言葉にできない…。
セットリスト、アニメ本編やMVを使用した映像、夢の舞台を再現したステージ。演出。完璧に仕上がっていた演者たち。
本当にこの場に参加できてよかった。お世辞抜きにこれまで見てきた中で5本の指に入るほど素晴らしいライブだった。
やはり「シャインポスト」は最高の作品である。
2023年3月11日、中野サンプラザで「シャインポストTINGS LIVE JOURNEY ep.02 “Re-Live” with HY:RAIN & HOTARU」が開催された。
2022年に放送されたTVアニメ「シャインポスト」の劇中で目標(満員にできなかったらユニット解散)のステージとされていたのが、中野サンプラザ。
そんな作品にとって、“聖地”とも言える場所でのライブイベントが現実ではどうなったのか。
早々にチケットは完売。フルハウス。札止めで実施されることとなった。こりゃ凄い。
それだけTVアニメ「シャインポスト」が素晴らしいものだったという証明だろう。
まだ、アニメを見ていない方はこちらをチェックして欲しい。
そんなプラチナチケットとも言える場所に足を運ぶことができるのだから、気を引き締めつつ、しっかりと公演の模様を届けるのが責務というものである。
文/川野優希
※本レポートはライブのテーマである“追体験”という性質上、TVアニメ「シャインポスト」のネタバレが多分に含まれます。最高のアニメなので未視聴の方は視聴を済ませてからご一読をお願いします
期待値がヤバすぎて、数日前からアルバムを聴き込む
今回のイベントに出演するのは、「シャインポスト」の主人公ユニット「TINGS」とライバルユニットである「HY:RAIN」。そして、螢(CV.大橋彩香氏)。そう、螢さんだ。
まず、この座組がアニメを視聴した人間からするとヤバい。あぁ、来たか…この組み合わせが…という感じである。
螢は「シャインポスト」の中で“絶対アイドル”と呼ばれる超カリスマ的な存在だ。登場人物の多くが彼女に憧れ、アイドルを目指している。そんな存在。
TVアニメの1話も彼女のステージシーンからはじまる(というか適宜このライブシーンは繰り返し、それぞれのキャラの視点で描かれることとなる)。
つまり、恐らくではあるがこの曲「Sweet Surrender」からライブは始まるのではないか?と予想と妄想が膨らむのである。それはもうパンパンに。
前談ということで、中野サンプラザへと向かう道すがらにここの文章を書いているのだが、今から楽しみで仕方ない。
さらに先日、「HY:RAIN」も新曲のMVを発表。
エッジの効いたアレンジで、この曲がまた素晴らしい。
さらに、前回のライブイベントでは「Misty=Missing You」のリリックビデオが初お披露目となったが、今回は生パフォーマンスが披露される可能性もあり、期待が十分。
もちろん、「TINGS」に関しても、いよいよTVアニメの楽曲が生で聴ける(見れる)ということで、もう流石に豪華過ぎる。
「一歩前ノセカイ」、「Yellow Rose」、「On Your Mark!!」。
TVアニメ視聴後、感動成分が強くなった「Be Your Light!!」だって待っている。
TVアニメ「シャインポスト」のOP曲「ワンダー・スターター」、ED曲「パレットガールズ」まで加えると初お披露目の曲が何曲あるのかと面を食らう。
そして、逆転満塁サヨナラダメ押しの一曲まで事前に発表された。
こちらはゲーム版のテーマ曲『LOOK AT ME!!』のリリックビデオである。
ユニットの垣根を超えたオールスター楽曲。イントロから名曲だと分かるのが凄いというかもうズルい。
劇的過ぎるライブになることは間違いない。そんな想像をしていたら、中野サンプラザに到着した。
ちょっと前段が長くなってしまったが、少しでも「シャインポスト」のファンはこんな気持ちでライブへ足を運んだのだと、伝わってくれるとありがたい。
当日の出演者はこちら
鈴代紗弓(青天国春役)
蟹沢萌子(玉城杏夏役)
夏吉ゆうこ(聖舞理王役)
長谷川里桃(祇園寺雪音役)
中川梨花(伊藤紅葉役)
芹澤 優(黒金 蓮役)
高瀬くるみ(唐林青葉役)
久保田未夢(唐林絃葉役)
高柳知葉(氷海菜花役)
香里有佐(苗川 柔役)
大橋彩香(螢役)
※敬称略
ライブ開始1分で涙腺に来た
そんなこんなで中野サンプラザ入り。
ステージを見ると、作中の中野サンプラザで描かれていたステージが再現されている。虹色の階段。輝く星々。いきなりニクい演出である。
また、先日、発表された声出しOKの影響もあり、満員御礼札止めの中野サンプラザは完璧に仕上がっていた。高揚感が会場全体を包んでいるというか、非常にいい空気が流れている。
ふむ(既に気持ちはふむ姉さん)。オープニングはどの楽曲から始まるのでしょうか?
暗転した会場で最初に登場したのは、螢(大橋彩香氏)と6人のダンサー。
「さぁ輝こう!」のメッセージから、「Sweet Surrender」がヒットした。
あっ、ヤバい。これはマズい。いきなりブワッと涙腺に来た。
「Sweet Surrender」はTVアニメ「シャインポスト」の1話だけでなく、要所要所で流れた楽曲。そのシーン一気にフラッシュバックしてきた。
あぁ、こりゃ「この人みたいに輝きたいと思う人が続出」するわ。半端じゃない。輝きまくっていた。大橋彩香氏、歌うますぎである。
螢のステージが終わると、「TINGS」の5人が登場。
TVアニメ「シャインポスト」のOPテーマ「ワンダー・スターター」を初披露。
パッと見た瞬間から分かった。
いや、伝わってきた。明らかに僕が以前に見た公演「2022年5月14日に開催されたTINGS LIVE JOURNEY ep.01 ~Departure~ Mini Live Event “Black or White? SPRING BOUT”」よりも「TINGS」の5人が仕上がっている。
振りが揃っている、歌唱が安定しているといった前提ではなく、明らかにユニットとしての魅力が、輝きが増している。
「すげぇ」とマスクの下で溢していたら「TOKYO WATASHI COLLECTION」がスタート。
この曲がまたメチャクチャお洒落。また、中川梨花氏のレスが凄い。まさに爆レスである。
何かこの時点で今日の「TINGS」は半端じゃねぇなと伝わった方も多いと思う。
とにかくステージから伝わってくる感じが凄かった。言葉にするのが難しいのだが、“伝わってくるものがある”としか表現できないのがもどかしい。
MCへを挟み、蟹沢萌子氏がセンターへ。
「おキョーン!!!」
中野サンプラザから大歓声が飛び出した。(トッカさん※玉城杏夏の熱狂的ファンが大量発生し)ピンクのペンライトをガンガンに振って、歌い出しを大声で歌う楽曲がいきなりきた。
「一歩前ノセカイ」だ。
「ワタシノセカイにワタシの声を響かそう
初めて一歩前に 踏み出すよ
みんながくれたこの勇気で」
白状します。この歌い出しを仕事を忘れて、(小声で)歌っておりました。
アニメ本編のギアがさらに一段階上がったのが、同曲でセンターを務める玉城杏夏のお当番回である3、4話からだろう。
誰かと自分を比べて、平凡な才能しかないと“我慢していた”玉城杏夏に対して、「アイドルは正しいことをやるんじゃない。やりたいことをやるんだ」と伝えたマネージャー。
そこから勇気を出して、失敗した経験から避けていた「一歩前ノセカイ」に挑戦した玉城杏夏。
その目の前にはトッカさん。
ステージのスクリーンでもあの名シーンが映し出され、完全にフラッシュバックする構成になっていたのが上手い。
玉城杏夏演じる蟹沢萌子氏も素晴らしかった。
パフォーマンス一つひとつの魅せ方が上手いとか表情管理が素晴らしいとか色々あるが、シンプルに目を奪われる。誰かの特別になれる人なのだなぁと素直に感じた。改めて「一歩前ノセカイ」本当によかった。泣けた(直で打たれてたら失神していたのは間違いない)。
続いて、聖舞理王のセンター曲「Yellow Rose」へ。
イントロがヒットした瞬間、こちらもアニメの映像がフラッシュバックした。
思えば、TVアニメ「シャインポスト」を見ていて、最も泣いたシーンは、聖舞理王が「Yellow Rose」を池袋サンシャイン噴水広場で歌った第6話だった。
メンバーの足を引っ張ってはいけないと、健気にメンバーの見えないところで努力を重ねていた聖舞理王。
そんな彼女の真の実力(圧倒的な歌唱力)を知っているからこそ、自信を持ってセンターを任せた青天国春と玉城杏夏。
同じステージに立っていなくとも「理王、やれるはずだ」と祇園寺雪音。
「いけ…りおたん」と彼女を信じる伊藤紅葉。
そして、「見せてやれ、理王」と呟く俺(アニメ本編はマネージャー)。
歌い出しの「高い塔から」が響いた瞬間に「うっま…」と息を呑む。
「Yellow Rose」がここまで多くの感動を生んだのは、夏吉ゆうこ氏の歌唱力による影響がかなり大きい。
アニメのシーンにしても「普通に上手いレベル」では、視聴者は納得しない。
今までダメダメだった聖舞理王の本気を1コーラスで伝えなければならないためだ。
テレビを前にして、あの時もこう思った「うめぇ…」と。
そして、この日のアレンジも「あぁ、こう来たか」と首を何度も縦に振りまくるものだった。
アルバムに収録されたバージョンではなく、聖舞理王が1番のAメロ、Bメロ、サビまでをメインで歌い上げるアニメバージョンで披露されたのだ。
さらに2番のBメロも印象的だった。メンバーソロのパートでセンターの夏吉ゆうこ氏がそれぞれの顔を見つめる。こういうのに弱い。
ただシンプルに、ただ純粋に感動した。
物語と音楽の融合。これこそが「シャインポスト」のようなIPの特徴であり、ストロングポイントである。
感動のエピソードを経て流れた楽曲は、想い出に刻まれ、名曲として記憶に残る。
今回のライブでも特にこの2曲を楽しみにしていた方も多いと思う。
とにかく言葉にならないほどの感動が中野サンプラザを包んだ…と思ったら再び螢が登場。
ノスタルジック感と中毒性の魔曲「前奏曲」を歌い上げた。2回目になるが大橋彩香氏マジで歌が上手い。こりゃ絶対アイドルだわと誰しも納得するステージに感無量となった。
が、まだライブはここからが本番だった。
「HY:RAIN」劇場
螢のステージが終わると、本日の出演者がTVアニメ「シャインポスト」で印象的だったエピソードを語るコーナーに突入。
セレクトしたシーンを螢役の大橋彩香氏に評価してもらい、輝いているとジャッジされた「輝いてるよ♪」と有り難いお言葉をいただくというもの。一方で、輝かないと判断されたら「せっぷく」の一言(ご褒美)が待っている。
昼夜公演合わせて10のエピソードが公開されたが、「せっぷく」に処されたのは、芹澤優氏のみだった。
トークコーナーが終わると、再び「TINGS」のパフォーマンスへ。
まずは、「Snow Leaves」。“ゆきもじ”こと祇園寺雪音と伊藤紅葉のメイン曲だ。
2022年10月26日にリリースされた「SHINEPOST Character Song Collection」があまりに名盤なため、こっちばかりリピートして聴いてしまいがちだが、「Snow Leaves」も相当な良曲である。
この曲、何がいいかと言えばまず歌詞がいい。TVアニメのストーリーを経て、祇園寺雪音と伊藤紅葉の心情がハッキリと分かるようになった。だからこそ、歌詞が染みるのである。
切ない歌詞とそんな心情を吹っ切るかのような疾走感のあるアレンジが堪らない。
祇園寺雪音を演じる長谷川里桃氏についても触れておこう。
高身長で細く長い手足。背筋がしっかりと伸び、凛とした雰囲気も相まってカッコいい役がハマる長谷川里桃氏であるが、その内面は明らかに可愛い女の子だったりする。
数多くの舞台経験に裏打ちされた表現力は、センターに立っていなくとも思わず目を引く。
祇園寺雪音がアイドルとして活動するにあたり、自分を演じているという一面が明らかになり、完全なハマり役であることが証明された。
パフォーマンス中はかっこよく、MCでは味わい深いコメントを出す(かわいい)。そんなギャップが非常に魅力的だ。
また、中川梨花氏については、とにかく笑顔のパワーが凄い。前回のステージを見た時から印象的だったが、今回もとにかくその点が印象に残った。
彼女がどんな気持ちでステージに立っていたのかはこちらのブログをお目通しいただきたい。
続いて、玉城杏夏と聖舞理王のメイン曲「Life goes on!」で大きく盛り上がった後は、MCを挟み、青天国春のメイン曲「春風に乗って」を披露。
そして、いよいよ「TINGS」最強のライバルである「HY:RAIN」が登場した。
まずは、新曲「Rain of BulletsXX」。続いて、前回のライブではリリックビデオがサプライズ公開された「Misty=Missing You」を披露。
「TINGS」のステージが“何かが伝わってくる”ものだとしたら、「HY:RAIN」のパフォーマンスは圧巻という言葉が一番しっくり来る。ここまで歌って踊る声優ユニットが他にあるか?と思わせてしまうほどに高難度の振り付けをしっかりと合わせてくる。
2曲のパフォーマンスを終えると芹澤優氏が「皆んなもきっと大好きな曲です」と前振りし、「GYB!!」へ。
「GYB!!」。
初披露された時と楽曲の意味が分かった時でこれほど印象が変わった曲も珍しい。
「HY:RAIN」はメンバーの頭文字を取ったユニット名で、頭文字は「H」。春の「H」だ。
彼女を取り戻すという意味での「Get You Back!!」だったのだ。
こちらのエピソードについては、先日公開した記事にも記載したので、お時間がある方は目を通して欲しい。
「HY:RAIN」のパフォーマンスは、“最強のライバル”というか強すぎねぇか?という印象が強く残っている。とにかく圧倒されて、凄いものを見たというのが翌日になっても全く消えない。
パフォーマンスの後半にはダンサーも登場し、まさにド迫力。
とんでもないものを見たのでいったん落ち着きたい…そんな油断すら許さなかったのが、今回のライブの凄いところだ。
普通に考えると、再度「TINGS」が登場し、感想などのMCを挟むところだが、ダイレクトにつなげてきた。
TVアニメ「シャインポスト」の最終回で披露された新衣装に身を包んだ「TINGS」が登場すると、「Be Your Light!!」のイントロが鳴り響いた。
2021年10月26日に開催された「シャインポスト」の発表会で初披露となった楽曲。この楽曲もアニメの放送を経て、全然受け取り方が変わるものとなった。
真の実力を隠してアイドル活動していた“アイドルの天才”青天国春。そんな彼女に対して、本気を出して欲しい、出せる自分になるのだとユニットを離脱した祇園寺雪音と伊藤紅葉の2人。
そんな彼女たちが改めて5人に戻り、「TiNgS」ではなく、「TINGS」として披露されたのが、はじまりの曲「Be Your Light!!」だった。
この日のライブは全てがよかったのだが、ハイライトを聞かれると、ここだったと僕は答える。
お披露目イベントから数えて、501日。「TINGS」としては、一番大きなステージであり、約束の地である中野サンプラザでのパフォーマンス。さらに声援あり。
これでアガらないわけがない。「Go!Go!Go!」と観客席から鳴り響く度に「うぉぉ」と声が漏れた。そんな客席からのパワーを受け取って、さらにテンションが上がった「TINGS」のパフォーマンスは本当に比類ないものだったと思う。
鈴代紗弓氏が歌詞の「行くよ!」とメンバー、そしてファンに問いかけるように歌い上げる。これがリアル・青天国春か。勿論、夏吉ゆうこ氏のコーラスも堪らない。
さらにノンストップでアニメ最終回で初披露された青天国春と玉城杏夏のツートップ曲「On Your Mark!!」へ。
黒金蓮の登場により、改めて「自分」の壁に気付かされたおキョン。そんな彼女がハルの横に並び立ち、蓮を納得させたのがこの曲だ。
清々しい雰囲気のアイドルソング。歌詞中にも「ここが 本当のスタートラインさ」とあるように、「TINGS」が、そして「シャインポスト」という作品が「ここからも続いていく」ことを表現したような一曲である。
アニメ本編の最終回「TINGSは<<輝かない>>」で披露された楽曲が終わり、ライブ本編は終了。
ここまで約1時間40分。「この日のファンは<<満足した>>」に違いない。