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『ドラゴンズドグマ 2』の“ポーン”は「友だちの子どもを預かって遊びに行く」ような体験をイメージしていた。思い通りに動かないからこそ愛おしくなり、話のネタにしたくなるドラマチックな体験が生まれる

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「できそうなことは全部できる」プレイヤーの想像力次第で遊びの幅が広がるオープンワールド

──前作ではフィールドがオープンワールドとはいえ、シームレスに繋がっている訳ではないという点がユーザーから不満点として挙げられることもありましたが、今作では完全にシームレスになっているのでしょうか?

伊津野氏:
今作は全部シームレスになっています。前作はハードスペックの関係上、ロードエリアがどうしてもありまして……門を越えた所でロードが挟まってから街中になる感じだったんですね。今回はそういうのはなく、すべてが繋がっています。

平林氏:
完全にシームレスになったからこその、面白いシチュエーションも生まれてくるようになっていますよ。

伊津野氏:
まさに起こり得るであろう色んな事に関しては、今回はあえて塞がず、全部起こるように作っていますね。

──アクションでも今回「できそうと思ったことが今回はすべてできるように作っている」とのお話がありますが、具体的にはどんな感じなのでしょうか。例えば前作にもあった「つかみ」が今回、強化されていると出ていますが。

伊津野氏:
前作の「つかみ」は、そのまま敵モンスターの背中を登っている時もつかんだ状態で、スタミナが減っていくようになっていました。しかし、今作は立てそうなところではつかみを解除できて、その場で「立てる」ようにしています。立つことによってスタミナが回復しますし、立った時にしか使えないスキルで攻撃することもできるようになっています。

前作はスタミナの仕組みを制限としても利用していたんですよね。例えば「グリフィン」につかまって、空を飛んでいたとしてもスタミナが無くなってそのまま落ちてしまうような。でも今作は立てちゃいますから、どこまででも飛んでいけちゃうんです(笑)。

「じゃあ、どこまでも行けるようにしないとね?」という具合に、できそうなことは全部塞がず、できるようにすることを徹底しています。

『ドラゴンズドグマ 2』インタビュー:「ポーン」の開発エピソードを聞いてきた_011
(画像は『ドラゴンズドグマ 2』公式サイトより)

──まさにユーザーの想像力で色んな体験の違いが生まれてくるんですね。

伊津野氏:
「これをやったらどうなるの?」と思ったことはどんどんやってみてください。大体のことに「こうなるよ」という答えを用意しています。ハードウェア面の制限がなくなったことによって、今回は細かいところまで、さまざまなことを実現できているんです。

「できそうなことはできるようにしよう」、逆に「できないことはやりたくならない絵にしよう」と本当にそこはこだわってきました。

平林氏:
アクション部分に関しても、プレイヤーの皆さんのインスピレーションがちゃんと活きるように調整していますので、その幅の広がり方に注目していただけると嬉しいですね。

NPCから“話しかけてくる”クエストのはじまり。やりたいことをやっていれば、自然とゲームが進んでいく

──今回、特に一番入れたかった要素というのはあるのでしょうか。

平林氏:
前作の時点で入れたかったものの多くは入っちゃっているかも?

伊津野氏:
そうですね。でも前作の時に色んな制限からできなかったことは今回で全部やり切りました。

大きいのはアクションじゃないんですけど、クエストとイベントの制御ですね。AIに判断基準を持たせて行う仕組みにしているんです。途中でプレイヤーの操作によってアクシデントやハプニングが起こったとしても、それを受け入れられる世界を作ったんです。

平林氏:
技術的な部分はあまり言及できないんですけど……いわゆるストーリーを追いかけていく「ストーリードリブン型」のゲームデザインと、ゲームプレイに重きを置いた「体験ドリブン型」のゲームデザインは構造として対極的だと思うんですよ。

ストーリードリブン型はフラグをババッと配置し、「この順番でストーリーを食べていってください。しっかり美味しいものになります」という感じですよね。ただ『ドラゴンズドグマ 2』は体験ドリブン型なので、起きる人それぞれの体験がまったく異なります。その体験が違うからこそ、「いつどこでも何が起きても楽しい」と思える作りに今作はなっているんですね。

『ドラゴンズドグマ 2』インタビュー:「ポーン」の開発エピソードを聞いてきた_012
(画像は『ドラゴンズドグマ 2』公式サイトより)

伊津野氏:
実はアクションゲームの戦闘部分って、その体験ドリブン型の構造ができ上がっているんですよ。プレイヤーの行動と敵の行動が自由な組み合わせになっていて、何が起こってもゲーム内の処理によって収まるわけですから。

けど、それ以外のクエストやイベントは割と決め打ち、プレイヤーの行動によって変更が効かない要素の組み合わせで作られがちですよね。その部分もアクションゲームの戦闘に近い作り方にしてみたのが、『ドラゴンズドグマ 2』の一番大きな特徴かもしれません。

平林氏:
いわゆるマルチエンディングではなく、ストーリーとしてはひとつの結末があるんです。ただ、そこに至るまでの冒険の過程がそれぞれ違ってくるというか、道中の体験を分岐させたかったんですよ。東京から大阪へと移動する時、新幹線で行く人もいれば飛行機で行く人もいるし、なんだったら徒歩で行ってしまう人もいるような……。

──ゴールは一緒だけど、そこまでの体験と過程が違う感じですね。

平林氏:
そうです。その過程が楽しく、「そこが美味しい」と思っていただけるように今回は立てつけていますね。

伊津野氏:
より能動的にこの『ドラゴンズドグマ 2』の世界に関われるように……ですね。プレイヤーの行動に対し、NPCや世界からのリアクションがちゃんとある、というところを今作では真摯に作り込んでいるんです。

平林氏:
例えば、クエストの発生の仕方もそのひとつです。多くの場合、クエストの発生って、自分から対象のキャラクターに向かって行ってアクションを起こすものじゃないですか。まずイベントラインを踏んで、そのイベントラインを見るのも世の常ですよね。

ただ、今作では人から「話しかけられる」ことでクエストが発生するんですよ。仕組みとしては例に挙げたのとあまり変わらないように見えるんですけど、遊んでいると意図しない角度から「突然話しかけられた」ような感覚が芽生えるんです。

道の大通りを歩いていたら人がやってきて話しかけられ、そこからクエストが発生する……プレイヤー視点で説明すると、いわゆる“受動性”があるわけですね。

伊津野氏:
やりたくなかったのは、「よく分からないけど、新しい村に着いたことだし全員に話しかけよう」というものなんです。それをオープンワールドで村にいる全員にひとりずつやるのって……面倒くさくて仕方がないじゃないですか!(笑)。

プレイヤーに用事がある人は向こうから話しかけてきますし、メチャクチャ困っている人は非常に分かりやすくメチャクチャ困っている様子をしています(笑)。それこそ、自分の方から話しかけずにはいられないぐらいの動きをしているので……。クエストの発生状況は、大きくそのふたつで今作は構成しているんです。

『ドラゴンズドグマ 2』インタビュー:「ポーン」の開発エピソードを聞いてきた_013
(画像は『ドラゴンズドグマ 2』公式サイトより)

平林氏:
開発中、指をさしながら「あれ、困っている人に見える?」ってチェックしていましたからね(笑)。

伊津野氏:
「いやいや、もっと困らせようや!」「もっと困っているような動きをさせてくださいよ」とか言っていましたね(笑)。なので、やりたくないことはやらなくていいゲームになっているんです。やりたいことをやっていれば、自然とゲームが進んでいく感じ。よりファンタジー世界のシミュレーター的と言いますか、ロールプレイングゲームらしくなっている感じですね。

NPCとNPCの間にも好感度が設定された「生きている世界」がここにある

──おふたり、サラッとお話されていますけど、いざそれを作るとなるとメチャクチャ大変だと思うんですが……(笑)。

平林氏:
それはもう……本当に長い時間をかけてきました。

伊津野氏:
ここ1~2年の記憶がないんですよ……。

平林氏:
「終わるのかな?」って思っていましたね(笑)。

伊津野氏:
本当に「生きている世界」を作りたかったんですよ。とは言え、30年ぐらい前からみんなそういう思いを抱きながらゲームを作っていると思うんですけど(笑)。

そんな「生きている世界」を作るため、今回はNPC同士の好感度も設定しました。NPCとNPCの関係性と言いますか、あるNPCの好感度が上がると、連動して他のNPCの好感度も上下するようになっているんです。

親子を例にすれば、子供の好感度が下がったらその親も連動して好感度が下がる感じです。そのようなことを設定することで、より勝手に人間関係が築き上げられ、自然とドラマも発生するようになっていくんです。とにかく、プレイヤーのやったことに対して世界がちゃんとリアクションする仕組みを入れていますので、いろいろと試してみて欲しいですね。

『ドラゴンズドグマ 2』インタビュー:「ポーン」の開発エピソードを聞いてきた_014
(画像は『ドラゴンズドグマ 2』公式サイトより)

──その好感度は、すべてのNPCに設定されているんですか?

伊津野氏:
はい、全NPCに好感度が設定されています。現実世界に近づけるための仕組みですから。「1個1個は地味だけど、これをちゃんとゲームに組み込むとなるとすごく労力がかかりそうですけど……」と言われそうなものを、今作では入れています。

──本当にすごい労力をかけて作り込まれているのが伝わってきました……これほど色んな要素を盛り込んでいて、なおかつ体験の濃さにフォーカスしているとなりますと、「体験版って出されないんでしょうか?」とお聞きしたくなるのですが。

平林氏:
えー……それにつきましては”何かしら”考えています!今はお待ちいただければと!(笑)。

──ありがとうございます、楽しみにしております。最後になりますが、『ドラゴンズドグマ 2』の発売を楽しみにされている方々へのメッセージ、特に楽しんでみていただきたい見どころ的な部分を改めてお伝えいただければと思います。

伊津野氏:
はい、『ドラゴンズドグマ 2』はプレイヤーのアクションに対して、確かなリアクションが返ってくる「生きている世界」を作りましたので、ぜひ、ここでロールプレイを楽しんでいただきたく思います。しっかり入り込んでプレイしていただければ、その期待に応える体験が楽しめるものになっていると思っていますので、どうぞよろしくお願いします。

平林氏:
今作はプレイヤーの皆さんが、それぞれの冒険をしっかり体験できることに向き合っていまして、チーム一同、本当に頑張って作り上げました。すごく手応えを感じていますし、皆様ごとの冒険を体験できるゲームに仕上がっていますので、ぜひ先入観なくこの『ドラゴンズドグマ 2』ならではのファンタジー世界に飛び込んでいただければ幸いです。興味を持っている方がいましたらぜひ、手に取ってみてください!(了)

『ドラゴンズドグマ 2』インタビュー:「ポーン」の開発エピソードを聞いてきた_015


12年の時を越え、ふたたび迎えた辰年は『ドラゴンズドグマ』というゲームが持っていた体験の数々を広めやすい環境が整っている。X(Twitter)ではスクリーンショットに限らず動画の投稿が可能になっており、YouTubeでもテレビ出演するほどの人気を誇るYouTuberのほか、バーチャルYouTuber(VTuber)によるゲーム配信が盛んに行われている。

とりわけ2020年以降は、著名な俳優、タレント、お笑い芸人などもゲーム実況を行うYouTubeチャンネルを持つほどになったことで、より『ドラゴンズドグマ』、とりわけ「ポーンシステム」が輝きやすい環境ができ上がっていると言えるだろう。

「発売後が今回の勝負どころ」とプロデューサーの平林氏がコメントされていた通り、今回の『ドラゴンズドグマ 2』は前作や、その拡張版『ダークアリズン』の発売当時とは違った広まり方をする可能性が極めて高そうだ。

当時としては若干、時代が早すぎた感じもあった「ポーンシステム」が作り出す「ゆるいコミュニケーション」は、環境が整った現代でいかなる力を発揮し、『ドラゴンズドグマ』というゲームを飛躍させるのか。ポーンに関しては、他にも色々な仕込みがあるとのことで、発売に向けた今後の発表にも期待したい。

また、オープンワールドのアクションRPGとしても、今回はフィールドがシームレス化。モンスターに捕まっている時でも工夫次第でスタミナの回復を狙えたり、大胆な攻撃を仕掛けられるなど、スケール感と自由度が底上げされていることがインタビューを通して明らかになっている。

前作『ドラゴンズドグマ』のボス戦で、最大の盛り上がりを提供した名曲「死闘の果てに」も、今作ならではのアップデートが図られたバージョンが収録され、かつ前作の音楽に切り替えられるダウンロードコンテンツも用意されているのが嬉しいところだ。クエストの発生形式も受動的な形に刷新されているのに加え、冒険の途中で出会うNPCにもNPC同士の交流が描かれるなど、本当に「生きている世界」というものが味わえそうである。

すでに発売まで1ヶ月を切ったこのころ。12年の時と、前回と同じ辰年というタイミングで蘇るこの続編から目が離せない。『ドラゴンズドグマ 2』はPS5、Xbox Series X|S、PC向けに3月22日(金)に発売予定だ。

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副編集長
電ファミニコゲーマー副編集長。
ライター
新旧構わず、色々ゲームに手を伸ばしては積み上げるひよっこライター。アクションゲーム(特に『メトロイド』、『ロックマン』)とストラテジーが大好物。フリーゲーム、VRゲームの動向もひっそり追いかけ続けている。
Twitter:@shelloop

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