8月3日は『真・三國無双』シリーズが誕生した日だ。
「無双」がひとつのジャンルとして定着しつつある現代のゲーム業界において、その原点ともいえる『真・三國無双』の影響力は計り知れない。本稿では2000年に生まれた初代『真・三國無双』からナンバリング最新作『真・三國無双8』、そしていくつかの派生タイトルについて振り返っていきたい。
文/夏川77
PS2で誕生し『真・三國無双2』の好評から一躍人気シリーズに
シリーズの始まりは2000年8月3日にPS2向けに発売された『真・三國無双』。
本作は、同年発売されたPS2のハードスペックを活かし、「『三国志』に登場する武将さながらの活躍をプレイヤー自身が体感できる」ことをコンセプトに開発された。
プレイヤーはひとりの武将を操作し、古代中国(三国時代)の史実として知られる戦いで、刻々と変化する戦況を把握して的確な行動を取り、自軍の勝利を目指すのがゲームの流れとなっている。
本作から始まる『真・三國無双』シリーズは、アクションだけではなくリアルタイムシミュレーションの要素も兼ね備えており、戦況判断をもとに自身の行動を決めていくゲーム性から「タクティカルアクション」というジャンルを打ち出した。
『無双』シリーズの代名詞と言える「一騎当千の爽快感」、「敵のワラワラ感」(=雑兵が群れをなしてプレイヤーに戦いを挑むさま)は、シリーズ1作目である本作ですでに表現されていた。そして敵をなぎ倒すアクション操作が簡潔にまとまっており、アクションが苦手なプレイヤーでも「一騎当千」や「天下無双」の猛将となる体験をすることができた。
第2作となるのは、2001年9月20日にPS2向けに発売された『真・三國無双2』。
前作はCD-ROMソフトだったのだが、『真・三國無双2』以降はDVD-ROMソフトとなっている。そのためボリュームが前作から大幅に進化した。
また、新規参戦となるプレイアブルキャラクターが増えただけでなく、各キャラクターのアクションも多数追加され、爽快感がより強化された。さらに本シリーズの代名詞でもある、ゲージ消費で使用できる無敵技「無双乱舞」に「真・無双乱舞」という強化バージョンも追加された。
さらに戦場での移動・攻撃手段として、馬だけでなく象への騎乗が可能になったのも本作からである。
また、本シリーズのナンバリング作品で標準的に搭載されることになる2人同時プレイや、武将の成長システムなども本作から追加された。
前作と同様に「一騎当千の爽快なタクティカルアクション」でありながら大幅なパワーアップを遂げた本作は、主に口コミで評判が広がり、100万本ヒットを達成するに至った。
『真・三國無双』シリーズの拡張パックとなる『猛将伝』が展開されたのも本作からである。
プレイヤーからの「もっとやりこみたい」、「このキャラクターでもっと遊びたい」という要望を叶えるために登場したのが『真・三國無双2 猛将伝』だ。
『猛将伝』単体でも起動が可能で、新規のプレイアブルキャラクターや戦場が追加されているため十分遊べるボリュームがあるのだが、『真・三國無双2』(ナンバリング本体)を所持している状態で「MIX JOY」と呼ばれるディスク入れ替えシステムを利用することで、ナンバリング本体+猛将伝の大ボリュームでのやりこみプレイを可能にしている。
2003年2月27日には、PS2向けに『真・三國無双3』が発売された。1年以上かけてミリオンヒットを達成した前作の評判を受け、本作は発売から9日目で100万本を達成している。
本作では、前作と同様に2人同時プレイでステージ攻略ができるだけでなく、2人対戦専用の対戦モードが搭載された。さらにオリジナル武将を作成できるエディットモードが実装されたことで、三国志の戦場にプレイヤー自身をイメージしたキャラクターや、プレイアブル化していない人物を登場させることが可能になった。
アクション面では、「ジャンプチャージ」や「チャージラッシュ」などが追加され、各キャラクターのコンボ性能が一層強化された。
戦闘面では戦場の華として新たに「一騎討ち」が追加され、多対多で構成されたゲームの流れに一対一の緊張感ある戦闘シーンが加えられた。さらに衝車や投石機といった実在の兵器が追加されたほか、以降の本シリーズで常連となる火炎放射兵器・虎戦車が初登場したのも本作である。
また、『真・三國無双』のタクティカルアクションに、『三國志』シリーズなどに代表されるシミュレーション要素を合わせた『Empires』が誕生したのは本作からである。『Empires』は拡張パックではなく、ナンバリング作品のキャラクターやアクションが流用されている派生作品で、ソフト単体で遊ぶことができる。
ゲームの流れは、政策を選択し、内政を行い、戦闘になれば出陣して『真・三國無双』シリーズおなじみのタクティカルアクションで戦況を有利に導き、広大な中国大陸の統一を目指すというものだ。
『真・三國無双3 Empires』の大きな魅力は、『真・三國無双3』で実装されたエディットモードと同様の機能が利用でき、オリジナル武将を駆使してプレイヤー独自の歴史を築くことができる点だ。エディットモードが利用できるナンバリング作品は限られているが、以降の『Empires』作品では漏れなく実装されている。
2005年2月24日にはPS2向けに『真・三國無双4』が発売された。
本作は描画エンジンが従来から改良され、敵が群がりすぎて処理が重くなるといった問題が改善されたため、一騎当千の爽快感がより強く得られるようになっている。
アクション面では、新たに無双覚醒というパワーアップ状態が追加された。また、各キャラクターごとに設定された一部の武器を装備することで、ヒット数・攻撃範囲・攻撃速度などが強化されたエボリューション攻撃が使用できるようになった。
プレイアブルキャラクターも数多く増え、それぞれのキャラクターに単独のストーリーモードが用意された。ストーリーは今まで以上に『三国志演義』に忠実になるよう再構成され、「英傑として生きる」体験を強く打ち出した本作のキャッチコピーは、「生きざまを、武器にしろ」であった。
ハードウェアの進化とともに発展を遂げ『真・三國無双8』ではオープンワールドに
2007年11月11日にはPS3、Xbox 360向けに『真・三國無双5』が発売された。本作は後にPCに向けても発売されている。
新世代のハードウェアに向けた作品となった本作は、全登場キャラクターのモーションとビジュアルを一新している。
さらにキャラクターの得意武器も新しくなり、アクションの操作感も刷新された。プレイヤーの腕次第で攻撃をつなげられる連舞システムを新たに導入し、「カンフーアクションさながら」の戦闘が体験できるようになっている。
また、戦場となる森を駆け抜ける、川を泳ぐ、といったリアルなアクションが追加されたほか、梯子を登り、扉を破壊してから敵の拠点に攻め入るといった戦略を取ることもできるようになった。
2011年3月10日にはPS3向けに『真・三國無双6』が発売された。
本作の最大の特徴は、新勢力「晋」が追加されたことだ。魏・呉・蜀の三国に分かれた中国大陸が再び統一へと導かれてゆく、俗に「後期三国志」などと呼ばれる部分がストーリーモードに落とし込まれている。それに伴い、プレイアブルキャラクターも多数追加された。
メインシナリオは勢力ごとの4種類で、ステージごとにプレイアブルキャラクターが変化し、それぞれの視点から壮大な歴史を体験できるようになっている。
アクション面では、ナンバリング作品で初めて各キャラクターがメイン武器の他に第2武器を装備できるようになった。雑魚戦で有用なもの、武将戦で有用なものなどを戦況に応じて切り替えることができ、今までにない戦略を楽しめるようになった。
余談ではあるが、『真・三國無双6』以降、一部の無双武将(声優)によるキャラクターソング集が展開されるようになった。歌詞はキャラクターを反映した内容で、旋律は『真・三國無双』シリーズで使用されている楽曲のアレンジとなっている。
これらはCDとして販売されているほか、各ストリーミングサービスで聞くことが可能なので、興味のある方はチェックしてみてほしい。
2013年2月28日にはPS3向けに『真・三國無双7』が発売された。
本作も魏・呉・蜀・晋の4勢力による、勢力ごとのストーリーモードが展開されるのだが、新たなキャラクターの参戦により新エピソードが追加されているため、前作とは異なった物語体験ができるようになっている。
また、各ストーリーモードで特定の条件を満たすことで、死亡するはずの武将を生存させることができるなど、三国志ファンが夢見るIFストーリーがストーリーモードでプレイできる。
アクション面では、特定条件を満たすと一時的にキャラクターの能力が大幅に強化される「覚醒」状態が使用できるようになり、敵をなぎ倒す爽快感がさらに向上している。また、敵キャラクター(操作キャラクターの場合は装備武器)ごとに天・地・人のいずれかの属性を持つようになり、3すくみの属性相性によって戦略を変えられる「ストームラッシュ」や「ヴァリアブルカウンター」が追加された。
前作と同様に、本作でも操作キャラクターは2種類の武器を持ち替えて使用できる。その上で、本作では全てのキャラクターに得意な武器が必ずひとつ設定されているため、全キャラクターに「そのキャラクターのために用意された武器アクション」が存在する形となった。
2018年2月8日にはPS4向けに『真・三國無双8』が発売された。少し遅れた同年の2月13日にはPC(Steam)版もリリースされている。
本作は中国大陸を一枚のマップとして表現したため、ゲームデザインが大きく変わり、広大なオープンワールドとなったことが最大の特徴だ。ゲームの流れも、従来のステージクリア型からクエストクリア型へと変わった。
プレイアブルキャラクターは過去最大規模の約90人となり、好きなキャラクターで中国大陸を駆け回ることができる。中国大陸の名所は「景勝地」としてマップ上に設定されており、初回来訪時にキャラクターに経験値が入るボーナス要素となっている。また、従来のステージクリア型では把握が難しかった地名の位置関係が、中国大陸を走り回ることで自然と把握できるようになっているのも本作ならではの体験だ。
アクション面では、操作体系がフロー攻撃・リアクト攻撃・トリガー攻撃へと一新された。本作のステートコンボシステムにより、アクションはフロー攻撃を軸に操作すれば自然とコンボが繋がるようになり、一騎当千の爽快感が得られるようになっている。
ナンバリング作品としては『真・三國無双8』が記事執筆時点では最新であり、『真・三國無双』シリーズとしては『真・三國無双8 Empires』が最新作となっている。
2021年12月23日に発売された『真・三國無双8 Empires』は、『真・三國無双8』に登場したキャラクターやアクション等をベースに、『Empires』作品恒例のエディットキャラクターの作成・利用が可能だ。
また、大きな特徴として、『真・三國無双8』はオープンワールドが採用されていたが、『真・三國無双8 Empires』はオープンワールドではなくなり、戦闘はある程度切り取られたフィールド内で行うようになっている。
ゲームの流れは従来の『Empires』作品と同様で、政策を選択して内政を行い、軍事では真・三國無双の一騎当千アクションを駆使してマップを攻め落とし、最終的に中国大陸の統一を目指す。
その上で、本作の最大の特徴は「攻城戦」。戦闘中に指示を出し、戦況を左右するミッションを達成するなど、『真・三國無双8』と比べて戦術面が大幅に強化されたアクションパートが遊べるようになっている。
このほかにも、記事執筆時点で『真・三國無双』シリーズはスマートフォン向け作品として『真・三國無双』(通称「さんむそアプリ」)、『真・三國無双 M』も展開中。過去にはMMOアクションゲーム『真・三國無双 Online』やPSPで展開した『真・三國無双 MULTI RAID』など、さまざまな派生作品も生み出してきた。
また、『真・三國無双』のシリーズ展開はゲームのみにとどまらず、俳優による舞台化、中国での実写映画化も果たしている。
そしてグッズ展開も数多くされており、最新グッズは「GAMECITYオンラインショッピング」などの通販サイトで購入できるほか、2022年3月に渋谷パルコ6階にオープンした「KOEI TECMO SPOT」(コーエーテクモスポット)で実物を見て購入することもできる。
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現在、『無双』シリーズと言えば『真・三國無双』を指す言葉とは限らない。舞台を日本の中世戦国時代へと変え、独自のアクションシステムで進化を続ける『戦国無双』シリーズを始めとして、アニメやマンガが原作のものや、他社のゲームとコラボした作品も数多く展開している。そしてそのほぼ全てがタイトルに『無双』の名を冠している。
なぜこれほど『無双』が展開することになったのかといえば、1作目から現在に至るまで、全ての作品で踏襲されている「一騎当千アクションの爽快感」が世のゲーマーの心を掴んだからに他ならないだろう。くわえて、『無双』作品はキャラクターが多いことによる大河ドラマのような群像劇が体験できる点も大きな魅力だ。
記事執筆時点で、『真・三國無双』シリーズと関連する作品としては『無双OROCHI2 Ultimate』のSteam版が最新作となっている。『無双OROCHI』シリーズは『真・三國無双』と『戦国無双』の両作品のキャラクターがクロスオーバーで出演している、ファンタジーな世界設定の派生作品だ。
そして2025年には、『真・三國無双』シリーズの新作『真・三國無双 ORIGINS』の展開が予定されている。対応プラットフォームはPlayStation5、Xbox Series X|S、Steamで、オリジナル主人公の視点から「三国志」のストーリーと「タクティカルアクション」のゲーム性が体験できるようだ。
ストーリーは「黄巾の乱」勃発の前年である183年から始まることが発表されているが、どういった戦場が体験できるのか、三国時代のどこまでが描かれるのかなどはまだ明かされていない。
『真・三國無双』シリーズの最新作が次はどのような形で実現するのか、ワクワクする未来も期待しながら待ちたい。