『エルデンリング』が発売されてからもう3ヶ月経とうかという今日この頃。多くのプレイヤーが既に『エルデンリング』をクリアし、死にゲー、もとい高難度RPGを体が求めはじめている頃だろう。そんな死にゲージャンキーのプレイヤー達に向けて、この春ブラジルから新たなソウルライクゲームが登場する。しかも、SFの世界観で!!
今日は新進気鋭のMassive Work Studioが送るSFソウルライク、『Dolmen』(ドルメン)をレビューしていこう。
文/植田亮平
※この記事は『Dolmen』の魅力をもっと知ってもらいたいKoch Mediaさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
ソウルライクとの見事な差別化
『Dolmen』のゲーム画面を一目見れば分かることだが、このゲームはフロム・ソフトウェアのソウルシリーズから多大な影響を受けている。UIの雰囲気、弱・強攻撃、パリィ、マップの構造、死んだら経験値全ロスト、右手武器と左手武器、レベルアップとステータス、ローリングとジャンプ不可、etc……共通点を挙げるときりがないほど、ソウルシリーズに慣れ親しんだファンにとってはなじみ深いシステムとなっている。
だがしかし、ソウルシリーズフォロワーと言えど、幾つかの点ではソウルシリーズと差別化されている。そこで、まずは『Dolmen』独自の特徴的なシステムを紹介しよう。
①近接攻撃と射撃
『Dolmen』には攻撃方法が二種類ある。近接武器による斬りつけと銃器による射撃の二種類である。ソウルシリーズにおける遠距離攻撃は基本的におびき出しなどに用いるサブウエポンとして運用するか、ステータスを特化させて運用するスタイルが主だが、『Dolmen』の射撃はゲーム序盤から非常に有用な武器として設計されている。
正面から敵を殴るだけでは不利な状況も多く、戦闘において射撃が果たす役割はソウルシリーズなどと比べて非常に多いと感じた。
②装備はクラフトで手に入れろ!
『Dolmen』の装備は基本的に素材からクラフトして手に入れることになっている。クラフトの素材は敵を倒して手に入れる、道中で出会うNPCから手に入れる、マップに配置されているオブジェクトを破壊して手に入れるなど様々である。持っている素材は死亡してもロストしないので、死んでも次に残るものはソウルシリーズよりも多いかもしれない。
また、装備にはそれぞれ「テクノロジー」と呼ばれるカテゴリが付与されている。「ヒューマン」「レヴィアン」「ドリラー」の3つからなるテクノロジーは、装備の合計テクノロジーポイントによってプレイヤーに様々な恩恵をもたらしてくれる。
このテクノロジーの要素はゲームの世界観とも非常にマッチしている。「ヒューマン」に属する装備は工学的なメカメカしい見た目の装備が多く、素材も人工物がほとんどを占める。
一方で「レヴィアン」に属する装備は敵からドロップした素材でクラフトしたものが多く、見た目も『モンハン』の装備のごとき趣である。この「世界観とゲーム部分」の一貫性は本作の非常に素晴らしいポイントのひとつで、見た目の統一感が見た目以上の効果を発揮している、私のお気に入りの部分である。
③リソース管理が思ったより難しい
意外かもしれないが、『Dolmen』には体力を回復するアイテムがない。より正確に言うならば、体力だけを回復してくれるアイテムが存在しない。ソウルシリーズなどであればエスト瓶という回数制限付きのアイテムをワンボタンで使用することができた。
ワンボタンで即座に回復できるという点では『Dolmen』も同様だが、『Dolmen』では、回復にアイテムではなくエナジーと呼ばれるリソースを消費する。
エナジーがある限り体力回復は何度でも使うことができる。また、エナジーは射撃での攻撃や、「エナジーモード」と呼ばれる一時的な自己強化の際にも消費する。攻めに使うのか、それとも回復のために回すのかに、プレイヤーのバトルセンスが問われるというわけだ。わざわざ他のリソースを使って回復するように設計されているのは、射撃や自己強化という、ともすれば一方的な戦闘になってしまいかねない要素にリスクを付けるためであろう。
実際、このリソース管理が思った以上に難しい。体力はボタンを押すだけで即座に回復してくれるが、エナジーの回復には使用モーションが発生する。『モンハン』の回復薬のような使用感と言えば伝わるだろうか。
なので、回復にエナジーを使うと安全を確保できない限り射撃も自己強化も使えない。このリスクたっぷりのリソース管理が、本作の難易度や緊張感をぐっと高めることに貢献している、これもまた良い差別化といえるだろう。
と、このように『Dolmen』は基本的な骨組みはソウルライクと軌を一にしていながらも、その中で見事というほかない差別化を成し遂げている。世界観をSFにしただけではなく、世界観や作品全体のテーマをシステムに上手く落とし込んでいるのは非常に評価できるポイントだろう。
SFコズミックホラーの世界観がもたらす体験
既に何度も述べているが、本作の世界観はSFとコズミックホラーがベースとなっている。ダークファンタジーの色が濃いソウルシリーズと比較しても、このような世界観をソウルライクとして遊ぶのは誰にとっても新鮮なプレイ体験になるだろう。
本作の舞台は、様々な敵対生物や巨大企業の陰謀が蔓延る「レヴィオン・プライム」と呼ばれる惑星基地。ほとんどの生体反応が失われており崩壊しつつあるこの場所を、主人公であるプレイヤーは探索していくこととなる。レヴィオン・プライムで発掘された謎のクリスタル「ドルメン」と、ドルメンを取り巻く奇怪な事件の数々。レヴィオン・プライムにいた人々の辿った運命とは?そしてドルメンに秘められた力とは?探索を進めていくにつれ、プレイヤーは深淵へと足を踏み入れていく。
本作のストーリーから若干の「メトロイドみ」を感じた筆者だが、ストーリーテリングの手法はソウルシリーズと似た「環境ストーリーテリング」型に近い。マップに点在するアーカイブを読んでいきながら、プレイヤー自身が積極的に物語を理解していくタイプと言えるだろう。もちろんそれ以外にも、道中でオペレーターとの通信が挿入されたり、カットシーンが挟まれたりなど、ある程度の導線はしっかり引いてくれている。
もっとも私から見れば、本作がSFコズミックホラーの世界観をベースにしているのは、どちらかと言うとストーリーよりも、ビジュアル的なものが理由にあるのではないかと思う。というのも、各ロケーションがかなり美麗に作られており、ソウルシリーズなどとは明らかに異なる情感がそこにはあったからだ。「作りこんでいる」と言ってしまえばそれまでなのだが、ビジュアル面でのこだわりのようなものを確かに感じたのである。
筆者は今回PC版をプレイしたが、スペックの都合上からレイトレーシングをOFFにしてプレイした。AAA級のグラフィックであることは間違いない本作をレイトレーシングありで遊べたなら、もっと素晴らしい体験が出来るに違いないだろう。
肝心の難易度は……普通にムズイ!!!
そろそろ本作の難易度について触れていこう。見出しですでに結論が出ている気もするが、本作の難易度は当然高い。どう難しいのか説明するのもまた難しいのだが、なんというか、ソウルシリーズと少し難しさのベクトルが異なる気がする。
個人的に、ソウルシリーズの難しさというのは「敵の難しさ」に凝縮されていると思う。敵の攻撃の威力、範囲、パターン、これらの攻略を極端に難しくすることによって、いかに回避するか、いかにこちらの攻撃を通すかという駆け引きを作り出している。敵と見つめ合い「対峙する難しさ」とでもいうべきか。
一方で、『Dolmen』の難しさは「捌く難しさ」なのではないかと思う。『Dolmen』は、敵が複数体で襲い掛かってくる状況がとんでもなく多い。しかも一体ずつの火力がとてつもなく高い。当然正面から雑に殴り合うわけにもいかないので一体ずつ倒していきたいのだが、そういう時は大抵地形が狭い。そのまま足を滑らせて落下死したり、壁の隅にはめられボコボコにやられたりする。
なので、プレイヤーは敵をうまく「捌き」きらなければならない。正面からガード不能の攻撃を放ってくるクリーチャーを上手く回避しつつ、奥から遠距離攻撃を絶え間なく撃ってくる敵に近づいて一瞬の隙に攻撃を叩き込む。こういったプレイを上手くやらなければならない。でなければ生き残れない。これが『Dolmen』の恐ろしさ、難しさである。
また、ステージ上には意地悪なギミックも満ち満ちている。即死の罠や爆発する卵など、プレイヤーの命をどこからでも狙ってくる。こちらとしては常に緊張状態で遊んでいるわけだが、これで面白いのだから不思議である。
と、ここまでは主に道中で湧いてくる敵について書いたが、ボス戦についても書いておく必要があるだろう。『Dolmen』のボスたちは……こっちも普通にムズイ!!!
こっちの射撃を余裕で避けてくる、あらゆる行動ができなくなる妨害技を撃ってくる。目障りな雑魚を延々湧かせてくるなどやりたい放題である。ただし挑戦回数でいうとフロムのボス戦よりも少なかったので、ボス戦に関して言えばやや予想より優しい難易度なのではないかと思う。「勝てね〜」とコントローラーをぶん投げることもなかった。
死に場所を求める死にゲージャンキーのゲーマーは、既にこの記事のページを離れ、『Dolmen』の公式トレーラーを眺めていることだろう。私自身、『エルデンリング』をクリアして次に何を遊べばいいかと聞かれたら、真っ先にこのゲームを挙げるに違いない。
キックスターターによる資金調達から始まった今作は、ソウルライクというジャンルに対する愛やリスペクトがこれでもかと詰まった作品だと言える。ダークファンタジーのあとはSFコズミックホラーへ。いつの日か、様々な世界観のソウルライクが作られていくかもしれない。『Dolmen』はそんな期待を抱かせてくれる一本であった。