2023年1月末、スクウェア・エニックス本社にて日本のゲームメディアを対象とした『FINAL FANTASY XVl』(以下、FF16)の「メディアツアー」が実施されました。既にプレイレポートをお届けしていますが、なんと、同ツアー内で本作の開発陣にインタビューする機会を得ました。
「吉Pと髙井さんに『FF16』についてインタビューすることができる」と決まった時、私が一番聞いてみたかったのは「なんでイフリートはFF16のメイン召喚獣なの?」ということです。
逆に読者のみなさまにお聞きしてみたいのですが、「FFのイフリート」にはどんなイメージがありますか? 最初に出てくる召喚獣、最初に倒される召喚獣、最初に仲間になる召喚獣……そう、大体イフリートは、「最初の召喚獣」なのです。
そして、いつの間にやらイフリートよりも強い召喚獣が手に入って、バハムートやらオーディンやらアレキサンダーにその座を奪われていく…………でも、『FF16』はそんな「イフリート」が主役級のFF。なんならタイトルロゴにイフリートが居座っている。
……なぜ『FF16』はこんなにイフリートが重要なのか?
なぜ『FF16』はここまで「召喚獣」を推してくるのか?
「召喚獣を人間の身体に喚び降ろす」という要素はどこから思いついたのか?
その「そもそもどうやって『FF16』は作られていったのか」という根本的な疑問を開発の人たちに直接お聞きしたのが、今回のインタビューとなっています。
そして改めて、今回のインタビューに登場するお三方をご紹介しましょう。
『FINAL FANTASY XIV』(以下、FF14)にてプロデューサー兼ディレクターを務め、今回の『FF16』ではプロデューサーを担当している吉田直樹氏。『ロマンシング サ・ガ-ミンストレルソング-』のバトルディレクターや『ラストレムナント』のディレクターを務め、『FF16』にてディレクターを担当している髙井浩氏。そして元はカプコンにて『デビル メイ クライ5』や『ドラゴンズドグマ』などの開発に携わり、『FF16』のバトルディレクターを担当している鈴木良太氏の3名にお話を伺いました。
吉田氏が語る「FFの制作における制約」とは? 髙井氏はどのようにして『FF16』の「全てのプレイヤーが楽しめるようなアクション」を作り上げていったのか? カプコンで長くアクションゲームに携わった鈴木氏が合流したことで、『FF16』に起きた変化とは?
世界初の『FF16』実機プレイをしてきたらマジですごかった。今まで謎に包まれていた「ゲーム部分」を1万文字使って解き明かす
「たかが体験のおまけとしてのインタビューでしょ」と侮ってはいけません。なんと20,000字くらいあります。『FF16』の企画の成り立ちから、『FF16』のアクションが作られていった経緯まで……大ボリュームのインタビューをぜひお楽しみください。
聞き手/ジスマロック・豊田恵吾
文/ジスマロック
編集/クリモトコウダイ
カメラマン/松本祐亮
※今回の記事で紹介する『FINAL FANTASY XVl』のバージョンはメディア体験用の特別版であり、リリース時のものとは異なる場合があります。記事内で使用されている画面(スクリーンショットや動画)はメディア体験用の特別版であり、リリース時のものとは異なる場合があります。
正直『ファイナルファンタジー』は、100%自由には作れない?
──まず最初に「『FF16』の企画の始まり」からお聞きできればと思います。そもそもなぜ『FF16』のプロデューサーを吉田さんが務めているのか、どういった経緯で髙井さんがディレクターになったのか、どのような流れで鈴木さんがカプコンから『FF16』の開発に加わったのかをお聞かせください。
吉田氏:
もう詳細な時期は忘れてしまったんですが……確か『FF14』の最初の拡張パッケージでもある『蒼天のイシュガルド』のマスターアップの直前くらいに、松田洋祐社長から「『FF16』を「吉田さんのところ(第三開発事業本部)で作ってくれないか」とお願いされたんです。
ナンバリングタイトルの開発を託されること自体はとても光栄ですし、『FF14』の実績があったからこそ第三開発にお願いされたのだと思います。ただ、その時の返答としては、「今はちょっと『蒼天のイシュガルド』の開発で第三開発は全員死にかけてるので、即答はできかねます」というものでした。
正直に言うと……「殺す気か!?」と(笑)。
一同:
(笑)。
吉田氏:
『蒼天のイシュガルド』自体は相当な手ごたえがあったのですが、その時の第三開発は初めての拡張パッケージというのもあって、「拡張パッケージを作る際のペース配分」がよくわかっていませんでした。要は、全員が開発にのめり込んでいたんです。「そろそろ全員休ませないと、開発として走り続けられなくなるぞ」と思うくらいには色々ヤバかった時期でした。
ですので、『FF16』の話は一旦保留にさせてもらいました。そこから『蒼天のイシュガルド』の評判も見えてきて、第三開発のスタッフも大体一ヶ月くらい休養が取れた辺りから、本格的に『FF16』の企画が立ち上がり始めました。
ただ、その時に僕から松田社長にお伝えしたことは、「『FF14』というコンテンツをこのまま成長させていこうと考えた場合、『FF14』と『FF16』の両方のディレクターを担当するのは無理です。どちらのお客様にも失礼ですし、作品として中途半端になってしまいます。『FF16』はやれてプロデューサーだと思います」ということでした。
──それはそうですよね。
吉田氏:
第三開発はご存知の通り、何と言いますか、野犬の群れというか……暴れん坊なスタッフが多いので……(苦笑)。このチームを取りまとめられる人間はそうそういませんでした。そこから『FF16』のディレクターを決めるにあたって、「シリーズのディレクターというプレッシャーに耐えられる」「スタッフからの人望が厚い」と色々な要素を考えていくと、本当に髙井さんくらいしか思い当たらなかったんです。
だから、正直髙井さんがこの話を呑んでくれなかったら、『FF16』の開発はお断りしようと思っていました。そしたら髙井さんは「大変だとは思うけど、自分のキャリアの集大成としてもやってみよう」と言ってくれました。
髙井氏:
そうでしたね(笑)。
──「キャリアの集大成」として『FF16』の開発をお受けしたとのことですが、やはり髙井さん的には『ラストレムナント』や『FF14』の開発経験があった部分が大きいのでしょうか? 『FF16』のディレクターを務めるにあたって、最後に背中を押した要素があったりとか……。
髙井氏:
そうですね。周囲の環境や『FF14』などの開発を一緒にやってきたメンバーの存在も大きいですし、その辺りが変わっていたら正直どうなっていたかはわからないです。
最後の決め手としては、やはり「ナンバリングのFFにディレクターとして参加できる」ということでしょうかね。そもそもFF自体がスクウェア時代から続いている歴史の長いIPですし、スクエニの看板タイトルでもあります。その作品にディレクターとして参加できる機会はそうそうないことですし、「ナンバリングFFのディレクター」は16作目まで含めても最大で16人しかなれないじゃないですか(笑)。
なので、この機会はとても名誉なことだな、と思ってディレクターを引き受けました。
吉田氏:
ただ、『FF16』の企画が立ち上がり始めて僕から会社側に伝えたのは、「できるだけ短い期間で『FF16』をリリースできるようにはしますが、そんなにすぐは出せません」ということです。当時は『FF14』がようやく軌道に乗り始めていたこともありましたし、『FF14』のパッチのクオリティを下げずに、1年半くらいかけて、髙井さんたちがリードしてくれていた開発メンバーの引き継ぎを少しずつ行っていきました。
その引き継ぎの準備が完了してから『FF16』の開発をじわじわスタートしていったので、開発の初期は本当に3人くらいでやっていたりしました。そこから少しずつスタッフも増えていって、結果的に30人くらいの規模でアルファ版を作りました。
そして今回プレイしていただいた「イフリートvsガルーダ」戦がモックアップとして完成した辺りで、「このクオリティの戦闘を量産していくと考えると、課題が多すぎないか……?」という疑念を覚え始めたんです。そもそも自分たちはアクションの開発の経験も少ないし、この作り方で合ってるのか……!? みたいな(苦笑)。
髙井氏:
「どうやってバトルをフィニッシュまでまとめていけばいいんだろうね?」とか話してたりしましたね(笑)。
吉田氏:
この課題に直面していた時、たまたま人づてに鈴木さんが自身のキャリアアップを考えていること知り、そこから直接鈴木さんに会いに行ったんです。そこで「自分みたいなアクションを作り続けていた人間って、スクエニに需要はありますか?」と聞かれて…………「100%需要あります!!!」と。
とはいえ、引き抜きをしてしまうような形はあまり好きではないので、僕が直接大阪に行って「鈴木さん自身がチャレンジしたいと言ってくれるのであれば、このくらい報酬を出せます。こういった仕事をしてもらいます。」と直談判しました。僕、なんだかんだスクエニの取締役ですしね(笑)。
鈴木さんは途中からの合流ではあるんですけど、「ゲームデザインはほぼ決まっているけど、これをどうやって実現していこう?」というタイミングで開発に参加していただいたので、とても助かりました。
──そうなのですね。では、「『FF16』はアクション要素を強めにする」ということは企画の初期段階で決まっていたのでしょうか?
吉田氏:
完全に初期の段階で決まってました。「僕が『FF16』を担当するならこれかな」と思ってました。そこはある意味、ゲームデザインの権限を先に握ってしまっている部分で申し訳ないとは思います。
正直、『ファイナルファンタジー』というのは、100%自由には作れないものでもあるのです。
15作目までナンバリング作品が出ている事実をなかったことにはできないですし、色々な世代の人たちがそれぞれのFFに対して思い入れを持っています。
特に、前作の『FF15』に関しては一部のプレイヤーの方に、「ストーリーが突然終わった」「いろいろなものをDLCに逃がした上、DLCもキャンセルされたし……」というお声をいただいた事実もあります。もちろん、『FF15』も十分魅力的なタイトルだとは思いますが、そうした結果を無かったことにはできません。それらの反応を踏まえた上で、最新作を作らなければいけないわけです。
吉田氏:
その上で、すごくたくさん売らないといけない。なぜなら、開発にめちゃめちゃお金がかかるのもFFシリーズの宿命。もうFFの制作においてはそれが前提条件です。ボリューム、グラフィックス、ストーリー……ほぼ全ての要素に期待が寄せられ、その上で「まずたくさんの人に手に取ってもらえるゲームにならなきゃいけない」のです。
FFそのものが今の若い世代の人になかなか遊んでもらえなくなっている中、生まれた時から目の前にビデオゲームが存在していて、ゲームで育ってきている若いゲーマーたちにストレートに「FF」を伝えるには、「ボタンを押せばキャラクターが剣を振り、銃を撃つ」という直感的なアクションは切っても切り離せない要素だと最初から考えていました。
「ゲームとして中途半端になるくらいなら、コマンド要素は無しでもOK。しっかりアクションとして作ってほしい」ということは一番最初の段階で決めていました。
『FF16』は、どう遊びたいかの全てのニーズに応えられるように作っている
──ここからは『FF16』の「バトル」についてお聞きしたいと思います。やはりクライヴのフェニックスの翼をバサーっ!と広げたり、タイタンの拳で思いっきり殴ったりする召喚獣アクションがすごくカッコいい!!と感じました。「クライヴのモーションのカッコ良さ、アクションの爽快感」などへのこだわりがあれば教えていただければと思います。
鈴木氏:
先ほどの吉田さんのお話にもあった通り、僕は『FF16』のアルファ版が完成した後の途中合流という形で参加しました。まず最初に髙井さんから、「『FF16』は召喚獣にフィーチャーした作品だから、バトルやアクションにおいても召喚獣の存在を大事にしたい」と今作が目指すバトルの方向性を教えていただき、バトルデザインのイメージを擦り合わせていきました。
そしてアルファ版のROMを触ってみたのですが、「召喚獣の要素」をクライヴのアクションからあまり感じ取れなかったんですよね。
確かに、フェニックスの力を手に入れたから「炎属性の魔法を使える」、「剣に炎を纏わせる」というアクションを作るのは間違いではないんですけど……「これは召喚獣フェニックスの力です」と説明をされなくても、アクションを通して召喚獣の要素がしっかり感じられるかというと、ちょっとそこには到達していないと感じました。
そこから「召喚獣の力をより魅力的に見せる表現」のための試行錯誤を重ねていきました。具体的には、「クライヴの召喚獣アクションが増える=プレイヤーの戦術が広がる」というデザインを作りつつ、同時に「召喚獣の力を使っているからこそ、こんなにダイナミックな技を繰り出すことができる」とプレイヤーに直感的に伝わりやすい表現でアクションを構成することを基本方針に据えました。
鈴木氏:
召喚獣アクションでフェニックス自体には変身しないけれど、「フェニックスの身体の一部である翼を使って攻撃する」、「ガルーダの爪を使って攻撃」といったように、基本的に召喚獣のパーツの一部をアクションに組み込んだうえで、ビジュアルも魅力的に見せる表現を目指しました。
ただ、ゲームのビジュアルがリアルになればなるほど、ゲーム的な動きをすると嘘っぽくなってしまうんですよ。召喚獣アクションをビジュアル的にカッコよく見せたいけど、あまり過剰にすると嘘っぽくなる。でも、リアルに寄せていくと、段々スタイリッシュさやカッコ良さが失われていきます。そこは「モーションキャプチャーを最初に撮って、そこから手作業で直していく」ことで解決を図っていきました。
たとえば、「攻撃が当たった時のヒットスロー」の際のクライヴのポージングは、ゲームのビジュアルとしての美しさやカッコ良さを意識して、ポージング調整を行っています。ただ、攻撃を行った後の後隙はリアルな自然な動きで体勢を戻すように表現しています。この「リアルな動きの中にアニメ的な、ゲーム的なケレン味を共存させる」ことは常に意識していました。
──『FF16』のアクション部分の開発には鈴木さんの前職の経験や知識がかなり活かされていると感じました。実際に『FF16』の開発に鈴木さんが合流したことによって開発チームにどんな変化や、新たな発見があったのでしょうか?
吉田氏:
僕はプロデューサーだし、鈴木さんに「好きにやっていいよ」と言った以上、鈴木さん本人が納得するまで作りきって「もうそろそろアクション触ってもいいよ」のゴーサインが出るまで黙ってるだけでしたね。
髙井氏:
鈴木さんが来てくれて、アクション担当のスタッフやデザイナーも含めて、ようやく『FF16』の開発チームが「ひとつのチーム」として動き始めたような感覚はありました。
先ほど話していただいた召喚獣アクションの表現の方針を固めつつ、オンライン会議で新しく作り上げたモーションひとつひとつについて話し合う確認会をやったりしていました。「今日はタイタンのアクションが一通り完成したので、確認会します」みたいな(笑)。
鈴木さんが合流してくれたことによって、デザイナーやプログラマーも含めて「ここはこうして欲しい」「この細かい部分を調整して欲しい」といったアクション部分をチーム全体で作り上げていくことができましたね。
──各召喚獣のアビリティを触った印象としては、フェニックスがバランス型・ガルーダがスピード型・タイタンはパワー型……といったように作られていて、それぞれのアクションを組み合わせることが重要でありつつも、やはりプレイヤーさんによって好きな召喚獣・好きな戦い方がわかれそうな気がしました。お三方の中で、「この召喚獣が好き!このアビリティが好き!」があれば教えてください。
吉田氏:
僕はフェニックスが外せないんですよ。なぜなら、主人公のクライヴが弟から祝福を受けて使えるようになった能力だから。王家の生まれでもあるクライヴは、周囲からも「フェニックスの力を宿して生まれてくるはずだ」と思われていました。ところが、実際は何の力も使えないただの人だった。
代わりに、身体の弱い弟のジョシュアにフェニックスが宿ってしまった。そこからクライヴは「何の力もない自分から変わりたい、こんなにかわいい弟に重荷を背負わせたくない」という思いから剣の修業を重ねて、ジョシュアを守る近衛騎士となりました。
そしてジョシュアもそんなお兄ちゃんのことが大好きで、クライヴにフェニックスの力を分け与えました。ちなみにフェニックスは唯一、「ドミナント以外の人間に力を分け与えることができる」という特殊能力を持っていたりします。
ですが、ジョシュアはある惨劇で死んでしまった。そしてクライヴはその弟を殺した相手への復讐のために生きている男なので……だから、僕はフェニックスを外せないんです。クライヴに感情移入しすぎてしまって、基本的にフェニックスのアビリティを中心に戦い方を組み立ててしまいます(笑)。
髙井氏:
召喚獣のアビリティはそれぞれに個性はあるけど、優劣自体はないようにディレクションしています。その上で、フェニックスは初めてプレイヤーが手に入れる召喚獣なので、「使い勝手が良く、オールマイティに使える」ことを意識した性能となっています。フェニックスはシナリオ上も重要な存在ですし、おそらくプレイヤーの方は長いことフェニックスのアビリティを使う事になるのではないでしょうか。
しかし、このゲームは装備できる召喚獣が3スロット用意されていて、もちろんフェニックス・ガルーダ・タイタン以外の召喚獣も増えていきます。だから、プレイヤーの皆さんには色々な召喚獣のアビリティを獲得していく中で「俺もうフェニックス要らないわ!」と思ってほしいんです(笑)。
吉田氏:
あぁ、ディレクターとしてね(笑)。
髙井氏:
そうそう、ディレクターとして(笑)。とはいえ、フェニックスの性能自体はとても使いやすいので、「フェニックスを手放すのは中々難しいよなぁ……」と思っていたんですが、そんな中で鈴木さんの方から「シヴァができあがりました」と完成されたシヴァのアビリティを見せていただいたんです。
それでシヴァのアクションやバトルを確認していく中で、「シヴァはフェニックスを上回れる!」と思ったんですよ(笑)。シヴァで「これがあればフェニックスを手放してもいい」と初めて思えました。そういう存在なので、自分はシヴァが一番好きです。でも、もう一周した今はタイタンが一番好きなんですけどね……(笑)。
鈴木氏:
バトルディレクターとしては各召喚獣の戦術を作る時に、ガルーダであれば「アクションの操作における手先の器用さが召喚獣の強さに反映される」形としていて、逆にタイタンであれば「ユーザーの反射神経が召喚獣の強さに反映される」形としています。
たとえばタイタンのフィート(○ボタン)による攻撃のガードや、「ボタン長押しで力を溜めて、特定タイミングでボタンを離したら威力が上がる」アビリティも含め、主に反射神経を求めるアクションが多めになっています。タイタンを習得した以降に出てくる敵はガードブレイクをしてくる敵も登場するんですが、相手の攻撃をピッタリにガードする「ジャストブロック」に強化され、ガードブレイク攻撃すらも防げたりします。
なので、タイタンを本当に使い込んだ上で、敵の攻撃パターンを覚えてしまえば敵を掌の上で転がすようなことが……。
吉田氏:
おっと、そこまでだ! みんな発売したらタイタンしか使わなくなっちゃう!
一同:
(笑)。
吉田氏:
敵の攻撃を完全にガードするレベルに行くには相当使い込まなきゃいけないです(笑)。
ただ、普通にプレイしているとタイタンは「じっくりガードしながら戦う」「長押しで溜めて一気に攻撃」といった印象を受けると思うのですが、極限のレベルまで行くとそういう使い方じゃないんです。なので、鈴木さんの目指した「アクションの高み」は果てしなく高いです。
でも、そこまで完璧に使い込まなくても全然楽しめるのが『FF16』の懐の深さだと思います。それこそプレイヤーさんによる「このキャラクターに思い入れがあるから、この召喚獣は外せない!」というこだわりも僕たちとしてはあってほしいです。
そして特定の召喚獣のフィートやアビリティでしか攻略できないバトルコンテンツも用意されているので、そこで召喚獣を縛った状態で挑んでもらったりすることもあります。召喚獣アビリティひとつ取っても、かなりやり込めますね。
──今回実際に『FF16』のアクションを触ってみて、召喚獣アクションの組み合わせやクライヴのコンボなども含めて、「想像以上に手応えのあるアクション」だと感じました。ただ一方で、指輪によるサポート機能も充実していて、カジュアルに遊ぶこともできます。
開発者のみなさんから、「プレイヤーの方にはこういった形で『FF16』のアクションを楽しんでみてほしい」などがあれば教えていただきたいです。
吉田氏:
『FF16』の開発初期から条件付きで言っていたことがひとつあって、それは「アクション性が高くても構わないけど、サポート機能を徹底させてほしい」ということです。要は、これまでのコマンドライクなFFが好きで、「アクションが苦手で遊べない!でも『FF16』のストーリーは気になる!」という人たちが安心して遊べるように、サポート機能は絶対に付けるよう伝えていました。
ですので、「『FF16』をどう遊んでほしいか」と聞かれたら、僕は「どう遊びたいかの全部のニーズに応えられるように作っています!」とお答えします。まず最初にストーリーを見たいならば「ストーリーフォーカス」を選べるし、ガチでアクションを遊びたければ「アクションフォーカス」を選べます。
実際に触っていただいてわかるように、『FF16』は「アクセサリーの付け替え」だけでサポート機能をいくらでも調節することができます。攻撃も回避も完全オート化して超絶アクションで楽しめるようにもできるし、「流石に簡単すぎる……」と感じたらスロー機能だけを付けることもできる。あのスロー機能だけでも「俺、カッコよく戦えてる!」感はあると思います(笑)。
そして、「『FF16』のグラフィックスのクオリティとキャラの等身に合った“重さ”を感じられるアクション」はスタッフがすごくこだわって作ってきてくれました。VFXもいっぱい出るから最初はあまり落ち着いて観察することはできないと思うのですが……最終的には「アクションの重さ」へのこだわりを見ていただけるとありがたいですね。
髙井氏:
アクション単体で言うと、自分はあまり軽めのアクションが好きではないんですよね。『FF16』もアクションのゲームスピード自体はそれなりに早いんですが、ヒットの重さや「殴った」「吹っ飛んだ」といった手応えがしっかり感じられるアクションになっていると思います。
『FF16』はまず最初に「アクションを全力で作った」と宣言させてもらっているし、PRにおいても「アクション」がキーワードとして取り上げられているんですけど、逆に言えばアクションが得意な人は「『FF16』はどれほどのアクションなんだ」という目で見ると思います。
そしてアクションが苦手な人は「アクション操作をそんなに求められても……」と思われるかもしれませんけど、その両極端の趣味趣向の人が一切気にせずに遊んでいただいても大丈夫なところまで作りこみました。
特に「アクション」という言葉から難しさを連想してしまうユーザーさんには、「本当に自分が楽しみたいものを純粋に楽しめる」ような調節がいくらでもできるようになっていますので、ぜひ安心して手に取っていただきたいですね。
鈴木氏:
おふたりからも語っていただきましたが、アクションゲームのヘビーユーザーの方からコマンドRPGのFFしか遊んだことがない人にも幅広く楽しんでいただけるような「敷居の低さ」を『FF16』では意識しています。
たとえば遊び方ひとつ取っても、今作はシナリオの進行に合わせて新たな召喚獣の力が付与されていく中で、その召喚獣ごとにクライヴの戦術が大きく変化させるようにしています。
今回の体験内容では、防御と破壊力を重視したタイタンや、機動力や空中戦に特化したガルーダなどが登場していますが、未登場の召喚獣を獲得するとこれまでとは全く別の戦術で戦うことができます。戦術に多様性を持たせているので、その中で遊び方はユーザーさんが自由に決めてほしいですね。
僕自身、前職でもずっと3Dアクションを作り続けてきているので、アクションゲームのヘビーユーザーさんが「面白い」「やりがいがある」と手応えを感じるゲームデザインはこれまでもたくさん作ってきました。もちろん『FF16』にも、そういうガッツリとしたアクション要素は入っています。
ただ、これまでも何度か話したように、アクションが苦手な方でも遊びやすいサポート機能を充実させていますので、僕としては「ファイナルファンタジー」シリーズのファンの方にぜひ遊んでいただきたいと思っています。アクションが苦手という人も、その不安を拭えるような作りになっていますので、存分に楽しんでいただけるはずです。
──バトルでもうひとつ聞きたいことがあったんですが、「トルガル」が戦闘に参加しているじゃないですか。実際に遊んでいても「トルガルかわいい~!」と思ってしまうのですが、トルガルの「かわいらしさ、犬っぽさ」に対するこだわりなどがあれば教えてください。加えて、「トルガルが戦闘に参加している理由」についてもお聞かせください。
髙井氏:
まず最初に『FF16』をシングルプレイのアクションRPGとして作ることは決まっていました。そこからパーティーメンバーも物語の進行に合わせて入れ替わることは想定していたんですが、それでもクライヴの1人旅のシーンが増えてしまうのも寂しいかなぁ……と考えていました。
とはいえ、人間の誰かがずっと付いてくるのも何かが違う気がする。そこで「何か動物を連れ歩くような形にすればいいんじゃないか」と思いついたのがトルガルの始まりだったと思います。その中で、犬というか、「魔狼」的なところに落ち着きました。
吉田氏:
鈴木さんが合流する前の初期構想の時点では、「トルガルをスキン替えさせたい」みたいなアイデアがあったんですよ。あの過酷な旅路にどんな動物を連れていくか。猫は超絶癒しがあるんですが、今回は犬系の方が合うだろうと。
たくさん売らなきゃいけないし……よし、犬派に媚びろうかと……。
一同:
(笑)。
吉田氏:
最初は「色々な犬種のスキンを入れてみて、プレイヤーの好きなトルガルのデザインで連れ歩けるようにしよう」みたいな夢を語ってたんです、最初は(笑)。
でも、トルガルの毛並みを表現するファーシェーダーの処理で「もう現時点のトルガルを作るので精一杯です!」って開発のキャラ班と描画班がめちゃくちゃキレてて……とても「スキンを増やしたい」だなんて言い出せる状況じゃなかった!
髙井氏:
「トルガル映ってると処理重いんですけど……!」って怒られる(笑)。
吉田氏:
そうそう、そうなんですよ……。
初期段階では「トルガルのスキンをプレイヤーの愛犬と同じ犬種にできるように、犬種を100匹入れる」という構想はしていたし、それだけで犬好きの方にも注目いただけるんじゃないか、と最初は言ってたんですが……途中から真顔で「いや、ホントに無理だこれ」って(苦笑)。
髙井氏:
トルガルの動作の愛らしさについては、トルガルを担当してくれたアニメーターの子が頑張ってくれています。トルガル担当アニメーターは、中途採用で僕も面接した子なんですけど……その時に「どういうアニメーションを作りたいの?」と聞いたら、「動物が好きです!犬とかやりたい!超やりたい!!」と言っていて……結果的にトルガル担当になりました(笑)。
──おおお、奇跡のようなエピソードですね(笑)。
吉田氏:
いやめちゃめちゃ良い表情するよね、トルガル。
本当に色々なシーンのトルガルを見てあげてほしいし、撫でてあげてほしいですね。
鈴木氏:
バトル的なところで言うと、トルガルは「クライヴの相棒として一緒に旅をする」キャラクターと聞いていたので、バトル中は「シチュエーションに応じて最適な行動を行ってくれるパートナー」にすることを目指しました。
たとえば、「トルガルの戦闘方針を最初に定めて、あとはトルガルが勝手に動く」ような落とし込みもできたとは思います。でも、僕自身は「戦闘方針をいちいち指示しなくても、そのシチュエーションに対して最適な行動を自動でやってくれよ」と思ってしまうタイプなんですよ(笑)。
正直、「ピンチの時に仲間に指示出しして、体力を回復してもらうとかもできるけど、そもそもプレイヤーがピンチの条件はある程度ゲーム側で判定できるよね?その判定で仲間に回復してもらうこともできるよね?」と思ってしまいます。
加えて、『FF16』はアクションが苦手な人でも遊べることを徹底したゲームなので、わざわざ行動の方針なんか立てなくてもトルガルが勝手に体力を回復してくれる……などの「シチュエーションに応じた最適な自動行動」は大前提としました。そしてプレイヤーに「パーティーにトルガルがいてよかった」と思ってもらえる存在にする。ここをマストとするように制作しました。
鈴木氏:
一方で、アクションが得意な人がやり込んだ時にも、「トルガルがいるからこそ生まれる戦術の広がり」も入れたいと考えていました。基本的に、ゲーム内におけるトルガルへの指示はクライヴの「声」によって行われます。つまり、アクションゲーム的に「硬直中などのクライヴが動けないタイミングであろうとも、トルガルに指示を出せる」ような作りになっています。
つまり、クライヴの行動に一切依存せずに、クライヴの戦術に介入できる存在なんです。結果的にトルガルがいることによって、ガチのやり込みにおいて戦術の拡張性や天井が一気に上がる……そういった相棒キャラになるようにも作られています。かといって、トルガルへの細かい指示を全てのプレイヤーに要求すると、偉くハードルの高いアクションゲームになってしまいます。
なので、トルガルはちゃんとアクションが苦手な人にも得意な人にも「トルガルありがとう!」と思ってもらえるようなパートナーを目指して作りましたね。
──実際にプレイしていて驚いたのが、マニュアル操作で遊んだあとにアクセサリーを付け替えてオートで戦ってみると、「全てのアビリティを駆使して戦うとこんなにスタイリッシュに戦えるのか!」ということでした。そこでまた改めてコンボやアクション性の深さに気付かされて、もう一度マニュアルで操作してみたくなりました。
鈴木氏:
そうですね。サポート機能に関しては、「その時に習得しているアビリティで最も効率のいい戦い方」をするのではなく、「その時に習得しているアビリティで最も魅力的な“映える”戦い方」をしてくれるようにオートアタックのプログラムを調整しています。
アクションが苦手な人は、ひとつのボタンを押しているだけでクライヴが華麗に戦ってくれるし、マニュアル操作で遊んでいる人は一度オートに切り替えてみると「あぁ、このアビリティってこんな風に使うんだ」みたいな発見もあります。
オートアタックはある意味「お手本」になれたらいいなという狙いもあるので、割と狙ったところに綺麗にハマってくれた感じはありますね。
吉田氏:
オートアタックは「配信映え」を意識しているところもあります。ただ、配信者側で「どんなアクセサリーを付けているのか」をいちいち宣言したり表示したりするのはナンセンスだと思うので、「今どのアクセサリーを装備しているのか」が画面上のUIにアイコンとして表示されてるんです。
吉田氏:
アクセサリーのアイコンが全部非点灯だった場合、「完全マニュアル操作でこのくらいの動きをしているのか!」と画面だけでわかります。『FF16』はもちろんやりこみ要素が結構用意されているので、そっちの方で「超絶難度に超絶プレイで立ち向かう」みたいな時はすごく面白い配信になるんじゃないかと思います。
ですので、『FF16』のアクションの懐の深さはめちゃくちゃあります。ただ、クリアのためにそのテクニックが必要なわけではないので、とにかく「ストーリーを最後までクリアしていただく、どんな人にも1周目を楽しんでいただく」ことは大前提として作っています。
──オートアタックの動きが本当にすごくて、正直「いやいやこんな風に動けないよ!」と思ったりもしました(笑)。
吉田氏:
でもゲーマーの端くれだと、アクセサリー外して「俺もちょっとオートと同じ動きできるか試してみるか」とかやってみたくなりますよね(笑)。
『FF16』はそもそも何故イフリートが重要なの?
──同じFFナンバリングシリーズ内だと、『FF15』がアクションRPGとしては先達的なところがあると思います。特にフェニックスシフトは割と『FF15』のシステムを引き継いだ部分だと感じたのですが、『FF15』のアクションと差別化したところや、面白さを引き継いだ部分などはありますか?
髙井氏:
そうですね。フェニックスシフトは『FF15』のシフトを意識しました。ユーザーさんはまずあのシフトというアクションに慣れてくれただろう……と考えていましたし、純粋に素早く移動できるアクションは便利ですしね。最初から使える召喚獣のフェニックスが便利なシフトを持っていると色々助かるよね、ということはバトルを作っていく中で鈴木さんとも話していました。
ただ、フェニックス以外にも多くの召喚獣(アビリティ)が登場するので、『FF15』のアクションとの差別化はあまり気にしていませんでした。逆に差別化は心配してないというか、プレイヤーさんの好きな召喚獣のアビリティを使ってみてほしいですね。
吉田氏:
この辺がFFの良いところでもあり、悪いところでもあるのかもしれないですね。シリーズの初期から中期はATBシステム【※1】が順当に進化していってるのに、途中から作品ごとに戦闘システムが全然変わってくる。新しいのが出たら、新システムをまた全部覚えなきゃいけない!
──『FF10』で急に変わるんですよね!【※2】
吉田氏:
『FF11』になったら突然オンラインだし、『FF12』はガンビットだし、『FF13』で久しぶりにATBに戻ったと思ったら『FF14』がまたMMO。
アクションRPGに寄った『FF15』だからある程度見ているところはありますが、そもそもキャラクターの等身も違うし、アクションの重さも違います。「キャラの歩き方」ひとつ取っても、『FF15』と『FF16』では歩幅も違います。その辺はかなり手探りで作っています。
※1「ATBシステム」
FFシリーズではお馴染みの「アクティブタイムバトルシステム」。敵味方が一定の時間が溜まった順番に行動していくあのシステム。
※2「FF10のバトルシステム」
主にFF4からFF9までは前述のATBバトルが導入されているが、ナンバリング10作目の『FF10』では完全なターン制バトルである「カウントタイムバトル」システムとなっている。行動順や戦術をじっくり考えられる魅力的なバトルシステム。
──ちょっと一旦召喚獣の話に戻るんですけど、そもそも『FF16』はなぜ「召喚獣」がメインテーマとなっているのでしょう?
吉田氏:
これはまだ『FF16』の開発を始める前の話なのですが、いつだったかの東京ゲームショウでとにかく「配信に出る」仕事が多かったんです。『FF14』の仕事ですね。TGSのすごい人の数の中、短い時間で色々なブースを移動しなきゃいけなかった。とにかく移動が大変でした。
で、「ここで召喚獣になったら会場も一跨ぎできるかなあ」と妄想が……。
一同:
(笑)。
吉田氏:
「今、TGSの会場内でイフリートに変身したらみんな『ワーッ!』って驚くだろうし、ブースからブースを一跨ぎで移動できるな……」と思ったことがあったんです(笑)。
そして、ここから「人の身でありながら召喚獣になる」、「バトルのスケールがリアルタイムで人間から召喚獣のスケールに変わる」という2つのアイデアを思いついたんです。
特に後者はローディングが一度でも入ってしまったらつまらないけれど、この人間から召喚獣の変身がシームレスに行われて、さっきまで人間の視点から見ていた戦場が召喚獣の視点からでは単なるオブジェクトになる……つまり「世界のレイヤーがひとつ上がる」んです。これはいつか使えるアイデアかもしれないなあ、と考えていました。
そして、改めて『FF16』を作るにあたって、「これまでのFFシリーズで思いっきりメインにフィーチャーしてこなかった要素はなんだろう?」と考えるところから始めました。それが「召喚獣」でした。
なんというか、シリーズが進むにつれて扱いが段々と軽くなっていったというか……召喚獣が「単にすごい技」になっていき、だからこそ『FF14』では人々の願いや祈りによって生み出される「蛮神」という存在まで引き上げています。
ですので、改めてFF16で「召喚獣」そのものにフィーチャーすることでゲーム全体のFFらしさも出るだろうし、これまでのFFでは見たことのない絵作りもできる。そして「召喚獣」自体がアイコニックでもある。この辺りが召喚獣をメインテーマにした理由ですね。
──本当に変な質問かもしれないんですけど……『FF16』は「イフリート」が重要な召喚獣じゃないですか。でも、FFシリーズ全体で見た時に、イフリートはメインに持ってくるほど存在感が大きい召喚獣ではないと思うんです。
最初に倒されてしまったり、最初に仲間に加わってそれ以降はあまり使われなくなったりする。大体目玉としてドーン!と出てくる召喚獣はバハムート、アレキサンダー、オーディン辺りの印象があります。『FF16』はなぜ「イフリート」がここまで重要な存在なのでしょう?
吉田氏:
でも逆に、「1体目に出てくる」お約束の召喚獣こそがイフリートです。そしてちょっとイフリートさんは不遇だなと思っていたのです。『FF8』辺りからその不遇な感じに拍車がかかっていて、試験でイフリートさん倒されてしまいますし……。
「1体目とはいえここまでか……」と。
一同:
(笑)。
吉田氏:
でも、イフリート自体は造形的、デザイン的に毎作めっちゃカッコいいんですよね。
髙井氏:
まぁ本来は「魔人イフリート」だからね(笑)。
吉田氏:
そうそう。実は『FF14』の序盤も「FFのお約束順」に召喚獣(蛮神)が登場するようにしていたりしますね。だから『FF16』もできるだけ多くの方が知る召喚獣で固めています。
髙井氏:
イフリートがメインになっているのはクライヴとジョシュアのふたりを「炎で結ばれた兄弟」というイメージとして描いてみたかった面もありますね。
あと、実はシナリオ的にも『FF16』の召喚獣に優劣はほぼないんですよ。戦力的には全員互角です。なので、「どの召喚獣が大事か?」ということはなくて、扱いとしてはどの召喚獣も同列ですね。
吉田氏:
あくまで召喚獣をその身に降ろす「ドミナント」という存在なので、召喚獣の強さは元になる人間の性能や精神状態の揺らぎにもすごく影響を受けます。なので、ドミナントは「各国にそれぞれ性能の違う兵器が点在していて、どれも一長一短」というイメージです。
超巨大な召喚獣になるドミナントもいれば、小さいやつもいる。それぞれの力を活かして、「実際に召喚獣が激突したらどうなるのか」がゲームとして表現されています。
先ほど髙井が「炎で結ばれた兄弟のイメージ」と言った通り、FF16のイフリートとフェニックスが向かい合っているタイトルロゴも天野喜孝先生に「今回のFFは“炎に彩られたFF”にしたい」と、2体の炎の召喚獣のイメージをお伝えする形で制作していただきました。
──召喚獣に合わせてお聞きしたいんですが、今作の「ドミナント(召喚獣を自らの身体に呼び降ろす者)」もこれまでにはなかった要素だと思います。この「召喚獣を自らの身体に呼び降ろす」という要素はどこから着想やアイデアを得たのでしょうか?
髙井氏:
着想っていうと前廣【※3】が考えたところかもなぁ……(笑)。
※3「前廣和豊氏」
『FF14:新生エオルゼア』や『蒼天のイシュガルド』におけるメインシナリオライターを務め、『FF16』のクリエイティブディレクター&原作・脚本を担当している前廣和豊氏。
吉田氏:
『進撃の巨人』も流行ってたし……「キャラクターと召喚獣がひとつになっている」という要素がイメージとして伝わりやすいと思ったのもありますね。
たとえば、ガルーダの行動やアニメーションの中に「変身前のベネディクタ」の存在が見え隠れしたりもするし、そこをうまく表現できたのは結構デカいかなと思います。
髙井氏:
どこかに仮面ライダーとかウルトラマンとかの特撮作品の影響があるんでしょうね。
吉田氏:
カット割り見てたらもう……みんなの大好きさが溢れてますね。
──そこで聞いてみたかったのですが、やっぱり『FF16』の召喚獣の動きの「生っぽさ、人間っぽさ、獣っぽさ」は意識された部分なのでしょうか? 特にイフリートがガルーダの腕を思いっきり引きちぎるシーンなんかは、すごく「生っぽさ」がありました。
髙井氏:
モーションキャプチャーは生っぽさが出ますし、アニメーターさんのこだわりも強いですからね。動かす対象が人間から離れていけば離れていくほど手付けでモーションを修正していくことが多くなるのですが、そういう「人間から離れた存在」であるほどアニメーターさんのセンスが光りますね。
吉田氏:
イフリートとガルーダはそこまで体格差がないので、バトル全体を「プロレス」というテーマで作っていたりします。お互いに技のかけ合いをしたりする。
あとは、『エヴァンゲリヲン新劇場版』の使徒vsエヴァの影響も大きいんじゃないかなと思います。特にエヴァはモーションキャプチャーを使用した上で「生っぽく動く」姿が描かれていますからね。
でも、別の召喚獣同士の戦いになると全くテイストが変わってきます。とりあえず、イフリートvsガルーダ戦で、以降使い回している部分はありません! あのスケール感と重さはこのシーンだけでしか使っていません!
髙井氏:
イフリートがあれほど鈍重に動くのはガルーダ戦だけですね。それこそイフリート自身も何が何だかよく分からず、戦い慣れていないような状態です。
──なるほど。それこそエヴァの1話みたいな感じなんですね。
髙井氏:
ああ、そうですね(笑)。
吉田氏:
ガルーダ戦だとイフリートはズドーンズドーンって感じで鈍重に動いてる。あの動きはあそこだけです。ここからは自分よりも5倍くらいのサイズの召喚獣と戦ったりしないといけないんで……ゲームスピード自体もめっちゃ早くなったりします。召喚獣合戦はそこの「スケールの違い」も結構面白いんじゃないかなと思います。
──実際に召喚獣合戦を操作していて驚いたことが、やはり「召喚獣をちゃんと操作できる」ということでした。イフリートでちゃんと火球を撃てる!……みたいな。鈴木さんは召喚獣のアクション面にも携わられているのでしょうか?
鈴木氏:
そうですね。召喚獣同士のバトルも監修しています。先ほどお伝えした通り、バトルの難易度や攻撃の重さなども含め、トータルでバトルのディレクションを行っています。
今回のイフリートvsガルーダ戦を調整していく中でも、開発内で「動きが重すぎる」「移動が遅い」といった意見は出ていました。もちろん機動力が高くて、スイスイ動けた方が遊びやすいと思います。ですが、あの戦いで演出したいのは「召喚獣の重さ」「鈍重に動くイフリート」だったので、意図的に重い動作にしています。
PS5というハードに徹底的に最適化を施した『FF16』
──先ほどのプレゼンでも「『FF16』はPS5の性能を最大限に活かした」とおっしゃられていましたが、シームレスとアクションを両立したアクションなども含めて、明確に「PS5だからこそ実現できた」部分などはありますでしょうか?
吉田氏:
PS5はメモリの大きさも含めて、ハードウェアのバランスの良さは群を抜いていると思います。
髙井氏:
あのメモリがなければ、クライヴの性能や演出は上手く実現できていないでしょうね。召喚獣の身体の部位を使うアビリティがオンメモリで動いているのはPS5だから再現できている部分かなと。
吉田氏:
確かに昔に比べるとハードの価格自体は高くなってきているとは思うのですが、PS5と同等の性能を持ったPCを買おうとすると倍の価格では済まないと思います。今作はPS5というハードに徹底的に最適化を施したからこそ、これだけのゲームで「ロードを挟まずに、アクションもバトルも演出も何もかもが繋がっていく」という体験が作ることができています。
今作の「凄まじいボリュームがのしかかってくる」ような体験は、やっぱり現時点ではPS5のハード性能のおかげなんじゃないかと思います。
──特にプレイしていてビックリしたのが、ほとんどがリアルタイムで進行するので「どこかで休めるのかな?」と思ったらずっとノンストップで続いたところです。休む場所がない!
吉田氏:
ポーズかけてください! どこでもポーズできますので(笑)
髙井氏:
やめ時、難しいですよね(笑)。
吉田氏:
逆にイベントもカットシーンもリアルタイムだからこそ、いくらでもポーズをかけられます。プリレンダリングのムービーの場合は、ポーズするタイミングを探すのが結構難しいんです。でも『FF16』は全部リアルタイムだから、どこでポーズしていただいても大丈夫です。
「この先すごい展開になりそうだけど……ちょっとトイレに行きたい!」という時はまずポーズをかけていただければ。
──それこそ没入感もすごいですし、作品としてのエンタメ性が高いというか……『FF16』では初めて『アンチャーテッド』や『ゴッド・オブ・ウォー』を遊んだ時のような感覚がありました。「ゲームだからこそ味わえるエンタメ」を久しぶりに味わった感じがします。
髙井氏:
そう言ってもらえると嬉しいですね。
吉田氏:
それはめちゃくちゃ嬉しいです。『FF16』は「映画を遊ぶようなゲーム」を目指して作ってきたのですが、僕らとして怖かったのはプレイヤーのみなさんに「これはゲームなのか?」と言われてしまうことでした。やっぱりストーリー性を全面に押し出していくと、操作が少ないパートもシーンによっては出てきてしまいます。
その辺りが制作している時はちょっと不安だったんですが、実際にそれぞれを繋げてみたら全然そんなことはありませんでした。ただ、この「映画を遊んでいるような感覚」をどうやってPRしていけばいいのか、という点は難しかったです。
──その「映画を遊んでいるような感覚」も含めて、『FF16』は特に海外人気が高くなりそうだと感じました。
吉田氏:
もしお時間があれば、「英語ボイス+日本語字幕」でプレイしていただくと凄まじい没入感があるんじゃないかと思います。もう本当にコージ【※4】の寿命が縮まってしまうんじゃないかというくらい、コージを含め、ローカライズスタッフが翻訳を頑張ってくれました。
※4「マイケル・クリストファー・コージ・フォックス氏」
『FF11』や『FF14』などのローカライズを担当し、今回の『FF16』でもローカライズディレクターを担当しているマイケル・クリストファー・コージ・フォックス氏。
髙井氏:
シドルファス・テラモーンの英語ボイスはめちゃくちゃカッコいいです!
吉田氏:
もちろん英語ボイスだけでなく、全世界の言語の役者さんに徹底的な演技をしていただきました。『FF16』はリップシンクが英語ベースなのでその辺りのナチュラルさも含めて色々なボイスを楽しんでみてほしいです。
特に海外ドラマが好きな方であれば、「英語ボイス+日本語字幕」はすごくハマるんじゃないかなと思います。
──「シームレス」で言うと、『FF16』はゲームに合わせた楽曲の使い方もすごいと感じました。ボタンを押す時に曲の音が低くなっていたり、全体的に音楽もリアルタイムに合わせて処理されていますよね?
吉田氏:
ゲームに合わせた「どの音を立てて、どの音を下げるか」のリアルタイムの処理は祖堅チーム【※5】のこだわりですね。祖堅チームの人たちが尋常じゃないこだわりを見せてくれています。
※5「祖堅正慶氏」
『FF14』のサウンドディレクターや数多くの作曲を担当している祖堅正慶氏。今回のFF16においてもコンポーザーを担当。
髙井氏:
ひとつのバトルシーンでも同じ曲が流れているように聞こえますが、実は楽曲自体は細かく切り分けられています。シーン単位に合わせて曲を切り替えて、音楽をこんな感じで展開する……みたいなことを本当に細かくシーケンスで決めてくれています。
なので、「ガルーダのテーマを作ったので、ガルーダ戦はこのテーマを流してずっとループさせます」ではないんですよね。このリアルタイムに合わせた楽曲の処理はほぼ全てのシーンで行われています。
──そろそろお時間が近付いてきたので、締めに入っていこうかと思うんですが……最後に、以前公開されたFF16のビジュアルについてお聞きしてみたいことがあるんです。これのことですね。(吉田さんたちにノートPCのモニターを見せる)
吉田氏:
はい。
──この絵がすごく良いな~と思います。「FFだ!」って感じがします。『FF16』のビジュアルやアートワーク全体を通して、「『FF16』のアートワークはこの空気感でやる!」「『FF16』のビジュアルや絵からこういう雰囲気が伝わってほしい!」といった部分があれば教えていただきたいです。
髙井氏:
当然、『FF16』のキャラクターデザインを担当している高橋和哉さんとも話し合いながらビジュアルは作り上げているのですが、今作はまず最初にシナリオからキャラクターを起こしてもらうところから始まっています。
そこで固まったキャラクターに対して、イメージアートを起こしてもらう……という順番で作り上げていったので、まず最初に「『FF16』のビジュアルはこのイメージ」という絵がバーン! とあったわけではないんです。ひとつのメインビジュアルから作り上げていった形ではないんですよね。
吉田氏:
流石にジルやベネディクタなどのドミナントはラフアートの時点で、骨格から髪の跳ね具合まで髙井と僕がいる場で打ち合わせています。キャラデザインの意見がバラバラなのは良くないですからね。
ただ、基本的に「顎のラインはこうだよね」「髪型はこうだよね」みたいな共通意識がズレないんです。というか、第三開発は元々みんなアートワークの方向性が似ています。
吉田氏:
ただ唯一、リテイクが多かったのが今見せていただいたイラストなんです。『FF16』は終末感のある世界観なので、どうしても曇天が多くなってしまいます。どうしても画面が暗くなる。だからこそ、イラストやアートではFFの基本である「青い空」のイメージを踏襲しています。もの悲しさのある青で、と。
いつも「このアートは青を入れてくれ!青入れてくれ!!」ってお願いしています。そのイラストも2回ぐらいリテイクしてるんです。最初はもっと空が暗かったんですけど、「いやだから晴天だって!」って(笑)。
高橋和哉は「重ね塗り、厚塗りで陰影を出す」ことで特徴を出して行くタイプのアーティストなので、『FF16』のイラストでは「ごめん!もっと彩度出して!」とお願いすることが多くなっていますね。
──なんとなく『FF16』は暗い絵が多かったので、あのイラストが出てきた時に『FF16』が「FFとして実体を持った」ような感覚がありました。長くなってしまいましたが、最後にお三方から一言ずつコメントをいただければと思います。
吉田氏:
いよいよメディアのみなさんに『FF16』を触っていただいて、今回はちょっとアクション面に特化したレポートになると思いますが……実はまだ「RPG」として遊べる部分の説明は全然していません。
ゲーム内にはシドルファスが活動しているアジトがあって、クライヴもそこに厄介になるので、今作にはちゃんと「拠点」が存在しています。
その拠点の中にはクラフトやショップが用意されていますし、「モブハント」のボードが置かれていて、世界中の強敵を倒しに行くようなサイドの遊びもちゃんと用意されています。ですので、脇道もかなりと用意しているのですが……発売までに、またしっかりお伝えしていこうと思います。
今回のテストプレイではオミットされているのですが、ボタンひとつで「現在のこのシチュエーションでは、どの国とどの国が戦っているのか?」という現状の説明がシーンごとに呼び出せるようになっているんです。そしてアジトに行くと、歴史学者がこれまでの歴史の振り返りを細かく解説してくれたりします。この読み物はどれも尋常じゃない文字数です!
今作のそういった「RPGとして、FFとしての遊びの大きさ」はまだ全然お話できていないので、これからのPRで徐々にお見せしてていければと思います。
今回は僕たちが『FF16』を語るだけじゃなく、メディアのみなさんが書かれた「ゲーマーとしてFF16を触った時にどう感じたのか?」という記事を見ながら、発売まで色々な想像を膨らませつつ、お待ちいただけると嬉しいです。ぜひ、これからの情報公開にもご期待ください!
髙井氏:
長い間開発を進めてきて、今回のメディアツアーが我々以外の方に初めて『FF16』を触っていただける機会でもあるんですが……正直ディレクターとしては感覚が麻痺しているんです(笑)。もう自分でも良いのか悪いのか分からなくなってますし、楽しんでもらえるか超不安!みたいな(笑)。
でも、メディアのみなさんからおおむねお褒めの言葉をいただいて、だいぶ安心できました。今回の体験会で「我々が作ってきたものは、最低限みなさんの興味を惹いた上で楽しんでいただけるものになっている」という自信がようやく持てました。
今回触っていただいた箇所は本当に序盤も序盤ですし、まだまだ説明できていないシステムも山ほどあります。そういったところも含めて、期待して待っていただければと思います。
これからプレイレポートを書いていただけると思うんですけど、まだ触れていない方にも『FF16』の良かった点や感動が伝わるような、初めてFF16に触れた人間の感情を想像できるような記事をライターさんには書いてほしいなと思っております(笑)。
一同:
(笑)。
鈴木氏:
『FF16』の「バトル回りのこだわり」、「やり込みの天井の高さ」、「アクションが苦手な人も入りやすい敷居の低さ」は何度かお話しましたが、やはり僕としてはアクションが苦手な人に遊んでみてほしいですね。かつ、『FF16』をきっかけにアクションを好きになってもらえたら嬉しいですし、それが体験できるゲームになっていると思います。
なので、プレイレポートを書く上ではアクションゲームとしてのやり込みの天井の高さだけでなく、FFのシリーズユーザーさんも安心して遊べるような充実のサポート要素だったりとか、その中でもちゃんと「アクションをやっている感」を感じられるところをフィーチャーしていただけると嬉しいですね。
吉田氏:
まぁ、その辺はライターさんが上手いこと訴求してくれると思いますよ?
楽しみにしております!!(笑)
──いやぁ、責任が重い!!! 本日はありがとうございました!(了)
……………なんかめちゃくちゃ圧かけられてない?
こんなにプレイレポートに圧かけられることある??
どうでしょうみなさん、プレイレポートで『FF16』の楽しさや面白さが伝わっていますでしょうか? 私が一番心配です!!
記事中でも幾度となく触れましたが、改めて『FF16』は「想像以上に手応えのあるアクション」と「誰でも楽しめる間口の広さ」が両立されているゲームだと思います。この記事で『FF16』の購買意欲を高めていただけていれば、これ以上の喜びはありません。てか、そうじゃないと困ります! 私の責任はどうなるんや!? ……まぁそんな冗談はさておき、とにかく安心して楽しめる作品に仕上がっています。
最後まで個人的な話になってしまいますが、私としてはとても楽しいインタビューでした。私が『FF16』に対して聞きたかったことをかなり聞けたし、それに対して優しく解答していただいたのも、すごくありがたかったです。そして何より、「インタビューがこんなに楽しくていいのか?」と思いました。
終始なんだか独特な距離感のインタビューだったかもしれませんが、とにかく開発陣の「『FF16』を多くの人に遊んでもらいたい」という思いがひしひしと伝わってきました。ゲームの開発陣にインタビューをする度に、「あぁ、私が遊んでいる作品はこれほどゲームに真剣な人たちが作っているのか」と、その思いの強さに圧倒されます。今回のインタビューは、特にそれを痛感しました。
これだけの熱意と思いが注がれた作品の魅力を、少しでも読者の方に伝えられていれば……と、切に願います。自画自賛かつ大言壮語(アマルジャ族)かもしれませんが、個人的にはこれまでの『FF16』のインタビューで一番面白い内容になったと思います。改めて、ありがとうございました!
『FINAL FANTASY XVl』は2023年6月22日にPlay Station5にて全世界同時発売!
これは━━━クリスタルの加護を断ち切るための物語!
※今回の記事で紹介する『FINAL FANTASY XVl』のバージョンはメディア体験用の特別版であり、リリース時のものとは異なる場合があります。記事内で使用されている画面(スクリーンショットや動画)はメディア体験用の特別版であり、リリース時のものとは異なる場合があります。
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