キム・ヒョンテ氏は、近年では『ステラーブレイド』『勝利の女神:NIKKE』を通じて、日本のゲームファンにも名が知れた人物である。“魅惑的な女性キャラ”と聞いて、この名前を真っ先に思い浮かべる電ファミ読者も多いだろう。
だが、歴戦のMMORPG廃人の筆者は、キム・ヒョンテ氏の代表作が何かと問われれば、迷わず『ブレイドアンドソウル』(以下、ブレソ)だと答える。なにせ本作では、己の性癖、もとい好みをたっぷり反映させたキャラをカスタマイズできるのだ。
「あのキム・ヒョンテが、俺のためだけにキャラを描いてくれた!!」
初めてブレソのキャラを作成したとき、このように興奮(錯覚)したことをよく覚えている。
現在のキム・ヒョンテ氏はプロジェクトから離れて独立し、ゲームクリエイターとしても世界中に名を轟かせているが、いまもブレソの根底に彼の繊細なタッチが宿っていることに変わりはない。
そんなブレソがフルリニューアルを行い、『ブレイドアンドソウル NEO』として3月12日に正式サービスを開始する。今回はUnreal Engine 4をフル活用し、2025年に新登場するMMORPGとしてふさわしく進化しているそうだ。
……いや、俺が知りたいのはそんなことじゃない。
キム・ヒョンテ風のキャラカスタマイズは、どこまで進化しているんだ?
あの“肌のツヤ”は、どこまでエロくなっているんだ!?
そんな正直すぎる想いや、ブレソNEOの多岐にわたる変更点を中心に、プライベートも含めブレソに半生を捧げてきた運営プロデューサーの福富 岳氏に、たっぷりと話を聞いてきた。
聞き手・文/kawasaki
Unreal Engine 4を駆使した艶やかなキャラを作成可能
──よろしくお願いします。まず、今回リニューアルされたブレソNEOについて、基本コンセプトを教えてください。

福富 岳氏(以下、福富氏):
前作にあたるブレソは、日本では2014年5月に正式サービスを開始しています。
あれから10年が経過し、ゲームを取り巻くさまざまな環境が変わりました。PCスペックは大きく向上し、スマホゲームの登場によりMMORPGのジャンルに対する印象も変化しています。そしてブレソの各種システムも、一部で古くささを感じるようにもなりました。
そういったことを踏まえ、ブレソの面白さを改めて見直し、グラフィックスなどの魅力を研ぎ澄まし、2025年に新登場するMMORPGとしてフルリニューアルを行ったのが、今回のブレソNEOとなります。
──ブレソのグラフィックといえば、なんといってもキム・ヒョンテさんによる女性キャラです。このあたりの描写は、どのように変わっているのでしょう?
福富氏:
ブレソNEOではUnreal Engine 4の技術を駆使することで、今まで以上に、あの繊細なタッチを感じられます。スタイリッシュなお姉さんも、このうえなくセクシーなお姉さんも、可愛らしいケモミミ娘も思いのままにカスタマイズできますよ。今まで以上に理想のキャラといいますか、プレイヤーにとっての“推し”を、自らの手で作り出せるんです。
──世界中のキム・ヒョンテさんのファンを代表して聞きますが、あの女性キャラの肌のツヤは……?
福富氏:
ええ、気持ちはよく分かります(笑)。
ブレソNEOのグラフィックスは、全体的に陰影がより明確になっているんですよ。例えるならば、映像表現でいうところの“HDR”(ハイダイナミックレンジ)を施したような処理がされていて、僕も思わず食い入るように見入ってしまいました。もう以前のブレソには戻れませんね。
また、それと同時に、カスタマイズ時に選べるパーツの種類が増えたり、スライドバーで調節できる幅が広がったりして、違うテイストのカスタマイズもしやすくなっているんです。
オートバトルを撤廃。手動操作によるアクションの面白さを追求
──ブレソはアクションに相当こだわったMMORPGだと思います。拳で殴り合うクラスの拳闘士に初めて触れたときは、むしろ対戦格闘ゲームに近い印象を受けました。
福富氏:
初登場から10年が経った今でも、ブレソのアクションはトップクラスだと考えています。実際、ブレソの経験者が他の同ジャンルに触れると、「アクションが物足りない」といった声をよく聞くんですよ。これに関していうと、今回のブレソNEOはアクションにおいて抜本的な改革を行っています。
──どのように変わったのですか?
福富氏:
従来のブレソでは、ライトプレイヤーが遊びやすくするために、“簡易モード”が実装されています。これは、戦闘中にマウスの右ボタンを押しっぱなしにすることで、本来なら手動のキー入力で行うスキルコンボを、自動で繰り出してくれるというものです。
そしてブレソNEOでは、この簡易モードを撤廃しているんですよ。
──え? それは、遊びにくくなっているようにも聞こえますが。
福富氏:
順番に説明しましょう。
もともと10年前にサービスを開始した当時のブレソには、簡易モードがなく、手動操作によるスキルコンボが必須でした。しかし、こういった仕様だと、いくらキャラクターレベルを上げても先に進めず、脱落してしまう人も出てきます。そういった人からの反発の声が多く挙がったんです。
だって“RPG”なら、普通にゲームプレイを続けてキャラを成長させれば、強敵を次々と倒して先に進められるのが当たり前じゃないですか?
──確かにそうかもしれません。
福富氏:
簡易モードを実装したブレソは、アクション操作が苦手な人にとって、格段に遊びやすくなりました。しかし、これがあまりにも便利すぎました。大半のバトルコンテンツが、簡易モードで事足りてしまったんです。
その結果ブレソがどうなったかというと、アクションの操作を楽しむというよりは、アクションの“映像を眺める”ゲームになってしまった。見た目や演出面はすごいけれど、プレイヤーの操作の手応えとしては、物足りなさがあったんです。
そこで、今回ブレソをリニューアルするにあたり、「このゲームの面白さってなんだろう?」と見つめ直し、簡易モードを撤廃する決断をしたんです。
──一度便利になったものを元に戻して、わざわざ不便にしているんですか。なかなか勇気の要ることだと思います。
福富氏:
私も最初に聞いたとき、「随分と肝の据わったことをするなぁ」と思いました。でも実際に、簡易モードが撤廃されたブレソNEOをプレイすると、確かに手応えがあって面白いんですよ。
このようにブレソNEOでは、“プレイヤーが自分で操作して打ち勝つ爽快感”が際立ち、プレイヤースキルがすごく大事なゲームになっています。PC向けMMORPGと聞いて、古くさいイメージを持たれる人もいるかもしれませんが、たとえばソウルライクゲームや対戦格闘ゲームが好きな人も、ぜひ注目してほしいですね。
UIや強化周りのシステムも10年を経て刷新
──そのほかに、従来のブレソからゲーム仕様が大きく変わった部分はありますか?
福富氏:
ユーザーインタフェース(UI)周りの改善は、地味ながら大きい変更ですね。
現在のブレソって、度重なるアップデートや仕様変更が行われたことで、UIが全体的にごちゃごちゃとしているんです。プレイヤーキャラのステータスを確認したり、インベントリ内を整理したりといった日常的に行う操作すら、目的の階層までたどり着くために、何回もマウスクリックをしなければならない。
──長期運営のMMORPGではよく見かける光景ですね。
福富氏:
今回のブレソNEOでは、各種メニューを作り直しており、直感的に操作できるようになりました。こうやって口頭で細かく説明せずとも、実際に画面を見ればパッと分かるはずです。特に既存プレイヤーにとっては、すごく遊びやすくなった印象を持ってもらえると思います。
──初心者にとっても恩恵がありそうです。
福富氏:
運営チームとしても、これまでは心苦しかったんですよ。
リアルタイムでプレイし続けている人にとっては、アップデート時の変更点さえ覚えれば良いですが、新しく始める人にとっては違います。近年のブレソは、新規プレイヤーが開始するとき、最初に一定期間の“勉強”が必要でした。
この状況を改善したくて、公式サイト内のガイド記事を充実させるなどしていましたが、どうしても限界があって……。なので運営チーム的には、今回UIがリニューアルされたことは感無量なんです。
──従来のブレソは、キャラクターの強化システム周りも複雑だった印象がありますが、この部分は?
福富氏:
そこもガラリと変わっています。
詳しくは別の機会にあらためて紹介いたしますが、簡単に言うと武器とアクセサリ、そして武功(スキル)のそれぞれに対し、全く新しい強化システムを搭載しています。いずれもシンプルで、MMORPGの経験者ならすんなり理解できますよ。
先ほども申し上げましたが、ブレソNEOではグラフィックスと手動操作によるバトルの爽快感を追求しています。それ以外の各種システムに関しては、極力シンプルに、わかりやすくしています。