【レビュー:Througe the Ages】ボードゲームマニアの熱い支持を受けるシヴィライゼーション的な作品『スルー・ジ・エイジズ』のデジタル版が日本語に対応

 太古から現代までの文明の興亡を描く、大人気ながら超ヘビー級のマニア向けボードゲーム『Througe the Ages』(スルー・ジ・エイジズ)
 『シヴィライゼーション』をカードゲーム化したとも言えるこの作品のデジタル版が、昨年末より日本語に対応しています。

 アナログの初期版が公開されたのは2006年。
 当時は賛否あったようで、審査員による表彰「国際ゲーマーズ賞」で大賞に選ばれるも、愛好家の投票による「ドイツゲーム賞」では8位でした。

 しかし2015年、ルールとバランスを調整し、ビジュアルも新しくした改修版『Through the Ages: A New Story of Civilization』が公開されると、ボードゲームマニアが集まる「BoardGameGeek」などのサイトで絶賛され、ランキングでも上位となります。

 iOS/Android、及びSteamで公開されている『Througe the Ages』は、この改修版をデジタル化したものです。
 公開は2017年だったのですが、ルールやカードの効果が複雑で、英語のままではまともに遊べる代物ではなかったため、当初はレビューをスルーしました。

 しかし最近になって有志による日本語化ファイルが公開され、スマホ版にも導入可能に。
 チュートリアルも日本語になっており、悩むことなく遊べるようになっています。

 オリジナルは1プレイが6時間や8時間かかると言われる超重量級のゲームで、デジタル版はサクサク進みますが、それでもたっぷり1時間はかかります。
 ルールも複雑で、やはりボドゲマニアやコアゲーマー向けの作品であることは変わりませんが、奥深く、しっかり楽しめる作品であることも確かです。

 価格はiOS版1220円、Android版1020円、Steam版1640円
 ただ、現在(2020年3月)は新型コロナウィルス対策支援のセールで約半額になっています。
 ちょうど良い機会なので、今回ご紹介しておきたいと思います。

 日本語化はタイトル画面のオプションボタン(歯車)を押し、Languageのタブを選択、リストの下の方にある「日本語」を選択することで行えますが、初回はファイルのダウンロードに時間がかかります。
 フリーズしたようになりますが、大人しく待ちましょう。

 プレイ人数は2~4人。
 3人や4人で遊ぶ場合はもちろん、1対1でも楽しめるゲームです。

 AIは練習用・初級・中級・上級が用意されており、行動回数の少ない練習用はともかく、他はかなり手強いです。
 プレイ中の選択肢の多いゲームで、ルールも多岐に渡るため、初級相手でさえ4人プレイだとなかなか勝てませんでした。

 デジタルボードゲームはAIが弱いとすぐに飽きますが、このゲームにその心配はないでしょう。
 1プレイが長いうえにチャレンジモードもあって、やり応えは十分。
 追加課金(610円)が必要ですが、拡張ゲームも用意されています。

チャレンジモードのステージ選択画面。それぞれのチャレンジに3~4のステージが用意されています。
ただ勝つだけでも大変なこのゲームで、ハンデ戦や特殊戦に挑戦しなければならず、かなりの歯応え。
自由な設定で楽しめるカスタムゲームや、本体を交互に使って人と対戦するパス&プレイもあります。

 ゲームのタイプとしては「変則型のワーカープレイスメント」です。
 ワーカープレイスメントとは労働者を施設に配置して資源を獲得し、その資源で建物などを作っていくゲームで、『アグリコラ』が有名ですが、このゲームの労働者は”置きっぱなし”。

 農場に労働者を置くと食料を得られますが、ターン終了後も労働者は回収されず、継続して食料を生産し続けます。
 配置替えは可能ですが、資源や命令数を消費します。

 フィールドには最初、農場・鉱山・研究所・寺院があり、労働者を農場に置けば食料が、鉱山に置けば資源が得られます。
 食料を集めて労働者を追加し、資源を使って施設の人数を増やせば、生産力がアップしていくわけですね。

 最初からある施設は古典的なもので、生産力は低めですが、上部にカードが並べられていて、命令数を使って取得と使用を行えます。
 場のカードは取った分だけ山札から補充されていき、そして後から出るカードほど、印刷所や製鉄所などの進化したものになります。

 ただ、上位の施設を建てるには研究所から生み出される科学力も必要。
 また、人口が増えるとシヴィライゼーションでおなじみの”不満のある人”が出てくるため、寺院や劇場も作って抑えなければなりません。

ゲーム初期の状態。黄色い玉、及び建物の灯りが労働者を表します。
農場と鉱山以外の建物は「都市建築物」と呼ばれていて、そこに配置できる労働者は最初は2人まで。
さらに増やすには上位の政治体制を獲得しなければなりません。
アクション数(行動回数)も政治体制によって変化します。
時代が進んでからの内政画面。書庫、劇場、スタジアムといった施設も登場します。
しかし新しい建物は研究が必要で、人を配置するための資源も多く、全部建てるのは無理。
また、資源を溜め込みすぎると汚職(腐敗)によってターンごとに損失が出ます。
食料や資源は必要な分だけ生産されるように建てていくのが良いですが、なかなか計画通りにはいかない。
労働者を示す黄色い玉も、ストックが減ってくると必要な食料と維持費が増加するため、農場の拡張が遅れると人口が停滞気味に……。

 このゲームは各プレイヤーがそれぞれの土地を開発していく徒競走型のため、開発面では他のプレイヤーとは交わらないのですが、相互作用を生み出す「軍事」のコマとカードがあります。

 各ターン、プレイヤーには内政用の手札とは別に「軍事カード」が与えられます。
 これには豊作や外交などのイベントの他に、侵略や戦争といった物騒なものも含まれていて、軍事力を高めたプレイヤーはそれを使って弱いプレイヤーを攻撃し、略奪や破壊を行うことができます。

 軍事力を高めるには食料や資源が必要で、上位の兵士を得るには研究もしなければなりません。
 そちらにリソースを振り分けると内政は遅れてしまいますが、軍事力がないとやられ放題。
 イベントも軍事力で結果が判定されるものが多く、軍事ユニットを派遣して継続的な恩恵を得られる“植民地”もあるため、軽視はできません。

 軍事は「相手に負けないぐらい必要」なので、これだけあれば良いというものではなく、軍拡競争が繰り広げられます。

イベント画面。イベントは各プレイヤーが出した「軍事カード」によって発生します。
よって完全にランダムで起こるわけではありません。
カードを出してから数ターン後に起こるため、軍事力で判定されるイベントカードを出したら、発生前に兵士を増やしておきたいところ。
軍事画面。戦術カードを配置し、必要な兵種をそろえると軍事力にボーナスが付きます。
軍事攻撃には侵略と戦争があり、侵略はその場で解決。防御側は軍事カードを使って戦力を補填できますが、攻撃側は負けてもペナルティはありません。
戦争は1ターン後に勝敗を判定し、軍事カードを使って戦力を補填することはできませんが、防御側が開戦までに戦力を補充して逆転すれば、攻撃側が敗戦ペナルティを受けます。
イベントで植民地が出たら、軍事力を使った「競り」が行われます。
植民地を獲得すれば黄色い玉(人口)や青い箱(物資)のストックを増やせるため、国家を維持しやすくなりますが…… 軍事力を投入しすぎると一時的に弱くなるため、そこをつけ込まれることも。
利益とリスクを考えて入札しましょう。

 山札のカードが尽きたらゲーム終了。“文化”が一番高い人が勝利となります。
 つまり文化が勝利点。

 ただ、文化はゲームの展開を有利にはしてくれません。
 やってみるとわかりますが、このゲームは各種の物資が常に不足します。
 人口が増えるほど食料生産は低下、資源は何をするにも必要で、研究もないと困ります。
 軍事も平行して高めなければならず、なかなか国家は安定しません。

 しかし、だからと言って文化に手が回らない状況が続いてしまうと負けは必至。
 そのバランス取りには手練れの戦略が必要で、当面は負けまくることになるでしょう。

 だが、それがいい。
 なかなか勝てないゲームだからこそ、「もう一度!」とプレイする楽しさがあります。
 シヴィライゼーションの「あと1ターン」的な、やめられない中毒性を味わえます。

最終集計画面。目指すのはシヴィライゼーションでいうところの「文化勝利」。
最後に生産力や軍事力に応じたボーナスを貰えるイベントが、5回ほどまとめて発生するため、それが終わるまで順位はわかりません。
ここで逆転が起こることもよくあるので、最終ターンになっても配置替えなどを利用し、できるだけ国力を高めておきましょう。
シヴィライゼーションへのリスペクトとして、シド・マイヤーおじさんがナポレオンやアレキサンダーと並んで指導者として登場します。
彼がいると研究所が文化を生み出すようになりますが、生産性は下がります(笑

 ゲームのルールは複雑ですが、前述したようにこのゲームには丁寧なチュートリアルがあり、日本語で説明してくれるので、そこでしっかり学ぶことができます。
 指導者や脅威(世界遺産)にも細かな効果がありますが、日本語なら問題ないでしょう。
 サブメニューから閲覧できる「ルールブック」も日本語化されています。

 内政重視か軍事重視か? どの生産力から高めていくか? 遺産は建てるのか?
 とにかく多様な選択を迫られる作品。
 時間がかかり過ぎるのでオンライン対戦には向きませんが、このヘビーなボードゲームをスマホやタブレット片手に、ひとりで気楽に遊べるのは嬉しいところ。

 価格は高めですが、ドイツゲーム系のアプリとしてはビジュアルやサウンドが良く、情報表示もわかりやすく、アンドゥ(一手戻る)も完備、インターフェイスに優れています。
 ボードゲームや開発ゲームが好きなら見逃せない逸品でしょう。

Througe the Ages

文明の興亡を描いたマニア評価の高い重量級ボードゲーム

(画像はThrouge the Ages – AppStoreより)

・デジタルボードゲーム
・CGE Digital(チェコ)
・iOS版1220円、Android版1020円、Steam版1640円

文/カムライターオ

著者
『Ultima Online』や『信長の野望 Online』、『シムシティ4』など、数々のゲームのファンサイトを作成してきた。
iPhone 解説サイト『iPhone AC』を経て電ファミニコゲーマーのお世話に。
シューティングとシミュレーションが特に好き。
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