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【今日は何の日?】『タクティクスオウガ』が発売された日(10月6日)。「勧善懲悪」では語れない、複雑かつ重厚なシナリオが多くのプレイヤーの心を震わせた名作SRPG

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 10月6日は『タクティクスオウガ』が発売された日だ。

 スーパーファミコン向けに『タクティクスオウガ』が発売されたのは1995年10月6日。同年にスーパーファミコンで発売されたRPGとしては『クロノ・トリガー』『ドラゴンクエストVI』『聖剣伝説3』『テイルズオブファンタジア』などがあり、いずれも現代において色あせない名作だが、『タクティクスオウガ』もまたその一角で確固たる地位を築き、愛され続けている作品である。

 本作のジャンルはシミュレーションRPGだ。プレイヤーは革命軍の若き指導者デニム・パウエルとなって、民族紛争によって分断されたヴァレリア島を収束に導くのがストーリーの流れとなっている。

 戦闘画面はクォータービューで、プレイヤーは自軍の各ユニットに指示を出し、マップごとに設定されたクリア目標の達成を目指す。
 本作はユニットの行動順に特色があり、戦闘開始からWT(ウェイトターン)という数値がカウントされ、先に0になった者から行動できるようになっている。
 そのため、ユニットの行動順は敵も味方も関係なく入り交じるようになっており、味方ユニットと連携を取るために行動順を計算して合わせるなど、混戦を有利に導く筋道をプレイヤーが築かなければならないゲームバランスとなっている。

 しかし本作には、トレーニングをひたすらやり込んでパワープレイで圧倒したり、アイテムや転生を利用してステータスを上昇させたり、緻密なターンバトルから外れた遊び方もまた豊富に用意されている。
 そして鍛えた自軍ユニットをさらに強化する手段が終盤にいくつも登場することもあり、やりこみ要素で遊び続けられることも本作の魅力のひとつとなっている。

『タクティクスオウガ』Wii Uバーチャルコンソール版
(画像はWii U『タクティクスオウガ』バーチャルコンソール版販売ページより)

 しかし本作を不朽の名作として知れ渡らせ、多くのプレイヤーの支持を集めた最大の魅力は、なんと言っても「シナリオの秀逸さ」である。
 本作にはさまざまなキャラクターが登場する。それぞれが理想や信念を抱き、共感し合うこともあれば、別の場面では真っ向から対立することもある。
 かれらにとって、個人の感情と所属集団が掲げる正義が必ずしも一致しているとは限らない。さまざまな思いが交錯する中で、緊張感の漂う群像劇が展開され、時には命のやり取りに発展しながらシナリオが進行していく。

 本作を通してプレイヤーが強く実感させられるのは、この世界が「勧善懲悪」では決して語ることができないということだ。そこに単純明快なカタルシスは存在せず、重厚なシナリオはプレイヤー自身に選択の重みを常に問いかける。作中で紡がれる言葉、語られる思想は現実世界での出来事を地続きに想起させ、リアリティと普遍性に満ちている

 登場するキャラクターたちは、言葉や行動でそれぞれが望む未来を示し、戦乱の収束を目指すデニムが血路を開くことを求め続ける。主人公のデニムを通してプレイヤーが体験することになるそれらの積み重ねが、決して色あせず今なお鮮明に語り続けられる、本作の最大の魅力だ。

『タクティクスオウガ リボーン』
(画像は『タクティクスオウガ リボーン』公式サイトより)

 2010年11月11日、本作を再構築(リ・イマジネーション)した『タクティクスオウガ 運命の輪』(以下、『運命の輪』)がPSP向けに発売された。
 携帯機向けに開発されたことで、通信機能が追加されたのはもちろんのこと、ビジュアルとUIが一新され、新キャラクターの追加に伴いシナリオに部分的な加筆と変更が施された。また、ゲームシステムも変更や追加をされた点があり、全体的にオリジナル版とは異なったプレイ体験ができる設計となっている。

『タクティクスオウガ 運命の輪』
(画像は『タクティクスオウガ 運命の輪』公式サイトより)

 その中でも特に大きな追加要素は、「C.H.A.R.I.O.T.」「W.O.R.L.D.」のシステムの追加だ。

 「C.H.A.R.I.O.T.」は戦闘中に行動(手番)を巻き戻せる機能であり、「別の位置取りにすればよかった」「回復を優先すべきだった」などのIF要素を、実際に手番を巻き戻して何度でも再試行できる機能である。

 「W.O.R.L.D.」はクリア後に解放されるシナリオを巻き戻せる機能で、本筋として進行しているルート(メインシナリオ)から過去にさかのぼり、別のルートをプレイすることを可能にした。「W.O.R.L.D.」で手に入れたアイテムやユニットは本筋でも使用可能だが、メインシナリオ上では存在しない歴史(=「W.O.R.L.D.」を使用せずに進行しても本筋が辿る内容は同じ)という扱いになっている。

 このふたつの「時間をさかのぼる」機能が、PSP版の副題に『運命の輪』が冠された理由である。メインシナリオ上のデニムは、オリジナル版と同様に引き返せない一本道を進行しているが、プレイヤー自身は時間を自由に行ったり来たりできるようになり、自軍もまるごと引き連れてプレイができるようになった。

【今日は何の日?】『タクティクスオウガ』が発売された日(10月6日)。「勧善懲悪」では語れない、複雑かつ重厚なシナリオが多くのプレイヤーの心を震わせた名作SRPG_001
(画像はPlayStation.Blogより)

 そして2022年11月11日には、『タクティクスオウガ リボーン』(以下、『リボーン』)がPS4/5、Nintendo Switch、Steam向けに発売された。

『タクティクスオウガ リボーン』
(画像は『タクティクスオウガ リボーン』公式サイトより)

 『運命の輪』と同様に、開発にはオリジナル版のスタッフが再結集しているが、プレイ体験はオリジナル版とも『運命の輪』とも異なるよう再設計されている。
 キャラクターイラストは『運命の輪』と変わらず、「C.H.A.R.I.O.T.」と「W.O.R.L.D.」も続投しているが、戦闘面ではレベルデザインなどが変更されており、オリジナル版と『運命の輪』の良いところを合わせたような設計に新生(リボーン)されている。

 そして『リボーン』で何よりも大きな追加要素は、シナリオがフルボイス化されたことだ。本作の重厚なシナリオが、音声付きで再生されることで、どのような体験に変化を遂げるのか。過去作をプレイしていて内容を知っていたとしても、新鮮な気持ちでストーリーが楽しめそうだ。

『タクティクスオウガ リボーン』
(画像は『タクティクスオウガ リボーン』公式サイトより)

 『タクティクスオウガ』は発売以来、ファンから熱量高く愛され続けてきたタイトルだ。そして2度に渡る再開発から、制作陣からも特別なタイトルとして大切にされてきたことがうかがえる。
 オリジナル版の発売からじつに30年近くが経過しているが、全く古びない本作のシナリオが、『タクティクスオウガ リボーン』によってさらに多くのユーザーに届いてほしいと思う。そしてなぜこれほどファンが多いのか、この作品が「ゲーム」であることの醍醐味を、ひとりでも多くのユーザーに「体験」してほしいと願う。

ライター
『討鬼伝』シリーズを3000時間やり込んでいる元麻雀プロ。家を出て5メートルで職務質問されたことがある。中世ヨーロッパ風ファンタジーが好きで『ファイナルファンタジータクティクス』が最も好きだが、三国志など古代~近世の東洋も好き。好きな武将は細川政元。
Twitter:@natsukawa77tem

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