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20年、同じものを作ってきたメンバーだからこそ辿り着けた領域の作品。その最高峰が『龍が如く8』──「これ以上おもしろいゲームは二度と作れない」と開発陣が語る『龍が如く8』がシリーズ最高傑作である理由

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──“龍が如く 散った男たち展”がバズったこともそうですが、『龍が如く』全体の盛り上がりをどう捉えていらっしゃいますか?

横山氏:
「これだ」っていう答えがあるわけじゃなくて、複合的なものだと思っています。たとえば、龍スタTVをやり続けたことでファンがすごく変わっていたりとか。コンソールのゲームはどうしてもあいだが空くじゃないですか。

なので、あいだをどうコンテンツで埋めるかっていうのは課題なんですよね。もちろんゲームは作り続けていくわけで、DLCをずっとやり続けるわけにもいかない。新しいものを作らなきゃいけないとなったら興味があるもの、目を向けてもらえるもの、忘れられないものを、なんでもいいので毎月1回くらい用意していかないといけない。だから龍スタTVはある種、DLCだと思っているんですよ(笑)。ダウンロードして楽しむコンテンツという意味合いでは同じ。YouTubeからデータをダウンロードして、観て楽しむという。でも、そういうものかなと。

「これ以上おもしろいゲームは二度と作れない」と開発陣が語る『龍が如く8』がシリーズ最高傑作である理由_012

──コミュニティとのつながりを切らないようにするということですね。

横山氏:
最近、タクシーに乗るたびに運転手の方から声をかけられるんですよ。「横山さんですよね?」って(笑)。話を聞いてみると、昔『龍が如く』を遊んでいてひさしぶりに遊ぼうと思って調べたらYouTubeで龍スタTVを見つけて、観ていたらおもしろくて『龍が如く7外伝』のことも知ったと。

──年配の方にも刺さっていると。

横山氏:
「『龍が如く8』もめちゃくちゃ楽しみです」と言われて。新規の方も大事ですけど、こういう復帰もあるわけですよ。興味を持って検索してもらい、おもしろそうだと感じてもらってゲームに帰ってきてくれる。入口が変わってきているんですね。復帰のタイミングもいろいろあるという。

まあでも、『龍が如く8』は発売されたらレビューの点数が高いだろうなと勝手に予想していて……。そこをアテにしたプロモーションになっていますし(笑)。

──(笑)。あと思ったのは「『龍が如く』はいじりがいがあるゲーム」というのが浸透していったのかなと。

堀井氏:
もともとツッコミどころが多いゲームではありますからね。そういう意味では配信に向いているゲームと言えます。基本、お笑いとかと同じでボケが多いほうがつっこめるし、つっこみどころが多いほうが盛り上げやすい。この作品ほどボケが多い作品もないと思うので(笑)。「『龍が如く』は配信がやりやすい」と実況者さんたちから言われたこともありますし。

阪本氏:
『龍が如く8』も発売日に「クリアするまで寝ずにやります」と、いろいろなチャンネルでやっていただけると思うんですけど……。

──みんなギブアップしていくんでしょうね(笑)。少し前に開催されたメディア向け体験会にて、阪本さんがクリア時間に言及されていましたよね。メインストーリーだけでも80時間はあると。

阪本氏:
80時間じゃ終わらないと思います(笑)。

──何がそんなに長くなっているのか、詳細を聞きたかったんですよね。

阪本氏:
物語もそうですし、あとは舞台もめちゃくちゃ広いので。いままでと同じような遊びかたをしていても、「まだ奥があるの!?」といった感じになると思います。さらに、途中でサイドコンテンツなどにハマり出すと、やれることがどんどん増えていきますし。

水増しして長くなっているわけではなく、全部密度が高い。ちょっと寄り道しつつ、ジョブに少し手をつけてというだけで、たぶんメインストーリーは80時間を余裕で超えるボリュームになっています。過去最大ですね、本当に。これは断言できます。

「これ以上おもしろいゲームは二度と作れない」と開発陣が語る『龍が如く8』がシリーズ最高傑作である理由_013

横山氏:
『龍が如く8』がそんなんだから、『龍が如く7外伝』のほうは、ボリュームに自信がなかった(笑)。

──いやいやいや、ぜんぜんそんな印象はありませんから(笑)。“赤目ネットワーク”をメインに組み込んだのはシリーズ作を遊んでいる身からすると発明だな、と。

堀井氏:
そうなんですよ!(笑)

横山氏:
『龍が如く7外伝』はですね『龍が如く8』と並行して開発していたんですけど、ゴールデンウィーク前にかなりピンチな状況になっていて……。急遽、堀井を兼任でディレクターとしてチーム総出で巻き返しをはかりにいったんですよ。

──え?

横山氏:
シナリオが上がってイベントシーンが完成してきた段階で、やはりメインシナリオだけではかなりゲームとしてのやりごたえに欠ける感じでした。いろいろあって、阪本と堀井のふたりを投入し、……あの赤目ミッションとかを急遽作り出したんですよ。だから急いでウイカ(ファーストサマーウイカ)さんに電話して「追加の収録があるから来てー! 歌もお願いっ!」って(笑)。

──いまとんでもないお話を聞かされてますよね?(笑)

横山氏:
サイクルで回るものをいかに1本道に感じさせずユーザーに体感してもらいつつ、ゲーム全体がより楽しめるようにしたかった。そこで生まれたのが赤目ミッションだったというわけです。メインストーリーだけを見ると、短いは短いので正直焦りはしました。

阪本氏:
闘技場も当初はあんなに作りこむ予定じゃなかったんですよね。

横山氏:
闘技場は『維新!極』のバトル担当チームが入ったあとに「なんとかするぞ!」ってどんどん変えていって。

堀井氏:
いろいろな要素を入れ込みまくりましたね。とにかくいまから入れられて、おもしろくなりそうなものは可能な限り入れよう、と。ブティックもそのタイミングで入れていますし、闘技場でキャラクターを変えられるようにしたのも、割と終盤です。

横山氏:
横で完成間近の『龍が如く8』がある。で、あのボリュームでしょ? それもあって『龍が如く7外伝』はとくにボリューム面で自信がなかったんですよ。レビューの点数も低いかもな、と。でも発売してみたら「あれ……?」となって。

阪本氏:
予想をはるかに超える高評価だったんですよ。

──いや、『龍が如く7外伝』はおもしろかったですから。そういった裏話をお聞きしなければ、まったくそんなふうには思わないですよ。

横山氏:
販売本数も予想のはるか上をいっていますからね。しかも勢いはまだ止まっていないですから。その分、全国体験会を増やすなど、ファンのみなさんに還元しています。

──『龍が如く7外伝』は、Xbox Game Passでも配信されていますよね? Xbox Game Passもある状況でそれだけ売れているのもすごいですよね。

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横山氏:
Xbox Game Passは海外の方に対して桐生の名刺代わりになるかと思って。桐生一馬というキャラクターを伝えるための名刺。海外では『龍が如く7』から入ってきてくれた人が6割以上いるんです。その人たちにとっては、桐生は「誰だこいつ?」なんですよ。そういった人たちに桐生を知ってもらうのが『龍が如く7外伝』。だから『龍が如く8』は目的が違うので、Xbox Game Passへの配信はないんですよね。

──なるほど。いろいろと腑に落ちました。最後に『龍が如く8』の見どころについて、それぞれお聞きしたいのですが……。

阪本氏:
なかなか難しいんですよね、今回。『龍が如く8』のいろいろなインタビューに答えてきているんですが、ひと言で言い尽くせなさすぎるので。

横山氏:
まあでも、3人ともたぶん共通して言っているのは、これまで作ってきた中では過去イチになっているという。

阪本氏:
過去イチ。そこは言い切れます。

堀井氏:
本当にそうです。

──単的におうかがいしますが、なぜ『龍が如く8』は過去イチのタイトルになり得たんですか?

横山氏:
ひとつは龍が如くスタジオに1000日くれれば、このクオリティー、このボリュームのタイトルが作れるということですね。もうひとつは、チームの雰囲気というか、作ったものを無駄にせず、ひとりひとりが自覚と責任を持って作っていったということです。

堀井氏:
ディレクションをやっていて、いままででいちばんチーム全体がノっていました。短距離走者がずっと短距離のスピードで長距離を走っているような感覚がありましたね(笑)。

──(笑)。

横山氏:
とても吟味して作ったのに、まずくなるラーメンってあるじゃないですか。鳥も、豚も、魚介も、それぞれのダシは本当にうまいのにトリプルスープにしたらまずくなるラーメン。「味わいが深くなるんです」って言っているんだけど、まったく深くなくて(笑)。混ぜないでいいんだよ、っていうのを混ぜてしまう人もいるわけですが、今回はそうならず、ひとつひとつがとてもうまく作れたというか。

阪本氏:
あと、時間がかかると流行りも変わるじゃないですか。それはかなり気をつけていましたね。たとえば、5年かけて作ったものって、5年前にいいなと思っていたものが古くなってしまう危険が生じるわけですから。不変的なものを作り続けているのだったらいいんでしょうけど、『龍が如く』は現代劇である以上、やっぱり鮮度は大事だと思っています。

──開発チーム全体がノっていたということですが、制作現場の雰囲気をよくする、変えるというのはなかなかに難しいですよね?

横山氏:
デザイナーに言われたんですけど、春日一番の存在が大きかったらしいです。一番のキャラクターによって、シリアスな話なんだけど、やっぱり明るくなる。それが作っていて楽しいと。一番が変えたんですよね、ゲームの中身とか開発チームの雰囲気を。

『龍が如く』が本来持っていた、アンダーグラウンドな雰囲気を変える最強の存在が春日一番だったわけです。一番がいると、どんなつらいことも楽しいほうに変わる。それが絵を作っている人間からもそう見えていて、サウンドを作っている人間からもそう見えていた。たしかに、今回は曲調がけっこう変わっているんですよね。

「これ以上おもしろいゲームは二度と作れない」と開発陣が語る『龍が如く8』がシリーズ最高傑作である理由_015

堀井氏:
たしかにそうですね。つらいことが起こっても明るいというか。ストーリーが後ろ向きにならないんですよね。

──なるほど。曲の話がありましたが、本作には椎名林檎さんの楽曲が使われていると発表がありましたが……。

横山氏:
発売日にリリースを出しました。が、詳細はこれ以上言えません(笑)。なぜそんなことをしているのかは実際にプレイされるとわかるかと思います。ぜひゲーム中で確かめてください。

──曲の話は何を聞いてもネタバレになりそうなのでやめておきます(笑)。では、改めて『龍が如く8』発売にあたり、伝えておきたいことをお話ください。

「これ以上おもしろいゲームは二度と作れない」と開発陣が語る『龍が如く8』がシリーズ最高傑作である理由_016

堀井氏:
これまでにお話したとおり、シリーズ歴代最高傑作になっていると思います。僕自身、ゲーム開発者として、『龍が如く8』が引退作になってもいいと思うくらい。悔いなしですね。『龍が如く8』よりもおもしろいゲームは二度と作れないんじゃないか、といまは思ってしまっているくらい自信を持っているので、純粋に遊んでほしいですね。

作った側として遊んでほしいというのはもちろんありますが、いちゲーマーとしても「こんなにおもしろいゲーム、遊ばないともったいないよ」と思っていますので。そう思うほど、龍が如くスタジオでしか作れないもの、ほかのスタジオでは作れない、僕ららしいエンターテインメントに仕上がっていますので、細かいことは考えず、とにかく触っていただきたい。そう思っています。

阪本氏:
いままででいちばん長い時間をかけて超大作を作ったという実感はあります。クリア時間が80時間を超えるとお伝えしているように「軽く遊んで楽しかったね」というものではないのですが、腰を据えて遊んでもらっただけの感動や感情を揺さぶられるもの、寝食を忘れてのめり込むほどの魅力が『龍が如く8』にはあります。プレイした方を魅了する要素がたくさん詰まっていますので、期待して飛び込んでください。

横山氏:
ゲームって玩具の延長線上からスタートしていますよね。で、ビデオゲームが生まれて、音声が入るようになってからは、じつはそれほど時間は経っていない。『龍が如く8』は玩具から様変わりをしてきた中での、ビデオゲームのひとつの到達点じゃないかなと思っています。玩具的な遊びもあり、ドラマ的な、映像作品的な楽しさもある。ここまではほかの作品でもあったことですが、『龍が如く8』はそこにさらにキャラクターの人生とか、歴史が乗っかっているんですね。

たとえば、同じチーム編成で新規タイトルを作ったとしても、『龍が如く8』と同じ感動は作れない。20年、同じものを作ってきたメンバーだからこそ辿り着けた領域の作品。その最高峰が『龍が如く8』なんです。さっき堀井が言ったように、二度と同じものは作れない。その到達点に来たと思っています。

公言していますが、桐生一馬が単独主人公のタイトルは今後ありません。このキャラクターたちで楽しめる『龍が如く』はこれが最後です。最高のものになっていますし、二度と作れないタイトルに仕上がっていますので、開発者として本当にうれしいです。

──ありがとうございました。クリアしたら、改めてインタビュー取材をさせてください。(了)


「シリーズ歴代最高傑作」。

「ゲーム開発者として『龍が如く8』が引退作になってもかまわない」。

「『龍が如く8』よりもおもしろいゲームは二度と作れないかもしれない」。

開発陣が語る、『龍が如く8』の手応え。ここまで読み進めてくれた方々には、これ以上何を言っても蛇足になると思うが、改めて伝えておきたい。開発側が発売前にこれほどの達成感を述べることは非常に稀有だ。

実際、メタスコアは90点(2024年1月24日時点)となっており、シリーズ歴代でも最高の評価となっている。20年、同じものを作ってきたメンバーだからこそ辿り着けた領域の作品。その到達点としてのシリーズ最高傑作が『龍が如く8』というのは本当なのだろう。

本稿で少しでも気になった人は、ぜひ『龍が如く8』を購入し、龍が如くスタジオ開発陣が語った言葉の真偽を確かめてみてほしい。


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副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。

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