eスポーツとは、Electronic Sports(エレクトロニック・スポーツ)の略で、テレビゲームなどで実施される対戦をスポーツの一種としてとらえた競技種目の総称だ。EVOをはじめとした格闘ゲームの大会が日本でも開催されるなど、その認知度は国内外を問わず広がっている。
2019年に開催された「EVO Japan 2019」では、『鉄拳7』部門で無銘のパキスタン人が優勝し、またその人物自身が「国に帰れば自分より強い人間がいる」という趣旨の発言をしたことから、話題を呼んだ。
そして、2021年には「TeSA(鳥取県eスポーツ協会)」【※】によるナイジェリアeスポーツ協会・アフリカeスポーツ連盟との戦略的提携が発表、eスポーツの波はアフリカ諸国にも押し寄せているようだ。
※鳥取県でeスポーツに関連した支援や地方創生を目指すために発足された団体。大会を主催する他、人材育成やeスポーツを通じた国際交流などもおこなっている
タンザニアに隣接する“マラウイ共和国”のリロングウェで開催されたスポーツ大会「Region 5 Youth Games」では、陸上やバスケットボール、サッカー、柔道などの種目と並んで、初めてeスポーツが採用された。
今大会でeスポーツ競技に参加したのは開催国である「マラウイ共和国」と「ザンビア」の二か国で、とくにザンビアは大会全体を通して62個のメダルを獲得している。
そんなザンビアの代表選手団にも参加しており、ザンビアeスポーツ連盟の事務局長でもあるチュルイ・エレン・シャブカリ(Choolwe Elen Shabukali)氏は、アフリカ大陸内で最年少の女性eスポーツマネージャーだという。
本稿では、アフリカのeスポーツメディア「Gamecampcities」で掲載された、シャブカリ氏へのインタビューを翻訳して掲載する。
聞き手・文/Asaph Ataho Nyenyezi(Gamecampcities)
翻訳・編集/Squ、実存
国としてeスポーツシーンに参加する意味と課題
──2022年のマラウイ共和国でのイベント「Region 5 Youth Games」のザンビア代表選手団において、どのようなポジションとして参加したのか教えてください。
チュルイ・エレン・シャブカリ氏(以下、シャブカリ氏):
こんにちは。わたしはeスポーツチーム「Team Gematrix Limited」の共同設立者で、ザンビアeスポーツ連盟の事務局長でもあります。マラウイ共和国のリロングウェで開催された今大会では、技術担当というポジションで連盟を代表して参加しました。
──同大会のeスポーツ部門では、『ストリートファイター5』と『eFootball』が採用されていましたね。今回どの国が参加したのでしょうか? ザンビアの参加についても、どのような評価をしているかお聞かせください。
シャブカリ氏:
はい。今大会では『ストリートファイター5』と『eFootball』が種目として採用され、ザンビアと開催国であるマラウイ共和国が参加しました。
個人的には、ザンビアのeスポーツ参入には、明るい未来が待っていると考えています。
今回、マラウイとザンビアは初めてメイン競技として「eスポーツ」を披露しましたが、これはザンビアにとっては歴史に残る第一歩になったと思います。また、この大会がユース大会だったことで、有望な若いアスリートの存在を知らしめることもできました。
これからは、才能を育むための環境を整えることが重要です。Global Esports Federation(GEF)が支援する大会などがひとつの例といえるでしょう。
現状ではeスポーツ分野での女性の活躍は乏しいが、環境づくりに従事する人たちがいる
──あなたは現在27歳で、アフリカ大陸でもっとも若い女性eスポーツマネージャーなわけですよね。
スポーツやeスポーツといった分野における女性の立ち位置、そして向こう5年間でザンビアのeスポーツがどのように発展していくと思うか教えていただけますか?
それから、あなたたちが設立した「Team Gematrix」は業界にどのような貢献が出来るのでしょうか。
シャブカリ氏:
最近は私よりも若い人たちがどんどん出てきていますから、27歳というのが本当に最年少なのかはわかりませんけどね。「連盟の中で若いマネージャーのうちの1人」ということにしておいてください。笑
現時点ではゲームをプレイするのか、ゲームビジネスなのかを問わず、eスポーツ分野での女性の活躍は乏しいでしょう。ただ、今後5年間でのeスポーツの発展には期待しています。
というのも、現在のアフリカ大陸ではゲーム開発やeスポーツをはじめとしたさまざまなキャリアで、女性が活躍できる環境づくりをしている人たちがいるんです。
大会が経験を育み、次へとつながるきっかけになる
──南アフリカとナミビアは、アフリカにおけるeスポーツのパイオニア的存在ですよね。
彼らが今回開催されたRegion 5 Youth Gamesに参加しなかったことについて、どう思われますか?
また、マラウイで開催されたこの大会に、初めて自国の代表として参加した選手たちはどのように感じていたのでしょうか?
シャブカリ氏:
ザンビアの選手たちが得た“経験”という観点からみれば、上々でした。
彼らはこの試合にワクワクしていたんです。もちろん遠征が初めてというわけではないのですが、国を代表してゲームをプレイしたり、好きなことで競い合うというところが素晴らしかったのだと思います。
GEFがスポンサーになったことで、私たちのチームは素晴らしい宿泊施設や食事、交通手段などのサポートを利用することができたのもとても大きかったと思います。
なので、この経験が彼らにとって実りあるものであったこと、そして彼らがもっと真剣に、eスポーツの世界でもっと活躍したいと思ってくれたことを、本当にうれしく思っています。
いつか自分の子ども達にも話してあげたいですね。
eスポーツはスマホの普及によって参入しやすくなった
──今回GEFは、マラウイのアフリカ連合とともにこのeスポーツ大会に協賛していましたよね。GEFに対してアフリカ当局が関わっていたことをご存知でしたか?
また、ザンビアは62個のメダルと17個の金メダルでメダルランキング3位と健闘していますが、eスポーツは今後アフリカ諸国にとって有望な種目になると思われますか?
シャブカリ氏:
GEFは、GEF傘下のAfrica Esports Development Federationのほか、Regional Five Games、Africa Union Game Councilと連携してeスポーツイベントを主催しています。
なので、Africa Esports Development FederationがGEFと協力関係にあったことは存じています。
えぇ、確かにザンビアはかなり多くのメダルを獲得していますね。とくにモバイルゲームの台頭によって、幅広い層にチャンスが与えられるようになりました。
パソコンを持っていなくても、スマートフォンさえあれば『コール オブ デューティ モバイル』や『コール オブ デューティ ウォーゾーン』、『フリーファイア』といった競技性の高いゲームをプレイすることができ、さまざまな境遇の子どもたちやアスリートたちにもチャンスが広がっています。
ですから、アフリカ諸国にとってeスポーツは非常に有望だと考えています。「将来的なチャンス」という意味では、のびしろしかないと思います。
おわりに
本稿では、実際に正式な競技としてeスポーツが採用されたアフリカでの事例を紹介した。アフリカで初めて競技として採用されたeスポーツだが、今回のインタビューによれば「選手の育成」や「女性が活躍しづらい」などの課題がまだあるようだ。
しかしながら、正式なスポーツ競技としてeスポーツ大会が実施された事実や、スマートフォンの普及によって若年層の参入がしやすくなったというのは、eスポーツ業界に新たな風を吹き込むきっかけになるだろう。