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とにかく本編を早くやらせてくれ……!『ALTDEUS: Beyond Chronos』に、新しい「VRならでは」のゲーム体験の可能性を垣間見た

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 2018年に「VRミステリーADVをつくる」をコンセプトに、社員数8名のゲーム会社・MyDearestが制作した『東京クロノス』は、クラウドファンディングで全世界1662人ものファンの支持を集めた。

 そんなMyDearestが新たな野望を引き下げて制作しているVRゲームが『ALTDEUS: Beyond Chronos』だ。

 本作のゲームコンセプトとして掲げられている言葉は「未来を起動(ブート)しろ」。VR/ARなどのテクノロジーが発達した未来を舞台にし、幾たびもプレイヤーに「選択と決断」を迫る。

 VR上で選んだ選択肢や行ったアクションによって、ストーリーが分岐していき、結末が変わっていく。自分の決断や行動のひとつひとつに重みを与え、物語の最前線に立つ感覚を味わえるものとなっているとのことだ。

 新しいPVも公開され、発売がより待ち遠しい。そんな『ALTDEUS: Beyond Chronos』の体験版を遊ぶ機会をいただいたので、プレイレポートをお届けしよう。

文/tnhr


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まずは感想。とにかく本編を早くやらせてくれ……!

 まずは『ALTDEUS: Beyond Chronos』(以下、『アルトデウス: BC』)の体験版をプレイした感想から。正直に言って、体験版だけでは何をやっているのかがほとんど分からない(体験版なので仕方がないのだが)。とにかく物足りないし、よくわからないのでウズウズする。

 しかし、それは非常にポジティブな物足りなさ──つまり「今すぐ本編をやらせてくれ!」という気持ちが爆発するような作品なのだ。

 「断片に現れる伏線が美しい」、「キャラクターがめちゃくちゃイケてる」、「VRらしさを感じることができる」。20分〜30分ほどのプレイ時間ではあったが、ぜひとも続きを遊びたくなる魅力を垣間見ることでき、とにかくMyDearestの気合を感じさせてくれるものであった。

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全身を義体化し、200年以上の時を生きるマッドサイエンティストのジュリィがカッコいい。

 『アルトデウス: BC』の舞台は、地上が巨大生物「メテオラ」によって占拠された2280年の世界。メテオラに対抗し、地上を取り戻すため立ち上がる組織「プロメテオス」の物語を描いていく。

 前作の『東京クロノス』との繋がりはあるが、前作をプレイしていなくても支障はないらしい。ただ、前作をプレイしたことのある方にはわかる要素は体験版だけでも発見することができたので、発売までにプレイしておくのも良いだろう。

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この渋谷に見覚えがある方もいるだろう。

モチーフを「わざわざ」拾わせる

 物語はモノクロの部屋に落ちている「もの」を拾う探索からはじまる。今後重要な意味を持ちそうなモチーフであるいちご、本、オルゴールを拾い、そこに表示される情報を読んでいくとゲームは進行していく。

 VRゲームなので、ものを拾う動作ひとつとっても体力を使う。前作の『東京クロノス』と比べると、プレイヤーはかなり能動的に行動しなければならない。ある種の「面倒さ」であり、好みが分かれる点であるかもしれないが、筆者としてはVR体験とはこの「面倒さ」をも含めてのものだとも思う。

 そもそもVRはヘッドセットを装着したり、場所を確保したりと前準備の段階で一定の労力を必要とする。だから、多少ゲーム内で「面倒さ」を要求されても、そこまで苦になることはない。後述するが、本作ではVRの「面倒さ」をゲームプレイに活かし、決定的に良い効果を与えているシーンがあるのだ。

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実際に手に取ったものは、ぐるぐると回して様々な角度から眺めることができる。

 話をゲーム内の出来事に戻そう。心地の良いオルゴールの音が鳴る部屋に、車いすに座る盲目の少女「コーコ」が現れる。彼女は主人公の「クロエ」にとってまさに生きがいであった。地上を襲う異生物メテオラに対抗すべく作られ、メテオラを倒すこと以外に生きる目的を持っていなかったクロエは、コーコのおかげで人間として成長する。

 しかし、本作においてコーコはすでに死んでしまった存在。プレイヤーはクロエの記憶の中の存在にあるコーコを見ていくこととなる。コーコのセリフは「見る」ことについて、何かを示唆する内容だ。

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現実・パイロット・ロボットの身体を「同期」させる

 本作は巨大生物メテオラと戦うことがストーリーの軸のひとつであり、実際にプレイヤーはロボットに乗ってメテオラと戦うことになる。

 先ほど説明した探索の要素では「もの」をわざわざ拾うと述べたが、このマシンアクションパートでも同じくプレイヤーに様々な行動を要求する。

 特に面白いと感じた行動はメテオラにとどめを刺すときだ。レールキャノンを手にするのだが、コックピット内のクロエの手が動くと、コックピットから見えるロボットの手も同じように動くのだ。プレイヤー→クロエ→ロボットと動きが伝達していき、合わせ鏡の前で手を振った時のような不思議な感覚を得ることができる。

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コックピット内

 この「プレイヤー→クロエ→ロボット」という動きの連動によって表現されているのは、「没入感」というよりも、身体を「同期」させる感覚である。この身体の同期によって、「ものを拾う」ようなVRに特有の面倒さが、かえって新鮮な体験として現れるのだ。

 多くのロボットゲームにおいて、プレイヤーはロボットを“直接”操作する。そこでは「ボタンを押す」と「ロボットがパンチ」するのだが、ゲームに慣れた方であれば、もはやそのこと自体に感動することはないだろう。「ボタンを押せば、何かが動く」というのはゲームであれば当たり前のことだからだ。

 しかし『アルトデウス: BC』は、プレイヤーとロボットの入出力の間に、わざわざパイロットを挟むという一工夫を与えている。つまり、実際の入出力は「現実の身体→VRの身体→ロボットの身体」という構造であり、プレイヤーはパイロットであるクロエ=VRの身体を操作することで、ロボットを操作していることになる。

 このように一度VRの身体を介することで、何が起こるのか。ロボットを「操作している」というよりも、ロボットに「乗っている」ように感じられる。腕を動かすような単純な動きにさえ、感動が発生する。現実の私の肉体の動きが少しずつ大きくなって、ロボットを動かしていると、「ボタンを押せば、何かが動く」という、かつて初めてゲームを遊んだときに感じた、プリミティブな喜びを思い出させてくれる。

 『アルトデウス: BC』には他にも面白そうな要素が準備されている。体験版では暗示される程度に描かれていた盲目のコーコとVRの視覚の関係や、夢と現実とヴァーチャルが交錯する物語が本編でどのように展開されるのか、期待が止まらない。VRに興味がある方なら、必ず何かしらの発見を得られるであろう本作。ぜひ、12月4日に発売される製品版をプレイしていただきたい。

ライター
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メイプルストーリーで人との関わり方を学び、ゲームのゲームらしさについて考えるようになる。主にRPG、アドベンチャーゲーム、アクションゲームの物語やシステムに興味のある学生。
Twitter:@zombie_haruchan

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