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『消滅都市』が新アプリ『AFTERLOST – 消滅都市』としてフルリメイクされて配信。スマホゲームの新たな可能性を示唆した

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 グリーのゲーム事業ブランドであるWFSは、スマートフォン向けアプリ『AFTERLOST – 消滅都市』の配信を2019年6月6日より開始した。

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『AFTERLOST – 消滅都市』

 『消滅都市』といえば、2014年5月にリリースされ、2019年現在では全世界で950万ダウンロードを突破しているアプリ。「ドラマアクションRPG」と称しているように、シナリオにも力を入れていることが特徴のタイトルで、登場人物たちの心情にフォーカスした会話劇が見どころだ。

 『AFTERLOST – 消滅都市』は『消滅都市』シリーズの最新作アプリとなる。6月3日の時点で事前登録者数は30万人を突破し、注目を集めている。
 
 電ファミニコゲーマー編集部では、リリース前のテストプレイが行えたので、本稿にてインプレッションを記したい。

文/ムニエル


『AFTERLOST – 消滅都市』はスマホゲーム業界初のリメイク作品だった

 筆者は初作『消滅都市』をプレイ済みのため、ある程度の世界観やゲーム性は知っていたものの、本作についてはそもそもどのようなゲームになっているのか、中身を知らない状況からプレイが始まった。

 アプリを起動して真っ先に驚いたことは、本作が「『消滅都市』のフルリメイク作品であった」こと。見慣れた登場人物、ストーリーなのに、ビジュアル、戦闘など至るところが生まれ変わっているのである。

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『AFTERLOST – 消滅都市』
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オリジナル版『消滅都市』

 『消滅都市』のリリースから約5年が経過しているため、懐かしいという気持ちは当然あったが、それと同時に「そもそも“スマホゲーム”を“スマホゲーム”でリメイクするってどういうこと?」という疑問も抱きつつ、数時間プレイを進めた。

 ここから先は、初作『消滅都市』(以下、オリジナル版)との比較も入れつつ本作ならではの魅力を語るとともに、「なぜオリジナル版『消滅都市』をリメイクする必要があったのか」についても考察していこう。

より“『消滅都市』らしい”ゲーム性に生まれ変わった

 本作のストーリーは、リメイクだけあって基本的にはオリジナル版『消滅都市』と同じもの。舞台は突然消滅した都市で、主人公の運び屋タクヤと謎の力をもつ少女ユキがバイクに乗って冒険していく。

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『AFTERLOST – 消滅都市』

 プレイヤーが挑むクエストもオリジナル版と同様に会話パートと戦闘パートがあり、会話パートではタクヤ、ユキを中心とした登場人物たちのドラマが展開される。

 オリジナル版から特に大きく変わったこととしては、以下の2点がある。

 ひとつめは、クエスト上の会話演出やムービーが大幅に追加、変更されたこと。

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『AFTERLOST – 消滅都市』
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オリジナル版『消滅都市』

 登場人物のイラストは描き直され、カメラアングルも一新された。まばたきもするし、口もしっかりと動く。現在放映中のアニメ版『消滅都市』も一部採用されているようだ。登場人物たちが会話のなかでどのような表情をしていたかが明らかになり、より世界観への没入感が増した。

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『AFTERLOST – 消滅都市』
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『AFTERLOST – 消滅都市』

 特にユキが自身の心情を語るパートはオリジナル版にはない新要素で見どころとなっている。

 ふたつめは戦闘パートのゲーム性が新しいものになっていること。

 オリジナル版は、自動で進むバイクをタップやスワイプで操作し、道中にある「スフィア」と呼ばれるアイテムを拾い、敵を攻撃していった。イメージとしては、いわゆる『チャリ走』のアクション性にRPG要素を加えた戦闘といえるだろう。

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オリジナル版『消滅都市』

 一方で本作は、そのゲーム性がガラっと変わる。タクヤやユキがバイクに乗って進むところは同じだが、プレイヤーは敵が攻撃してくるタイミングに注意しながら、自分のキャラをタップして攻撃していく。オート進行で戦闘は行われ、プレイヤーの主な操作は、タップによる攻撃、スキルの発動、敵キャラの選択となる。

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『AFTERLOST – 消滅都市』

 この大幅なゲーム性の変更によって、オリジナル版にあったアクション性やスフィアを取り続けるゲーム性は、なくなっている。

 ここで、なぜこのような大幅改変を加えたのか少し考えてみる。『消滅都市』というゲームの特性を振り返ると、本シリーズはもともとバトル要素よりもストーリー、世界観づくりに注力しているものであったことを思い出す。

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『AFTERLOST – 消滅都市』

 『消滅都市』の主たる要素はあくまで重厚なストーリーを堪能することであって、テクニカルなスキルを要求されるアクション性はいらなかったのではないかとも考えられるだろう。

 つまり、今回のシンプルなゲーム性によって、よりストーリーに集中できる仕様になったのだと感じた。

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『AFTERLOST – 消滅都市』
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『AFTERLOST – 消滅都市』

 とはいえ、この新しい戦闘も敵をどの順番で処理するか考えたり、攻撃タイミングに合わせて標的を変えていくなど、ある程度の戦略性が要求される。同時に複数体の敵が出現することもオリジナル版にはなかった要素だ。

 さらに、会話パート同様に戦闘の演出も強化されているため、退屈になるようなことはない。スキル発動時、キャラによっては画面いっぱいのカットインが入ることもある。

 以上がオリジナル版と比較したとき特に大きかった変更点だが、このほかにも『AFTERLOST – 消滅都市』では生まれ変わった魅力的なポイントが多数ある。以下ではその一部を紹介していこう。

コスト制の廃止で好きなキャラで編成可能に

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『AFTERLOST – 消滅都市』

 ゲーム性が変わったことにより、デッキの組み方やキャラクターのステータスにも変化があった。

 『AFTERLOST – 消滅都市』は5体のキャラクターを編成して戦えるのだが、オリジナル版にあったコスト制が廃止に。つまり、好みのキャラを自由に組み合わせられるようになったのである。

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オリジナル版『消滅都市』

 コスト制は強いキャラほどコストが高く設定されることが定石であり、限られたコスト数でどう編成するかを考える必要がある。好きなキャラが複数いるのにコスト制限で編成できない、といった不満は『AFTERLOST – 消滅都市』にはない。

 オリジナル版にあったリーダースキルやスフィアを拾ったときに作用する回復力といった要素もゲーム性の変更に伴って廃止され、よりシンプルでわかりやすいステータスとなった。

大技「フィーバー」も一新

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『AFTERLOST – 消滅都市』
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『AFTERLOST – 消滅都市』

 オリジナル版での戦闘パートの目玉であった大技「フィーバー」も新しくなった。この技はいわゆる無敵状態になって敵を一方的に攻撃できるもの。

 オリジナル版ではスフィアを連続で回収することを“CHAIN”と呼ぶが、うまくチェインをつなげて“10CHAIN”達成するごとに発動できるものであった。

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オリジナル版『消滅都市』

 一方、『AFTERLOST – 消滅都市』では、敵を攻撃するとゲージが上昇し、最大まで溜まると発動できる技に変更。操作に集中してCHAINを繋ぐことが必須であったオリジナル版と比べると、カジュアルに発動できる要素となった。

 演出も発動時にカットインが入るなど見ごたえのあるものに生まれ変わっているので注目だ。

スタミナ制は廃止に

 オリジナル版にももちろんあり、スマホゲームおなじみともいえるスタミナ制は本作には見当たらなかった。そのため、好きなタイミングで、気軽にクエストがプレイできる。

BGMは既存曲のアレンジもあり

 『消滅都市』はイジークロークがBGMを手掛けており、サウンドトラックも発売されているなど音楽面にも力を入れている。『AFTERLOST – 消滅都市』でもそのクオリティーは健在。タイトル画面のBGMを始めとして、オリジナル版BGMのアレンジ曲も聴くことができる。

スマホゲームの『消滅都市』をスマホゲームでリメイクする意義

 次に、プレイ中に筆者が感じた「なぜ『消滅都市』をリメイクする必要があったのか」について考えていく。

 制作を手がけているWFSは、『AFTERLOST – 消滅都市』を『消滅都市』のリメイクとして位置付けていることを公式に発表している。

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(画像は消滅都市シリーズ 5th Anniversary Party「AFTERLOST – 消滅都市」パート – YouTubeより)

 今回のリメイクで興味深い点は、日本にスマートフォンが普及し、台頭してから10年近くが経過する中、「スマホゲームをリメイクする試みは本作が初」だったのではないかということ。

 初めての試みだからこそ「“スマホゲーム”を“スマホゲーム”でリメイクする必要があるのか?」という疑問が生まれてくるのである。

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『AFTERLOST – 消滅都市』

 前例のないスマホゲームのリメイク。一方、コンシューマーゲームではリメイクは当然のこととなっているが、コンシューマーゲームではどのような考えやビジネス的な勝機ををもとにリメイクされているのだろうか。

①オリジナル版のリリースから時間が経ち、かつてのユーザーを呼び戻すと同時に新規層を獲得したいため


②対応プラットフォームが古くなり、現在ではプレイが困難となったため

 『AFTERLOST – 消滅都市』は①の理由なのではないだろうか。

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『AFTERLOST – 消滅都市』

 だが、②はスマホゲームという特性を考えると該当しない。『消滅都市』は現在も配信されており、サービスが終了したわけでもない。極論を言えば、オリジナル版をアップデートし続け、段階的に作り替えることだってできたはずだ。

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現にオリジナル版『消滅都市』は、シナリオが変わるごとにタイトルを『消滅都市』→『消滅都市2』→『消滅都市0』と変更し、メジャーアップデートをかけるというスマホゲーム界でも珍しい試みも行っている。

 では、なぜ新規アプリとしてリリースするのか。

 オリジナル版の要素に加えて、会話の追加やゲーム性の変更といった、たくさんの付加価値を盛り込んだ作品に仕上げることにより、同じスマートフォンゲームという括りの中で「『消滅都市』の物語体験をより多くのひとにプレイしてもらいたい」という想いがあるように感じた。

 メジャーアップデートという手段を取らなかった理由も、このような付加価値の多さから、リメイクでありながら、ある種、別物のゲームともいえるレベルの作品に仕上がっているからこそではないだろうか。

 コンシューマーゲームのリメイク例を挙げたらきりがないが、たとえば『ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D』『ゼルダの伝説 ムジュラ 3D』のように原作に比較的忠実なリメイクもあれば、『ポケットモンスター ハートゴールド・ソウルシルバー』、『ポケットモンスターオメガルビー・アルファサファイア』を始めとした『ポケットモンスター』シリーズのようにビジュアルもBGMもガラっと変わるものもある。

 『AFTERLOST – 消滅都市』は、ある種、後者に近いリメイクという見方もできるだろう。

『AFTERLOST – 消滅都市』はリメイクの新たなかたちを体現した作品

 このように、『AFTERLOST – 消滅都市』が『消滅都市』のフルリメイク作品としてリリースされることには十分に意義があるように感じた。

 気になる点があるとすれば、オリジナル版『消滅都市』もサービスを続けていく中で『AFTERLOST ‐ 消滅都市』とどう棲みわけられ、運営していくのかということ。

 この疑問については、過去に実施された先行体験会での説明や、消滅都市シリーズ5周年イベントでの情報から回答が得られた。

オリジナル版『消滅都市』

・「純運営コンテンツ」として、これまで通りリアルタイムで盛り上げる運営を行う

・季節イベントなどの期間限定イベントも引き続き開催する

・全国大会を開催し、競技性の高いランキングバトルを盛り上げていく

 

『AFTERLOST – 消滅都市』

・配信されたゲーム内イベントが蓄積されていく「パッケージ型配信」を採用

・時間に追われることなくプレイでき、いつ遊びはじめても同じ体験を味わえる

・蓄積される配信形式により、たくさんの人に消滅都市を広めていくツールとしての役割も持つ

 以上のように、『AFTERLOST ‐ 消滅都市』とオリジナル版『消滅都市』は、そもそも制作意図が大きく異なることが明らかになった。

 そして、非常に面白い点は「オリジナル版とリメイク版の役割を棲みわけて、これからも同時に運営し続けるスタイルをとっている」ことではないだろうか。

 このような手法は、コンシューマーのリメイクでは見られなかった新しいリメイクのかたちであり、『AFTERLOST ‐ 消滅都市』は今後のリメイクのあり方や、スマホゲーム開発における新たな可能性を示唆したともいえるだろう。 


 『AFTERLOST – 消滅都市』は「スマホゲームをスマホゲームでリメイクする」という、これまでにないアプローチを実現した挑戦作であった。

 『AFTERLOST – 消滅都市』はまだ配信が始まったばかり。実際に手にとるユーザーの反応も気になるところだ。本稿で述べたとおり、本作はオリジナル版を凌駕する改良がなされたいわゆる「良リメイク」であったと感じる。

 もし、ユーザーからの評価が高ければ、ほかのスマホゲーム会社も後追いするかのように動き出し、いずれスマホゲーム界でも「リメイク制作」の波が来るかもしれない。

 一方で、『AFTERLOST – 消滅都市』の良さに誰も気づかず、「結局、オリジナル版がスマホで今でもプレイできるなら、そっちをやればいい」となる可能性も大いにありえる。

 『AFTERLOST – 消滅都市』がどちらに転ぶのかも含めて、「スマホゲームリメイク」の未来に今後も注目したい。

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 電ファミ編集部が平成を総括。「この30年はなんだったのか」を考える、編集長TAITAIによる思索と、「この30年のざっくりとした業界トピックス&発売されたおもなタイトル」をまとめた年表を用意した。
 「何々があったよねー」という話ではなく、この平成の時代に私たちが何を経て、令和の時代にどうなっていくかを語っていく。

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ムニエル
大学時代はフリーライターとしてスマートフォンゲーム、インディーゲーム、eスポーツ関連の記事を執筆。週刊誌の編集も経験する。DTMを嗜み、特にゲームBGMとクラシックを愛する。

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