『The Last of Us』はやっぱり最高の作品だ…! 一新されたグラフィックやDualSenseの振動機能など、最新技術を駆使したリメイク版で『ラスアス』の魅力を再確認した話

 ──やっぱり『The Last of Us』は最高だ。

 これがリメイク版こと『The Last of Us Part I』(以下、Part I)をクリアして沸き上がった最初の言葉である。

 濃密なストーリー体験を、当時のPS3タイトルとしては最高峰のグラフィックで表現。限られた弾薬とフィールド上で集めた素材からクラフトした武器で生き残らなければならない戦闘シーンは、崩壊した世界での「サバイバル」をプレイヤーに存分に感じさせる。

 200以上のゲームアワードを獲得するなど世界的にも高い評価を獲得しており、PS3を代表するゲームのひとつと言って良いだろう。そんな『The Last of Us』が最新ハードウェア・PS5で『The Last of Us Part I』として、約9年の時を経てリメイクされるわけだ。

 9年。その間にゲーム関連の技術も恐ろしいほどの勢いで発展し続け、プレイステーション系列のハードウェアはPS3からPS4を経て、PS5へと移り変わった。

 1998年生まれの筆者にとって、特にPS2からPS3へと移行したときの衝撃は計り知れなかった。ベタな例えだが「もう実写じゃん……」と思わされてしまったのである。そんな強烈なインパクトの思い出は根強く、いまだに「PS3」のゲームと言われると美しいグラフィックを想像してしまう。

 そのPS3作品の中でも後期にあたる『The Last of Us』は、当時としては最高クラスに美しい作品だった。だからこそ、あえてPS5でリメイクする必要があるのか? と思われる方もいるかもしれない。筆者自身、リメイクを歓迎すると同時に、そういった思いがまったく無かったとも言い切れない。

 だが、いざプレイしてみれば『Part I』は素晴らしい仕上がりだった。原作のテイストをまったく失うことなく、精緻に作り込まれた新時代のビジュアルで、かつて多くのプレイヤーを感動させた名作『The Last of Us』を描いてくれた。

『The Last of Us Part I』スクリーンショット

 そういうわけで、本稿では刷新されたグラフィックや「DualSense」の機能、新たに追加されたオプションなどの新要素を紹介しつつ、『Part I』というリメイク作品の価値をお伝えできればと思う。

 なお、記事内に使用しているスクリーンショットはいずれも「パフォーマンスモード」にて撮影されたものである。

文/久田晴


原作のテイストをみごとに表現する進化したグラフィック

 本作を触り始めて最初に味わったのが「懐かしい」という感覚だった。ジョエルとエリーの過酷な旅路、恐ろしさと美しさが同居するロケーションの数々、直視したくなくなるほどおぞましくグロテスクな感染者、胸を締め付けられるようなカットシーン……そういった『The Last of Us』というゲームを成り立たせるすべての要素をふくめ、この「リメイク」作品を懐かしく感じた

 その要因として挙げられるひとつが、あまりにも違和感のない本作のビジュアル面だ。正直なところ、初めて『Part I』の映像を単品で見たときには劇的な変化とは感じなかった。しかし、実際のグラフィックがどれほど変化しているか、それはPS3版、あるいはリマスターされたPS4版の映像と比較すれば一目瞭然である。

原作『The Last of Us』との比較画像
(画像は『The Last of Us Part I』PlayStation公式ページより)

 なのになぜ、筆者は「懐かしい」、「それほど変わってはいない」と感じてしまったのか。

 筆者が最後に『The Last of Us』を遊んだのは『The Last of Us Part II』(以下、Part II)が発売される少し前のこと。PS4で発売されていたリマスター版を、続編の発売前に復習しておこうとプレイした記憶がある。『Part II』の発売日が2020年6月なので、少なくとも2年以上は過去の話だ。

 人間の記憶とはあやふやなもので、今回リメイク版を遊んでいる内にも忘れていた要素をいくつも思い出させられた。好きなキャラクターのエピソード、苦戦したエリア、そういった部分部分については、つい語りたくなるほど印象強い作品であるにもかかわらず、俯瞰してみれば記憶の穴は多々見つかってしまう。

 特にビジュアル面は記憶の中での脚色が行われやすい。プレイを終えた後に残るのは漠然とした「思い出」としての絵であり、「あそこには何本木が生えていて、こっちには車が何台残っていたな」のような具体的な情報ははぶかれてしまうからである。

 自然と細かなディテールについては脳内で補完され、往々にして実際よりも美しく記憶が書き換えられていく。特に『The Last of Us』はPS3版、PS4版を問わず、当時としては優れたグラフィックを持つ作品であるからなおさらだ。プレイヤーには「綺麗なグラフィック」で描かれた景色の思い出が残り、その「綺麗さ」は脳内で自動アップデートされてしまう。

『The Last of Us Part I』カットシーン

 筆者が『Part I』の初見時に際立った変化を感じなかったのは、あまりにも本作のグラフィックがその「思い出」に寄り添うものだったからだ。

 『Part I』は、筆者が記憶の中で磨き続けてきた『The Last of Us』の思い出が具現化したようなビジュアルを持っていた。原作に寄り添いつくしたからこそパッと見では「変わっていない」と思われてしまいそうだが、上でも述べたように比較すればその差は歴然。キャラクターの表情にせよ、光や水の表現にせよ、あらゆる面で進化を遂げている

『The Last of Us Part I』の美しい光の表現

 ビジュアル面でもっと極端に変化をつける方法が無かったとは思わない。もちろん賛否は分かれるだろうが、キャラクターのビジュアルを大幅に変更したり、ストーリー中に新たなロケーションを取り入れることも可能だったはずだ。「リメイク」にあたって新要素を追加することはそれほど珍しい話ではない。

 それでも分かりやすいキャッチーな変化をくわえず、ひたすら原典に忠実に、そのイメージを保ちつつ最新の表現へとブラッシュアップすることに専念した『Part I』。本作は『The Last of Us』の完成度の高さをあらためて伝えてくれる1本であり、その物語を現代で再度輝かせることに成功した「リメイク」の名にふさわしい作品だと言えるだろう。

『The Last of Us Part I』カットシーン2

「DualSense」の機能も活かし戦闘の没入感はさらに向上

  ポストアポカリプスの世界を描いた『The Last of Us』の物語では、ごく当たり前のことのように「殺人」が描写される。プレイヤー自身が行うもの、カットシーンで行われるもの、名前のあるキャラクターの死、名も無きモブキャラクターたちの死、もとは確かに人間だった「感染者」の死。数えきれない死の描写によって本作のストーリーは成立している。

 「殺さなくては生き残れない」その事実をプレイヤーに突きつけられるのが、ゲームプレイの中核ともいえる戦闘シーンだ。敵は否応なしに襲い来るし、本作は一部のステルスアクションゲームのような「不殺」プレイでクリアできる作品ではない。『The Last of Us』の物語体験において手を汚すことは必須の行為なのだ。

『The Last of Us Part I』銃撃

 特に近接アクションにおける「殺し」の表現は息をのむほど痛々しい。極端な欠損表現ではなく、歪む表情や必死に抵抗しようとする手足の動き、弱っていく息づかいなど最期まで生きようとあがく“生物”らしい表現方法が、筆者としては特に印象的だった。

 もちろんこれらはリメイク前の『The Last of Us』にも共通している事項ではあるが、やはりグラフィック、そしてキャラクターのフェイシャルアニメーションの進化は多大な恩恵をもって殺しの表現を重く豊かにしている。技術の発展により、またひとつレベルが上がった描写へ進化したと言えるのではないだろうか。

『The Last of Us Part I』ステルスキル

 そして戦闘アクションを語る際にはPS5の標準コントローラ「DualSense」による「ハプティックフィードバック」「アダプティブトリガー」といったユニークな触感機能について触れないわけにはいかない。

 PS5が発売されて以後、本体にプリインストールされている『ASTRO’s PLAYROOM』を筆頭に、DualSenseの機能を活用するタイトルはいくつも登場してきた。個人的には『デス・ストランディング ディレクターズカット』で大地を踏みしめる感触や『Horizon Forbidden West』の弓を引き絞る体験などが印象深い。

 上でも語っていたように『The Last of Us』は殺人という行為を非常に生々しく表現している作品だ。色とりどりの振動という新たな手法で、手元からゲームへの没入感を高めるDualSenseとの相性が良いことは想像に難くないだろう。

 その予想の通り、アクション面におけるDualSenseの振動機能はしっかりと機能を果たしている。弓を引き絞る感触、トリガーの重み、発射時の抵抗を手元で表現する試みは作品への没入感を底上げし、緊張感あふれる戦闘を巧みに描き出す。

『The Last of Us Part I』弓

 一方で振動の大きさについては比較的控えめだな、といった印象で『ASTRO’s PLAYROOM』を初めて遊んだときのような強烈なインパクトはなかった。もちろん、筆者自身がこれらの機能に慣れつつあることも否めない。

 ただし『The Last of Us』の戦闘の緊張感はキャラクターの動きの重さ、人間らしい鈍さによって生まれる側面もあり、振動やトリガーの抵抗が強すぎると操作を阻害しすぎてしまい、プレイヤーに与えるストレスが極端に増えるという懸念も現れてくる。振動機能については、そのあたりのバランスを踏まえたうえでのマイルドな調整なのではないかと推察している。

自然になったNPCの挙動がリアルな戦闘を描く

 戦闘シーンにおいて、もうひとつ本作のリアリティを大きく高めていると感じたのがNPCたちの挙動だ。NPCの仲間キャラクターと一緒に動くことが多い本作だが、PS4版『The Last of Us』では、ステルス中にもかかわらず敵のすぐそばを走り抜けている様子を見た記憶がある。

 ゲームシステム上、プレイヤー自身が発見されない限りはステルス状態が維持されるので不利になることはないし、「ゲームだから」と割り切ることもできる。ただ、目の当たりにすればどうしてもツッコミたくなる現象ではあった。

 だが今回、『Part I』のプレイ時にはそういった違和感を覚えたことがない。以前に公開された映像によれば、この進化には『Part II』時に開発された敵の視界を感知する機能に、その移動予測がくわえられたことが起因しているという。

『The Last of Us Part I』仲間NPCの挙動

 ステルス行動中の味方NPCは敵の視界を把握しており、さらにそれがどのように移動していくかを予想する。そして敵の次なる動きにあわせて隠れ場所を移動するため、プレイヤーの視点からでもごく自然に隠密行動をとっているように見えるというわけだ。

 もちろん敵NPCのAIも向上しており、『Part II』のものをベースとしつつ改善を施したとのこと。プレイの中でも、プレイヤーの視界の外から回り込んでくるような動きを頻繁に行ってきたような印象がある。「聞き耳」をうまく使い、常に敵の位置を把握しながら戦う歯ごたえある戦闘が楽しめた。

 NPCのAI面における進化については、以下の映像の中でも解説されている。興味を持たれた方には、ぜひこちらの動画もご覧いただければと思う。

やり込み要素からプレイヤー層の開拓まで、幅広い視点から施された新要素

 最後に、リメイクにあたって追加された新機能について簡単に触れておこう。まず最高難易度「GROUND」が初回のプレイ時から解放されており、非常にシビアなストーリーモードをすぐに楽しむことが可能となっている。

 さらに、死亡時のセーブデータ消去タイムアタックモードなど、熟練のプレイヤー向けのやり込み要素が充実。これまで『The Last of Us』を徹底的にやり込んできたプレイヤーたちが、最新の環境で存分に腕を振るえるよう整えられている。

『The Last of Us Part I』タイムアタックモード
タイムアタック中は右上にタイマーが表示される

 あわせて「ジョエル」と「エリー」のコスチュームをはじめとする収集要素も豊富に用意され、ゲームを遊べば遊ぶほど“ご褒美”的なアイテムを集めていくことができる。特にエリーのコスチュームには『ラチェット&クランク』など他のプレイステーションタイトルとコラボしたものもあり、つい購入したくなるデザインが多数揃っていた。

 また「モデルビューアー」モードでは、各キャラクターやゲーム中の印象的なシーンなどをフィギュアのように細部まで堪能することが可能。名前のある主要なキャラクターはもちろん、通常の敵やクリーチャー、さらにはストーリーでは一瞬しか触れ合わなかったような「犬」までと充実のラインナップが用意されている。

 ジオラマのように表現されたワンシーンを眺めながら物語に思いを馳せるのもよし、グロテスクなクリーチャーの細部をじっくり眺めてその生態を考察してみるのもよし。すべてがハイクオリティの3Dモデルで描かれているので、その見ごたえは抜群だ。

『The Last of Us Part I』モデルビューアーモード

 そしてもうひとつの大きな追加点がアクセシビリティ系の拡充で、ゲーム全体を通して多岐にわたるオプションからプレイヤー自ら選択して適用することができるようになっている。特に分かりやすいものとしては画面の色調が大きく変わる色覚オプションやカットシーン中の出来事がナレーションされる音声ガイドシステムなどが挙げられる。

 そのほかイベント中のボタン連打を長押しに変更したり、左スティックと右スティックに機能を入れ替えたり、ゲーム中のパズルをスキップ可能にしたりと、非常に細かくゲームの体験をカスタマイズできるようになっている。難易度選択とあわせれば、プレイヤーの意のままに快適なプレイを楽しめるだろう。

 くわえて「DualSense」の機能を利用したユニークなオプションのひとつが音声振動機能。こちらはセリフにあわせてハプティックフィードバックを利用した振動を手元から伝えるものであり、耳の不自由なプレイヤーでもキャラクターの語り方を字幕と一緒に体験できることを目指して実装されたという。

『The Last of Us Part I』色覚オプション

 アクセシビリティ系については『Part II』においても非常に多くのオプションが用意されており、同作は筆者がそういった機能に着目するきっかけにもなった。シリーズを通して、ひとりでも多くのプレイヤーが『The Last of Us』の物語を楽しめるよう工夫を凝らしていることがうかがえる。

原作の魅力をそのまま最新技術で表現し直した「リメイク」の名にふさわしい一作

 リメイクされた『Part I』をプレイして何よりも感じたことは原作の完成度の高さだ。ひとりひとりのキャラクターに意味がある重厚な物語、舞台となる恐ろしくも美しい世界、リソースを考えながら戦い抜かなくてはならないシビアな戦闘。そういった要素がすべて噛み合わさり、名作と呼ばれる『The Last of Us』を作り上げていたことを改めて感じさせられた。

 当たり前の話ではあるが、グラフィック面はPS3の原作と比較すれば飛躍的な進化を遂げている。しかしそこに違和感は驚くほどなく、イメージ通りの『The Last of Us』がプレイヤーを待ち受ける。この原作を極めて忠実に、なおかつグレードアップさせて描いた点が『Part I』の最大の特徴だろう。

『The Last of Us Part I』キリンの名シーン

 原作を遊んだ方が驚き目を見張るような要素は『Part I』にはないかもしれない。ただ最新グラフィックと「DualSense」コントローラによる新たな表現で生まれ変わらせた本作は「『The Last of Us』が好きだ」と言える人にとっては、決して体験して損のないタイトルとして完成している。

 もちろん、まだ『The Last of Us』という作品に触れたことが無い方にも、本作からシリーズの世界に入ることは強くおすすめできる。上述の通り難易度やプレイの補助機能も充実しているうえ、やはりPS5の高速ロードは非常に快適であるからだ。余計なストレスを感じず、物語の雰囲気に浸れるよう丁寧に整えられた作品であるとも言えるだろう。

 名作の「リメイク」として、その名に恥じない完成度を誇る『Part I』。ぜひ本作にて、最新技術で豊かに表現されなおしたジョエルとエリーの旅路を体験していただきたい。

ライター
1998年生まれ。静岡大学情報学部にてプログラマーの道を志すも、FPSゲーム「Overwatch」に熱中するあまり中途退学。少年期に「アーマード・コア」「ドラッグ オン ドラグーン」などから受けた刺激を忘れられず、プログラミング言語から日本語にシフト。自分の言葉で真実の愛を語るべく奮闘中。「おもしろき こともなき世を おもしろく」するコンピューターゲームの力を信じている。道端のスズメに恋をする乙女。
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