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心に残る作品と残らない作品の違いとは? インディーゲームは「世の中で起きている問題」や「国民性」が反映されるからおもしろい──IGC学生選手権で審査員を務めたSIE吉田修平氏とNHK平元慎一郎氏に聞く、若いインディーゲームクリエイターを “次世代のスター” にするために必要なこと

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 「日本のゲームクリエイター」と聞いて思い浮かべる人物はだれだろうか……?

 『マリオ』シリーズの生みの親である宮本茂氏、『ダークソウル』『エルデンリング』の宮崎英高氏、『ワンダと巨像』『人喰いの大鷲トリコ』の上田文人氏などなど、名作ゲームを生み出してきたゲームクリエイターは大勢いる。

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『エルデンリング』(画像はSteam:ELDEN RINGより)
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『人喰いの大鷲トリコ』(画像は人喰いの大鷲トリコ | ゲームタイトル | PlayStationより)

 では次世代の「10代や20代の若いゲームクリエイター」と聞いて思い浮かべる人物はいるだろうか……?

 たとえば音楽であれば、若い世代には若いアーティストが認知されている傾向があるように思う。年齢を重ねることで、「いつの間にか若い世代の音楽についていけなくなってしまう現象」は多かれ少なかれ、だれしも経験があるのではないだろうか。

 ところがゲームでは、認知されているゲームクリエイターが世代を問わず何十年ものあいだ、あまり変わっていない。実際、若い世代に「日本のゲームクリエイターで思い浮かぶのは?」と質問すると、先述した宮崎氏や上田氏の名前が出てくるという。

 そう語るのは株式会社コナミデジタルエンタテインメントの安慶名伸行氏だ。KONAMIは2019年から、インディーゲームクリエイターが集まるイベントに協賛をしている。
 さらに2022年からはインディーゲームの展示・即売会を行うイベント「Indie Games Connect」(以下、「IGC」)を主催。第1回開催の2022年は60サークル・80タイトル以上の出展が集まり、今年も4月30日に第2回開催が予定されている。

 昨年との違いは、展示・即売会のほかに「Indie Games Contest 学生選手権」(以下、「学生選手権」)もあわせて開催されることが挙げられる。学生クリエイターの登竜門になるようなコンテストを開催することで、次世代のゲームクリエイターを発掘する取り組みだ。

 電ファミは今回、「学生選手権」の最終審査を終えたタイミングで取材を敢行。「IGC」および「学生選手権」の実行委員を務める安慶名氏と、学生選手権の審査員として名前を連ねるソニー・インタラクティブエンタテインメントの吉田修平氏、そしてゲームの教養番組を標榜するNHKの「ゲームゲノム」で総合演出を務めるテレビディレクターの平元慎一郎氏にお集まりいただき、話をうかがった。

 本稿では、インディーゲームの変遷から、日本と欧米におけるインディーゲームの認知の違い、そして、認知されているゲームクリエイターがずっと変わらない問題までお届けしていく。

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左から安慶名伸行氏、吉田修平氏、平元慎一郎氏

聞き手/豊田恵吾
文/柳本マリエ
編集/実存
カメラマン/佐々木秀二


日本に帰国したらインディーゲームで遊んでいる人はほとんどいなかった

──吉田さんは現在インディーゲームを推進するインディーズ イニシアチブの代表を務めていらっしゃいますが、その以前から国内外を問わずインディーゲームを見続けられています。そんな吉田さんから見たインディーゲームの変遷、現在のトレンドをお聞かせいただけますか。

吉田修平氏(以下、吉田氏):
 インディーゲームのブームは2000年代の後半からスタートしました。なぜかというと、ゲームをデジタルで配信できるようになったからなんですね。たとえばPCならSteam、モバイルならiTunesやGoogle Playストア、コンシューマーならPlayStation StoreやXboxのLive Arcadeとか。

 それまではお金のある企業がディスクをたくさん用意して、流通に営業をかけて、とにかく資本がないとゲームを世の中に出すことができなかったんです。ところがデジタルの配信であれば個人でも、どこにいても、世界中のユーザーに届けられるという革命的な変化が起こりました。

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 そうして、もともと個人や少人数でビジネスをスタートさせるという起業家精神が旺盛な欧米のゲームクリエイターが中心となり、自分たちが作りたいものを出す流れが生まれました。「パブリッシャーの支援を得なくてもいい」「ディレクターやプロデューサーの指示に従わなくてもいい」という状況でさまざまな作品が生まれます。名作と呼ばれるタイトルもすぐに出ました。

 私は当時アメリカで仕事をしていたのでその状況を肌で感じていたのですが、2008年に日本に戻ったらインディーゲームで遊んでいる人はほとんどいなくて……。
 もちろん同人ゲームを作られている方はいらっしゃいましたが、会社から独立したり、いわゆるビジネスとしてインディーゲームを作る動きはほとんど見ませんでした。

──そもそもひと昔前は日本でインディーゲームの情報を手に入れること自体が難しかったですよね。

吉田氏:
 そうなんです。たとえば大手のゲーム雑誌の場合は、大手のパブリッシャーさんがページをおさえているから大手のゲーム情報しか入ってこない。世界中でおもしろいインディーゲームが出ている中で日本では発売すらされない、あるいは買うことはできてもローカライズされていない状態でした。
 個性的なインディーゲームがたくさんあるのに、日本ではそれを知ることができないんです。僕はそれがすごくもったいないと思いました。

 それがここ数年で状況が変わり、日本でもインディーゲームに注目が集まり始め、うれしくてたまりません。Webメディアではもっと早い段階からインディーゲームを取り上げていたかとは思いますが、それこそNHKで番組ができたり、出版社がインディーゲームに注目してサポートする取り組みが行われたり、いろいろな形で幅広くインディーゲームが認知されてきていることがとにかくうれしいです。

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──吉田さんから見て、昔と現在でゲームクリエイターの違いを感じる瞬間ってありますか?

吉田氏:
 それでいうと、昔の日本のゲームクリエイターはもっと豪快な方が多かったかもしれませんね(笑)。いまはゲームクリエイターという職業が世の中でも人気になっているから、優秀な学生さんがゲーム業界に入ってきている。でも優秀な方ほど「自分がどう評価されるのか」を気にされている方が多いのかなという印象です。SNSなどを通じて評価がダイレクトに入ってきてしまうからかもしれませんが……。

──なるほど。弊誌の記事でも「昔のエニックスは荒くれ者の集まりでした」といった発言がありました(笑)。そういうパワーみたいなものでしょうか。

吉田氏:
 そうですね(笑)。そういうパワーも残るといいなと思います。

──メトロイドヴァニアやローグライクの人気が高いなど、インディーゲームのジャンルのトレンドについてはどう分析されていらっしゃいますか?

吉田氏:
 おっしゃるとおり、メトロイドヴァニア、ローグライク、ソウルライクは人気で、非常にインディーゲームに合っているジャンルです。

 最近のおもしろい流れとしては、JRPGを日本以外のクリエイターが作ることがあります。JRPGって、欧米では批判されたりバカにされたりする時期があったんですね。欧米では「3Dでアクション性が高いゲーム」が評価されがちでしたから。

 ところが最近では、ドット絵のRPGやストーリー中心のアドベンチャーゲームが「やっぱりおもしろい」と再評価されています。昔の日本のRPGにインスパイアされた海外のクリエイターがJRPGを出したり、日本のクリエイターと協力しながら欧米のチームが制作したり、その流れはおもしろいと思いました。日本のユーザーさんにも受け入れてもらいやすいのではないかと思います。

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──吉田さんへの質問が続いてしまうのですが、近年「インディーゲーム」という言葉の定義が昔とは違ってきている気がします。そのあたりはどのように捉えていらっしゃいますか?

吉田氏:
 いま、インディーゲームと呼ばれているゲームでも、ひとりで作っているものから100人くらいのチームで作っているものまでインディーデベロッパーだったりするんです。しかも学生さんが作っているゲームもあれば、大手のスタジオで10年以上制作経験のあるチームが独立して作るゲームもある。「過去に名作を作ったことのあるチームがインディーデベロッパーとして新作を出す」というものですね。
 ですので、インディーゲームという定義が曖昧で幅広くなっていることはたしかだと思います。

 ただ私はインディーゲームという言葉を、ポジティブなイメージとして捉えています。バラエティ豊かで個性があって楽しくて、そういういいイメージが「インディーゲーム」として認知されているのかなと。

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 多くの人はおもしろいゲームを探しているわけで、それが大手であろうがインディーであろうがあまり関係ない。たとえば「State of Play」は大手のタイトルもインディーのタイトルも紹介しますが、どちらも注目の新作として扱っています。それは多くの人に「いいゲーム」として知ってほしいからです。

 そのうえで私たちのブログ「PlayStation.Blog」やソーシャルチャンネルでインディーゲームを紹介するときは、あえてインディーゲームということを強調することもあるんです。個性的なタイトルを探している人の指針になればいいなと思って使い分けることもあります。

インドの若いチームがムンバイを舞台に『GTA』のようなゲームを作っている

──平元さんが総合演出を務められた「ゲームゲノム」をはじめ、『アトムの童』『チェイサーゲーム』など、ゲームを題材にしたテレビドラマが放送されるなど、ゲームそのものがより一般化している印象があります。Unityなどの普及でゲームが作りやすい環境になったことで「遊ぶもの」から「作るもの」と捉えている方も増えている気がします。この状況をどのように捉えていらっしゃいますか?

安慶名伸行氏(以下、安慶名氏):
 吉田さんからもお話があったように、2000年代にインディーゲームのブームがありました。日本は遅れていたかもしれませんが、シェアが狭い世界の中で道を切り開いてくださった方はいらっしゃいます。

 そういった方々の信条を受け継いだ方々がインディークリエイターになっていると昨年の「IGC 2022」を通して感じました。年齢でいうと30代や40代の方々です。
 今回の学生選手権は、さらに下の世代の人たちに登竜門として、業界に羽ばたいていただきたいという思いがあります。競っていただく場というより「自分たちの熱意を伝える場」として使っていただきたいということですね。

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平元慎一郎氏(以下、平元氏):
 ゲームが遊ぶものから作るものに広がることで作品がたくさん出るようになれば、いちプレイヤーとしては「おもしろいゲームに出会える確率」が上がるので単純にうれしいですよね。もっと言えば、ゲームの素晴らしさやおもしろさを伝えるテレビ番組を作っている僕としてはAAAタイトルもインディー作品もフラットに、どれだけ丁寧に伝えられるかが試されるところだと思っています。

 先ほど吉田さんがおっしゃったように、「インディーゲーム」と銘打ったほうが作品の魅力がすんなり入ってきて伝わりやすくなることもあるので、捉え方や伝え方は僕らマスメディアとしてもちゃんと工夫しないといけないと思いました。

吉田氏:
 日本はゲームはもちろん漫画やアニメなどのコンテンツも世界中で楽しまれているので、そういう意味では恵まれた国だと思うんです。いまインディーゲーム界で注目を浴びているのは、ゲームの世界では先進国でなかった地域のクリエイターたちなんです。

──なるほど。たとえばどこの地域ですか?

吉田氏:
 昨年インドに行ったんですけど、インドの若いチームがムンバイを舞台にした『グランド・セフト・オート』みたいなゲームを作っていて。ムンバイの街でオートキリシャ(三輪タクシー)を奪って乗ることができるらしいです(笑)。

平元氏:
 (笑)。それはおもしろそうですね。

吉田氏:
 その土地の神話であったり、食べ物であったり、音楽であったり、世界の人が知らない文化をゲームというメディアを通じて発信し始めているんです。だからこそ僕は日本の若いクリエイターが世界に向けてどういうメッセージを伝えていくか、とても注目しています。

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 じつは「ゲームゲノム」でも取り上げられていた『This War of Mine』みたいなゲームって日本からはあまり出てこないんです。日本は平和だから世界に対して不満や言いたいことがないからかもしれませんが……。
 でも、我々の特異な文化は世界に向けて発信できると思うんです。大きな震災があってもみんなで助け合ってきた国民性や「なにを考えているか」みたいなことをどんどん発信してほしい。ゲームは世界中の人が楽しめるので、期待をしています。

平元氏:
 僕はテレビディレクターなので、「世の中のこと」「現象」「人間」などについて伝えていくことが仕事だと思っています。ゲームに限らず、ありとあらゆるコンテンツやメディアは「メッセージ」がすごく大事で、それをどこまで露骨に表現するか、あるいはあえて隠すかは、作品ごとの手法だと思います。

 吉田さんがおっしゃっていたように、いま世の中で起きている問題やそれぞれの国の国民性というか、もっと大きい意味でいうと「人間ってなんだ?」みたいなことをこれまで映画や小説や音楽、そしてゲームで体験してきました。そしてこれからも体験していくと思います。そこにはメッセージがあって、それがおもしろさであり、心に残る部分なのかなと。

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──たとえば世の中には心に残らずに消費されてしまう作品もあると思うんです。平元さんは、心に残る作品と残らない作品の違いってどう分析されていますか?

吉田氏:
 たしかに「ゲームゲノム」に出てきた作品って心に残りますよね。その共通点ってなんでしょう?

平元氏:
 じつはそこを曖昧に「ゲームゲノム」と呼んでいるんです……。だれしも、自分の人格形成に影響を与えた作品があるかと思うんですけど、そのエッセンスを僕は「ゲームゲノム」と名づけて番組のタイトルにしました。

 「ゲームゲノム」はパイロット版も含めて11本作っていて、それこそアクションからRPG、往年の作品から最新タイトルまで扱いましたが、共通点は「唯一無二のもの」がそこにあったことだと思います。そのゲームにしかないインタラクティブな体験であったり、シナリオだったり、システムだったり。なにかしらの唯一無二のものがゲームとしてブスリと心に刺さったものがプレイヤーの心に残っている。ゲームクリエイターの方々が目指しているのはきっとそこなんだろうなと思います。

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 今回の学生選手権の審査で僕はすべての学生さんの作品に刺激を受けました。うまく言葉にできていなくても「とにかくこのテーマで作りたい!」「こんなメッセージを届けたい!」みたいな気持ちって若い人の特権でもあると思うので。これまでのゲーム像に対しての破壊と創造じゃないですけど、そういうことと向き合いながら唯一無二のメッセージを持ったゲームを作っていただけたら、いちプレイヤーとしてうれしいです。

吉田氏:
 平元さんがおっしゃっていたように記憶に残るようなゲームを作ったクリエイターと話すと、彼らのテーマやメッセージってものすごく掘り下げられていることに気づかされます。考えに考えられていて「こういう体験をさせたい」というものをゲームにしているから、ブレない。

 ゲームにはいろいろな要素が入っていますけど、取捨選択だったり、尖らせて磨く部分だったり、自分がいちばん興味のある芯を掘り下げて、それがなぜ楽しいのかを追求していってほしいです。そういう視点で考えて作ってみると、ほかのチームとは違った新しいゲームが生まれるのではないかと思っています。

インディーゲームはクリエイターの思想や熱意が拡散されにくい部分がある

──ところで吉田さんと平元さんがお会いになったのは最終審査の今日が初めてですか?

平元氏:
 今日が初めてです。この取材が始まる前に「ゲームゲノム」で紹介した作品の選定についての話をしてくださって、すごくうれしかったです。

吉田氏:
 「ゲームゲノム」はAAAタイトルからニッチなところまで取り扱う幅が広いので、どういう基準で選定されているのか気になっていました。

平元氏:
 「ゲームゲノム」の最後の放送は、SIEさんがパブリッシャーの『TOKYO JUNGLE』だったんです。吉田さんから「なんで『TOKYO JUNGLE』が最後なんですか?」と質問をいただいて(笑)。まさに発売当時のインディータイトルとしての尖り具合というか、「インディーだからこそ」みたいな部分が作品のメッセージに紐づいていることをお伝えした印象的な回でしたね。

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──たしかに『TOKYO JUNGLE』はインディーゲームの走りですもんね。いまちょうど審査が終了したタイミングとうかがっていますが、実際に審査をされての感想はいかがでしたか? 吉田さんと平元さんはそれぞれどういう目線で審査をされたのでしょうか?

吉田氏:
 ありがたいことに、私はこれまでさまざまなアワードやイベントの審査員をさせていただいております。今回の「学生選手権」のように学生さんが対象のコンテストの場合は、完成度や技術はこれから学んでいかれるところだと思うので、やりたいことがはっきりしている作品やアイデアが光る作品を見つけたいという視点で見ています。

平元氏:
 僕はテレビ番組を作っていますが、ゲームに関してはただのプレイヤーですから、その目線を大事にしようと思いました。できるだけユーザー目線を大切にしつつ、とはいえ「ゲームゲノム」の総合演出という立場で呼んでいただいているので、作品論や文化論のような「いまの若い人たちがその感性をゲームにどうやって込めているのか」を意識して遊ばせていただきました。

──今回から吉田さんと平元さんが審査員として入られていますが、おふたりに審査員をお願いすることになった経緯を安慶名さんからお聞かせいただけますか。

安慶名氏:
 吉田さんに関しましては、ソニー・インタラクティブエンタテインメントのインディーズ イニシアチブ代表でもありますし、世界のインディーゲームに精通されている方なので、お声がけをさせていただきました。吉田さんは「学生選手権」に参加している学生にとって憧れの存在だと思います。来ていただけるだけで本当にありがたく思っております。

 平元さんに関しましては、NHKの「ゲームゲノム」をずっと拝見しておりました。ゲームクリエイターにスポットを当てながら深いところまでゲームを探る番組だったので、ディレクターを務める平元さんならば学生の熱意を汲み取った評価をしていただけると思い、お声がけをさせていただきました。

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──平元さんのようにゲーム業界ではない方に審査員をお願いするのはめずらしいケースだと思います。審査員の視点を変える狙いがあったのでしょうか?

安慶名氏:
 そうですね。低年齢のころからゲームを作っている方と、大学や専門学校に入ってから初めてゲーム開発をされた方ではキャリアや技術に差が出てしまいます。その中で、アイデア勝負であったり、おもしろさであったり、キャリアや技術だけではなく学生の熱意の部分も踏まえて汲み取っていただきたいという気持ちから吉田さんと平元さんのおふたりにお願いいたしました。

──吉田さんと平元さんそれぞれにおうかがいしたいのですが、審査員をお受けしようと思った理由やきっかけはあったのでしょうか?

吉田氏:
 僕は昨年の「IGC 2022」(第1回目開催)に呼んでいただき、パネルディスカッションに参加させていただいたんです。そのときかなりの出展数がありましたよね?

安慶名氏:
 はい、サポーター企業も併せますと80タイトルほど……!

吉田氏:
 80タイトルもの新鮮なインディーゲームがぎっしり並んでいたんですけど、正直なところ「コロナの影響であまり人が来てくれないかな?」と不安に思っていました。ところがその心配をよそに、多くの一般ユーザーの方が足を運んでくださり、大盛況だったんです。

 私はインディーゲームが大好きでずっと「日本でも流行ってほしい」と思っていたので、KONAMIさんのような世の中から信頼されている企業さんが率先して「次世代のクリエイターを育てよう」「才能を見出そう」と取り組まれていることが本当に素晴らしいと思いました。

 「私もできることがあればなんでもしたい」ということを昨年の「IGC」から言っていたので、審査員のお声がけをいただいたときは、ぜひ参加させていただきたいと思いました。

平元氏:
 僕もお声がけをいただいて、「ぜひお受けしたい」とご連絡を差し上げました。とはいえゲーム業界外の僕が審査員としてどれくらい貢献できるのかまったく未知数ですし、吉田さんという神さまが横にいらっしゃる状況でこうして話していることも、いちゲーマーとしてたいへん恐縮なんですけども……。

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 僕が総合演出を務めた「ゲームゲノム」という番組を、たいへんありがたいことに多くの方にご視聴いただきました。この番組はゲームを「作品」や「文化」として捉えるものです。

 先ほど話題に出たように、第9回の放送ではポーランド発の『This War of Mine』というインディーゲームを深掘りしました。番組では「クリエイターが伝えたい熱量がギュッと詰まっている」ということを紹介したんですけど、インディーゲームは少数精鋭で作っているからこそクリエイターの思想や熱意が拡散されにくい部分があると感じましたね。

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(画像はSteam:This War of Mineより)

 そこで今回の学生選手権のようなインディーゲームのコンテストを通してさまざまな作品を取材したく、テレビディレクターとしてお受けしたいと返事をいたしました。

 加えて、いわゆるテレビ離れが進んでいる中で「ゲームゲノム」が多くの方に視聴いただけた理由は、生まれたころからずっとゲームが身近な存在だった若い世代の方々にご視聴いただいた影響も大きいと思っているんです。そういった世代の方たちが、今度は作り手になってきている。それが当たり前になってきている状況も見てみたいと思いました。
 テレビディレクターの僕が審査員に加わることで学生の方々やKONAMIさんの取り組みが「文化」として盛り上がることに繋がればすごくうれしいです。

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副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。
編集者
幼少期からホラーゲームが好き。RPGは登場人物への感情移入が激しく的外れな考察をしがちで、レベル上げも怠るため終盤に苦しくなるタイプ。自著『デブからの脱却』(KADOKAWA)発売中
Twitter:@MarieYanamoto
デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

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