オンラインRPGというのは何かと「時間のかかる」ジャンルだ。
ただでさえ多くのプレイ時間を要求されるRPGだが、それがMOやMMOといった運営型の大規模なタイトルだと、なまじそこに用意されているコンテンツが膨大であるがために、非常に時間を食う。
プレイ時間が多いことは、それ自体特に問題ではない。むしろ、いつまでもやり続けられるコンテンツを持っているということは、運営、ユーザー双方にとって非常にいいことだ。問題なのは「ストーリーに追いつくのが大変」ということである。長期的に運営される大規模なRPGにおいて、ストーリーを進めるのにかかる長大な時間が、これから始めようと考えているユーザーにとって億劫に感じられることはしばしばある。
私もこれまで何度かMMOを始めてみようと思い立ったことがあるが、そのたびに序盤のレベリングや探索などの作業で挫折してきた経験がある。身内やSNSで盛り上がっているタイトルであればあるほど、その盛り上がりと自分の遊んでいる内容との間に距離感を感じ、モチベーションが失われていったわけである(もちろんそれに対して何らかの救済を用意しているタイトルもあるが)。
しかし、そういった思いを私と同じように持つ人にとって、『ファンタシースターオンライン2 ニュージェネシス』(以下NGS)は、今が絶好の始めどきかもしれない。
『PSO2』といえば、オンラインRPGの中でも老舗の部類に属する。大規模なオンラインRPGはリリースから年月がたつほど、ストーリーに「追いつく」までにかなりの時間を要する。ゆえに私のような面倒くさがりのユーザーにとって、『NGS』は一見始めるのに躊躇するタイトルのように思われるが、実はそうではない。
なぜなら、『NGS』は2021年6月にサービスが始まったばかりのタイトルだからだ。『PSO2』とは設定やゲームシステムなどを一部共有しているが、ほとんど別物だと考えてもいいだろう。事実、『PSO2』を遊んでこなかった私にとって、『NGS』はまさにサービスが開始したばかりの新しいタイトルとして映った。
では、その体験はいかほどのものだったか?人によって楽しみ方は異なるが、私の場合、主にキャラクリエイト部分が楽しく感じた。そこに大量の時間をかけてストーリーを進めるのを忘れてしまったほどだ。
ここでは、昨年12月中旬から本作を遊び始めた筆者が、『NGS』からの新規ユーザーとして本作を遊んだ、そのプレイフィールをお届けしよう。
文/植田亮平
広大な世界を探索する
まずは本作の世界観について簡単に説明しよう。『NGS』の舞台となるのは「ハルファ」と呼ばれる惑星である。この惑星に主人公であるプレイヤーが降下ポッドで降り立つところから、物語は始まる。主人公は記憶を失っており、このように空からやってきて記憶の無い人々のことを、ハルファの住人は「星渡り」と呼んでいるようだ。
また、惑星ハルファには「ドールズ」という起源、目的共に不明の謎の生命体が頻繁に出現している。ハルファの人々はそれに対抗する者たちを「アークス」と呼び、アークスたちは組織を作って日々ドールズと戦っている。
主人公は惑星ハルファに降り立った時に遭遇した「ある事件」をきっかけとして、ハルファで知り合った「アイナ」や「マノン」と共にこのアークスに加わって冒険を進めていくこととなる。
世界観のジャンルとしてはSFに分類されるだろう。中世的なファンタジーの世界観が主流であるオンラインRPGにおいて、SFの世界観は『PSO』シリーズを特徴づける大きな要素のひとつだ。
装備や施設、キャラクターやドールズのデザインに至るまで、機械的なモチーフが全体を彩っている。かといって「とても硬派なSF」というわけでもない、親しみやすい良いバランスをとっている。
さて、ではそんな惑星ハルファはどのような姿をしているだろうか。本作の第1章は「エアリオリージョン」と呼ばれる区画からスタートする。アークスたちの拠点であるセントラルシティを中心として、その周囲を広大なフィールドが取り囲む自然豊かな土地だ。
いわゆるステージを攻略していくようなダンジョン形式ではなく、シームレスで自由に行き来可能なオープンフィールドとして構成されている。
プレイヤーの移動手段はかなり快適に作られている。素早いダッシュで草原を駆け抜けたり、二段ジャンプで高い壁を乗り越えて行ったり、グライドで滑空するように空中を飛ぶこともできる。フィールドは全体的に高低差の激しいものが多かったが、これら快適な移動手段のおかげで移動が苦痛だと感じることはなかった。
また、フィールドの各所に点在する「リューカーデバイス」を使えばファストトラベルも可能だ。そのほか、「トレイニア」と呼ばれる施設に入れば、移動に関するアクションの基本を学ぶこともできる。
移動に関してプレイヤーが不満を感じることはまずないだろうと確信している。行くことが可能な場所であれば、それらを遮る「見えない壁」も存在しないし、長いロードを挟むこともほとんどない。
フィールドに高くそびえたつ山の頂上から拠点へと、グライドを使ってシームレスに帰還することも可能なのだ。美しい景観を軽々と踏破していく感覚は、RPGでありながらアクションの楽しさも備えているという非常に面白い体験だった。
ビジュアルもバトルもクリエイト次第
『PSO2』時代から、このゲームのキャラクリエイトの自由度は話には聞いていた。アニメ調、リアル調、あるいはメカなど……。そしてそれは『NGS』においても同様だった。自分のなりたい姿を自由に作れるということは、オンラインRPGを遊ぶユーザーにとっては重要なことだろう。
事実私も、自分のキャラクターをああでもないこうでもないといじくりまわすのに、相当の時間を費やすこととなった。おそらく、私のプレイ時間のおよそ3分の1ほど、およそ8時間ほどは、このキャラクタークリエイトに関する部分だろう。さすが、公式サイトで「究極を超えるキャラクタークリエイト」と謳うだけのことはある。それほどまでに、『NGS』のキャラクリエイトは中毒性のあるものだ。
実際にどれほど細かい調整が可能なのかをご紹介しよう。大まかな分類としては「頭部」「身体」「ファッション」の3つ。そこから、「目」「鼻」「口」や「腕」「足」「胸」など、細かいパーツを調整することができる。例えば「目」をいじりたい場合、目の種類だけでなく瞳の種類を選ぶこともでき、そこから目じりの上下やまつ毛の種類、瞳の中の黒目の上下位置までをも自由に動かすことができる。
「身体」もこれと同様、非常に細かい調整が可能だ。「体型モーフィング」を使えば、自身の体を視覚的にもわかりやすい形で細かく調整できるし、腕や足の太さ長さ、筋肉量や肌の血色、お肌のツヤに至るまで、実際のゲーム画面で確認できるのか怪しい部分にまでこだわることが出来る。
しかし、こうしたこだわりのすえに完成されたキャラクターも、実際にゲームを遊ぶ中で「なんか違うな……」と感じることは往々にしてあるものだ。そんな時は、何度でもゲーム内の「エステ」に通って、細かい調整を行えばいい。アカウント作成後しばらくの間は無料で、エステで何度でもキャラクタークリエイトのやり直しが可能だし、エステを無料で利用できるゲーム内パスも、ログインボーナスやミッションパス報酬で頻繁に貰うことができる。
少し恥ずかしいが、私の作ったキャラクターもご紹介しよう。記事になるのだということを失念してやや自分の性癖を突き詰めてしまった感があるが、かなり愛着を持っているし、気に入っている。自分だけのキャラクターを誰かに見せびらかすのは、この手のゲームを遊ぶ際の最も楽しい瞬間のひとつだろう。
アクセサリーや服装などの「ファッション」部分は、エステに通わずともいつでも変更できる。防具がそのまま見た目に反映されるようなシステムではなく、「見た目は見た目」として各自好きにいじっていくことができるので、装備の整わない序盤に見た目が極端にダサくなってしまうということもない。タスク報酬やゲーム内ガチャにあたる「スクラッチ」で手に入れたアクセサリーはかなりの数を同時に装備できるので、どんどん付け替えてファッションを楽しんでみてはいかがだろうか。
ここまでキャラクリエイトについて解説してきたが、キャラクターの「見た目」だけを作るのがキャラクリエイトではない。本作では、自分の戦闘スタイルも自分で「クリエイト」することができる。
プレイヤーはゲーム中、自身の「クラス」を決定する必要がある。それぞれ全く異なった8つのクラス、「ハンター」「ファイター」「レンジャー」「ガンナー」「フォース」「テクター」「ブレイバー」「バウンサー」の中から、プレイヤーは自身の好みに応じてクラスを選択することになっている。それぞれのクラスに応じて使える武器やアクションが異なるので、自分の作ったキャラの戦闘シーンを妄想しながら考えていくと捗るかもしれない。
これらクラスを大きく差別化しているのは、おそらく「武器アクション」と「クラススキル」の存在だろう。
各武器には武器固有の特殊なアクションが設定されている。たとえばレンジャーとガンナーのみ装備可能なライフルなら、ステップしながらの射撃。ハンターにのみ装備可能なワイヤードランスなら、『進撃の巨人』ばりの立体機動アクション、というふうに、各武器には独自のアクションが搭載されている。そして、各クラスにはそれぞれ使える武器が固定されているので、武器アクションはそれ自体ある種クラス特有のアクションと位置づけることができる。
また「クラススキル」も同様である。プレイヤーは、「トレイニア」のクリアによって得たスキルポイントをスキルツリーにふることで、クラス独自のアクションを追加で習得することができる。その個性はさまざまで、自身のプレイスタイルに応じたカスタマイズができるようになっている。
面白いのは、上記の「武器アクション」と「クラススキル」が、他のクラスからも使用できるということだ。
『NGS』には「サブクラス」と「マルチウェポン」というものが存在する。「サブクラス」とは文字通り、メインクラスとともに装備するサブのクラスのことで、「サブクラス」を設定すれば、そのクラスの「クラススキル」の一部を使用することができる。
「マルチウェポン」は、武器をほかの武器と組み合わせるシステムだ。組み合わせた武器の「武器スキル」を、他の武器で使用することができる。たとえばライフルとワイヤードランスを合体させた場合、上で記したふたつの「武器スキル」がいっぺんに使えることとなる(サイドにダッシュしながらの射撃と立体機動の相性が良いかどうかは置いておいて)。
これらのカスタマイズ性は、プレイヤーの戦闘スタイルをクラスによって限定しない良いシステムだと思う。このシステムのおかげによって、同じクラスであってもその戦い方は無限大となる。自身をバフしながらエネミーを滅多打ちにしたり、エネミーの吹き飛ばし攻撃を無効化しながら強引に射撃を繰り出したりなど、自分の気に入った戦い方を突き詰めていく面白さがここにある。
こうしたビジュアル、バトルの両面において、『NGS』のキャラクリエイトはかなりの自由度を誇っていることを改めて実感した。終わりのない探求をぜひとも味わってほしい。
そして砂漠へ
さて、ここまで一通り、システムの「良い」と感じた面を挙げて書いてきたが、記事冒頭の「今が絶好の始め時」という部分について、もう少し説明しなければならないだろう。あるいは、ここが最も肝心な部分かもしれない。
つい最近、この『NGS』に大型アップデートが配信された。「砂塵奏でる鎮魂歌」と題したこの大規模なアップデートでは、ストーリー第2章の配信、新エリア「リテムリージョン」の追加、新エネミーや新キャラクターの追加など、非常に多くの要素が追加された。『NGS』第二幕の始まりというわけである。
現在、『NGS』のストーリーは第2章まで配信されているが、実は第1章のストーリーはそれほど長いものではない。昨年の12月からまったりとプレイし始めた私だが、1月のウィンターイベントが始まろうかというころには第2章へと突入し、現在では新しく追加された新たなリージョン、「リテムリージョン」の広大な砂漠をふらふらとさまよっている。
そして、そこで出会うのは、これまでとは全く異なるさまざまな種類のドールズたちや、リテムリージョンの個性豊かなアークスの同志たちである。
リテムリージョンの自然が生み出す景観は、それまでのエアリオリージョンとは全く異なるもので、新たな探索の楽しみを提供してくれる。壮大な渓谷や砂漠の中のオアシスなど、エアリオリージョンとはまた違った、惑星ハルファの過酷な環境が垣間見える。
リテムリージョンのアークスである「ナーデレフ」と、猛威を奮うドールズ、「レヌス・リテム」を中心に展開されるストーリーは、第1章ではほとんど描かれなかった「この世界に暮らす他の人々」について、新たな発見をもたらしてくれる。
私は本作を始めてからすぐにこの第2章のストーリーを始めることができたが、それまでセントラルシティの人間にしか会うことのできなかったプレイヤーにとっては、さぞ嬉しい体験だろう。
そして何よりも私が声を大にして言いたいのは、この『NGS』の第2章、現行のストーリーに至るまで、「これから始めるプレイヤーは非常に素早くたどり着ける」ということだ。第1章の長さは最速で進めれば12時間もかからないうちに終わらせることができるし、戦闘力上げなど、ストーリーを進めるのに必要な作業はアップデートで追加された「バトルディア:イエロー」などの施設を活用すればマンネリ化することなくサクサクと進めることが可能だ。
実際、私もプレイ時間の内かなりの時間をキャラクリエイトに割いたが、今はこうしてスムーズに第2章を楽しむことができている。
もちろん『PSO2』の知識が何もなくても大丈夫。私のような『PSO2』を知らない新規ユーザーが、「なぜタイトルを『PSO3』にしなかったのか」と疑問に思うぐらい、ストーリーやゲームプレイはまっさらな状態から始まっている。それほどに、今の『NGS』はこれからオンラインRPGを始めようと考えているユーザーにとって最適な環境だろう。
だからと言って、「これからどんどん始めにくくなっていくから乗り遅れるな」という訳でもない。『NGS』はまだまだ始まったばかりのゲームだ。老舗の『PSO2』という名がついてはいるものの、オンラインRPGとしてはつい最近生まれたばかりのようなものだ。乗り遅れるとか乗り遅れないとか言うには、あまりにも早すぎる段階だろう。
そもそも何かゲームを始めるチャンスというのは、人によって好きなタイミングで良いものなのだ。『NGS』は基本プレイ無料、いつだって気軽に惑星ハルファを訪れることが可能である。ただ、今現在「何かオンラインRPGを始めたい」と考えているなら、私は『NGS』をオススメしよう。惑星ハルファで、これを読んだ誰かと出会えることを楽しみにしている。