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20年、同じものを作ってきたメンバーだからこそ辿り着けた領域の作品。その最高峰が『龍が如く8』──「これ以上おもしろいゲームは二度と作れない」と開発陣が語る『龍が如く8』がシリーズ最高傑作である理由

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いま『龍が如く』が盛り上がっている。

もう一度言おう。いま『龍が如く』が盛り上がっている。

弊誌の過去インタビューでも触れているが、最新作発売を控え、『龍が如く』はこれまでにない盛り上がりを見せている。

『龍が如く8』“King Gnu”井口理さんの起用は「ランニングに短パンで走っている姿」にスタジオ代表・横山昌義氏が惚れ込んだから!?

なぜそう感じているのか。『龍が如く7外伝 名を消した男』(以下、『龍が如く7外伝』)の評判が高く、どのゲームメディアも『龍が如く』関連記事を我先に取り扱っていて、PARCOの展覧会“龍が如く 散った男たち展”がバズりまくり、東京ゲームショウでは驚くほどの人だかりで、『龍が如く8』全国体験会では古参ファンに混じって推しバッグを持った女性ファンが多数駆けつけて大盛況となっているなど、例を挙げれば枚挙にいとまがない。

筆者はもともとファミ通に所属しており、『龍が如く』の記事を歴代にわたり担当していたのだが、当時これだけの盛り上がりがあればどれだけ楽だっただろうか。いや、そうだった場合「『龍が如く』はワシが育てた」と天狗になり、不興を買っていたかもしれないが……。

閑話休題。

発売直前となる1月某日、『龍が如く8』について、龍が如くスタジオ代表/制作総指揮を務める横山昌義氏、『龍が如く』シリーズチーフプロデューサーの阪本寛之氏、そしてチーフディレクターを務める堀井亮佑氏のインタビューを実施できる運びとなった。

写真左から堀井亮佑氏、横山昌義氏、阪本寛之氏
▲写真左から堀井亮佑氏、横山昌義氏、阪本寛之氏。

正直に言えば、このタイミングでのインタビューは難しい。発売前のため、筆者はまだ『龍が如く8』をクリアしていないので「手触り」のことは聞けないし、桐生が死ぬのか死なないのかもわからず、当然ネタバレの話も聞けないし、極論すれば『龍が如く8』が傑作なのかどうかもわからない。

ただ、ゲームメディアの編集者として30年近くゲームに携わっている者の直感として、筆者の心の根っこの部分に「『龍が如く8』はシリーズ最高傑作になるのでは?」と囁く声が聞こえているのも事実だ。

それは単にボリュームがシリーズ最大とか、そういった話ではない。密度というか、開発チームの熱量というか、そういった部分でヒシヒシと“傑作感”を感じずにはいられないのだ。

インタビューでは『龍が如く』の盛り上がり、『龍が如く7外伝』で感じたこと、『龍が如く8』の出来栄えなどについて、赤裸々に話を聞いている。『龍が如く8』にわずかでも興味のある方は本インタビューで期待を高めていただき、「この記事を読んで『龍が如く8』を買ってよかった」となっていただければ幸いだ。

聞き手・文/豊田恵吾


──本日はよろしくお願いします。最初にお伝えしますが、今回のインタビュー、実施タイミング的に難度が高いと思っていまして。発売前ですので、まだプレイ・クリアしていませんから詳細を聞くのは難しいですし、ネタバレの話もできません。ですので、『龍が如く』の盛り上がりをより広める、加速させる記事にできればと思ったのですが……。

横山昌義氏(以下、横山氏):
たしかにやりにくいですよね(笑)。先日、仕事の関係でプレイをお願いした外部の方から『龍が如く8』の感想を聞く機会があったんですが、その話をしていいですか?

──ぜひお願いします。

横山氏:
端的に言うと、そのプレイをされた方の熱量があまりにも高くて、こちらが「プレイしてどうでしたか?」と質問するのではなくて、「どれだけ『龍が如く8』がすばらしかったのか」を聞き続ける場になりました(笑)。

──それは開発者としては最高にうれしいリアクションですよね(笑)。

横山氏:
クリアまでプレイされていて、そのうえで「エンディングノートのトレーラーは公開しないでほしかった!」とか(笑)。

──なるほど。それはちょっとわかる気がします。

横山氏:
クリアしたうえでいただいた言葉が「シリーズ歴代1位」。その方いわく、いままでのシリーズで順位をつけたときに、これまでは『龍が如く0』『龍が如く7』が同率に近い1位だった。その下には越えられない壁があり、ほかのシリーズ作品があったと。『龍が如く8』は『龍が如く0』と『龍が如く7』を越えて、さらに越えられない壁を作ったと。

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▲編集部作成のイメージ。

──越えられない壁を越えただけでは足らず、新たな越えられない壁ができてしまったのですね(笑)。

横山氏:
開口一番『龍が如く8』はシリーズ歴代ナンバーワンだと。

──ちなみに、その方は『龍が如く8』のどこがいちばん響いたのですか? ストーリーですか?

横山氏:
まずバトル。

──なるほど。失礼かもしれませんが、それは意外でした。

堀井亮佑氏(以下、堀井氏):
いつもはストーリーだったり、プレイスポットだったりの話題が先にくることが多いんですが、今回は真っ先にバトルのことを熱く語ってくださっていましたね。「とにかくバトルが楽しい」と。

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阪本寛之氏(以下、阪本氏):
バトルのゲーム性が響いたんですよね。

横山氏:
いわく「『龍が如く8』のバトルはRPGではない。いままでにないゲームに仕上がっている」と。

──以前、バトルに移動の要素を取り入れたとおっしゃっていましたが、移動がスパイスになっていたのでしょうか?

横山氏:
そうなんです。コマンドバトルでこの手のタイプは世の中に存在していなかったようでして。『龍が如く8』のバトルで移動と、移動によって生まれる戦略性に気づくと、コマンドバトルがアクションゲームをやっている感覚になるんですよ。

たとえばボタンを押して殴る、という意味合いでは従来のコマンドバトルとほとんどやっていることはいっしょです。ただ、いかに移動でうまくポジションをとり、いかに有利に敵を倒すかをプレイヤーが決められると気づいたときに、きっとその方の中で何かが変わったんでしょうね(笑)。

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──あー、その感覚はわかります。ただ、その楽しさはどちらかというとスタイリッシュなアクションゲームで感じる気持ちよさだったりしますよね。

横山氏:
でも、その方は今作のバトルでそれを感じたと。「なんて楽しい戦略性に満ちた、やればやるほどうまくなるバトルなんだ」と感じていただけたようで。まず、いかにバトルがおもしろかったのかというのが前提にあったうえで「ストーリーも最高」って。

堀井氏:
じつは、作っているメンバーもバトルの楽しさについては、開発初期の時点から「これは勝ったな」という手応えを感じていたんです。RPGはパーティーを成長させて敵を倒すゲームですが、コマンドバトルRPGの場合、基本的にはスペック面の成長。いわゆる選べる技が増えていったり、強い技が増えるというような、ユーザーの腕前と関係ない部分での成長が主軸になります。誰でも遊べるゲームにするために、コマンドRPGをあえて基軸にした『龍が如く7』もその傾向が強かったんですが、本作では「そうじゃない」成長を入れ込むことができたんです。コマンドバトルなのにプレイヤーのスキルでうまくなるという要素が前作に比べてものすごく入っているので「何度バトルを遊んでも楽しい」という域に到達できたんですよね。

阪本氏:
ニューヨークのメディアレビューイベントでも、とにかくバトルの評判がよかったんです。

──バトルシステムは外国の方がいちばん気にするところだと思いますから、その評価の高さはすごいですね。

阪本氏:
バトルの革新性は、今回はかなり評価していただいています。

──まだプレイできていないので、この話を広げられないのが悔しいです。

横山氏:
こればっかりは実際に触っていただかないとわからないところですからね。遊んでいただいたらバトルに対しての評価は相当高くなるんじゃないかと思います。移動によってここまでバトルは変わるんだ、と。

堀井氏:
そうですね。間違いなくそう感じていただけると思います。

横山氏:
移動してぶっ叩ける、というだけなら誰でも作れると思うのですが、『龍が如く8』は敵が吹っ飛んだ先で起こることがあるわけです。吹っ飛ばした先での連携技、絆技、追撃などができるのは、『龍が如く』シリーズが物理制御から始まっているアクションタイトルだからなんですよね。

──なるほど、アクションで培ってきた物理制御の蓄積があるからこそ実現できたと。つまり『龍が如く』でなければ、到達できなかった境地ということですよね?

横山氏:
『龍が如く』がもともとアクションで、完全物理制御でどこに敵が飛んでいってもいいように作っていたからこそ、実現できるバトルシステムなんです。

もともとコマンドバトルのRPGを作っていた場合、同じようなことをしようとしたら、イチからコリジョンシステムを作る必要があるわけです。アクションを作ったことがないチームが『龍が如く8』のバトルを作ろうと思ったら相当大変だと思います。派手なアクションは全部カットシーンになってしまうかもしれない。それをリアルタイムで実機かつ物理制御できているのが『龍が如く8』なんです。

でもこれは結果としては副産物なわけですよ。これまでずっとアクションを作っていて、自社製のドラゴンエンジンがあったからこそ実現できた。ドラゴンエンジンの改良を重ねて、それが極まったのが『龍が如く8』のバトルなんですね。

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阪本氏:
もう越えられないかもしれないですね、これ以上は。

堀井氏:
『龍が如く7』の時点でも、すごくおもしろいものができたとは思っていたんですが、システムとしての伸びしろも同時に感じていて。「もうちょっとこうしたい」という点はたくさんありました。“移動”の要素はその最たるもので、「移動して看板とかを持てるようにしたいし、位置を動かして範囲攻撃をもっと効果的に使えるようにしたい」というのはずっとありました。『龍が如く7』で生み出した個性的なバトルシステムをいかに完成形に持っていくか、というのが開発の第一目標としてあり、シナリオ制作が始まる前段階から「バトルをどう進化させるのか」と、ずっと試行錯誤を続けていました。

──“移動”の要素をバトルに取り入れた、という言葉だけを聞くと「テンポやリズムはどうなっているのだろう?」という漠然とした不安があるのですが……。

阪本氏:
その不安はもっともです。制作の初期から「そこは何かで補わなきゃいけないね」というのは開発陣全員が抱いた課題でした。

堀井氏:
全体的なテンポは当然速くなっています。ただ、技の演出スピードが早ければ快適、というわけでもありません。早すぎて内容がわからなければそれはそれでストレスになりますし、技のカタルシスが減ってしまいます。多少動きが遅くても、それが適正ならばプレイヤーはテンポが悪いとは感じないので、いかに適正にするか、ストレスを感じさせないかをとにかく重視しました。

先ほど話題に出た“移動”に真っ先に取り組んだのも、前作では「本当は動かしたいのにできない」というストレスを解消したかったことが理由です。動かすことによりバトルにかかる時間が長くなる部分もあるのですが、「動かす」という自由や、動かしてできることがたくさんあって、うまく動かすことでより良い結果やカタルシスを得られれば「やらされている感」のない、ノンストレスなバトル設計にできるのではないかと。ほかにも、面倒になりがちな雑魚敵を瞬殺できるクイックバトルなど、プレイヤーがストレスなく遊べるような仕掛けはたくさん考えて入れ込んでいます。

結果的にはそれが上手くいって、テンポの良し悪し以前に、バトルの中で「あれこれ試すこと自体が楽しい」というところまで持っていくことができました。運に左右される理不尽さもかなり減っていますし、プレイヤーのやり方によっては運そのものを引き寄せることもできる、という戦略性の高いものになっています。

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阪本氏:
すごく奥深いバトルになっていますし、それでいてこんなにアートなバトルってほかにはないと思います。もちろん、パーティーである意味もちゃんとありますから。

横山氏:
“移動”については、ついにできたことなんですよね。阪本と堀井が話したとおり、“移動”をバトルに組み込むというのは、『龍が如く7』が完成したときから「つぎでやらなくてはいけないことだ」と認識していたんです。

『龍が如く7』は、できていないこともいっぱいあったんですよ。キャラクターがひっかかるとか、モーションが遅いとか、ボタンを押してからの動作が指定のポジションまで行ってから出るとか。『龍が如く8』では、そういった部分にすべて手を入れています。

プロジェクト初期はいろいろな場所でプレゼンする機会があるのですが「バトルに関しては、改良ポイントが明確なので、おもしろくしかならないので安心してください」と最初の段階で言いきっていました。ただ、その時点では“移動”の要素ひとつでこんなにおもしろくなるとは思っていなかったんですけど(笑)。

阪本氏:
まだ作っている途中でしたからね。

横山氏:
「どうしよう。動かしてみたはいいけど……」みたいなことも言ってたもんね(笑)。

堀井氏:
動かしたら動かしたで問題がいろいろ出てきますから……。どの範囲まで動かすかによってもバランスやゲーム性は全然変わってきますからね。

阪本氏:
もちろん、移動してから行動を決めることになるので、1個のコマンドを決定するまでは遅くなるんですよ。そうなると「移動せずにポンポンとボタンを押したほうが早いじゃん」となり、「かけた時間のおつりをちゃんと計算しないとダメだよね」という議論を経て、バックアタックだったり、連携攻撃だったり、コンボだったりをいろいろと調整していまの形にしています。

横山氏:
だから単純なコマンドバトルのおもしろさだけじゃなくて、アクションに近くなっていると言うか……。正確にはアクションではないんだけど、ほぼやっていることはアクションという……なんだろうな? 「リアルタイムストラテジックアクションコマンドバトル」という。

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──(笑)。

阪本氏:
まあでも、近いですよ。ストラテジー的な要素は、やり続けると見えてくるといいますか。

横山氏:
かといって、それがややこしいわけではないので安心してください。僕はRTSが苦手ですが『龍が如く8』のバトルでそういったところは感じませんから。

──プレイヤーが何も操作しなければ、バトル中は止まったままになるのですか?

阪本氏:
多少は動きますね。ただ、なるべく状態を保存しようというのは、『龍が如く7』からいろいろとテコ入れしました。前作の反省点のひとつですが、バックアタック的な要素をちゃんとお膳立てしてからやらないといけなかった。そのへんのお膳立ては「これくらいのさじ加減で入れよう」とか、細かくチューニングしています。

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堀井氏:
すごく極端な話をすると、移動を駆使しなければ勝てない、というものではありません。でも移動するということ自体が「やったら楽しいことになっている」ということにすごく大きな意味があると思っています。

──結論だけをうかがっているので紆余曲折の詳細はわかりませんが、最終的なバトルの形に至るまでに、開発陣の中でもさまざまな意見が飛び交ったわけですよね?

阪本氏:
けっこう、激論になりました(笑)。自然さを取るのか、ゲーム性を取るのか、とか。ナチュラルな表現をしたいとなると、お膳立ての話はどんどん薄まるじゃないですか。「背後に気づかない敵は不自然だ」という意見も出てくるわけです。「じゃあ、どうすれば両立するのか」というのは、かなり熱いやりとりで決めていきましたね。

──シリーズファンからすると、『龍が如く8』で桐生がどうなるのか、という部分はとくに気になるところだと思います。エンディングノートもそうですけど、ゲームのキャラクターでここまでしっかりと死に向かっていく過程を……あ、死ぬか死なないかはクリアしていないのでわかりませんが、死に向けて準備をして見せていくというのは、あまりないことだなと。たとえば、福本伸行先生のマンガ『天 天和通りの快男児』で赤木の死が描かれたときのように、作り手側の死生観が反映されたのかなと感じたんですね。『龍が如く』は2005年に1作目が発売されて、20年近い年月が経過しています。開発陣の皆さんも年齢を重ねていって、たとえば若者だったときから家族ができて、お子さんもできてとか、ご自身が病気になられたとか。そういった経験があったからこそ描けるタイトルなのではないかと、勝手に思っていたのですが……。

横山氏:
その通りだと思います。いまの自分たちにしか作れないものになっていますから。20代だったら絶対にこんなストーリーは作っていないでしょう。それはべつに自分が老いた、年を重ねた方にプレイしてほしいということではなくて、人の人生ってそういうもんなんですよね。

年を重ねないと気づかないことって単純にあるんですよね。で、僕らは『龍が如く』を作り始めて20年近く年をとったわけじゃないですか。「20年、年をとるとわかることがあるよ」っていうのを、そのままゲームにぶつけただけなんですよ。実体験でもいろいろありますしね……。たとえば自分自身の病気であるとか家族の死とか、すべての人の日常に年を重ねることによって起こるドラマというのはあります。

堀井氏:
僕も大病を患ったことがありますが、そこで人生観が変わったり学んだ部分も多かったので、その経験を作品に還元したいな、という気持ちはつねに持っています。

横山氏:
以前のインタビューでも話しましたけど、このゲームを作っている最中に自分の母親が癌で他界しているんですね。そのときに起こったさまざまなエピソードが作品に影響を与えています。癌を初めて知ったときの周囲の反応や、家族での話し合い、主治医の方の情熱や諦めない心、そして死の間際とその後……。そういった自分たちの身の回りで起こったことを縁にして『龍が如く』の世界に反映させていく。そんな3年間でしたね。

こういった人の一生でふつうに起こることが桐生にも起こってほしいんですよ。結婚とか出産とか、形が違うだけなんですよね。アサガオの子どもたちもそうですけども、桐生は遥と出会ったことではじめて、人間の道に入っていったわけじゃないですか。『龍が如く』で遥と出会うまでの桐生は獣みたいなもんですから。遥と出会わなければ、たぶん死んでいると思うんです。『龍が如く』は、遥と会ったことで生きるという道を選んだ男の余生の話なんですよ。

『龍が如く8』のストーリーの構想を練っているときに、ひとつ考えたのは春日がこのあと青春をどう取り戻すのか、ということ。さっちゃん(向田紗栄子)との恋愛とかがそうですね。もうひとつ考えたのが、桐生が出てこないことはあり得ないということ。裏社会がテーマの話である以上、桐生が放っておかれることはない。じゃあ桐生が絡んでくるのであれば……という考えが最初にありました。そうなったときに、桐生が年をとって起こることのひとつとして、“病気”があったというだけなんです。

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──話の大筋は、もともと横山さんの頭の中にあったのですか? たとえば、約20年続いているIPの主人公のひとつの区切りをつける。これは「終わらせる権利」があるということだと思うんです。とはいえ、シリーズが続く中で変えなきゃいけない責務みたいなこともあるわけで……。

横山氏:
ありません。書いていくうちに変わっていきますから。これは前からそうです。ですから、『龍が如く5』とか『龍が如く6』はすごく大事だと思っていて。『龍が如く6』で言えば、ストーリー的にいろいろな意見がありますよね。でも、僕には一片の後悔もないんです。『龍が如く6』があるから『龍が如く7』があり、『龍が如く8』があるんですよね。サッカーと同じですよ。得点シーンだけを見ていたら気づけませんが、得点に至るまでに、さまざまなプレイやファウルがあるわけですよね。たとえば、それまでのファウルがひとつなかっただけでも、この1点は生まれないわけです。すべては連続して生まれているものなんだと思います。これまでの『龍が如く』があり、それらがつながって『龍が如く8』はこういう話になった、というだけなんです。

──桐生の話でもうひとつお聞きしたいのが、黒田崇矢さんの演技についてです。『龍が如く7外伝』の桐生からは“やわらかさ”や“やさしさ”を感じたんですね。さきほど開発の皆さんの20年をうかがいましたが、黒田さんも同じ年月を積み重ね、ゲーム中の桐生も同様に年をとっています。『龍が如く8』の桐生を黒田さんが演じるにあたり、開発側から「こう演じてほしい」というオーダーはあったのでしょうか?

横山氏:
ああ、なるほど。『龍が如く8』の桐生はもっとやさしく感じるかもしれないですね。

──それは開発側からそういう演技のお願いをされたのですか?

横山氏:
オーダーしようと思っていましたが、黒田さんが自然とそういう演技だったんです。たとえば、公開しているトレーラーの中で桐生が「オレは癌なんだ」と言うシーンがあるじゃないですか。彼にとってはいま知ったことじゃないから、達観したようにサラッと言うんですよね。でも、衝撃的な場面ですから、もっと溜めを作って魅せる演出もあるわけじゃないですか。

そこをサラッと言うように演出しているわけです。イベントシーンのカット構成もそうなっていて。で、黒田さんはどういう演技をするんだろうと思っていたら、やっぱりサラッと、溜めない演技でくるんです。「あ、やっぱりそうなんだ」と腑に落ちました。

『龍が如く』の台本って、声を張るところでも「声を張る」とか書いていないんです。だから最初の演技は演者さんに委ねられているんですね。今回の桐生ってあまり声を張らないんですけど、黒田さんは最初からアジャストしてきて。黒田さんは台本の読み方がすごいんですよ。読み解く能力が超高いんだと思います。

前から言っていますけど、桐生一馬視点で世界でいちばん台本を読んでいるのが黒田さんなんですよ。開発陣は桐生一馬視点で台本を読まないですから。黒田さんは極論、桐生が関わらないエピソードは一切知らなくてもいいんです。

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──黒田さんに台本を渡し、読み終わったあとに開発陣とディスカッションを行うことはあるのですか?

横山氏:
しないですね。ブースに入って一発目から黒田さんの演技をやってもらう、というのがほとんどです。

ただ「今回の役柄はこうですから」と説明させてもらう演者も当然います。春日一番役の中谷(一博)くんとは先に超打ち合わせしますから。とはいえ、雑談95%、演技指導5%ぐらいですけど(笑)。でも、黒田さんに事前に説明することはあまりないですね。

──打ち合わせずとも、開発側が考えているものと、黒田さんが考えているものが合致していたわけですね

横山氏:
そうなんですよね。たとえば、「癌なんだ」と言ったあと、一番が「だったらいますぐ治療に行け」と激高するシーンがありますが、そこに対しても今回の桐生は言い返さないんです。そこの演技とかも「あ、こうなるだろうな」という演技をしてくれているので。

堀井氏:
黒田さんがご自身と桐生のいまの年齢を重ね合わせて演技してくださっているわけですよね。ずっと同じ役柄を20年近くにわたって演じ続ける、描き続けるエンタメっていうのもそうそうないと思いますので。

だから黒田さん自身も、丸くなっていった部分もあるでしょうし、年月を重ね、達観された部分もあると思うんです。そういったところがきっと、桐生に自然に入っていって……。桐生と人生をわかり合えている感じがすごくありますよね。だから、すごく素敵な演技だと思いましたし、『龍が如く8』の桐生がいちばんやさしいし、人間的ですよね。

横山氏:
語尾とかも若干違ってくるんですよね。「〜だよ」とか、自然なしゃべり方がすごく増えているんです。要は、ミエを切るというか、啖呵を切るみたいな感じのところがすごく減った……ように作っていったんですけど、その桐生がすごくいいんですよ。物足りないと感じるかもしれないですけど、そんなことはまったくなくて。これもプレイしてもらえればわかると思います。

──ちなみに、エンディングノートを発表してからの反響はどうでしたか?

横山氏:
思っていたほどじゃなかったですね。ドンドコ島の動画のほうが再生数が高かったですし。

全員:
(笑)。

阪本氏:
あえて見ないようにしている人もいるようですね。コアファンの人たちは。「見るのはやめよう」って。

──なるほど。メディア向け体験会で阪本さんがエンディングノートの項目が多いと話されていましたが……。

阪本氏:
 エンディングノートはコンプするだけでもめちゃくちゃ時間がかかります(笑)。ダイアリー的に思い出す写真ベースのものから、過去作のシナリオキャラとのドラマシーンも含めるとすごい数になります。横浜にも、神室町にもありますから(笑)。なかには『龍が如く8』とは地続きでつながっていないものもありまして、夢みたいな感じで『龍が如く OF THE END』のものとか。『龍が如く 見参!』のものとか……。

──(笑)。

堀井氏:
こんな夢を見た気がする、と。

阪本氏:
そういう夢を見た、という(笑)。『龍が如く』全作品をおさらいしてる感じですね。

──開発としても「もう全部入れようぜ」となったのですか?

阪本氏:
サービス精神もありつつ、『龍が如く』本流の物語はきっちりとリッチなドラマで作っています。狭山関連のものとかがそうですね。それとは別に、ダイアリー的な、写真ベースで思い出すような、小さめの達成目録もすごい数を散りばめていて。ちょっと笑えるものだったりとか。

横山氏:
もともとはくだらないのがやりたかったんですよ(笑)。

──エンディングノートのトレーラーを見たときに「桐生、ポケサーにどれだけ心を奪われてたんだよ」と思いましたから(笑)。

堀井氏:
でもあそこで感動する方もすごく多かったんですよね。自分もそうですが、ポケサーファイターに泣かされる日が来るとは思いませんでした(笑)。

阪本氏:
本流で言うと、狭山がどうしているんだろうかとか、太一がどうしているとか、やっぱり刺さりますよね。長い年月が経ったゆえに、こういう分岐をしていった人たちなんだな、というのを桐生を通してプレイヤーも体験できますので、ぜひ楽しんでいただければと思います。グッとくるものがたくさんありますので。

──ちなみになんですが、狭山は『龍が如く2』以降、触れてはいけない扱いなのかと勝手に思い込んでいました。

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▲画像は「エンディングノート トレーラー」をキャプチャーしたものです。

横山氏:
『龍が如く』は『男はつらいよ』みたいに、ヒロインをもう1回出すというのはよくないと考えていたんですよね。出すんだったら結婚するとか、そういう関係にしないときびしいというか。ゲストキャラとしてパッと使うというのは避けてきたんですよね。ただ、今回はエンディングノートという立て付けにしているので、そういう人たちに会ってみたいとか、いま何をしているのか知りたいと桐生が思うのは自然なんですよね。

『俺の家の話』【※】というドラマで、エンディングノートに関する話が展開するんですが、いつか『龍が如く』でやりたいと思っていたんですよ。

※2021年に放送された長瀬智也主演のTBSドラマ。脚本は宮藤官九郎。

阪本氏:
クドカンっぽい話でしたね(笑)。

堀井氏:
死を扱っているのに暗くないですからね。

横山氏:
暗くないんですよね。病や死を中心に巻き起こる劇的な家庭・人間関係の変化が描かれていて、すごくいい参考になりました。死を感じたから、いままで疎遠だった人たちが戻ってきて。そこでお互いの人生の情報が合わさり、またおもしろくなっていって。「これはすごくいいな」と。

──差し支えなければ、エンディングノートの総数をお聞きしたいのですが?

阪本氏:
ダイアリーを含めると……100ぐらいあるかな?

堀井氏:
もう山ほど。入れられるだけ入れていますから。

横山氏:
桐生、未練ありまくりだから。

──(笑)。

阪本氏:
“未練ミッション”というミッションもあるのですが、それもすべて埋めるのは、めちゃくちゃたいへんだと思います。

堀井氏:
もともと数を増やしたかったわけではないんです。桐生はプレイヤーの分身なわけじゃないですか。桐生のこれまでをふり返るとなったら、プレイヤーのみなさんが自分自身の思い出と重ねてふり返ると思うんです。「この大通りでケンカしたの、懐かしいなあ」というのは、桐生の思い出でもありつつ、プレイヤーの皆さんの思い出でもある。とるに足らない道とかも、人によっては思い出の場所だったりするわけです。なので少しでも多くフォローしたかったんですよね。「あ、ここは『龍が如く3』のときにマッサージ屋があってよく行ったなあ」とか(笑)。そういうものを網羅していったら、すごい数になっていったんですね。

ディレクターとして、桐生がいままでプレイヤーと積み重ねてきた思い出に対し、これが桐生の最後になるとして、あと腐れがない、悔いがないようにというか、スッキリ終わらせてあげたかったんですね。桐生が癌になったとして、放っておいてくれと桐生が言っても、放っておこうと思うプレイヤーはいないと思うんです。春日たちのように絶対に寄り添うだろうし、自分にできることはしてあげたいと思うはずだと。なのでエンディングノートはそういう、桐生への恩返しをプレイヤーがしてあげられるようなゲームデザインにしたかったんです。ただ、そういった人間関係を含めて、やり残しのないようにしたいと考えて開発していったら、ものすごいボリュームになってしまったと(笑)。

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横山氏:
桐生のいままでの歴史が長すぎた(笑)。

堀井氏:
長すぎましたね。

横山氏:
中途半端にカットすることもできず。

堀井氏:
でも、毎作主人公を変えているゲームだったらこんなことはできないので……。

阪本氏:
約20年間、やり続けてきたからこそできた要素だと思いますね。

横山氏:
エンディングノートはたぶん『龍が如く7外伝』より長いですよ。

阪本氏:
たしかに、長いかもしれないですね(笑)。

横山氏:
エンディングノートだけを切り取って『龍が如く7外伝』のようなミッションタイプでストーリーが進むように作れば、それだけで1本作れちゃいますからね。ちょっともったいなかったかもしれない(笑)。

堀井氏:
キャスティングもすごいですから。

横山氏:
キャスティング、やばいですよ? 秋山、伊達さん、狭山……オールスターになってますね。山寺(宏一)さんはすごく悲しんでましたから。「横山さん、これ、本編じゃないらしいじゃない」って言われて(笑)。

──(笑)。『龍が如く』は過去作に登場したキャラクターのファンもすごく多いですよね。「あのキャラって本当に死んだんですか?」と若いプレイヤーによく聞かれますから(笑)。

横山氏:
その辺は、PARCOさんの“龍が如く 散った男たち展”がちょっとヒントになるんじゃないですかね。“散った男たち展”の中に「あ、あの人がいる!」みたいな(笑)。

阪本氏:
峯がいることで、膝から崩れ落ちた人が何人か……。

横山氏:
でも、まあそこはいろいろな可能性があるわけだから。ウチのシリーズは特に(笑)。

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電ファミニコゲーマー副編集長。

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