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RTA走者・えぬわた氏によるRTAを活用したプロモーションの提案。コミュニティが持つ「瞬間風速」と「熱量の保温」でゲームを広める【CEDEC 2022】

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 8月23日(火)から3日間開催されている「CEDEC 2022」において、自身もRTA走者であるえぬわた氏によるセッション「RTAを活用したプロモーションで起こす瞬間風速と熱量の保温 / RTAコミュニティについて」が開講された。本稿では、同セッションのレポートをお届けする。

 えぬわた氏は2021年に開催された「RTA in Japan」にて『リングフィットアドベンチャー』の走者として登場したゲーム配信者。過去には家庭用ゲームの営業職に就いていたことから、「RTAを用いたプロモーションは今までにない活用方法がある」と感じており、配信者でありつつゲーム業界に身を置いているという、えぬわた氏自身の知見を活かしたセッションとなった。

 RTAイベントにて挑戦された作品が配信後に7.6万本売れ、「RTA配信による盛り上がりでゲームが売れている可能性がある」と感じたことが今回のセッションのきっかけになったと語り、実際に「とあるゲームの4半期ごとの売り上げ本数」には下降していたグラフが上昇している点が見てとれた。

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RTAを活用したプロモーションで起こす瞬間風速と熱量の保温 / RTAコミュニティについて

 以上の導入を経て、今回のセッションでは「RTAってそもそも何なのか」、「RTAをプロモーションに活用する際のポイント」の2点が解説された。

文/anymo


 今回取り上げる「RTA」は、ゲームをいかに早くクリアするかというゲームのやり込みプレイのひとつであり、トロフィーコンプリートと異なってユーザー主導の遊びとなっている。『たべごろ!スーパーモンキーボール 1&2リメイク』(以下、『スーパーモンキーボール』)の実際のプレイ映像とRTAでのプレイを基に、どのような遊びであるかがあらためて解説された。

 RTAの歴史についても遡り、RTA in Japanの開催やRed Bull、日清食品による協賛などといったここ数年の盛り上がりについても触れられている。

 また、RTAの実際の盛り上がりについてグーグルトレンドおよびYouTubeを含めたゲーム配信の最高同時視聴者数の2点を資料として提示。

 キーワードの人気の動向をチェックできるグーグルトレンドでは、RTA in Japan開催時に「RTA」というキーワードがVTuberに匹敵するほどの盛り上がりを見せたほか、RTA in JapanのTwitch配信にて18万人という同時視聴者数を集めた事例を基に、RTAの”瞬間風速”的な盛り上がりが紹介された。

 RTAは、バグを利用したり、練習でModツールを使うなどといった性質から、メーカー側が公にプロモーション活用しづらい側面がある。しかし『スーパーモンキーボール』のRTA走者が公式動画に出演したり、にじさんじ所属のVTuberがフロムソフトウェア作品のRTAを実況、ニコニコ超会議での『ELDEN RING』のRTA生披露などといったRTAを用いた企画の事例紹介し、現状は少しづつ変わってきていると、えぬわた氏は語った。

 より詳細なケースとして、フロムソフトウェアの事例のようにイベント企業が企画・ゲームメーカーが許諾するという形だけでなく、国外ではユーザー企画による賞金付きの大会が開催されていること、メーカー企画として『スーパーモンキーボール』のRTA走者が公式生放送に出演したことを挙げた。

 また、RTAというジャンルの特性による公式RTA配信として考えた際の相性の良い作品、悪い作品の特徴としてそれぞれ3つの特徴をラインナップ。RTAとして人気かつ魅力的であることが重要とし、展開がスピーディー、テクニックがタイムに直結しやすい、運要素が多くないといった具体的な条件を紹介した。

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RTAを活用したプロモーションで起こす瞬間風速と熱量の保温 / RTAコミュニティについて

RTAによる熱量の動き方

 えぬわた氏は講演の中で、RTAでのプロモーションによって発生する熱量として「瞬間風速」と「熱量の保温」のふたつを挙げた。

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RTAを活用したプロモーションで起こす瞬間風速と熱量の保温 / RTAコミュニティについて

 「熱量の保温」では、”RTA”という単語がSEO面で強い(検索上位に上がりやすい)という意外な強みが具体的に紹介された。これは、RTA走者のプレイスキルが高いことからコメント欄が盛り上がって高評価を得た動画となり、サジェストされやすくなる。また、RTA in Japanの開催によってRTAの動画が関連動画として上がりやすくなり、過去の動画でも伸びるとのこと。

 「瞬間風速」では、敵を倒す瞬間という大きな盛り上がりのある運営型ゲームと比べて瞬間的な熱量を作り出すことの難しい、非運営型ゲームでもRTAでは盛り上がりを作れるとのこと。前述の通り「スーパープレイ」が飛び出すことや、記録を更新できるかどうかのドキドキといった、RTAならではの強みがある。

 また、何度も繰り返しトライするというRTAの性質から多くのRTA走者は「好きでそのゲームを走っている」。愛情表現のひとつでもあり、走者はひとりでも多くの人にこのゲームを遊んでほしいと望むことから、えぬわた氏はRTAにあわせてのセール開催を勧めた。

実際に公式RTAを行う際に気をつけたい課題

 次に、実際に公式RTAを行う際の、配信時の課題およびRTA文化の課題のふたつにわけてそれぞれのトピックとその解決案を、えぬわた氏は解説していく。

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RTAを活用したプロモーションで起こす瞬間風速と熱量の保温 / RTAコミュニティについて

 最速でクリアを目指すというRTAのルール上「ネタバレが前提になる」という課題については、最初のボスを撃破するまでや体験版の部分でのRTA、最新作であればリメイクや移植などといったすでに物語の内容が知られているタイトルで行うなどを提案した。

 また、「バグが公の目に触れる可能性がある」という課題ではバグなしカテゴリ「No Major Glitches」を推奨するほか、RTAではユーザーがルールを決めるということから企業側で特別ルールを設けるなどといった解決策を提示。

 RTA文化の課題である「古いゲームも人気」はそれを逆手に取り、移植作であっても公式RTA配信をやる価値があるとのこと。

 また「練習配信自体は地味で、同時接続数は少ない」という点においては、RTA配信はあくまでイベント的に盛り上げることが基本であるほか、RTA走者の出演コストは低く、ゲームに対する愛や詳しさで視聴者を寄せることができるといった特徴を紹介した。

まとめ

 今回のセッションではRTAによる瞬間風速的な盛り上がり、作品を好きでいてもらうという熱量の保温について紹介し、えぬわた氏は最後に「RTA走者もゲームメーカーもお互いゲームが大好きなので上手に歩み寄れたら嬉しいです!」と締めた。

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RTAを活用したプロモーションで起こす瞬間風速と熱量の保温 / RTAコミュニティについて

質疑応答

 セッションの最後となる質疑応答では「ゲームメーカーに望むRTAやゲーム配信に寄り添ったゲーム作りはありますか?」に「Nintendo Switchオンラインにも見られるどこでもセーブできる機能、タイマー、プレイを見返せる機能、ステージごとにクリアできる」と走者ならではの視点からえぬわた氏が答えた。ほか、「いままでRTAをやりやすかったタイトルは?」という質問には、その場ですぐにリスタートできるリプレイ性の高さから『セレステ』を選択した。

 「日本でも(ゲーム会社が)イベントのスポンサーになることは、走者的にはアリなんでしょうか?」という質問には、公式RTA走者が現れた際のRTAコミュニティの盛り上がりを振り返りながら「嬉しいですね」とコメント。バグ利用の有無など、ゲーム会社とRTA走者の歩み寄りというのが今後の課題になると話した。

 また、配信者という立場から「大技による時間短縮や無敵時間(さん)といった要素ナシで配信を盛り上げるコツなどありますか?」の質問には「難しいですね」としながらも、実況・解説が大事、「それ(実況・解説)ありき」であるとコメントした。

 「個人的にコラボしてみたい企業・人はいますか?」という質問には「企業公式のRTA配信を増やしたい、RTAコミュニティを盛り上げる裏方に回りたい」として、自身がゲーム業界の一員である立場からも「メーカーと公式のRTA配信をしたい、興味持った方がいたら連絡いただけると幸いです」と答えた。

ライター
ベヨネッタとロリポップチェーンソーでゲームに目覚めました。 3D酔いと戦いつつゲームをする傍ら、学生をしています。
Twitter:@d0ntcry4nym0re

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