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なぜ、漫画家・真島ヒロは「3000万自腹」で『FAIRY TAIL』のオリジナルゲーム制作を支援しようと思ったのか? 2年の制作期間を経て、ゲーム完成間近の今の心境をぶっちゃけ聞いてみた

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グラフィック、システムが作りこまれている『FAIRY TAIL ダンジョンズ』

『FAIRY TAIL』真島ヒロインタビュー:なぜ「3000万自腹」でオリジナルゲーム制作を支援しようと思ったのか?_002

──ここからは、コンテストで大賞を受賞して現在開発が進んでいるゲームタイトルのお話を伺っていければと思います。まずは1作品目の『FAIRY TAIL ダンジョンズ』について、真島先生から見たこのゲームの魅力について教えていただけないでしょうか。

真島氏:
『FAIRY TAIL ダンジョンズ』はとにかくグラフィックが最高なんですよ! ドット絵で描かれたローグライク風のゲームになっていて、システムも作りこまれている作品になっています。

選考の際にも、このクオリティで『FAIRY TAIL』のゲームを作ってくれるならぜひお願いしたいと思っていたので、完成をすごく楽しみにしています。

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ラボ担当:
『FAIRY TAIL』ファンの方にこのゲームを遊んでもらって、ローグライクのおもしろさも味わってもらう、というのもひとつの狙いとなっています。

──真島先生として、この作品を大賞作品に選んだのはどのような理由が?

真島氏:
じつは、開発者のジーノさんが過去に手がけられた『SOULVARS』を僕自身が遊んだことがあって、ジーノさんの作るゲームのクオリティがすごく高いことを知っていたんです。

※『SOULVARS(ソウルヴァース)』:2022年1月にiOS、Android向けに発売されたデッキ構築型RPG。2023年には集英社ゲームズより、コンソール版(Nintendo Switch、PlayStation 4、Xbox One)とPC(Steam、Epic Games Store、DMM.com)版も発売された。

ラボ担当:
今回はSOULVARSとは異なりローグライクというジャンルですが、直接やりとりをさせていただいた我々から見ても、ジーノさん「このジャンル(ローグライク)が好き」という思いが根本にあって、演出や手触り、体験についてのこだわりは人一倍あるのではないかと感じています。

開発が一段落ついたことでしばらく打ち合わせがない期間があって、久々に打ち合わせをするタイミングがあったんです。その前段階でゲームとしてほぼ完成していたんですが、なぜかやりこみ要素の無限ダンジョンをはじめ、新要素がたくさん追加されていて(笑)。

「しっかり遊べるものを最後まで作る」という意思をすごく感じて、我々としてもビックリしました。テストプレイを80時間【※】くらいしているんですが、まだまだ遊び続けられるくらいの歯ごたえになっています。

※QAではさらに膨大な時間をかけてテストプレイ。

──インディーゲームにおいてローグライクというジャンルを選ぶタイトルは多いですが、おもしろいゲームにするための難易度調整はすごく大変と聞きます。80時間プレイしてなお楽しめるというのは、全体の設計がしっかりされているんでしょうね。真島先生がおっしゃるように、ビジュアルもいいですね。

真島氏:
少し前にアニメーションやアイコンの監修をしたんですけど、僕が想像していた以上にいろいろなキャラクターが登場することに驚きましたね。

ラボ担当:
キャラクターもそうですし、モンスターも数多く登場します。しかも、それらはほぼすべて原作に登場しているモンスターなんです。

担当陣で原作を何回も読み返して「このモンスターを出せたらファンの人たちが喜んでくれるかな」と。原作への愛の結晶になっているので、『FAIRY TAIL』を読んでいる人ほど楽しめる作品になっていると思います。

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ビジュアルが素晴らしい『FAIRY TAIL ビーチバレーをぶっ壊せ』

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──続いては、2作目の『FAIRY TAIL ビーチバレーをぶっ壊せ』についてお伺いさせてください。

真島氏:
この作品は、水着姿でチームに分かれてビーチバレーをするゲームなんですが、ビジュアルが圧倒的にいいですよね! 素晴らしいのひと言です。

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──すごくサイケな色合いで、独特な雰囲気があります。

ラボ担当:
このゲームは、クリエイターの方の想いから、プレイアブルキャラクターがなんと32人登場するんです。

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──32人もですか!?

ラボ担当:
はい。「『FAIRY TAIL』が好きな人が遊んでくれたとき、自分の推しキャラがいなかったら悲しい」というクリエイターの方々の考えから、時間と工数が許す限りたくさんのキャラクターを入れたいと。

真島先生からも「登場キャラクターを多くしてほしい」とオーダーがあったんですが、結果としてその予想を超える人数になってしまったんです。

真島氏:
こんなに追加してほしいと言った覚えはないです(笑)。

ゲームとしましても、昔懐かしの某ドッジボールのゲームみたいになっています。ひとりでも楽しめますが、最大4人プレイが可能でわちゃわちゃお祭り騒ぎを味わえるので、ぜひ楽しみに待っていただければと思います。

ラボ担当:
昔のことなので今の若い人には伝わりにくいかもしれませんが、学校終わりの放課後にコントローラーを持って友達の家に集まって遊んだ……あのときの体験がコンセプトになっています。配信向けの作品でもあるので、配信者の方々にも遊んでいただけると我々としても嬉しいです。

真島氏:
また、詳細については後日発表されると思いますが、ユーザーの方々からイラストを募集する企画を実施したいと考えています。そこで採用されたイラストはゲーム内のギャラリーモードで見れるという、そんな企画をできればなと。

「FAIRY TAIL × ビーチ」がテーマのイラストコンテストを開催中!

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尖りまくり、これこそインディーな『FAIRY TAIL: Birth of Magic(仮称)』

──最後は、3作品目の『FAIRY TAIL: Birth of Magic(仮称)』になりますが、このゲームはいったいどのようなゲームなのでしょう?

真島氏:
いちから自分オリジナルの魔法を作って、その魔法で戦える「これこそインディー!」な、尖りまくっている作品になっています。

ラボ担当:
オリジナル魔法を作る以外にも、ナツが氷の魔法、グレイが火の魔法を使って戦うという、原作から離れてしまう要素もあったんですが、真島先生からは快くOKを出していただけまして。『FAIRY TAIL』というIPの持つ懐の広さを感じました。

真島氏:
もう全然OKです!

──自分で作った魔法で戦うというのは、中二心をくすぐられる何かがありますね。

ラボ担当:
そうなんです。「自分の作った魔法を使ってオンラインで戦う」というところが、クリエイターのPopさんが一番こだわっているポイントでした。

オンライン対戦というのは難しいところがあり、じつは何度か他の形を提案することもあったんです。ただ、「自分が作ったオリジナルの魔法でリアルタイムで戦って、魔法のぶつかり合いを楽しんでもらうこと」がこのゲームのコンセプトと、強い思いがあり、我々としてはそれを尊重して開発を進めています。

真島氏:
かなり斬新なシステムですよね。選考の際にも、これまで遊んだことがないゲーム体験になる可能性を感じて、ぜひ遊んでみたいと思って決めました。

ただ、それゆえに難航している部分もあるんですが、できあがるころにはすごく楽しいゲームになっていると思います。

ラボ担当:
真島先生のおっしゃられた通り、現在調整中でして、恐らく現状から大きく変わる予定ではあります。

──調整中というのは具体的にどのあたりをブラッシュアップされているのでしょう?

ラボ担当:
ひとつはゲーム性をもっとわかりやすくプレイヤーに伝わるようにしたいなというところです。斬新なシステムなこともあり、「いかにその魅力を伝わりやすくできるか」が大事ですので。もうひとつはビジュアル面を強化したいなと。現在、追い込みをかけているところです。

今回の3作品の中で一番尖っていて、これまでにないゲーム体験が楽しめると思うので、ぜひご期待いただきたいです。

3作品とも『FAIRY TAIL』という食材を上手に料理してくれている

──真島先生のここまでのお話から、今回の取り組みには手応えを感じられている印象を受けます。

真島氏:
もちろんです! 本当に素晴らしいクリエイターの方々が集まってくれたと思っています。

──真島先生は商業ゲームでの監修のご経験も多いと思いますが、インディーゲームの監修をしてみて、商業ゲームとインディーゲームでの違い、みたいなものがもしあれば教えていただきたいです。

真島氏:
原作者として監修に関わるうえでは、とくに違いは感じませんでした。ただ、規模が小さいがゆえにインディーゲームは小回りがきき、ひとつひとつの動きが素早くできるというのはありました。あとは、インディーゲームのほうが高い自由度で作品を作れる環境にあるとは思います。

──ふむふむ。お話が難しい部分かと思うのですが、今回のプロジェクトによるロイヤリティについてはどのような形式になっているんでしょうか。

ラボ担当:
詳しい料率については申し上げられないのですが、「ライセンスアウト」とは異なる形で真島先生とインディーゲーム開発者の方と我々講談社とで分配する形になっています。

──もしこのプロジェクトが成功するようでしたらゲームの作りかたが変わる可能性もあって、すごく革新的な取り組みだと思うんです。そのあたり真島先生としてはどうお考えなのでしょう?

真島氏:
じつはもともと自腹で支援金をお支払いしようと提案した際には、その取り組みで自分にお金が入ってくることは何も考えていなくて(笑)。本当にただ「『FAIRY TAIL』のゲームが出ればいいな」くらいに思っていたんです。

ただ、自腹の額が1000万円のはずが3000万円になってしまってですね……。税理士さんにも「その出資はちゃんと戻ってくるんですか?」と言われてしまっているので、がんばってたくさん売り上げてほしいなと今は思っています(笑)。

一同:
(笑)。

──講談社さんとしては、他に似たような事例があったりするんでしょうか。

ラボ担当:
ゲームに関してはあまりない気がしますね。

真島氏:
恐らく、講談社さんに限らず、ゲーム化したくてもできていない作品ってたくさんあると思うんですよ。

そもそもゲーム化の前にはまずアニメ化しないと、という順序のようなものもあるじゃないですか。それで実際にアニメ化に至ってない作品もすごくあって、その中には自分の作品をゲーム化させたいって思っている作家さんもきっといらっしゃる。

そういう作家さんはぜひ、儲けたお金を出資して、インディーゲームクリエイターさんに任せればいいんじゃないか、と僕は思うんですよね。

──まだ気が早いかと思いますが、それこそ今回のプロジェクトがある程度の成功を収めたのなら、真島先生としては第2回の開催も可能性としては考えていらっしゃるのでしょうか。

真島氏:
いやあ、やりたい! やりたいです! やりたいですよ!!

というか、「いつその話が来るんだろう?」って思いながら1年が経っていますから。実際、「またやりたいです!」って言っているんですよ。

──すでに次回を見据えていらっしゃるとは。ゲームクリエイターズラボさんとしては、どのように考えられているんでしょうか。

ラボ担当:
まだ何も決まっていない状態ですが、このプロジェクトがこの後、発売されて上手くいくことがあった時にはまた、改めて考えたいとは思っています。真島さんから「またやりたい!」ってお話をいただけることに関しては、我々としてもすごく嬉しいです。

それに、今回の取り組みのなかで我々のなかで学んだことがいくつかありました。たとえば、ゲーム開発の進捗があるたびに定期的に真島先生に確認してもらうことがあるんですが、真島先生もお忙しい身ですから「どうすれば負担をかけることなくストレスなく見ていただけるのか」、監修フローを整えつつ進めて参りました。

その体制は整いましたので、次回があるとすれば、よりよい形で監修フローを進めていけるのではないかと、手応えとしては感じています。

真島氏:
別にやりづらさみたいなのは最初から感じていなかったですよ! 本当にゲームクリエイターズラボの方々がわかりやすく、確認しやすくしてくれていました。

ただ、「忙しい身」とありましたけど、僕、毎日のようにゲームをやっているので、だいぶ矛盾しちゃっているんですけどね(笑)。

ラボ担当:
いやいやいや! (笑)。それもお仕事の一部だとは思っていますので!

──そろそろお時間も迫ってきましたので、最後に読者の方々に向けてメッセージをお願いします。

真島氏:
はい! ええー……自腹で3000万円出しました!!(笑)

なので、売れてくれないと困るのですが……(笑)。でも、そんなことは抜きにしてですね、選ばれた3作品はすごく尖ったインディーらしいゲームに仕上がっていながら、『FAIRY TAIL』という食材を上手に料理してくれています。ぜひ、楽しみにしていてください!

──本日はお忙しい中、ありがとうございました!(了)

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インタビュー中、「僕はただのゲーム好きのおっさんに過ぎない」と、仰られていた真島ヒロ先生であったが、お話を聞いていて、やはり先生のゲームに対する思いは相当なものを感じられた。

純粋に好きで、だからこそ全力でのめり込みたい。自らの人生に多大な影響を与えたゲームに対して、それを生み出すことの楽しさを突き詰め、最大級の愛情を注いでいきたい。そんな気持ちがあるようにも思えた。

『FAIRY TAIL』を始め、真島ヒロ先生が描かれた漫画は今まで一度も休載を挟まなかったことで知られ、それは6月26日をもって完結を迎えた『EDENS ZERO』でも同様だった。そうした漫画を描き続けては楽しむこともまた、最大級の愛情を注いでいくスタンスの現れでもあり、真島ヒロ先生のクリエイターとしての真髄なのかもしれない。

それを思えば、自分が手がけた漫画のゲームを遊びたい思いで3000万円自腹で出してしまうことも、行動としては自然な行動だと納得できる。

その思いと行動あって始動した『FAIRY TAIL』のオリジナルゲームコンテストは、いよいよゲームの正式お披露目という最大の山場を迎えようとしている。

原作付き漫画のインディーゲームを作るというこの試みは、商業における原作付き(版権付き)ゲームが数十年に渡って浸透させてきた常識にいかなる変革をもたらすのか。そして、これに追従するケースは出てくるのか? 発売が迫る3作品も、今後のインディーゲーム界隈の動きも、どちらも目が離せなさそうだ。

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編集長
電ファミニコゲーマー編集長、およびニコニコニュース編集長。 元々は、ゲーム情報サイト「4Gamer.net」の副編集長として、ゲーム業界を中心にした記事の執筆や、同サイトの設計、企画立案などサイトの運営全般に携わる。4Gamer時代は、対談企画「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」などの人気コーナーを担当。本サイトの方でも、主に「ゲームの企画書」など、いわゆる読み物系やインタビューものを担当している。
Twitter:@TAITAI999
サブデスク
美少女ゲームとアニメが好きです。「課金額は食費以下」が人生の目標。 本サイトではおもにインタビュー記事や特集記事の編集を担当。
Twitter:@takepresident

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