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和製ローグライクの金字塔『シレン』がスマホに登場でゲーマー歓喜!本編をクリアしてからが本番の、まさに1000回遊べるRPGだ【レビュー:不思議のダンジョン 風来のシレン】

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 日本のスマホゲームユーザーは、この作品の登場をどれだけ待ちわびたでしょうか?
 入るたびに中身が変わるダンジョンを、プレイヤー自身の経験と戦略で突破していく、ローグライクゲームの名作がスマホにも移植されました。
 『不思議のダンジョン 風来のシレン』です。

和製ローグライクの金字塔『シレン』がスマホに登場でゲーマー歓喜!本編をクリアしてからが本番の、まさに1000回遊べるRPGだ【レビュー:不思議のダンジョン 風来のシレン】_001

 忙しい操作が必要ない、ターン制のローグライクRPGはスマホとも相性が良く、世界中でさまざまなものが公開されてきました。
 ただ、日本でローグライクといえば『トルネコの大冒険』『風来のシレン』といった、チュンソフトが発売してきた『不思議のダンジョン』シリーズ。

 同じローグライクゲームでも、海外のものは「スキルを活用して戦う・ナナメ移動がない・階層は浅いが敵が多い」といったものが多く、日本の『不思議のダンジョン』は「アイテムを使って戦う・ナナメ移動がある・階層が深くてアイテム管理が重要」といった特徴があります。

 海外のローグライクにも秀作はありますが、日本人だと慣れ親しんだ日本型のローグライク、すなわち『不思議のダンジョン』がやりたいわけで、海外のものをやっても「なにか違う」という印象を受けた人は多いでしょう。
 「ソシャゲ+日本型ローグライク」のスマホゲームは数多く登場していましたが、ガチャとの相性が悪く、ことごとく討死。

 『勇者ダンジョン』『魔女の迷宮』といった良作アプリもいくつか登場していましたが……。
 スマホが日本に上陸して約10年、ようやく本家の『不思議のダンジョン』が移植されました。

 オリジナルの『風来のシレン』は1995年にスーパーファミコンで発売されましたが、今作は2006年にニンテンドーDSで発売された『風来のシレンDS』をベースとしています。

 バランスの調整、アイテムやモンスターの追加と削除、チュートリアルと3つの高難度ダンジョンの追加、新規のイベント、前半戦でダンジョンを「戻る」ことが可能、といった変更点があります。

 アイテムに強化制限が付き、一部の状態異常の回避が難しくなったことから、DS版以降の仕様に否定的な意見も見られますが、私的にはネット上で言われているほど問題とは思えません。
 オリジナルを相当やり込んでいた人以外は気にならないでしょう。
 詳しくは後述します。

 価格は1800円。買い切りゲームなので課金・広告・スタミナ等はありません。
 Android版は一度公開された後、不具合の発覚により取り下げられていましたが、すでに再公開されています。

 入るたびに地形が変わるダンジョンを、毎回レベル1からスタートするキャラクターで攻略していきます。
 装備を長期的に強化することも可能ですが、途中でやられるとアイテムも装備も没収され、最初のフロアに戻されるため、基本的には育成ではなく、プレイヤー自身の経験と戦略で勝負するゲームです。

 方向ボタンで移動し、攻撃ボタンで剣を振りますが、アクションゲームではなくターン制。
 こちらが一度動くと相手も一度動く形式で、こちらが動かなければ相手も動きません。
 よってピンチのときは、じっくり考えながら行動することが大切です。

 主人公はそんなに強くなく、ダンジョン後半のモンスターと正面切って戦うことはできませんが、ダンジョン内にはさまざまなアイテムが落ちています。
 敵をふき飛ばすもの、動きを止めるもの、眠らせるものなどがあり、これらを駆使して戦っていきますが、アイテムの多くは消耗品か回数制限付きで、使いまくることはできません。
 また、ダンジョン内で拾う必要があり、十分な数を得られるとも限りません。
 所持数制限もあって、アイテムの取捨選択と使いどころが重要になります。

 『風来のシレン』はただダンジョンを進んでいくだけのゲームではなく、そびえ立つ山の頂にあるという「幻の黄金郷」を目指すストーリーがあります。
 和風の世界観で、ダンジョンの途上にはいくつかの村があり、森や河原、岩山などのバラエティーに富んだ地形が登場します。
 古い日本映画のようなサウンドも特徴でしょう。

 ある程度ゲームが進むと「合成の壷」というアイテムが登場し、これを使って強力な装備を作り出せることも、『シレン』の楽しさです。

 このゲームには幽霊系に強い「成仏の鎌」、ドラゴン系に強い「ドラゴンキラー」、三方向を攻撃できる「妖刀かまいたち」といった多彩な武器や防具が登場しますが、合成の壷でこれらの特殊能力を合体させることができ、「幽霊とドラゴンに強くて三方向に攻撃できるカタナ」などを作り出すことができます。
 攻撃力も村の鍛冶屋の利用や、強化アイテムを使うことで上げられます。

 前述したようにやられたら装備は失いますが、「倉庫」という施設があって、ここに置いているアイテムはずっと保持されます。
 強い装備を見つけて、持ち出さずに鍛冶屋とアイテムでの強化を繰り返し、十分に強くしてから本番に挑むということも可能。
 アイテムを倉庫に送る「倉庫の壷」があれば、ヤバそうなときに鍛えた装備を避難させることもできます。

 それでも一瞬のミスや不幸で、鍛え上げた装備がロストしてしまう危険は常にあり、実際にそうした悲劇の話は尽きません。
 しかしそのシビアさと、だからこその慎重なプレイ、そしてその末にある達成感も、この作品の魅力でしょう。

 スマホ版『シレン』の特徴ですが、まずは下部にある方向ボタンが目に付きます。
 古くさく感じる人もいると思いますが、ローグライクはひとつの操作ミスが致命的になるので、このように大きめの方向ボタンで動けるようになっていたほうが安心できます。
 スマホのローグライクでは一般的なインターフェイスですね。

 ただ、ちょっと反応の悪さも感じます。
 誤操作を防ぐためか、ボタンにチョンと触れただけでは動かないようになっているのですが、そのため押したつもりで動かない、やや反応が鈍い、と感じることがあります。
 しっかり押さないと動かないのは覚えておきましょう。

 アイテム画面の操作性にも批判があります。
 使うアイテムをタップで選択し、ボタンで行動を選ぶのですが、スマホだと画面が小さい分、押しミスが発生しやすい。

 アイテムの選択については、指をスライドすることでカーソルが現れるので、リストを指でスライドして、使いたいアイテムが選ばれている状態で指を離す、という操作をすれば選択ミスは防げます。
 しかし、ボタンにこの方法は使えない。
 ボタンが小さすぎるという程ではありませんが、前述したようにひとつのミスが死に直結するゲームなので、アイテム使用ボタンは慎重に押しましょう。

 HP表示も左上に小さく表示されているため、ちょっと見にくい。
 最重要ステータスですから、もうちょっと大きめに表示して欲しいところです。

 そしてDS/スマホ版の大きな追加要素は、なんといっても新ダンジョン
 チュートリアルである「宿場への道」と、本編クリア後に挑める「魔蝕虫の道」、「儀式の洞窟」、「死者の谷底」が追加されています。

 スーパーファミコン版の頃からあった、モンスターに変身しながら攻略する「食神のほこら」、敵を罠にかけられる「掛軸裏の洞窟」、そして最難関ダンジョン「フェイの最終問題」もあるので、チュートリアルを除いても、ダンジョンは本編を含め合計7つになっています。

 DS/スマホ版で追加された3つのダンジョンは、どれもアイテムの持ち込みが可能です。
 スーパーファミコン版の本編クリア後のダンジョンはすべて持ち込み禁止で、強力な装備を作ってもそれを活用する場に乏しかったのですが、新ダンジョンは強力な装備を持ち込むことが前提の難易度。
 手強いですが、鍛え上げた装備を存分に振るうことができます。
 もちろん死んだらなくなるので、緊急時のため「倉庫の壷」は持っておきたいところ。

 もうひとつの追加要素は「風来救助」
 もし途中で倒れても、他のプレイヤーに救助を求めることができます。

 ただしそのためには、救助依頼用のパスワードを書き留めて、他のプレイヤーに送らなければなりません。
 送られた人はパスワードを入力することで、その人が挑戦していたものと同じダンジョンをプレイでき、倒れた場所まで到達すると復活用のパスワード(復活の呪文)を得られます。
 救助してもらった人はそれを入力することで、冒険を再開可能。
 助けた人はご褒美をもらうことができ、その中には「風来救助」でなければ得られないアイテムも含まれます(低層ではご褒美もそれなりです)。

 今のところ、手動入力のパスワードでのやり取りにしか対応していません。
 パスワードのコピー&ペーストはできず、Wi-Fiやネット接続を通しての救助依頼も無理。
 よって、入力に手間がかかるのが残念ですが、鍛え上げた装備を失いそうなとき、SNS等でパスワード画面を公開することで、いちるの望みを託せるかも……。

 また、大きな変更点として、本編の前半戦、1F~14Fの間は前の階に「戻れる」ようになっています。
 フロアを行ったり来たりして経験値やアイテムを稼ぐことができ、それは以前とはまったく違う攻略を可能にしています。

 DS/スマホ版が(スーパーファミコン版のプレイヤーに)批判されているのは、バランスの変更について。
 主に以下のような点が批判対象となっています。

 ・装備ごとに強化上限が付き、弱い装備の上限が低くなった。
 ・「分裂の壷」などの強すぎるアイテムがなくなった。
 ・壷の容量の上限が5に減少。「壷増大の巻物」もなくなった。
 ・アイテムが消滅する「帯電状態」の追加。
 ・「呪い」の強化。アイテムも対象になり、回避も困難に。
 ・ゲイズの催眠術、がいこつ魔導系の魔法攻撃が回避困難に。

 ただ、装備ごとの強化上限については、バランス的にはほとんど影響ありません。
 強い武器は強化上限も高く、普通の人はその強い武器をメインにするからです。
 影響するのは、趣味で「こんぼう+99を作ろう」とか考えていた人ぐらい。

 「帯電状態」は所持アイテムにかけられる新たなモンスター特技で、使えなくなるうえに次の階で消滅するというもの。
 厳しすぎるとの批判がありますが、これを使う新モンスター「カラカラペンペン」は草しか対象にしません。
 Lv2の「パタパタペンペン」は巻物、Lv3の「バババペンペン」は杖も対象にしますが、それらを「保存の壷」に入れておけば防げるので、批判している人はそれを知らないだけかも。
 Lv4の「ゴゴゴペンペン」は壷も対象にするので危険ですが、上級ダンジョンの一部のフロアにしか現れません。

 「呪い」はオリジナルでは装備にしかかからず、それを外せなくなるだけでしたが、DS/スマホ版ではアイテムも対象になり、呪われたアイテムは使用不可能になります。
 加えて、呪われた装備は追加効果を失い、呪いを防ぐ腕輪も入手困難になりました。
 ただ、呪いをかけてくる敵を杖などで追い払い、呪いを解く「おはらいの巻物」も所持しておけば対応はできます。

 アイテムをランダムに使ったり、装備を外してしまうゲイズ系の「催眠術」はかなり危険で、オリジナルは「やまびこの盾」で防げたのですが、このアイテムが削除され、その代わりに追加された「ゲイズの盾」は入手が困難。
 よって、ゲイズが非常に厄介になっていますが、そもそも「やまびこの盾」で手軽に防止できたのが問題だったかもしれません。
 現在は見かけたら杖などで対応しつつ、壷の中のアイテムは催眠術の対象外なので、貴重なものは壷に入れておくことが対処法となります。

 細かく説明しましたが、オリジナルの『シレン』をやり込んでいた人以外には、意味のわからない説明だったでしょう。
 そういう方にとっては問題ありません。現行のルールでプレイすれば良いだけです。
 これらの修正によりゲームのバランスが壊れている、みたいなことはありません。

 オリジナルをやり込んでいた人の中には変化に戸惑っている方がおられますが、そこまで批判されるほどではない印象です。
 ただ、以前のように「強い装備を作ったらほぼ無敵」とはいかなくなっていて、ナーフ(弱体化)ともいえますから、既存プレイヤーから非難が出るのは当然かもしれません。

 ようやく登場してくれた、スマホで楽しめる『不思議のダンジョン』。
 最近はスマホと同じ、タッチパネルの携帯端末であるDS/3DSからの移植が増えていますが、こうして『シレン』が登場したのを見ると、他の『不思議のダンジョン』シリーズのスマホ移植も期待したくなります。

 『シレン4』や『シレン5』、『ポケモン不思議のダンジョン』や『世界樹と不思議のダンジョン』などもDS/3DSのソフトですからね。

 今でもスーパーファミコン版をやり続けている人がいるぐらいの、奥深く、息の長い作品。
 それがさらにボリュームアップしていますから、とことんやり込めるゲームです。
 本当、本編はチュートリアルで、それをクリアしてからが本番と言っても過言ではありません。

 ローグライクの楽しさを知りたいなら避けて通れない、オススメの作品です。

不思議のダンジョン 風来のシレン

日本型ローグライクの名作。新ダンジョンのあるDS版がベース

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(画像は不思議のダンジョン 風来のシレン – AppStoreより)

・ローグライクゲーム(不思議のダンジョン)
・移植:サイクロンゼロ(日本)
・原作/販売:スパイク・チュンソフト(日本)
・1800円

文/カムライターオ

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著者
和製ローグライクの金字塔『シレン』がスマホに登場でゲーマー歓喜!本編をクリアしてからが本番の、まさに1000回遊べるRPGだ【レビュー:不思議のダンジョン 風来のシレン】_017
『Ultima Online』や『信長の野望 Online』、『シムシティ4』など、数々のゲームのファンサイトを作成してきた。
iPhone 解説サイト『iPhone AC』を経て電ファミニコゲーマーのお世話に。
シューティングとシミュレーションが特に好き。

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