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VRADV『ディスクロニア: CA』全3編構成の中編「Episode2」は中弛みを防げたのか? 単なる中継ぎに留まらない構成と卓越したVR表現を解説

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 『東京クロノス』や『ALTDEUS: Beyond Chronos』など、VR表現を用いたSFADV作品を次々と生み出してきた「MyDearest」。アニメ調ながら没入度が高く、SF要素満載の世界に全身が浸るような感覚に、多くのプレイヤーが酔いしれました。

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 そんな同社の最新作『DYSCHRONIA: Chronos Alternate』(以下、ディスクロニア: CA)が、Meta Quest 2専用タイトルとして昨年9月に登場。実績を積み重ねてきたVR表現は、更なる可能性を求める模索と相まって、VRADVの歴史に名を残さんとする意欲が感じられる作品でした。

 そして本作は、2 月22日に発売される「PSVR2」のローンチタイトル(Episode1のみ)でもありますので、今後より多くの人がプレイするゲームとなることでしょう。

 しかし、本作の評価はまだ定まっておりません。というのも、昨年の9月にリリースされたのは、いわゆる前編にあたる「Episode1」のみ。作中で当面の目的は達成されたものの、まだ数多くの謎が残っています。また、物語全体は結末を迎えるどころか、波乱の展開で区切られる形となりました。

 「Episode1」のレビューは別記事として掲載していますので、気になる方はそちらもご覧ください。

『ディスクロニア: CA』がもたらした”VR×アドベンチャーゲーム”の境地 ― VRならではの体験もさることながら、SF系ADVの新たな名作となる可能性を秘めている

 前中後編構成なので、謎が残るのも結末を迎えていないのも当たり前の話ですが、こうした事情から『DYSCHRONIA: Chronos Alternate』の正確な評価は、結末を彩る後編が出るまで出せない状態にあります。

 まだ終わりを迎えていない『DYSCHRONIA: Chronos Alternate』の物語は、先月リリースされた「Episode2」で、結末に向けて大きく動き出しました。犯罪発生率0.001%の都市で起きた殺人事件という衝撃で「Episode1」が始まり、当初から示唆されている都市の崩壊に抗う展開になるであろう「Episode3」。その中間に位置する「Episode2」は、前後編を繋げるという難しい役割を担っています。

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 初手のインパクト、そして結末のカタルシスに挟まれる中編は、その構成上からどうしても中弛みしやすい箇所です。ゲームをはじめ、小説や映画など、数々の作品がこの難点に立ち向かいました。その結果は、もちろん作品ごとに異なります。

 果たして『ディスクロニア: CA』の「Episode2」は、構成上の落とし穴にはまったのか。それとも、刺激溢れる体験でプレイヤーの意欲を維持できたのか。「Episode2」のエンディングまで通してプレイした体験を通し、その実感をプレイレポートでお届けします。

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 なお、本作はADVゲームなので、重要なネタバレについては触れておりません。ですが解説の都合上、軽いネタバレは含まれるので、その点ご了承ください。

文・臥待弦

卓越したVR表現は「Episode2」でも安定。細やかなアクションにも心が動かされる

 『ディスクロニア: CA』の基本的なゲーム性はADVですが、VRによる没入性、疑似的な立体空間を活かした事件の調査やギミックの解決など、「MyDearest」が得意とするVR表現も大きな魅力のひとつです。

 その魅力は「Episode2」でも存分に発揮されており、「あたかもその世界にいるような感覚」や、「“主人公の操作”ではなく、“プレイヤー自身が主人公”でいられる手応え」など、VRを活用して表現しています。

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 これは「Episode1」の時点ですでに味わえていたものですが、その魅力は「Episode2」でも健在。凄いのは最初だけで後は続かず、といった肩透かし感とは無縁です。

 ただし、切り口などで新たな面を見せていますが、表現や演出の基本は「Episode1」の延長線であり、驚きの進化や新たな衝撃と呼ぶほどのものはありません。ただし、今回プレイしたのは同じタイトルの中編。大きすぎる変化を望む方がむしろおかしい話なので、VR表現については“前編から順当に引き継がれた”と表現するのが適切でしょう。

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 また、VR表現は「Episode1」と全く同じ、というわけでもありません。例えば、特定の場面でこちらが手を振ると、それを見たキャラクターが手を振り返してくれます。ゲーム的にはギミックを攻略するアクションに過ぎませんが、“プレイヤーの動きに、キャラクターが反応する”という体験は言葉で説明する以上に刺激的でした。しかも、没入感の高いVRゆえに、その効果はより大きく感じられます。

 さらに、「Episode1」にあったステルスアクションが切り口を変えていたり、前編で好感触だった事件の犯行を再現する検証パートも健在だったりと、順当なステップアップを見せています。こうした「Episode2」におけるVR要素を一言でまとめるならば、欠けたものはなく、着実な変化と安定した刺激を楽しませてもらった、といった印象です。

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 VR関連で強いて難点を上げると、「拡張夢」(精神安定のために用意された疑似空間)で行うメンタリングシステム(住民に対する精神面のケア)の手数が増したため、煩雑さと難易度が向上。これは、住民の不安が増していく物語進行に合わせたものですが、メンタリング自体がやや作業的なので、やりがいよりも億劫さが増した印象を個人的に受けました。

 とはいえ、「Episode2」の中でメンタリングに費やす時間はほんのわずか。この点を除けば、「拡張夢」の体験はやはりVRならではですし、没入感の高さや表現力、「ゲームの世界にいる自分」を味わう感覚などは、前編に引き続いて今回も満足できる内容でした。

中継ぎながら構成を大きく転じた「Episode2」。大胆な施策で中弛みを予防

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 「Episode2」をプレイした中で、前述したVR体験や物語自体の醍醐味などを別にすれば、最も驚かされたのはその構成です。全中後編の中盤に位置しながら、「Episode2」内の構成は大きく変えてきました。

 「Episode1」の構成は、全体を通して語られる「都市崩壊の危機」と「謎めいた主人公の過去」をちりばめながらも、「最初に起こった殺人事件」が主軸でした。この事件を捜査する過程で、謎や伏線らしきものに触れつつ、集めた証拠を元に事件を推理。その真相を究明し、「Episode1」が幕を閉じました。

 対する「Episode2」は、大きく分けて4つの構成を用意。とある事情から危険な場所に迷い込んだ主人公たちが脱出を目指すVRアクションから始まり、新たに発生したもうひとつの殺人事件の調査と解決、主人公の過去を疑似的に振り返るギミックパート、そして都市の危機に立ち向かう大規模なメンタリングが順繰りに展開し、ひとつの区切りを迎えます。

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 いずれも物語的に繋がっていますし、それぞれに意味があるので、断片的な個別の構成などではありません。一方で、「殺人事件の捜査と解決」という大きな軸の中にいくつもの要素を散りばめた「Episode1」とは、構成を大きく変えてきたことが分かります。

 分割形式のADVゲームはいくつもありますが、本作のEpisodeは全て連続しており、個々が一定の区切りで締めくくられるのと平行して、Episode1・2・3を通して『ディスクロニア: CA』という大きなひとつの物語を形成しています。

 こうした作りなので、「Episode2」は「Episode1」と同じ構成だろうと半ば反射的に想像していましたが、その思い込みをひっくり返す構成に驚かされ、作中で明確な区分けはされていませんが、章仕立てのような4つのパートを楽しみました。

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 個別に見ていくと、まず最初に挑むVRアクションは、複数のドローンが定期巡回している警備の中を搔い潜るといったもの。「Episode1」では、敵対者から逃れる1対1のやりとりでしたが、規模が大きくなり、緊張感も増しました。

 またVRアクションの終盤では、時間を稼ぐため、巨大ドローンを引きつけるアクションパートも発生。ゲーム性自体は至って簡潔ながら、VRでの体験なので臨場感が跳ね上がり、かなりスリリングなひとときでした。

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 続いて展開する新たな殺人事件への取り組みは、全般にわたっていた「Episode1」とは異なり、ボリューム的にはややコンパクト。しかし、捜査から検証まで一気に行うので事件に集中できます。ぎゅっと詰め込まれた分だけ、プレイ感自体はむしろ濃密な印象を受けました。また、検証パートでは前回と同様、プレイヤー自身が謎を解き明かす主体性を感じられます。

 主人公の過去を振り返るパートでは、ゲーム的なギミックを「過去の再現」として表現しているおかげで、ここまで謎に包まれていた主人公の歩みや内面を自然な流れで知ることができます。ギミック自体は単純ですが、過去と結びつく要素なので、なかなか興味深くもありました。

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 最後のメンタリングパートは、「Episode2」の終盤でもあるので、詳しい言及は避けておきます。ですが、スケールが大きく広がったことで、臨場感と興奮も倍増。急転する物語の効果もあり、プレイヤーの動作自体はシンプルなのに満足度の高い体験が得られました。これも、VRならではの演出が興奮を後押ししてくれたのだと思います。

 4つのパートはいずれもVRADVという枠に収まっていますが、プレイ感や手応えは少しずつ違っており、次の展開を迎えるたびに目先の異なる要素が登場。その新たな切り口を堪能すると、更なる新要素が出てきて……と、まるでコース料理に舌鼓を打つような楽しさがそこにありました。対する「Episode1」は、主菜を軸としつつ、副菜も食べ進める定食のような味わいと言えるかもしれません。

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 連続する作品が、なぜここまで構成を大きく変えたのか。これは完全に個人的な憶測に過ぎませんが、中弛みを招きやすい中編だからこそ、定期的に新たな刺激を提供し、プレイ意欲を促す方策だったのかなと感じました。

 物語の中盤は何かと中弛みしやすいもの。また、配信の間隔が開いているので、「Episode2」を遊んだのは「Episode1」クリアからそれなりに時間が経った後でした。そのため、どうしても「Episode1」の出来事を思い出しながらのプレイになってしまいます。

 中弛みを避け、出来事を振り返りながら遊ぶプレイヤーを力強く牽引する解決策として、「Episode2」の構成を考えたのだとすれば、開発時点でそれを想定した「MyDearest」に改めて脱帽するばかり。ここまで積み上げてきた実績と経験は、VR表現だけでなく、ADVの面にも存分に活かされています。


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 VR表現の手腕は「Episode1」と変わらず、それでいて少しずつ変化を見せるなど、プレイを飽きさせない配慮も見られます。

 また、物語面に触れるとネタバレになるので言及を避けましたが、「どうやって殺されたのか」を「Episode1」で解明した後に、「Episode2」で「誰に殺されたのか」を浮き上がらせ、“謎を解くことで新たな謎を呼び、それが徐々に明らかになる”といったADVゲームの基本かつ醍醐味が、「Episode2」にしっかりと盛り込まれていたのはお伝えしておきます。

 登場人物の動機や背景、謎に包まれていた該当者の判明、都市が崩壊する理由など、「Episode1」で貼られた伏線をいくつも回収した「Episode2」。それらが繋がり、少しずつ浮き彫りになっていく物語を眺める楽しさも、こうしたADVゲームならではでしょう。

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 『ディスクロニア: CA』は「Episode3」で完結するため、作品自体の評価が決定するのはもう少し先の話。

 ですが、先が気になる物語を用意するだけでなく、一変させた構成で中弛みを防いだ手腕ひとつとっても、これから訪れる『ディスクロニア: CA』の結末への期待を抱かせる「Episode2」のプレイ体験となりました。

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