この「ゆるふわ」なアクションゲーム、なんと50GB越え。
Steamで『リビッツ!ビッグ・アドベンチャー』をダウンロードする際、この必要な容量(正確には54GB)を見てとにかく驚いた。同時に「なんで、こんなに容量が必要なんだ?」と疑問に思った。しかし、プレイして一瞬で理解した。
このゲームはとにかく物量が半端じゃない。ステージの設計に隙が一切ない。画面の隅々がつねにかわいい。そして老若男女問わず楽しめるゲームというものは、こういうものなのかという驚きがあった。
『リビッツ!ビッグ・アドベンチャー』は、2020年にPS4、PS5向けにすでに発売されており、今回はPC版の紹介となっている。
本作は2008年にPS3向けに発売された『リトルビックプラネット』というSIEの名作横スクロールアクションの後継作となっており、主人公「リビッツ」が新たな舞台で冒険するものとなっている。
前作までの基本横スクロールの2Dスタイルから、奥行きや見下ろしなどといった3D要素が追加され、よりダイナミックなアクションへと変化した本作。
リビッツという存在は世界的に見ればSIEの看板キャラクターと言っても過言ではないはず。しかし、国内ではけっして知名度が高い状況とは言えず、キャラクターを見たことはあってもゲームをプレイしたことはなという方も多いはずだ。
じつはこのゲーム、見た目だけ知っているのは非常にもったいない。
文/tnhr
編集/ishigenn
誰が触っても分かるアクションのお陰で能動的にギミックに触れたくなる
『リビッツ!ビッグ・アドベンチャー』の主人公は、創造力と夢がいっぱい詰まったクラフトワールド出身の「リビッツ」という、かわいらしい人形だ。
ある日、ヴェックスという悪い人形が現れ、世界をめちゃくちゃにする道具である「ヒックリカエラー」を作るためにリビッツの仲間たちをさらってしまうところから物語は始まる。
本作の魅力は一目で分かる物量の多さ、そしてじわじわと感じるアクションギミックの多様さ。そして、老若男女問わず楽しめるゲームであることだ。
プレイヤーは主人公のリビッツを操作しながら、5つのコンセプトに分かれたワールドの中にあるステージを攻略していってエンディングを目指していく。ワールドひとつひとつに大きなコンセプトが存在しており、それは雪だったり、海底だったり、SFだったりでさまざま。
驚くべきポイントは、ワールドのコンセプトの差別化だけではなく、ステージひとつひとつの差別化が良く出来ているため、いつどのタイミングでなにを触っても楽しいという点だ。
ステージをクリアしていくアクションゲームでは、ギミックや敵が繰り返し登場してしまう作品も少なくなく、単調であることがしばしば。それを解消するためには難度を上昇させ緊張感やトライアンドエラーを促すリプレイ性を上げるというやり方がひとつである。
そのようなやり方で市民権を得ている作品は無数に存在しているし、むしろそのような方向に突き進むことによって多くのアクションゲームは進化していった。
ただ、私は何回も死んで体で覚えるゲームが大好きでありながら「けどそれってゲームに慣れているし、あたりまえのようにゲームが好きだから出来てる事なのではないか?」とも思う。だからこそ本作の面白さに感動し、ゲームという存在そのものが新鮮だった幼年期を思い出した。
『リビッツ!ビッグ・アドベンチャー』は、より万人に遊んでもらいたいという意図を感じる作品。「実は今日がゲームで遊ぶのがはじめてで……」という方にも遊んでもらえるというポイントが大きな特徴だ。
ゲーム初心者であれば特に瞬発的なリアクションが重要視される。なぜなら、高難度ゲーム特有の修行の果てに大きな感動が待っているというお約束はまだ知らないことが多いからだ。
また、難度を上昇し理不尽さ少しでも感じてしまうと、プレイヤーは「これに触ったら死んでしまうのではないか?」と感じてしまい、さまざまなギミックに触れてアクションすることに消極的になってしまう場合がある。
そもそも、ゲームの難度が自分の腕前に合わずに、プレイにおける「失敗」の割合が多くなってしまうと、ゲームを継続しようとする気力が失われてしまうという問題も発生する。
本作にはこのようなゲームに慣れているからこそ解決できていた問題を、ギミックの多さや、リアクションのテンポ感によって解消している。
これを触ったらこのように動くだろう、この敵はこういう見た目だからここが弱点だろうといったように、プレイする上での納得度が非常に高く、ゲームに慣れていない人が感じるであろう「理不尽さ」や「失敗」を見事に回避している。
そしてこのような納得感が高ければ高いほど、さまざまなギミックやオブジェクトに触ってみたいという欲求が必然的に高まっていく。さらに良い点は本作ではそのようなプレイヤーのアクションにしっかりと「驚き」を与えてくれる、アイデアの面白さとテンポの良さだ。
アイテム収集要素、隠し要素が重要視される本作においては、ビビらずにいろいろな者に触れてもらうというデザインはしっかりとコンセプトに合致しているように思える。
ひとつのアクションがさまざまな効果をもたらす
リビッツは「走る」「ジャンプ」「パンチ」などといったシンプルなアクションを使い分けながらステージを進む。チュートリアルを一通りプレイしなくても、少し遊んでいれば理解できるほどにシンプルで分かりやすい操作だ。
しかし実際のゲームプレイでは、「つかむ」というアクションひとつをとってもさまざまな使い方がある。何かにしがみついて移動するために「つかむ」のか、ギミックを起動させるためにブロックや紐を「つかむ」のか、組み合わせを考えながら臨機応変に対応しなければいけない。
さらにしばらくプレイすればわかるように、「つかむ」というアクションは「引っ張る」や「拾い投げ」といったアクションへと応用することができる。同じオブジェクトに対しても違うアクションを行うと、違った結果が待っている。最適な方法を考えなければならないし、隠しアイテムを獲得するには多少頭を捻る必要がある。
そして本作はさまざまな収集要素が用意されており、単にゴールを目指すだけでは、ワールドをクリアすることができない。 各ステージに隠された青い玉を一定数集めなければ、ワールドのボスに挑戦することができないからだ。プレイヤーはさまざまなアクションを用いてギミックに触れ、隠された収集物を集めていかなければならない。
このようにゲームのクリア目的としても「ギミックに触れること」は求められるのだが、上記で説明した通り、そのギミック自体が楽しいのが本作の味噌だ。プレイヤーに課せられた目標そのものが楽しいという構造で、アイテム収集がめんどうといったよくあるストレスはほとんどない。
「強制スクロール」はテーマパークだ
アクションゲームにおいて、強制スクロールは定番のギミックのひとつだ。ゆっくりと考える暇を与えられることなく、瞬時な判断が求められることで、緊張感が発生する。
さらに、強制スクロールはディズニーランドなどのテーマパークや遊園地のアトラクションのようなものとも捉えることもできる。
たとえば「ジャングルクルーズ」というアトラクションは、基本的に客である乗員はなにもしない。なにもしないが、動くプラットフォームに乗っているとさまざまな動物や植物がめまぐるしく登場し、それが船長の臨場感あふれるアナウンスによって解説されることによって、まるで冒険しているかのような体験を安全かつ楽しく味わうことができる。
『リビッツ!ビッグ・アドベンチャー』が強制スクロールステージで表現している体験はまさにそれだ。
本作の魅力である多彩なビジュアルと、各ワールドに用意されたお助けキャラクターの軽快なトークによって、アトラクションさながらのプレイを楽しむことができるのだ。
もちろんそこには緊張感がある。しかしそれは、単にゲームの難度が上昇したからの緊張感ではなく、本当に海底を探検しているかのような臨場感から生まれる緊張感なのである。
加えて凄いのが、本当にほとんど何もしてなくてもクリアできてしまうという点。アイテムの収集に意識を向けると途端に操作が忙しくなり、それなりに歯ごたえのあるアクションになるのだが、クリアだけを考えてしまえばまさに「ジャングルクルーズ」のように何もしなくてもゴールにたどり着くことができる。
本作はゲームに慣れて上手くなったら、また前のステージに戻ってアイテムを収集すればいいので、どのステージも完璧にこなす必要がない。これもまた、老若男女問わず楽しめるゲームである所以である。
最高のサウンドトラック、もはや「音ゲー」のステージ
アクションゲームをやり込んでいる方の中には、ゲームのBGMに合わせてキャラクターがリズムを取る演出やアニメーション姿を見て、「芸が細かくて良いなぁ」とテンションが上がった経験があるかもしれない。
本作にはそんな「音ハメ」による相乗効果を考えて緻密にデザインされた「音ゲー」のようなステージが数々登場する。
リズムに合わせて敵やギミックが動いてくれるのはもちろんのこと、BGM主体で作られたステージも存在しており、音楽をしっかりと聴いてリビッツを操作していくと攻略がすんなりといくステージも存在している。
ステージが変わるごとにBGMが変わっていくそのトラックの数たるや。「これだけの楽曲だとコンポーザーは過労死するのでは?」と心配になったが、「『リビッツ! ビッグ・アドベンチャー』の音楽制作の場合は、コロナ禍における業務ガイドラインに従う必要がありましたが、それを順守しつつもよい結果を出せました。」とSIE.Blogに記述されていたため安心した。
さらにメジャーなアーティストの曲が多数採用されており、洋楽好きであればテンションが上がることが多々あるはずだ。
有名どころだとデヴィット・ボウイ「Let’s Dance」、ケミカル・ブラザーズ「The Private Psychedelic Reel」、ブリトニー・スピアーズ「Toxic」、マーク・ロンソン、ブルーノ・マーズ「Uotown Funk」、スーパーオーガニズム「Everybody Wants To Be Famous」、Anamanaguchi「Pop It」などなど……ざっくりとほんの一部を挙げるだけでもこれほど豪華になっている。
超カオスな協力プレイ
本作には2~4人までの協力プレイで楽しむことができるモードが用意されており、このゲームを楽しむならぜひ協力プレイをしてほしいと思う。
協力プレイじゃないとプレイすることのできないステージも存在しているが、オンラインで知らない人とプレイすることもできるので安心していただきたい。
協力プレイ専用のステージがあるだけあって、自分以外のプレイヤーの動きをしっかりと見ながらプレイしないと痛い目にあう。
しかも協力プレイ専用であるにも関わらず、なぜか殴りあうことも可能。味方同士で当たり判定があったり、味方をつかんで投げることも可能なので、団子になればなるほど、カオス感が上昇。人数が多ければ多いほどゲームが簡単になるほど単純ではないが、人数が多ければ多いほどむちゃくちゃな別ゲー感があって非常に楽しい。
なお本作ではSIEの有名キャラクターたちのスキンを装着することができるのだが、どこかで見たゲームのキャラクター(のリビッツ)たちがごちゃごちゃと乱闘している様子をみると、『プレイステーション オールスター・バトルロイヤル』を思い出してしまう。
とにかく多種多様な要素が「楽しい」を軸に構成された素晴らしいゲームだ。細かいところでの作り込みや遊びも語れば切りがなく、たとえばステージをクリアしたときに毎回勝利のポーズをとって写真撮影するシーンも、協力プレイでは殴り合いになり邪魔し合うという様相で、非常にかわいい。
着せ替え機能も非常に多様で、前述したようにソニーから生まれたさまざまなキャラクターたちのコスプレや、ステージのコンセプトに合ったコスチュームでゲームを楽しむことができる。
本作は、とにかく万人が楽しむことに特化しているゲームでありながら、その作り込みの深さによって、いくらでもやり込むことができ、コアなゲーマーでも十分に楽しむことができるようになっている。
前シリーズのファンはもちろんのこと、リビッツというキャラクターは知ってるけど、どういうゲームか知らなかった人はぜひ本作をプレイしていただきたい。
なお、本記事で使用されているスクリーンショットはすべて2022年10月28日に発売されたPC版のキャプチャとなっている。
PC版では4Kの高画質や、AIによって高品質な追加フレームを生成するNVIDIA DLSSなどの機能に対応。また21:9のウルトラワイドモニターで広々としたクラフトワールドの景色を堪能したり、120fpsまでの高フレームレートで快適にゲームを楽しむこともできるのだ。
以下はグラフィックの設定概要となっているため確認していただきたい。