これがほぼそのままタイトルになります。
そしてつぎに、粗めの原稿を書きます。原稿は最初に書いてしまわないと、言いたいことを忘れてしまう場合もありますから。私の番組では発言を補足するテロップも下に出ると思うのですが、あのテロップのテキストなどもいずれ書かなければならないし、任天堂に事前監修もいただくこともあるので、とにかく粗く原稿を書きます。
桜井氏:
かといって、ただ原稿を読み上げているわけではありません。ある程度自由に話を進めていますし、テキストはあとから調整します。
そして、実際の映像撮影でのカメラは、ふつうのコンパクトデジタルカメラを使っています。「桜井政博のゲーム作るには」を撮影している場所は、『スマブラSP』の「ミェンミェンのつかいかた」、「スティーブ/アレックスのつかいかた」を撮影したときと同じ、自分のマンションだったりします。
「つかいかた」を撮影しているときにはちゃんとしたプロユースのカメラが使われていたのですが、現在はデジカメを使って撮影しているので、動画を撮っているときの私の目の前には三脚に乗っている小さいカメラしか置かれていないです。
桜井氏:
撮影の際に使用するマイクもいろいろ試してみた結果として、現在は単一指向性のマイクを使っています。なぜかラジオのノイズが乗ることがあり、フェライトコアを使ってみたり……。
「スティーブ/アレックスのつかいかた」を撮影した際には、これまたプロユースのピンマイクを使っていたりしたのですが、ピンマイクは「桜井政博のゲーム作るには」の撮影においてはあまりうまくいきませんでした。
そして実はいまの撮影環境だと、「自分がしゃべっていること、しゃべっている瞬間」をモニターできないんですよね。撮影する部屋にいるのは私ひとりだけで、撮影スタッフはいません。ひとりでしゃべっていて「あ、ここちょっとおかしかったな」と感じた部分を指摘されることも、撮影中に直すこともできません。
もちろん、私がしゃべっている姿を撮影中にテレビに出力することもできるんですが、私自身「出力されたテレビを見ながら話ができる」わけではないですからね。
撮ったら撮りっぱなし。ちょっとの失敗は気にしない。結局のところ、「桜井政博のゲーム作るには」の撮影はこれくらいの適当さで行っています。
──なるほど。めちゃくちゃ参考になります。
桜井氏:
もちろん私はトークに関しては素人なので、しゃべっている最中に詰まったり言い間違えたりするんですけど、そのカットは撮りっぱなしでやり直しつつ、編集に渡す前につまみます。この「私がしゃべっている動画」がベースとなり、先ほどの原稿と合わせて、1本の動画の「とりあえずの尺」が決定します。このときに決まった尺が、およそ本番動画の長さになります。
その後、必要であれば自分でゲームの映像を撮ります。『スマブラSP』のデバッグモードを使っている映像などは、基本的にすべて私が撮影しています。
それ以外にも、話題に合うゲームをどんどん撮りだめていきます。当然ですが、『大乱闘スマッシュブラザーズ』回における”格闘ゲーム竜王”などはこちらからの手配です。この回は、他のゲームのキャラクターセレクトなども撮りましたね。使われなかった分も含めると、9タイトル分ほど撮りました。
それと、図や資料や写真を用意する場合もあります。『星のカービィ スーパーデラックス』などの企画書や、『大乱闘スマッシュブラザーズDX』の絵コンテとか。「素材を描かず、光を描く」の調整が進む森の絵もそうですし、『文字の大きさ』における「緊」を拡大したドット絵も、ゲーム画面を元に新たに描き起こしています。
桜井氏:
そして、テロップ用テキスト、私の動画、ゲーム映像、必要であれば図や写真をセットにして、編集会社のキュービストさんに渡します。これらの素材は、ネットワーク上の素材フォルダに入れてお渡ししていますね。
これらを元にし、そこからキュービストさんがコンテを制作します。
コンテは私の動画とテキストを元に、イラストやゲームの映像をどこに差し込むのかなどが描かれています。
この際、あるいは編集時、キュービストさんは私からの素材を確認しつつ、必要であれば新たにゲームの映像を足していきます。キュービストさんが撮影用に購入されたゲームがあったら、代金はすべてこちら持ちです。一瞬しか出ないゲームも、自分が持っているゲームもこちら持ち。
──桜井さん自身もキュービストさんも、それぞれでゲーム映像を撮影されているのですね。それは意外でした。
桜井氏:
この「番組内で使用するゲーム映像の撮影」において、私とキュービストさんの撮影の作業量は総合的には半々くらいという印象です。
「ゲーム性以外の面白さ」という回で、かなりたくさんのゲーム映像を使用していましたが、あれを撮影したのはだいたい私です。「昔は昔 いまはいま」でも多くのゲームが出ますが、これはキュービストさんが主。「重要度で効果音バランスを取る」などデバッグモードを使う動画は私で、50本以上の動画を撮りました。
逆に『星のカービィ 夢の泉の物語』などを紹介している各種企画コンセプトの回でゲームを遊んでいる映像は、キュービストさんが撮影してくれています。私の作品は、製品ROMの貸し出しなどもしていますね。
私が半分撮影、キュービストさんが半分撮影……という中間くらいの作業量の回もあったりするので、やっぱり「総合的に半々くらい」だと思います。編集段階のものを見て、
で、私がコンテをチェックして、調整すべき点を監修したら映像の本制作に移ります。
桜井氏:
基本的には、私の出演映像にシーンを上載せしていく形で映像制作が進みます。イラストはキュービストさんで用意します。初期のころはいらすとやさんを使わせていただいていましたが、いまは描き下ろしになっています。
この「本制作」においてもキュービストさんと何度もやり取りを行います。で、動画が大体完成したら今度はハチノヨンさんに「翻訳」をお願いします。
──そうでした。「桜井政博のゲーム作るには」は英語版もあるから、翻訳作業も必要になってきますね。
桜井氏:
ハチノヨンさんでは、基本的に日本語版をそのまま差し替えるように翻訳してくれています。事前テキストはありますが、やはり実際に完成した映像がものを言うので、日本版映像完成後からが本番です。
また、動画内で使用されているゲームの映像が相応しくない場合に、映像の差し替えを提案してくれることもあります。とくに、「日本ではあまり手に入らないゲーム」、「日本でのみ浸透しているゲーム」などが番組内で映像として使用されていたときに、助かります。
「ゲーム性以外の面白さ」辺りを見比べるとわかると思いますが、英語版で使用されているゲームの映像はちょっと海外向けに特化していたりもしますね。
ハチノヨンさんはそういう細かい部分も積極的に進めてくれるので、とてもありがたいですね。
桜井氏:
そしてハチノヨンさんの翻訳を経て、英語版の映像が完成する。なお翻訳という意味では、番組概要欄などの翻訳もあります。
これで映像はひと通り揃ったのですが、今度は「サムネイル」の制作をします。サムネイルに関しても、基本的にキュービストさんの提案を受けて、それに対して私が監修を行います。サムネイルが日本語版と英語版の両方揃ったら、ソラのほうで配信予約などの管理を行い、動画が公開されます。Twitterへの投稿などもありますが、ここまでが「桜井政博のゲーム作るには」の、一連の制作手順ですね。
ここまでに紹介した制作手順は、直接オフィスに集まって行っているのではなく、キュービストさんやハチノヨンさんとも基本的にメールだけで連絡を取り合っています。
──番組の制作は基本的にメールで進行していたんですね。ひとつの動画を作るのに、相当な労力がかかっていることがよくわかりました。
桜井氏:
キュービストさんとメールで監修などのやり取りをする回数については、サムネイルも含めて動画1本につき8~9回くらいでしょうか。
メールでのやり取りはゲーム制作で監修をするときとあまり変わらずに、基本的に箇条書きで「ここはこうして欲しい」などの指示や確認を行っています。
でも……こういう制作体制だと、最終的な動画の内容に対して、私が適切な話をできているとは限らないんですよ。
──と言いますと?
桜井氏:
「最初の私がしゃべっている段階では、何のゲームが差し込まれるのかわからない」ということです。しゃべりが制作の最初ですから、その時点で使用するゲームなどの映像が確定しているわけではないんですね。
たとえば、【雑談】カテゴリーの「ゲームソフトの価値」という回で、いくばくかの視聴者さんに「フルプライスのゲームだけを指している話」であるように捉えられてしまったようで、これは良くなかったなと反省しています。
最初にこれを話題にしようと考えた段階では、インディー系やセールなど、もっと安いものも含めて想定していました。なので動画内にSteamのセールの画像などを積極的に入れたらよかったんですけどね。
制作上、しゃべっている内容と差し込まれるゲームや映像が、がっちり一致しているとは限りません。それによる齟齬が生まれることもあるので、気をつけなければならないなあと思っています。反面、いつまでもやり直したり磨いているわけにもいかないので、多少の相違は置いておき、さっさと先に進めます。
──ほかに、撮影で気をつけていることなどはありますか?
桜井氏:
たとえば、「愛猫ふくらし」の回で……。
あの回の私は、楽しそうにニコニコとしゃべっていると思うんですが……よく考えてみてほしい。実際の撮影環境で私の目の前に見えているのは一台のカメラだけです!(笑)。
本当はふくらしが目の前にいるわけではないけど、まるでふくらしを見ているかのように楽しくしゃべることを意識するなど、それぞれの動画のテンションをある程度は高められるようにがんばっています。
──実際にふくらしさんを撫でながらしゃべっているわけではないですもんね(笑)。
桜井氏:
ところで、動画を撮影する時間帯に関しては「夜じゃないとできないな」と思いました。なぜかというと、昼は外の交通量が多くて動画にクルマの音などの雑音が入ってしまうからです。
そこで夜、あるいは深夜に撮影しているんですが……たとえば、救急車が走っていたりバイクが来たりしたときは、いったんしゃべるのをストップして、通り過ぎたら再開します。そういう撮影に関する小さい苦労はたくさんあります(笑)。
──「桜井政博のゲーム作るには」の制作過程と、動画には映らない部分でどれだけ労力をかけていらっしゃるのかがよくわかりました。桜井さんがこれほどまでの労力で素材を用意しているとなると、キュービストさんやハチノヨンさんのプレッシャーもすごいんじゃないかな、と個人的に思ったりします。
桜井氏:
担当者にもよるかもしれませんが、キュービストさんもハチノヨンさんも割と楽しんで取り組んでいるのではないかなあと。
たとえば、「プレゼンはスピード」で『Among Us』のインポスターが吹っ飛んだり、「モヤッとさせるな」で『リズム天国』のカラテ家が出てきたりしていますが、ああいったお遊びはキュービストさんがやってくれていたりします。
だって、「ここにインポスターが吹っ飛ぶ演出を入れて欲しい」とかを私がわざわざ指定していたらおかしいじゃないですか(笑)。
──(笑)。
動画作りは、ひとつの終活。9年に渡る『スマブラ』の開発で気付いたこと
──いや、なんでしょうね……ここまでの話を聞いていると、桜井さんがセミリタイアしてしまうのではないかと心配になってきます。
桜井氏:
実際そうですね。
「桜井政博のゲーム作るには」は、ある意味「終活」としてやっている側面もあります。
だって……私も52歳ですからね……。
──いやいや、「まだ」52歳ですよ。
桜井氏:
やはり、『スマブラ』を開発している中で、「自分に残された時間はもう少ない」ということを痛感しました。
『大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS/Wii U』、『スマブラSP』と、両方のダウンロードコンテンツを合わせると、9年くらい制作しています。2012年に『新・光神話 パルテナの鏡』の開発が終わってすぐに着手し、2021年に『スマブラSP』のDLCを作り終えたわけだから、だいたい9年ですね。
私の人生がどのくらいになるかはわからないですが、「ゲーム作りにマトモに付き合っていたら、あっという間に人生が終わってしまう」と思ったりもしました。それぐらい、いまのゲーム制作には時間がかかります。
桜井氏:
『スマブラ』の仕事は、すごく幅広い年代のいろいろな方にゲームを届けられるうえに、ゲーム業界のさまざまなキャラクターやコンテンツを一手に預かるとても大事な仕事だと思っていますし、その仕事ができたのは、本当にありがたく思っています。
でも、同じようなことをしていたら、あっという間にリタイアです。仮にのんびり構え「55歳になったら番組を作り始めてみよう」などと考えたとしても、その時には何らかの理由でそれもできなくなっているかもしれません。
だから、「桜井政博のゲーム作るには」という番組は「自分の時間があるうちに取り急ぎやってみた」感じの番組だったりもします。
──「桜井さんに残された時間」を考えたうえで作られた番組でもあったのですね。
桜井氏:
いまの「桜井政博のゲーム作るには」は、更新頻度が比較的早いと思うんですけど、「更新頻度が早い」ということは、つまり「早く終わる」ということでもあります。ファミ通で連載していたコラムのように、ずっと続けることは考えていません。あるときが来たら、ピタッと終わると思います。
いちばん最初の動画の「このチャンネルについて」でも触れていましたが、私の番組は「何年経ったあとでも、変わらずゲーム制作者が参考にできる『アーカイブ』」としての役割が大きいです。
そういったデータベースのようなものを残しておく活動を始めたのは、自分に残された時間が少ないことを自覚したことが大きな要因ですね。『スマブラSP』の開発を終えて、「節目がついた」のは自分の中では結構大事なことだと思っています。
「スマブラ Direct」で直接出演するようになった理由。「成功率」を考える制作方法
──「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL Direct」では、「桜井さんがみずからキャラクターの紹介をする」という手法を取られていました。
番組の最初は桜井さんは出演されてはいなかったと思うのですが、桜井さん自身が「自分がやったほうがいいのではないか」と考え、最終的にあのスタイルになっていったのでしょうか?
桜井氏:
任天堂の企画部の方に、「桜井さんがやるのが一番いいよね」と言われていました。
誰かに出演や編集をお願いするとそこにコストがかかってしまうのは間違いないですし、「番組を作る予算がないから、私が出演している」というのは本当のことです。
そのときは本当にほかの方法がない状況でしたし、結果的に私が出演してしまうのが番組としてはいちばん成功率が高いと思いました。
桜井氏:
ゲームを制作するときも同じなんですが、私は「成功率」を考えます。
「ゲームの仕組み・システムとして成功するか」ではなく、人員を決める「組閣」による成功率ですね。具体的には、「どういう人材がどのように回れば、成功する可能性が高いのか?」という話です。
「スマブラSP Direct」のときに限っては、私が書いた原稿を誰かに任せたり、監修を行っていくよりかは「自分が直接出てストレートに話をした方が、番組として効果的。そして費用対効果が高いうえに、制作がスピーディーに終わる」と考えて、あの形になりました。
──桜井さんのその成功率の考え方そのもののすごさもあるのですが、実際にその通りになっているのがまたすごいと言いますか……。
桜井氏:
多忙なゲーム制作を続けているわけだから、監修による磨き込みに手をかけていられないし早く終わることだって大事ですから……。
とはいっても、私も「トーク」に関しては素人です。発声練習や、何かしらのレクチャーを受けているわけではありません。
その辺は視聴者の方もお見苦しい・お聞き苦しい部分もあったとは思うのですが、「作った人が直接ゲームを説明する」という点で、ほかの番組にはない価値を得られたんじゃないかと思います。
──個人的な印象になってしまうんですが、桜井さんが番組でしゃべっている姿からは「語り口が理路整然としていて聞き取りやすい」という印象を受けていました。何かを口頭で説明するときに、受け手に伝わりやすいよう、桜井さんが意識していることなどはあるのでしょうか?
桜井氏:
淡々と、もしかしたら棒読み風でしゃべっているように聞こえるかもしれないんですが、私は普段からこういう感じの感情が薄いしゃべり方です。私にとっては、番組でしゃべっているときでも「ふつうにしゃべっている」という感覚です。
何かを口頭で伝えるときに、特に意識していることと言えば「ちょっと声を張る」、「ある程度の身振り手振りを加える」くらいだと思います。ただ、せっかく加えた身振り手振りに、別の絵が入って見えなくなることが多いのですが(笑)。
ただまぁ、それ以外は本当に素人がしゃべっているだけなので、視聴者の方には申し訳ないと思っています。お恥ずかしい。
──桜井さんはゲームの企画書をプレゼンする際も、「身振り手振りを加えつつ、普段通りにしゃべる」スタイルで行っているのでしょうか?
桜井氏:
チャンネルの中に、「企画書の書き方」という回があったと思います。
その中でもある程度は説明していたのですが、私の企画書はほとんどがプレゼン書類だけで構成されているので、自分の顔を見せる必要はあまりありません。そしてこの企画書の中にはカンペもなく、「明確なシナリオ」というものも存在していません。
私のプレゼンはそのときその場所に応じて、話の内容を臨機応変に少しずつ変えたりしています。
──そうでした。動画内で桜井さんのプレゼンのスタイルを説明されていましたね。
桜井氏:
この番組で企画書の書き方を紹介したので、業界を問わずいろいろなところで「プレゼンの退屈さ」がなくなっていけばいいなと思います。
余談ですが、「企画書の書き方」のサムネイルに書かれている長いセリフはすべて私が書きました。「なんだよシズル感って!」と自分でも思っています(笑)。
「長めのプレゼンを表現するにはどうしたらいいでしょう?」というキュービストさんからの相談を受けて、結果的に私が長めのプレゼンを書くことになりました。
──ここも桜井さんだったんだ!!
──話を戻しますが、「スマブラSP Direct」は「桜井さんが出ている」からこそ、文字通り“ダイレクトに伝わる”ところがあったと思います。
桜井氏:
正直視聴者にとって、私のような「知らん人が出てもしょうがない」という思いはありました(笑)。
しかも、「スマブラSP Direct」は海外でも配信されるので、「芸能人を起用する」という手法も日本人にしか伝わらないようではあまり意味がありません。ジョーカーのときのように出演声優さんを当てるにしても、例えばバンジョー&カズーイは言葉をしゃべらないですしね。
一応、「番組をナレーションだけで構成する」というパターンも考えられなくはないのですが、それはそれでパーソナリティがなくて寂しい。加えて、実践的にキャラクターの操作方法を見せる「勇者のつかいかた」、「テリーのつかいかた」などは、ナレーションだけでは作れないと思います。
──ここまでの話を聞く限り、桜井さんは「アウトプット先を広く捉えている」という印象を受けます。チャンネルの目的もそうですが、何事も「より多くの方に広げていこう」と考えているのではないかと思いました。
桜井氏:
「いろいろな人とジョイントして、多くの作品を完成させる」ということは、私がフリーになった動機のひとつでもあります。
ゲーム制作や番組作りもそうですが、どんなに環境が変わっても上手く立ち回れるようにしたいとは思っていました。