1998年、中学二年生の夏休み。14インチのブラウン管テレビに向かいコントローラーを握りしめていた、あの頃の自分に伝えたい。
お前が夢中になっているそのゲームは、数十年後、手のひらの上でとんでもない進化を遂げることになる。「ジージェネ」の魂を引き継ぎつつ、もっとたくさんのユニットたちが、最高にカッコいい演出で動き回るんだぞ──
そう伝えたい。
中学生の自分に伝えても、「何言ってんだこのおっさん」と信じてもらえないだろう。そもそもスマホが何なのかすら理解できないだろうが、この進化は現実に起こっている。
スマホで『ジージェネ』を遊べる。その事実だけで、ひとつの奇跡だ。2025年4月にリリースされたスマートフォン向けアプリ『ジージェネレーション エターナル』(以下『ジージェネ エターナル』)は、ハーフアニバーサリーを迎える。
今回弊誌では、本作のプロデューサーである小島省吾氏に、リリースからの軌跡を聞く機会に恵まれた。
本稿では、ユニット選定の裏側や、ハーフアニバーサリーの施策まで、その全貌に迫っていく。
リリース当初からプレイしているファンはもちろん、「結局のところスマホで『ジージェネ』ってどうなんだ?」と気になっている人も、ぜひチェックしてほしい。
楽曲パックは「買い切り」で準備中。サブスクじゃない!ユーザーの熱量が「大人の事情」を前倒しに
──『ジージェネ エターナル』は、お気に入りの機体で自軍を編成したり、図鑑を埋めていくなど、本当にいろいろな楽しみ方があると思います。一方でバトルの盛り上げに原作BGMはぜひ欲しいところですが、リリース時点ではオリジナル曲のみでした。追加BGMに関するユーザーからの要望は大きかったのでしょうか。
小島氏:
そういったお声を多数いただき、楽曲パックの準備を全力で進めております。
──おお、ついに……!! 楽曲パックも含め、BGM周りの話を掘り下げさせてください。
小島氏:
とくに過去の『ジージェネ』シリーズをプレイしているファンの皆様からは、BGMの切り換えや、追加が欲しいというお声を非常に多くいただいておりました。リリース前から検討している要素ではあったものの、「お待ちください」だけを言い続けている状況だったので……。
我々としても「もっと急がなければ」と、まずはBGMの切り換え機能の実装に踏み切りました。

──BGMのカスタマイズ機能は、サービス開始当初はありませんでしたよね。期間限定でボーカル付き楽曲や、原作BGMが聴けた時もありました。
小島氏:
はい、6月30日に実装しました。
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』の主題歌である『Plazma』が最初ですね。ほぼ同タイミングぐらいで、『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』の『THE WINNER』も流させていただきました。
──やっぱり原作楽曲が付くと盛り上がりが段違いです。『0083』も主題歌の『THE WINNER』だけでなく、ストーリーモードで原作楽曲が流れてきて嬉しかったです。
小島氏:
非常に盛り上がっていただき、「これは可能な限り続けていかねばな」と思っております。
──常設で選べる楽曲は『ジージェネ』シリーズ初出のものが多い印象です。たとえば『機動戦士クロスボーン・ガンダム』や、『機動戦士ガンダムSEED ASTRAY』の楽曲などですが、これは権利面の事情もあるのでしょうか。
小島氏:
わかりやすくお伝えすると、バンダイナムコエンターテインメントが権利を持っているものになります。
──そんな楽曲パックの販売形式は、サブスクリプションになるのでしょうか? それとも、買い切りなのでしょうか。
小島氏:
これに関しては買い切りを予定しております。
──やはりユーザーからも「課金してもよいから曲を聞きたい」という声が大きかったのでしょうか?
小島氏:
はい、そういったお声もいただいておりますので、「それならば、いっそ」というところで、絶賛調整をさせていただいてる状況です。
EX武装は「設定として使えるものは全部使う」の精神。ありったけの拡大解釈によるド派手な演出
──戦闘演出も『ジージェネ エターナル』の大きな魅力です。とくにURユニットのEX攻撃はめちゃくちゃ豪華ですよね。Hi-νガンダム(EX)のEX攻撃は、激しい攻撃のラストに、ラー・カイラムの艦橋にそっとマニピュレーターを沿えてから、飛び去っていくんですよね。あれがもう……エモすぎました。
小島氏:
EX武装は、過去の『ジージェネ』シリーズにはなかった、今回の『ジージェネ エターナル』のいちばんの目玉として制作しています。
EX武装にも、裏テーマのようなものがあるんです。「この武装をフィニッシュにしたいよね」といった決まり事はあるものの、基本的には使えるものは全部使う、というスタンスです。

──Hi-νガンダム(EX)の場合、武装名としては「ハイパー・メガ・バズーカ・ランチャー EX」ですが、持てる武装をフルに使った連続攻撃ですよね。
小島氏:
皆様に注目いただいている戦闘演出とは別に、マップ上での演出もかなり気合いを入れています。
月並みな言葉になってしまいますが、豪華さを大事に、開発チームが全力でこだわって作り込んでくれています。ただここに関しては、サービス開始前のインタビュー記事のほうが深いかもしれません(笑)。
──バトルシーンを開発されているトムクリエイトさんは、『ジージェネ』シリーズに長らく携わっていらっしゃいます。同社だからこその「SDをカッコよく動かす」ノウハウが「これでもか!」と詰め込まれていますよね。EX武装の演出について、ユーザーからはどんな声が届いていますか?
小島氏:
やはり「今まで見たことない演出だ!」というところで、楽しんでいただけているようです。開発チームとも「作ってよかった」と話しています。
想定を大幅に超えた初動。作品追加計画を再調整するレベルで大ヒット
──改めてですが、『ジージェネ エターナル』は2025年4月16日のリリースから、もうすぐハーフアニバーサリーを迎えます。今の率直な気持ちをお聞かせいただけますでしょうか?
小島氏:
皆様に支えられ、気付けばリリースから半年を迎えようとしており、本当にありがたく思っております。ただ、開発一同としては「もう半年経つの?」という体感で……。
この半年は本当に一瞬でしたね。とはいえハーフアニバーサリーがゴールではありませんし、ここからさらに盛り上げつつ、きっちりと開発・運営を続けていきたいなと思っております。
──まさに絶好調の滑り出しだった、という印象です。ストアランキングで何度も1位を獲得していますよね。ダウンロード数もすでに600万(8月上旬インタビュー実施時)に達しています。

小島氏:
ありがたいことに、想定以上にご好評をいただいております。
──今後の展開も非常に明るそうですね。長期的な視点で『ジージェネ エターナル』をどのようなコンテンツに育てていきたいか、ビジョンをお聞かせいただけますか?
小島氏:
『ジージェネ』ファンの皆様に、楽しく遊び続けていただけるようにすることがいちばんですね。
そして本作は「遊べるガンダム大図鑑」というコンセプトを掲げています。今後『ガンダム』全体が盛り上がっていくなかで、『ジージェネ エターナル』が『ガンダム』を知る入り口や、教科書的な存在としてありたいですね。
小島氏:
『ガンダム』シリーズは、2025年で46周年を迎えますし、そういった時に本作を足掛かりにして、たとえば「ファースト(『機動戦士ガンダム』)がおもしろい」とか、「自分は『逆襲のシャア』が好みだった」と感じて原作を観ていただく、という流れが作れたら本望ですね。
ただ、そのためにはまだ実装できていないシナリオが多数ありますので、まずはそこを頑張っていきたいです。
──それだけ好調だと、運営サイドはものすごく忙しくなってくるのでしょうか。
小島氏:
そうですね。運用型のゲーム作りの宿命ではありますが、用意していたスケジュールが想定通りに行くことはありません。じつを言うとこの半年、シナリオ実装はもう少し少ない予定だったんですよ。
しかし、とても嬉しいことにサービス開始から非常に多くの皆さんが遊んでくださいました。そのため、予定を組み直して少しでも早く原作追体験をお届けしたいと、開発チームには大変な苦労を掛けながらも前倒しで進めています。
──当初の想定をはるかに超えた、爆発的なヒットだったんですね。その要因として、何が大きいと考えられていますか?
小島氏:
やはり、リリース時期に『GQuuuuuuX』が大流行した効果はあると思います。
──ちょうど放映時期でしたし、盛り上がりも凄まじかったですよね。そのうえで、『ジージェネ』には長年のファンも非常に多いと思われます。たとえば6月のゲーム内ニュースで、アンケートに25万件もの回答があったとありましたが、すごい熱量ですよね。
小島氏:
本当に多くのご回答をいただけました。長めのアンケートだったにも関わらず、さまざまなお声も頂戴しまして、気持ちのこもった回答もたくさんでした。
皆様からの期待の大きさをひしひしと感じ、感謝の気持ちでいっぱいです。嬉しいお言葉、そして厳しいご意見も数多く頂戴しており、真摯に向き合っていきたいと思っております。
──そういったユーザーさんの声は、どのようにフィードバックされているのでしょうか?
小島氏:
しっかり集約しつつ、そのなかでもとくに多くご要望がある意見を抽出しています。指定したユニットまでの一括開発などは、実装を早めた一例です。
──あの機能は便利でしたね!1個ずつ順を追って開発していくと、どうしても時間がかかってしまいますし。
小島氏:
「同じユニットをまとめて開発したい」といったお声も多くあり、先日実装させて頂きました。ビグ・ザムの10機編成なども、素材があれば作りやすくなったかと。
──まさにドズル・ザビの言うところの「ビグ・ザムが量産の暁には」ですね。もちろん攻略でも使えると思いますが、何よりも夢があります。逆に運営さんが想定していなかったご意見はあったのでしょうか?
小島氏:
予想していなかった、というよりも想定以上だったのが、先に申し上げた楽曲関連ですね。本当に熱いご意見が多数寄せられまして。期間限定で楽曲の実装やBGM切り替え機能も採用させていただいたのも、ユーザーさんのお声に応えるためでした。
高難度コンテンツはシミュレーションゲームの“妙”を追求。URガシャ限頼みのゴリ押しオートは通用しない。工夫すれば開発産ユニットでも突破できる
──続いてコンテンツについて振り返らせてください。まず初期から実装されていたエターナルロードですが、EXPERTの歯ごたえは相当なものでした。クリア率はどれくらいなのでしょうか?
小島氏:
具体的な数字をお出しすることは難しいのですが、エンドコンテンツとして高難易度を目指して制作したステージなので、クリア率は高くはないですね。
──追加ミッションはさらに条件が厳しいですが、挑戦されている方は多いのでしょうか。
小島氏:
EXPERTをクリアいただいたユーザーの方は、かなり挑戦してくださっている印象です。ただ、エターナルロードは常設ですので、今後ユニットが揃った時に「今回ならいけるかもしれない」と、皆様のペースでチャレンジしていただけたらなと思っています。
──推奨戦闘力の30万を超えていても、オートだとあっさり負けますよね。逆に戦闘力がまったく足りていなくても、動かし方をしっかり練れば勝てる。
小島氏:
メインステージは原作追体験のためにオートでもクリアできるバランスにしていますが、エターナルロードの主旨は異なりますね。シミュレーションゲームとしてのおもしろさを追求しているので、オートでは難しい設定になっています。
──7月末からは、新たな高難易度コンテンツとしてジェネレーションタワー(EAST)も開催されましたね。
小島氏:
ジェネレーションタワーは、ギミック的なおもしろさにこだわって制作しています。一方で、事前の説明が足りなかった部分は申しわけなく思っておりまして……。
ジェネレーションタワーは、各ステージにそれぞれテーマとしているギミックがあり、それをいかに攻略していくかがカギです。ゲーム内にもそうした情報は掲載しているのですが、事前説明が十分とは言えませんでした。

──全15階のジェネレーションタワー(EAST)では、URキャラクターのラクス・クラインが14階で手に入ることも目玉でした。開催期間も設定されていましたが、そちらについてはいかがでしょうか?
小島氏:
そちらも説明不足でした。
ジェネレーションタワー(EAST)は常設ではありませんが、次回の開催もあります。報酬のラクス・クラインも入手機会が初回限定というわけではありませんし、続けて追加されるタワーにも合わせて挑戦できます。
──期間限定入手に見えてしまい、誤解してしまったユーザーさんもいらっしゃったと。ちなみに「EAST」の時点で他の方位も出て来そうではありましたが……?
小島氏:
まずは既存のタワーに階数も追加されていく形です。
もともとはエターナルロードに近い立て付けで、「今すぐやらなくても大丈夫」という想定だったのが、強制感が出てしまったのは、ユーザーさんに申し訳なかったです。お伝えの仕方などは、改めてしっかりしていかないといけない、と思っています。
──たしかに、「これはシミュレーションゲームしているな……!」とヒリつきました。本作のファンとしては、「ガーダー」の登場にもテンションが上がりましたし、ドモン・カッシュのチャンスステップを利用して膨大な敵を撃破していく13階もおもしろかったです。無限行動ではないものの、『ジージェネZERO』あたりの挙動を彷彿とさせニヤリとしました。

小島氏:
ガーダーは敢えての採用ですね。とくにシリーズファンの皆様に喜んでいただけたならば何よりです。

こうしたギミックとしても、シミュレーションのエッセンスをふんだんに取り入れて、楽しんでいただけるように作っています。