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新作スマホRPG『アリスフィクション』が描く世界観へのこだわり。スマホならではの「仮想現実」体験とは

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 「メタバース」という言葉が広く浸透してきた昨今。多くの映画、アニメ、漫画などでもメタバース、仮想現実はポピュラーな舞台として登場している。

 その中で、ゲームはメタバースにもっとも肉薄している媒体だ。VR技術の進歩は、ゲーマーのみならず世の中すべての人にとって、仮想現実がもはや夢物語ではないことを実感させてくれる。ゲームは仮想現実をストーリーだけではなく「体験」としてデザインできる唯一の媒体かもしれない。

 ワンダープラネットより2022年7月27日から配信された新作スマートフォン向けRPG『アリスフィクション』。本作もまた、メタバースを舞台にした物語を描いている。
 では、そこで示される仮想現実の姿とはどのようなものなのか。ストーリーだけでなく、体験としての仮想現実を、スマートフォンというハードでどう描くのか。本作を遊んで得た印象をお伝えしよう。

文/植田亮平


『アリスフィクション』の描く「仮想現実」像とは

 本作の物語は[ALICE]と呼ばれる仮想空間を舞台にしている。[ALICE]の世界で行われる営みは現実のそれとほとんど変わらず、行政金融経済などの活動のほか、[ALICE]内にある学校に登校したり、現実では物理的に会えない人と[ALICE]内で顔を合わせ会うことができたりと、まさしく第二の現実として完全に発展しきっている。

 しかし、「完璧な仮想現実」という言葉にはやはりどこか不穏な香りが漂うもので、物語冒頭は、そんな[ALICE]へのログインに主人公が失敗するというシーンから始まる。

【インプレ】『アリスフィクション』:スマホならではの「仮想現実」体験とは_001

 ログインに失敗した主人公はその後ログインに成功するが、どういうわけか自身の記憶が全てリセットされてしまう。どうやらその原因は[ALICE]を統治するAI《女王》にあるらしい。女王は自己研鑽型のAIであり、[ALICE]内の全てのシステムや権限を掌握している。
 そうした中で、主人公はヒロインである「ネウ」や[ALICE]のことをよく知る研究者「ソガ」など多くの人物と出会いながら、自身の記憶を取り戻すため奮闘する、というのが本作の非常に大まかなストーリーラインである。

 本作は世界観に関する説明が語られる場面が多く存在する。[ALICE]と現実世界は非常に強く結びついており、[ALICE]でのトラブルは現実社会にも深く影響を及ぼすこと、それが命の危機にすら繋がりうることなど。
 そうした世界観の説明の節々に見られるのは、[ALICE]という場所が私たちにとってただ有益なだけではない、ある種危険な世界であるという観念だ。

 [ALICE]を統治する《女王》に関する説明についても同様である。作中の登場人物は《女王》のことを「彼女」と呼ぶことが度々あるが、《女王》はもちろんAIなので人間的な感情は持たないし、システムに従い淡々と人々を管理する描写があらゆる場面でなされている。AIが人間を支配する、まさしくディストピアを彷彿とさせるイメージに他ならない。

 ここまでくればお分かりだろうが、本作は仮想現実を舞台にしていながら、その本質的テーマは仮想現実のシステムと人間の対立という部分にある。

【インプレ】『アリスフィクション』:スマホならではの「仮想現実」体験とは_002

洗練されたUIとSEが生み出す没入感

 もちろんそうした世界観を上手く表現するためには、ただテキストで世界観を提示するだけでなく、ゲームの中の体験として提示することが重要だ。そして『アリスフィクション』は、その課題を見事に成し遂げていると思う。

 『アリスフィクション』のUIデザインは一貫して「サイバー感」「近未来感」といったテーマで統一されている。それはストーリーのカットシーン中に出てくる

【インプレ】『アリスフィクション』:スマホならではの「仮想現実」体験とは_003

 このようなUIであったり、メニュー画面に表示される各種ボタンなどにも徹底されている。

【インプレ】『アリスフィクション』:スマホならではの「仮想現実」体験とは_004

 ビジュアル全般を見渡してみても、背景のグラフィックやキャラクターデザインの色合いなどは、全て違和感なく画面になじんでいる。

 例えば個人的に感心した部分がある。筆者は今年の春に本作のβ版をプレイしたのだが、リリース版とβ版ではキャラクターデザイン全体に若干の変更があった。キャラクターの線画部分の色がβ版では黒色だったのに対し、リリース版では若干赤みがかった色に変更されていたのだ。

 多分ほとんどの人は気づきもしない変更点だろう。しかしながら、この変更によって白を基調とした背景からキャラクターが浮くことがなく、より画面全体に違和感なく溶け込むようになった。
 神は細部に宿る、ということなのだろうか。こうした細かいこだわりからも、本作のビジュアル面での努力がうかがえる。

【インプレ】『アリスフィクション』:スマホならではの「仮想現実」体験とは_005

 また、各種ボタンを押した際のサウンドエフェクトも秀逸だ。仰々しくもなく、しかしながら耳に残るような音作りがなされている。ボタンをタッチするたびに、「アクセスしている」という感覚が耳に残る。

 こういったUIやSEなどは、一見小さな要素ながら非常に重要な役割を果たす。仮にこれらの要素が陳腐なつくりであったら、作品そのもののナラティブやゲーム性も陳腐であるように感じられる。世界観を重視する本作であればなおのことである。その点で、本作はその点をしっかりと理解してつくられていることが分かる。

 スマートフォンゲームで仮想現実の世界を表現することは非常に難しい。『VRCHAT』は、仮想空間に入りコミュニケーションを行うというそのプレイ体験から「メタバース」という言葉を我々にとって非常に身近なものにした優れたゲームだが、それは偏にVRというハードの特性に拠るところが大きいだろう。

 翻って、スマートフォンの場合はどうだろう。直感性に優れ、性能の向上により多くのことを表現できるようになったハードだが、入力と出力を一つの小さな画面で行なわなければならないという特性も持っている。
 では、スマートフォンで「メタバース」を表現することは不可能だろうか。出来る操作はタップやスワイプなどに限られ、目の前に世界が広がったり、こちらのモーションを検知してくれたりもしない。

 しかしながら、タッチという体験が優れたUIやSEと結びついたとき、それらはまるで宙に浮かぶパネルを本当に指で触っているような感覚を提供してくれるものだ。その感覚がストーリーと密接に結びついたとき、私たちは小さな画面の中に確かな奥ゆきを感じることができる。
 AR技術に頼らずとも、スマートフォンゲームで真に世界に没入できるゲームは作れる。『アリスフィクション』を遊んでいると、そんなふうに感じられてくるのだ。

ヤミツキ光速パズルRPG

 β版から変更されたのはキャラクターの線の色だけではない。ジャンルも変更されている。以前まで公式サイトでのジャンル表記は「RPG in Wonder Metaverse」となっていたが、リリース版では「ヤミツキ光速パズルRPG」に変更されている。
 ゲーム部分をより推そうという方針になったのか否かは分からないが、すくなくとも「光速パズルRPG」の部分には同意せざるを得ない。遅くなったがこのゲームの戦闘画面をお見せしよう。

【インプレ】『アリスフィクション』:スマホならではの「仮想現実」体験とは_006

 これが『アリスフィクション』の実際のゲーム画面である。

 操作はいたって簡単、画面下部に見えるパネルをタッチして破壊するだけである。といっても、乱雑に破壊していけばいいという訳ではない。
 パネルは隣接する色が同じなら一気に破壊できるという特性がある。そのため、パネルを“連結させる”ことがポイントとなる。例えば上のゲーム画面ならば右4つのパネルは一気に破壊できる。もちろん多く繋がっているパネルを破壊すればその分繰り出せる攻撃は強力になる。

 パネルの中には破壊することで強力なスキルを放つことのできるものも存在する。そうしたパネルを次から次へと下のレーンに流していくためにも、プレイヤーは制限時間のなかで手際よく、かつ効率的にパネルを破壊していかねばならない。光速パズルRPGを謳うのも納得のゲーム内容である。
 もちろん、パネル以外にもプレイヤーが行えることはたくさんある。キャラクターはパネル以外にも任意で発動できるアクティブスキルを持っている。このスキルは味方の攻撃力を上昇させるものや味方全体を回復するものなど様々で、キャラクター編成やプレイヤーの技量が問われる部分だ。

【インプレ】『アリスフィクション』:スマホならではの「仮想現実」体験とは_007

 また、パネルの上部に見えるゲージを貯めれば「パネルを全て同じ色にする」など戦闘を有利に進めることのできるサポートコマンドを使うことも可能だ。
 強敵に挑む場合は敵や味方の属性、キャラクターの配置、スキルの強化など様々な要素を考慮して戦わなければならない。そういった要素を考えるのが面倒になったら、画面右上のAUTOモードに頼るのも手だ。パネルの破壊、アクティブスキルの発動、サポートコマンドなど、プレイヤーが行わなければならない操作をすべて自動でやってくれる優れモノだ。 

 《女王》ほどではないがこちらのAIの性能もなかなかのもので、かなり最適解に近い選択を毎回行ってくれる。あとはキャラクターのド派手な技を眺めていればいいので、ゲームライターとしてどうなのかという問題を除けば、個人的にはかなり助かる機能だ。

 キャラクターの育成に関しても多くの要素がある。純粋なレベルアップやステータスの増強、スキルの強化、覚醒など、かなり事細かな強化が可能なので、育成が好きという方にも満足してもらえる出来だろう。また、「おまかせ強化」という自動で良い感じに強化してくれる機能もあるので、面倒なことは考えたくないという人に親切なゲームだなとつくづく感じる。
 以前のインプレッション記事でも書かせてもらったことだが、『アリスフィクション』は非常に高いユーザー視点をもったゲームだ。プレイヤーが楽しみたい部分を取捨選択できるというのは、ソーシャルゲームとしてとても優れていると感じた。

【インプレ】『アリスフィクション』:スマホならではの「仮想現実」体験とは_008

 『アリスフィクション』を遊んで記事を書くのはこれで2回目となるが、前回には見えなかったもの、前回からさらによくなったものなど、多くの発見があった。しかしもっとも前回と異なるのは、今なら記事を読んだ読者の方がこのゲームをすぐに始められるということだ。

 少しでも興味があるのなら『アリスフィクション』を遊んでみてほしい。世界観やビジュアル、ゲーム部分など、何か琴線に触れるものが必ず見つかるゲームだと個人的には確信している。ぜひ一度、[ALICE]の世界に飛び込んでみてはいかがだろうか。
 『アリスフィクション』は現在iOS、Androidで配信中だ。

ライター
大阪在住のゲーマー。ゲームに限らずアニメ、映画など気になったものは何でも取り込む雑食系。オープンワールドのゲームやウォーキングシミュレーターなどが大好き。最近はオンラインゲーム『League of Legends』にドハマりしているが、プレイの腕はイマイチ。

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