好きな主人公で好みの仲間と共に、自由に世界を旅することができる「フリーシナリオシステム」のRPG『ロマンシング サガ』シリーズ。
1995年に発売されたシリーズ3作目(ゲームボーイのSa・Gaを含めると6作目)となる、特に人気のあった作品が「HDリマスター版」として現代に蘇りました。
『ロマンシング サガ3』です。
PS4、Nintendo Switch、Xbox One、PS Vita、Steam、Windows10、iOS、Android版が11月11日に一斉に発売されています。
内容はどの機種でもほぼ同じで、それぞれのハードのトロフィー機能に対応しているかどうかが違う程度。
オリジナル(スーパーファミコン版)との違いは、“強くてニューゲーム”こと「NEW GAME+」があることと、新ダンジョン「暗闇の迷宮」が追加されていること。
そして何より、グラフィックが全面的に描き直されていること。
描き直しと言っても元のスーパーファミコン版のテイストは維持されており、特にキャラクターはレトロ感のあるドットグラフィックになっています。
しかし背景は現代の解像度に合わせた新しいものになっており、オリジナルと比べると大幅にパワーアップ。
魔法や技の演出もリニューアルされ、ボスの動きも追加されており、「リマスター」に相応しいクオリティとなっています。
価格は3500円、iOS/Android版は3420円。
ただ、12月4日まで発売記念セールが行われており、スマホ版以外は2800円、iOS/Android版は2820円になっています。
iOS版はiOS13で利用可能になったPS4やXboxのワイヤレスコントローラーに対応しています。
原作を知らない方のために、”ロマサガ3″の概要を簡単に説明しておきましょう。
ターン制でコマンド選択型のRPGですが、ドラクエやファイナルファンタジーのような一般的なJRPGとはかなり異なります。
まず、主人公の候補が8人いて、それぞれの立場で物語が展開されます。
仲間は世界中に20人以上が存在し、誰と冒険しても構いません。
戦闘中に武器の”技”を閃くことがあり、どの武器を使うか、どんな術を習得するかは自由です。(キャラクターごとに得手不得手はあります)
そして、どこに行って何をするかも自由の「フリーシナリオ」。
一応「四魔貴族」と呼ばれる魔王の打倒が目標となりますが、直行しても良いし、各地で発生する出来事の解決を優先しても構いません。
言われたままに行動するのではなく、自分で能動的に、かつ気ままに旅するゲームです。
経験値とレベルがないこともRPGとしては特異な点です。
戦闘ごとにHPと武器/術の熟練度が伸びていき、武器で戦えばWP(技ポイント、技のMP)が、術で戦えばJP(術ポイント)が伸びていきます。
レベルアップなしで少しずつ強くなっていくシステムは、サガシリーズに共通する特徴です。
フィールドの移動がなく、マップ上で行き先を指定するだけで、ダンジョンや町に瞬時に移動できるのもロマサガならでは。
ただ、町やダンジョンの中はちゃんと移動して探索できます。
『サガ スカーレット グレイス』のように、町は一枚絵が出るだけ、ダンジョンは戦闘だけ、ということはありません。
敵は姿が見えていて、接すると戦いになる形式。うまくかわせば戦わずに進めます。
HPが0になると倒れて「LP」が減少しますが、今作のLPは宿屋に泊まれば全快します。
そしてLPがある限り、HPを回復すれば倒れていてもすぐに復活、戦闘終了後もHPは自動で回復してくれます。
ただし戦闘で何度も倒れ、LPが0になってしまうと、そのキャラクターは”死亡”します。もはや復活はできません。
全員が倒れて全滅してもゲームオーバー。
自由度が高い反面、何をして良いのかわかりにくく、クリア方法が難解なイベントもあり、いま見ると不親切なゲームにも思えます。
例えば、あるボスは一度逃げないと先に進めないのですが、逃げられることや、倒す方法についてのヒントが乏しく、どうすれば良いのわからなくてハマりがち。
イベントの発生条件もわかり辛いものが多いです。
ただ、発生し辛いイベントが多いおかげで「2周目に知らないイベントに遭遇した」ということが起きやすくなっており、メインストーリーに関係ないイベントは放置しても構いません。
周回プレイを前提とした作りになっており、毎回異なる展開を楽しめるようになっています。
「トレード」と「マスコンバット」というミニゲームがあることもロマサガ3の特徴。
トレードは企業買収で”商会”を大きくしていくもので、各地の会社を金にモノを言わせて買いまくっていきます。
ただしライバル商会が買収をしかけてくることもあり、企業の取り合いになります。
本編そっちのけでハマってしまう人が続出した人気のミニゲーム。
「マスコンバット」は戦争が起きるときや、領主である”ミカエル”を主人公にしたときに発生する集団戦のRTS。
陣形を決め、前進・後退・突撃・防御などの戦術を駆使して戦いますが、マスコンバットは基本、普通に戦っても勝てないようになっていて、防御からの反撃や、特殊な戦術で敵の戦法を打ち破るといった対応が必要になります。
他に、主人公を控え枠(6人目)にすることで、指揮官として戦える半オートバトル「コマンダーモード」を利用することもでき、色々なシステムが野心的に取り入れられています。
そして注目の、リマスター版での追加要素ですが……「NEW GAME+」で引き継げるのは以下のものです。
・武器と術の熟練度
・WPとJP
・極意を会得した技(極意を得ていない技は消える)
・修得済みの術
・修得した陣形
・お金
・装備やアイテム(所持していないが倉庫に入っている。ただし”王家の指輪”や”銀の手”などのイベント絡みのものは消える)
・トレードのかけひき技とトレード資金
・マスコンバットの陣形と戦術
引き継がないのは以下のものです。
・HP
・武器と防具の開発状態
・ミカエル(領主の主人公)の施政状態
重要なのは、HPは引き継がないこと。
よって「強くてニューゲーム」ではありますが、そのまんまの強さではありません。
HPは再度のプレイで地道に上げていく必要があります。
それでも熟練度とWP/JPを引き継げるのでかなりラクになりますし、極意習得技や装備の引き継ぎも嬉しいところ。
クリアしていなくても引き継ぎは可能なので、ボスを倒さないと出られない場所で倒せずにハマった、みたいなケースになっても前回のプレイを無駄にせずに再スタートできます。
ある程度進んでから別のキャラで再プレイしてみるのも良いでしょう。
主人公を変えたり、周回することで新たにわかることもあるかも。
追加ダンジョン「暗闇の迷宮」は、一部のキャラの過去が語られる場所です。
新たなエピソードは総合ディレクターである河津秋敏さんが手がけており、オリジナルでは遭遇できなかった敵と戦えるようにもなっています。
また、洞窟に主人公や町娘を閉じ込めたにも関わらず、なんの反応もなかった町長に、あとで文句を言えるといった、ちょっとした変更も加えられています。
NEW GAME+や背景の描き直しなど、リメイクの方向性はリマスターの『ロマンシング サガ2』と同じですが、演出などが2より派手なので、こちらの方が「新しくなったなぁ」と感じます。
基本的には経験者向けの作品だと思いますが、オリジナルを知らない人でも一周回って新しいRPGとして、楽しめるのではないでしょうか。
キャラに魅力があったけど未完成感のあった1作目、システムが進化したけどキャラの印象が乏しかった2作目に対し、キャラクターとシステムが両立されたロマサガ3は、同シリーズが完成したと言える作品。
やや大ざっぱに思える部分も目に付きますが、それも”サガらしさ”でしょうか。
しっかり楽しめ、攻略しがいのある、ちょっとレトロな長編RPGとしてお勧めです。
ロマンシング サガ3
フリーシナリオの名作『ロマサガ3』のHDリマスター版
・RPG
・開発:アルテピアッツァ(日本)
・公開:スクウェア・エニックス(日本)
・PC/ゲーム機版3500円、iOS/Android版3420円
文/カムライターオ
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