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【特別対談】『ストリートファイター6』中山貴之・松本脩平 ×『ゼンレスゾーンゼロ』李振宇―「触りやすさ」と「奥深さ」をどう両立する? 娯楽が溢れる現代で「ゲームの面白さ」を知ってもらう方法

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なんか、手に取ってみたくなる。『スト6』と『ゼンゼロ』の「なんとなく触ってみたい」感、どう生み出したのか

──ここまでは「ゲームに触れてからの手触り」についてお話していただきましたが、そこのひとつ前の段階である「どうやってゲームを手に取ってもらうか」について、お聞きできればと思います。いちユーザーとしても、『スト6』と『ゼンゼロ』はビジュアルやキャラクターに魅力があり、「なんとなく手に取ってみたくなるゲーム」として仕上がっているように感じます。

李氏:
我々はチーム全体で、アートに対する理解を一致させるようにしています。

そして「いいアート」を伝えるためには、プレイヤーにとって「これまで見てきたものと、ちょっと違うもの」を提供する必要があると考えています。この「今までとは少し違うもの、異なるアート」を見つけるために、たくさんの方法を試してみました。

そして今作のビジュアルを作る上でコンセプトとしていたことは、「特別なものを作る」ということでした。そこで「人型のロボットや動物をプレイアブルキャラとして用意したアクションゲームは、実はそこまで多くない」と考え、邪兎屋の「ビリー・キッド」や白祇重工の「ベン・ビガー」などの制作に繋がりました。

このふたりのキャラクターは、今作の「特別なものを作る」というコンセプトを試す中で作り上げられた点が大きいですね。

──人間以外の種族が登場しているのは、そういった理由があったんですね。

李氏:
ただ同時に、「特別だけど、変ではない」ということも意識していました。特別なビジュアルを作るとしても、ユーザーの方には受け入れてもらう必要があります。

たとえば、今作はアートコンセプトにおいて「アーバン(都市的な、都会的な)」を重視しているのですが、そこで「現代の都市におけるビルや車をそのままゲームに取り入れたとして、それはユーザーにとって新鮮なのだろうか?」と考えました。

それを解決するために、「私たちが小さいころに見た、レトロなものを持ってこよう」と思ったんです。

要するに、レトロな自動車やビデオショップ、あるいはゲームセンターの少し古めなアーケード筐体など……。私にとって、「少し前のアート」はとても価値のあるものでした。同時に、逆にこれは現代でゲームをプレイする方にとっては新鮮なものではないと考えたんです。

それが、『ゼンゼロ』のアートワークの「特別さ」に繋がったのではないでしょうか。

──松本さんはプロデューサーとして、どういったことを意識されたのでしょうか?

松本氏:
「どうやってゲームを手に取ってもらうか」ってめちゃくちゃ大事な事だと思いますね。

僕は、『スト6』が発売される前と、発売から半年後くらいは上手くプロモーションを続ける必要があると考えていました。そもそも『スト6』がゲームとして新しくなっている……要するに、キャラクター、デザイン、音楽からシステムに至るまで新しくなっているということを丁寧に説明して、理解してもらうことを重視していました。

例を挙げるとすれば、動画を作ったり、タレントさんを起用したり、公式サイトでしっかりと説明をしたり……他にも体験版をリリースして、「『スト6』ってこういうゲームなんだ」ということを実際に触れて理解してもらう機会を多く作る事を意識しました。

松本氏:
加えて、明確に「これはやろう」と思っていたことがあって……それが、「発売前にグッズを作る」ということでした。どうしても、発売前の時点で『スト6』のグッズを作りたかったんです(笑)。

分かりやすいトコでいくと、発売前に『スト6』グッズが出回るとゲーム文脈以外の部分で露出できるメリットがありますよね。加えて、『スト6』グッズを購入いただいた方が普段からグッズを身に着けてくれると、『スト6』と一緒に過ごしてる時間が発売前からどんどん増えてくるじゃないですか?

事前に『スト6』と一緒に過ごす時間が多ければ多いほど発売を迎えた時、より没入するし、より「好きになってもらえる」んじゃないかなと感じてます。

そういったところをかなり重要視して、プロモーションや露出を行いましたね。

こういった施策を行った結果として、『スト6』を遊んでくれる人が増える。そうなると、実際に『スト6』を遊んで楽しかった部分をネットやSNSで拡散してくれたり、口コミで伝えてくれたりしますよね。しかも、いまは自分で動画を作ってアップすることもできる。

そんな「自走プロモーションをしていただける」という点において、いまの時代とマッチするような形で『スト6』を広められてよかったと思っています。

──配信などによる『スト6』の話題性は、今も変わらず続いていますよね。

松本氏:
本当に嬉しいし、ありがたいですね。僕としては絶対に『スト6』を盛り上げたかったし、「流行ってる感」を作りたかったですね。この「流行ってる感」を作れると、『スト6』をプレイしてくれているユーザーさんも、自分が遊んでいる・ハマっているゲームに対して自信をもてるというか。

いま自分が遊んでいるゲームがいろいろなところでコラボしているのを見たり、たくさんの人が遊んでいるのを見ると、やっぱりいい気分になると思うんですよね。

そんなベネフィットを遊んでいる人にも感じてもらいたいから、『スト6』はイベントもたくさん開催するし、コラボやグッズの販売もめちゃくちゃ行います。
「これでもか」というくらいバンバン施策を打ち出し、結果的にそれが『スト6』を遊んでいる人にとっても、「いい気持ち」になれるんじゃないかな……というのを、相当前からイメージして意識的に仕込みを行っていました。

その積み重ねが、現在の『スト6』の話題性やシーンに繋がっているのかなと思います。

【特別対談】『ストリートファイター6』中山貴之・松本脩平 ×『ゼンレスゾーンゼロ』李振宇_029
(画像はカプコンストアにて、『ストリートファイター6』からオリジナル商品が発売開始! – 【OP】アミューズメント施設 – カプコンストアより)

ゲームは、遊んでもらって初めて価値が生まれる

──最後に、お三方に今回の対談の感想をお聞きできればと思います。

松本氏:
実際に李さんとこうして話してみると、「自分たちは同じ気持ちでゲームを作っているんだな」と感じました。さきほど李さんがおっしゃってくれたように、「どれだけお客様のことを見て作るのか」ということは、すごく大事だと思います。

これはよくディレクターの中山も言うことなのですが、「作品じゃなくて商品を作っている」という考え方が、僕もしっくり来ているんです。

自分は元々営業をしていたから、「作り手が作っているものをどうやってお客様に伝えるか」の重要さはよくわかるし、『スト6』の制作においてはディレクターがその感覚を持っていたから、すごくやりやすかったんですよね。

この「全員で同じ方向を向けた」というのが、『スト6』の開発においては大きかったと思っています。そして『ゼンゼロ』を作っている李さんも、自分たちと似たような感覚を持っているんだな……と、今回話していて感じましたね。

あとは、最初に李さんと『スト6』で対戦できたことですね。
国境を越えても、同じゲームを一緒に楽しめたのがすごく嬉しかったし、率直に「今日は来て良かったなぁ……」という感覚があります(笑)。

一同:
(笑)。

中山氏:
よかったよね!

松本氏:
まだまだ僕たちは『スト6』の運営を続けていくし、『ゼンゼロ』もこれからリリースされたら、忙しくて大変な時期になってくると思います。だから、お互いに頑張って、切磋琢磨して、どこかのイベントでまたお会いできたらすごく嬉しいですね。

【特別対談】『ストリートファイター6』中山貴之・松本脩平 ×『ゼンレスゾーンゼロ』李振宇_030

中山氏:
松本プロデューサーも言ってくれたことですが、やっぱりゲームは作るだけじゃ全く意味がなくて、お客さんに遊んでもらわなきゃいけないんですよね。ゲームは、そこで初めて価値が生まれるものです。

だから、単なるプロダクト(製品)として出すだけじゃなくて、「遊んでいただく方の気持ち」や「手に取ってもらえてからの先」を考えて作らなきゃいけない。李さんと自分たちには、そこが共通認識としてあったので、すごく嬉しかったですね。

そして、そのために「ゲームを好きになってもらう手段」がいくつもある。グラフィック、音楽、カットシーン……そんな細部にどれだけ気を遣えるか、李さんが挙げてくれたような「ユーザーにとっての新鮮さ」を提供できるのかが大切です。

実際に自分も『ゼンゼロ』を遊ばせてもらいましたが、やっぱりすごく魅力的に感じましたし、いちゲーマーとしても「遊びたいな」と思えるタイトルでした。

そんな細部まで含めて『スト6』はいろいろなゲームと勝負していかなきゃいけないし、これからもお客さんに楽しいと思ってもらえるものを作る必要があるなと、今回の対談で改めて感じました。すごく、ありがたい機会でしたね。

李氏:
さきほども申し上げたのですが……もう一度言わせてください!
今日はおふたりと一緒に『スト6』で遊ぶことができて、本当に嬉しかったです! そして、『ゼンゼロ』も体験していただき、とても光栄でした……!

そして今回の対談を通して、私自身にもたくさんの収穫がありました。最も感じたのは、「ゲームを作るということは、単純にゲームを作るだけのことじゃない」ということでした。要するに、私たちはゲームという「文化」を作っているのだと感じました。

対戦格闘ゲームとアクションゲームがここまで発展してきたのは、ただゲームとして楽しまれてきただけでなく、それが「面白い文化」として受け入れられてきたからだと思います。私たち『ゼンゼロ』開発チームも、これからも諦めずに、より多くのユーザーに「ゲームの面白さ」を味わってもらえるように頑張っていきます。

そして、私個人としても、『スト6』のプレイを続けていきます!

【特別対談】『ストリートファイター6』中山貴之・松本脩平 ×『ゼンレスゾーンゼロ』李振宇_031

(以下、対談が終了してから)

李氏:
ぜひ、『スト6』のユーザーコードを交換させていただけると……!
上海に来ることがあれば、またお会いしましょう!

松本氏:
ぜひ交換しましょう!

中山氏:
じゃあ、本当に拳で語り合わないとね……(笑)。

一同:
(笑)。

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きっと、今頃お三方は国境を越えて拳で語り合って(ルビ:ネット対戦)いるのではないでしょうか。

……という冗談は置いといて、『ストリートファイター6』と『ゼンレスゾーンゼロ』に共通する、「ゲームの面白さ」をユーザーのみなさんに届けるための工夫や仕組みを、たっぷりとお聞きしたインタビューでした。

両作とも、一見ユニークで尖った印象も受ける。
ただ、根底に共通するのは、ユーザーへの真摯な向き合い方や、「どんな人にも楽しんでもらう」ための気配りだったりする。ゲームは作品であると同時に、「商品」でもある。商品だからこそ、どんな方にでも楽しんでもらえる内容であるべき。これって当たり前のようでいて、実はすごいことだと思います。

加えて、個人的には「流行っている感の大切さ」に触れられたことが嬉しかったです。やっぱりファン心理的には、「自分の好きなもの」が流行っているとそれだけで嬉しい。「同担拒否」なんて言葉もあるけど……誰にも見向きもされないより、やっぱりみんなで盛り上がれた方が楽しいですよね!

その状態を狙って生み出せている『スト6』と、HoYoverseのタイトルのすごさ。
『ゼンレスゾーンゼロ』も……流行るといいなぁ! HoYoverseファンの方はもちろんのこと、格闘ゲーマーの方もぜひ『ゼンレスゾーンゼロ』を遊んでみてください!

そして今回の対談に合わせて撮影した動画も、ぜひご覧ください。
冒頭でもチラッと触れましたが、本当に豪華すぎるセットで撮影しました。現場にいた私すら「これマジでいくらかかったの?」と素で思ってしまったくらい、いい感じの映像になっています。

さらなるアップデートと盛り上がりを見せる『ストリートファイター6』と、これから正式リリース予定の『ゼンレスゾーンゼロ』。両タイトルとも、どうぞよろしくお願いします!

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編集長
電ファミニコゲーマー編集長、およびニコニコニュース編集長。 元々は、ゲーム情報サイト「4Gamer.net」の副編集長として、ゲーム業界を中心にした記事の執筆や、同サイトの設計、企画立案などサイトの運営全般に携わる。4Gamer時代は、対談企画「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」などの人気コーナーを担当。本サイトの方でも、主に「ゲームの企画書」など、いわゆる読み物系やインタビューものを担当している。
Twitter:@TAITAI999
ライター
転生したらスポンジだった件
Twitter:@yomooog
デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

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