3月12日は『伝説のオウガバトル』が発売された日だ。
1993年3月12日、スーパーファミコン向けに『伝説のオウガバトル』が発売された。クエストが開発と発売を手がけた本作は、ディレクターを松野泰己氏、キャラクターデザインを吉田明彦氏、グラフィックデザインを皆川裕史氏、音楽を岩田匡治氏、崎元仁氏、松尾早人氏らが担当している。
本作は「オウガバトルサーガ」と呼ばれるシリーズの1作目で、シリーズ全体のエピソード5にあたる。
ジャンルはリアルタイムに時間が進行することで戦況が変化する、リアルタイムストラテジー方式を採用したシミュレーションRPGだ。
プレイヤーは解放軍の指導者(=オピニオンリーダー)となり、悪政を敷く帝国政権を打倒するのがストーリーの目的となっている。
ゲームの流れは、各ステージごとに拠点を開放しながら敵の本拠地を目指し、駐留しているボスを倒してステージクリアを目指すのが基本だ。
拠点(街や教会)は必ずしも解放する必要はないが、解放することによって軍資金の援助、アイテムの購入や体力の回復、カオスフレームの増減、タロットカードが引けるといった効果がある。
カオスフレームとは民衆の支持率を可視化したメーターのことで、数値が低いと軍資金が減るなどのデメリットが存在する。
本作の戦闘は、敵ユニットと自軍ユニットのどちらがより多くダメージを与えたかで勝敗が決まる。タロットカードは戦闘時のコマンドのひとつで、効果は敵ユニットへの全体攻撃、自軍ユニットの回復、一時的なステータスアップなどがあり、非常に強力な切り札として使うことができる。
さらに本作のクラス(職業)はバリエーションが豊富で、クラス同士の組み合わせは膨大なパターン数を誇る。使いやすい編成を模索したり、お気に入りのクラスが引き立つ編成を考えるのも本作の楽しみ方のひとつだ。
本作は2Dドットによるグラフィックが非常に美しいことも特徴として挙げられる。マップがユニットに対し斜めに配置されているため、ユニットに進軍指示を出す際は奥行きを感じることができる。
戦闘時はクォータービューの専用画面に遷移し、自軍ユニットと敵ユニットの行動をアニメーションで見ることができる。大半のクラスが前衛と後衛で異なる行動をするため、どのようなアニメーションが用意されているのか、性能を度外視して編成してみたくなるほどだ。
BGMもマップ画面と戦闘画面では異なり、使命感や緊張感を意識させ、臨場感を盛り上げる役割を果たしている。
オピニオンリーダーとして、どのような編成のユニットを、どう進軍させて攻略すべきか──軍師さながらに考え、指揮することができるのが本作の醍醐味と言える。
エンディングも何種類も用意されており、クリア時のカオスフレームの数値だけでなく、主人公の性別や加入している仲間、所持アイテムなどによっても条件が枝分かれするため、周回する魅力と遊びごたえがしっかりと用意された作品となっている。
また、本作の一部のキャラクターは『タクティクスオウガ』にも登場しているため、本作を『タクティクスオウガ』の前日譚と捉えて楽しむことも可能だ。
1999年7月14日、Nintendo 64向けに『オウガバトル64』が発売された。開発はクエスト、発売は任天堂が手がけている。
本作は「オウガバトルサーガ」のエピソード6として発売されており、シリーズの時系列としては、エピソード7にあたる『タクティクスオウガ』と同時代を描いているとされる。『伝説のオウガバトル』と『タクティクスオウガ』でシナリオを担当した松野泰己氏は、本作の開発には参加していない。
ストーリーは、ローディス教国の属国となっているパラティヌス王国の革命軍に主人公が加わることから始まり、ローディス教国が敷いた階級社会を打倒することが目的となっている。ストーリーを進めると、『伝説のオウガバトル』に登場した一部のキャラクターを本作でも見ることができる。
ゲームの流れは『伝説のオウガバトル』から大きく変更されていないが、グラフィックが2Dドットから3Dポリゴンとなり、ユニット編成や拠点開放などのシステム面で変更が加えられている。
ユニット編成では、フォーメーションが前衛・中衛・後衛になり、ユニットが配置可能なマス目が3×3に変化した。
そして進軍中のユニットに「向き」の情報が加わり、後背を突かれると前衛と後衛のフォーメーションが逆になるバックアタックが発生するようになった。
ユニットがクラスチェンジするには基礎ステータスの条件を満たすだけでなく、特定の装備品も揃えることが必須となった。そのため、一部のクラス(特に強力なものが多い)はチェンジ可能な人数が限定されている。
キャラクターのALI(アラインメントの略で、善悪の指標のようなもの)は具体的な数値ではなく、天秤の傾きでおおよそを判断する方式になった。
各拠点にはMORALITY(モラル)が設定され、モラルとALIの値が近いユニットが占拠すれば「解放」となり、カオスフレームが増加するが、ALIが離れたユニットが占拠すると「制圧」になってしまい、カオスフレームが減少するシステムに変わった。
拠点開放時に引くことができたタロットカードは削除され、戦闘ではゲージを消費して精霊が攻撃する「エルムペドラ」のコマンドが追加された。
出撃中のユニットに疲労度のパラメータが追加され、拠点に滞在するなどして定期的に休息を取らないと、進軍中でも強制的にテントで休むようになった。特定のアイテムを使用すれば疲労度を無理やり減らすこともできる。
他にも新たなシステムとして、複数ユニットを同時に指揮できる「レギオン」が追加された。レギオンを編成するにはレギオンリーダーの資格を持つキャラクターが必須となる。
そして本作ではカオスフレームがマスクデータになったため、革命軍の支持率をプレイ中に確認することはできず、数値が判明するのはエンディングに到達した時のみとなっている。
本作もストーリーに分岐があり、マルチエンディングが採用されている。いろいろな攻略スタイルで周回することで、物語を別の側面から楽しむことができるボリュームとなっている。
2000年6月22日、ネオジオポケットカラー向けに『伝説のオウガバトル外伝 ~ゼノビアの皇子~』が発売された。本作は開発と販売をSNKが担当しており、クエストは監修として参加している。
本作は『伝説のオウガバトル』(エピソード5)のシステムを忠実に移植しながら、新規ストーリーが展開する外伝タイトルとなっている。
時系列としてエピソード5の前日譚にあたり、エピソード5にも登場するゼノビアの皇子のトリスタンが主人公となっている。
本作ならではの要素として、新規の上位クラスが複数追加されている(もともと上位クラスが存在しなかった「ウィッチ」の上に「ハガル」が追加されているなど)。
ネオジオポケットカラー本体が特定の日付になっているなど、かなり特殊な条件を満たすことで入手可能な新規クラスも存在する。他にも、エピソード5では特定のキャラクター専用だったクラスが、誰でもクラスチェンジ可能になっているケースもある。
本作はネオジオポケットカラーの通信機能に対応しており、通信対戦をすることで、アイテムや特殊クラスが入手できるなどの特典がある。
メインストーリーはやや短めで、全体の話数はエピソード5の約半分だ。しかし途中にはルート分岐があり、マルチエンディングのため、本作もまた周回プレイを楽しむことができる。
ストーリークリア後は、追加されたフリーマップで遊ぶことができるようになる。フリーマップは複数種類があり、そこではエピソード5に登場した一部のキャラクターを仲間にすることができる。
本作は『伝説のオウガバトル』の遊び心地を忠実に移植しながら、携帯機らしい遊び方とボリュームに調整されたタイトルだ。そのために、他機種に移植されていないという点が惜しまれてならない。
2020年以降、Nintendo Switch向けに、ネオジオポケットカラータイトルが『ネオジオポケットカラーセレクション』として復刻されている。しかし残念ながら、本稿執筆時点で『伝説のオウガバトル外伝 ~ゼノビアの皇子~』が復刻される予定はない。
「オウガバトルサーガ」は全体の構想として、エピソード8で完結することが予告されていた。
エピソード5・6・7はそれぞれ『伝説のオウガバトル』、『オウガバトル64』、『タクティクスオウガ』として発売されており、エピソード5より少し前の時系列を扱ったタイトルとして『伝説のオウガバトル外伝 ~ゼノビアの皇子~』と『タクティクスオウガ外伝』が存在するが、その他のエピソードは未だ語られていない。
本稿執筆時点で、「オウガバトルサーガ」の知的財産権はスクウェア・エニックスが所有している。未発表のエピソードがこの先どうなるのか、今後も注目していきたい。