ゲームの「リセット」って、結局何をリセットしてるんだっけ? ファミコン以前から「リセマラ」までその歴史を振り返ってみた

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CPUのリセットからソフトウェアでのリセットへ

 ここまで見てきたことからわかるように、初期画面に戻ることそのものは、ファミコンのリセットボタンを押す目的ではなかった。プレイヤーの真の目的は、ゲームの進行の初期化や、セーブデータのロードなどにあり、初期画面の表示は、その結果や過程の中の一部に過ぎなかったとすら言える。
 一方で初期画面に戻ることが、リセットボタンを押すことによって生じる事象のうちの最大公約数的な共通点として、象徴的だったのも確かだ。そのため、ファミコン用ソフトのジャンルが多様化していくにつれ、「ゲームのリセット」と「初期画面に戻ること」との結びつきが単純化され、かえって強固になっていったのではないだろうか。

 そんな中、ファミコン以降に登場した家庭用や携帯型のゲーム機では、CPUをリセットさせる回路が次第に複雑になってゆく。これは、ゲーム機の高機能化によりさまざまなLSIが利用されるようになったことがひとつの要因だ。電源オンやリセットの際に、CPUより先に他のLSIをリセットするものもあったようだ。
 ただ、これはゲーム機内部の話であり、リセットボタンを押すというプレイヤーの体験に直接変化を与えたわけではない。

 一方で、「初期画面に戻ること」も含め、ゲームのリセットにプレイヤーが求めることは、CPUそのものはリセットせず、ソフトウェアのみで実行することも、もちろん可能だ。
 アメリカでは、アタリの家庭用ゲーム機がこの手法を採用していたが、日本のゲーム機で同様の手法、特にコントローラーの操作でのリセットを広めたのが、1987年に日本電気ホームエレクトロニクスが発売したPCエンジンだ。コントローラーの操作で初期画面に戻れるものは、ファミコン用のソフトの一部にもすでにあったが、PCエンジンではこれを全面的に採用して、利便性が格段に高まったことを印象づけた。

PCエンジン
Evan-Amos投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, リンクによる

 PCエンジンでは、ランボタン(ファミコンのスタートボタンに相当)とセレクトボタンの組み合わせでのリセットにすることで、誤操作を抑えようと工夫している。しかしそれでも、手の癖でうっかりリセットする事故はしばしば起きたらしい。ソフトによっては、両ボタンを押したまま少し待つことで、初めてリセットとなるものもあった。

 その後、1989年発売のゲームボーイの大ヒットで、携帯型ゲーム機の市場が急拡大する。このタイプのゲーム機では、コントローラーと本体が一体化しているので、CPUそのものをリセットさせるボタンでも、利便性は損なわれなかったはずだ。
 しかし、それでは誤操作の危険がかえって高まるというデメリットのほうが重かったのだろう。「スタート+セレクト+A+B」など、PCエンジンよりもさらに組み合わせて押すボタンを増やすことで、誤操作を抑えつつ、ゲームの操作に使うボタンのみでリセットするという手法が多くみられた。

ゲームボーイ
Transfrom JPEG version and remove white background. Original by Evan-Amos. – Media:Game-Boy-FL.jpg, パブリック・ドメイン, リンクによる

 さらに時代が進み2000年代に入ると、携帯用に限らず家庭用のゲーム機でも、CPUそのものをリセットさせるようなボタンは、急速にすたれてゆく。これは最新鋭の機種に、ますます新しい技術や周辺機能が投入されたことで、ゲーム機がコンピューターシステムとして成熟していったことが大きな要因だ。
 たとえば電池残量や充電状況の監視、ハードディスクやフラッシュメモリーといったストレージへのアクセス、WiFiを含むネットワーク接続……。このような高度な機能を、ゲームソフトのプログラムが自前で丸ごと制御することは、もはや困難だというのは想像できるだろう。現代のゲーム機では、これらは基本的に、それぞれのコントローラーLSIなどを介してシステムソフトウェアが管理している。

 1990年代前半ごろまでは、ゲーム機本体にはシステムソフトウェアが内蔵されていないことすらあり、内蔵されていたとしても、初期化の段階を終えたあとは、ゲームのプログラムが必要に応じて呼び出すという程度のものだった。しかしその後、ゲームのプログラムとシステムソフトウェアは密接に協調して動作するものになり、ついにはマルチタスクのOSがシステムソフトウェアの基盤となった。
 このように複雑化したシステムでは、CPUにいきなりリセットがかかったり、電源が失われたりするのは、それだけでトラブルの原因となりうる。そのため電源のオン・オフも、特別な場合を除いてソフトウェアでの制御が広く行われている【※】。リセットについても、これと考え方は同じというわけだ。

※「ニンテンドークラシックミニ」シリーズや「メガドライブミニ」「PCエンジンmini」の電源スイッチはスライド式だが、これらもかつてのゲーム機本体とは異なり、全体の電源供給を直接オン・オフしているわけではない。システムソフトウェアの起動や、シャットダウン処理を指示するスイッチになっている。

スマホ時代の「リセマラ」は、結局何が“違う”のか?

 そして近年、パソコンから家庭用・携帯用ゲーム機、スマートフォン(スマホ)にまで広がってきたオンラインゲーム。このジャンルでは、ゲームのリセットが場合によっては「チート(ズル)」につながりかねないことが、大きな問題となった。

 1980年代の時点でも、先に触れたような『ウィザードリィ』でのリセットが、現在でいうチートなのか、攻略法の範疇なのかは議論のタネだった。このような単純な手法以外にも、プログラムの不備と組み合わさることで、ゲーム機などのハードウェアやソフトのリセットは、チートを含む数々の「裏技」を生み出してきた。

 これがオンラインゲームでは、プレイヤー間の公平さを破壊する不正行為やそれに近いものとして、提供元を悩ませることになる。プログラムの対応の強化、悪質なプレイヤーの排除などが求められたのは当然だろう。
 現在では運営上のトラブルへの対策も兼ねて、セーブデータを運営者が管理するサーバーに保存し、プレイヤー側のIDなどと紐づけて利用するケースも珍しくない。それだけにプレイヤーがリセットによって不本意な状況変化を取り消すことは、まずできなくなっている。

 そんな中、ゲーム好きの人々の間で流行語となったのが、冒頭で触れた「リセマラ」ということになる。
 この、スマホ時代のリセマラでいうリセットは、アプリの削除・再インストール、会員登録の解除など、手法はさまざまだが、ともかくセーブデータとプレイヤー側の情報との紐づけを何らかの形で初期化して、改めてゲーム序盤を遊びなおす行為だ。
 これは、セーブデータをロードする……つまり活用する過程として初期画面に戻るためにリセットするのとは、セーブデータの扱いが明白に異なる。『モンスターハンター』などでリタマラだけではなくリセマラにもいそしんできたプレイヤーの中には、その落差に釈然としないものを感じた向きもあるかもしれない。

 しかし、主に1980年代中ごろまでのパソコンや家庭用ゲーム機のゲームの中には、最序盤の乱数の出目が後々の難易度を大幅に左右する、荒っぽいゲームデザインのものがしばしばあった。
 このようなゲームでは、プレイヤーにとって不本意な出目でゲームが始まるのを回避するため、セーブデータの有無にかかわらずゲームをリセットして初めからやり直すことも、そう珍しくはなかった。ゲーム開始時のキャラクターの能力値に乱数が関与するRPGなどがその代表だ。またセーブ機能がないゲームでも、たとえばナムコのファミコン用『スターラスター』【※】の攻略にこの手法を使った覚えのある向きは、かなりの数にのぼるだろう。

※『スターラスター』……ナムコが1985年末に発売した、コクピット視点のSFシューティングゲーム。8×8マスの広域マップがあり、リアルタイム型戦略ゲームの要素も持つ。広域マップ上の敵や味方基地などの配置は、ゲーム開始時に乱数で決まる。
(画像はスターラスター | Wii U | 任天堂より)

 これらとスマホ時代のリセマラに、根本的な違いがあるとは言いがたい。違いがあるとすれば、アプリの削除・再インストールや会員登録の解除などが、単純にゲームのタイトル画面に戻ることとは直接つながらないという、まさにそこだけと言ってもいいだろう。
 逆に言えばそれほどまでに、「ゲームのリセット」と「初期画面に戻ること」との結びつきが、長きにわたり強固だったというわけだ。

「リセットボタン」の影に隠れているジェネレーションギャップとは?

 一方でたとえば近年の『パズドラ』では、プレイヤーごとに一度きりとなっている特別なガチャなどのイベントを、再度利用できるようにする企画を「8大リセット」などと称し、大々的な告知を行っている。これに限らずオンラインゲームでは、運営側がトラブルの対応や販促として一部のデータを“リセット”することも珍しくはなく、しかも公式情報としてもこの言葉がしばしば使われている。

(画像はパズドラ大感謝祭!! |パズル&ドラゴンズより)

 またゲームとは無関係に、スマホ端末自体の動作の不調を改善する方法のひとつとして、内蔵ストレージなどに保存されたすべてのデータを削除し、出荷時の状態に初期化する手が紹介されることがある。この初期化の操作も、スマホの画面上では「リセット」と表記されていることが少なくない。

 このように、スマホ時代を迎えたビデオゲームとその周辺では、「リセット」という言葉の使われ方が、さまざまに広がってきているように見える。
 その影響もあってか、この言葉にまつわる誤解や行き違いも、プレイヤー同士のやり取りを中心にしばしば起きている。特に「初期画面に戻る」程度の意味で「リセット」を使って、「セーブデータの初期化・削除」のような重い意味に取られてしまう、またはその逆の取り違えが起きると、なかなか面倒だ。

 この観点からは、近年隆盛を見せている1980年代〜1990年代の家庭用ゲーム機の復刻商品の説明は、少々心もとない。
 たとえば「ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン」の公式サイトや、「メガドライブミニ」「PCエンジンmini」の取扱説明書では、「リセット」についてそれぞれ次のように説明されている。

「ソフトウェアリセット ゲームをプレイ中に[START]+[SELECT]+[L]+[R]を1秒間長押しすると、ゲームがリセットされタイトル画面に戻ります。」

 

ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン 説明書より)

「システムメニュー項目(中略)ゲームリセット ゲームをリセットして、タイトル画面に戻ります。」

 

メガドライブミニ マニュアルより)

「システムメニューではゲームのセーブ、ロード、リセットなどができます。」

 

PCエンジンmini オンラインマニュアルより)

 これらの文章では、「リセット」によって、(タイトル画面に戻ること以外に)何が起きるのか・起きないのかが判然とせず、特に「何が初期化されずに残るのか」がわからない。先のような例を考えると、ゲームをリセットしても、中断ポイント【※】のデータは初期化されない旨が一言あれば、よりよかったのではないだろうか。

※「メガドライブミニ」では中断セーブ、「PCエンジンmini」ではカンタンセーブに相当。

 もちろんこんな説明は、当時実物を遊んでいたプレイヤーたちにはまったく不要だろう。しかしだからこそ、ゲーム機本体のリセットボタンの有無より気付きにくい、隠れたジェネレーションギャップが生じているとも言える。
 復刻ゲーム機に限らず、旧作の新規移植やいわゆる「8ビット風」「16ビット風」の新作ゲームでも、この点に配慮があると、当時の言葉を使いつつ、より広い層にとってわかりやすいものになるのではないかと思うが、いかがだろうか。

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著者
コンピューター文化史研究家。2013年より約2年間、ブログにて 「やる夫と学ぶホビーパソコンの歴史」を連載。その際、1999年末まで約20年分の日経産業新聞縮刷版にヘトヘトになりながら目を通した。
Twitter: @Kenzoo6601

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