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令和史上に残るアイドルアニメ「シャインポスト」のBlu-rayが発売されたので、改めてその素晴らしさを語りたい

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 「シャインポスト」という傑作アニメが2022年の夏に放送された。

 一言で言うとアイドルアニメ。数多くのアイドル作品が生まれた後で誕生した作品だが、その作り込みが素晴らしいの一言に尽きた。

 放送後の結果だけを見ると、覇権アニメ……というほどではなかったが、視聴者の心に残る名作だったのは間違いない。少なくとも僕はドハマリして、何度もアニメを見返した。

 年間約200本という数のアニメ作品が生まれていく中で、「2022年の一本を選んで?」と聞かれたら、僕は「シャインポスト」と答える。それくらいには名作だった。

 そんな気持ちをただただ、伝えたくて放送中、こんな記事を書いた。

 作画や演出、キラキラとした世界よりも、登場人物の影を描く物語性。その素晴らし過ぎる作品を見た感想をネタバレせずに、これでもかと綴った結果、幸運なことに一定以上の反響があった。

 その後、「シャインポスト」は最終回を迎え、2022年10月にテレビアニメの放送は終了。最後まで楽しませてくれた作品として、僕の心のアルバムに刻まれたのだった。

 アニメが終わった後は、2023年3月11日に中野サンプラザで開催されるライブ「シャインポストTINGS LIVE JOURNEY ep.02 “Re-Live” with HY:RAIN & HOTARU」や現在開発中のスマホゲーム「シャインポスト Be Your アイドル!」のリリースを楽しみに待つ日々。

 そんな中、電ファミ宛に1通のメールが届いた。

 「Blu-rayが発売するので、もう一度「シャインポスト」について書いていただけないか」、と。

 電ファミでは営業として稼働している自分としては、大変嬉しい話。光栄過ぎるお話である。ただ、あの記事の次を書いて欲しいというのは自分の中で高過ぎるハードルでもあった。それくらい熱量と気合を込めた記事だったためだ。

 しょうもない記事を書こうものなら「切腹」。それくらいは覚悟しないといけない。

 ビビるし、書き尽くした感もある。次に何を書けばいいのか正直、浮かばない。

 そんな気持ちとは裏腹にもう一度「シャインポスト」について好きに書けるチャンスが与えられたのは嬉しい話である。

(前回は勝手に執筆したものだったが)今回のお題は「シャインポスト」のBlu-ray BOXが沢山の方に届くことを目的に書く。

 恐らく「シャインポスト」を未視聴の方が、今回のBlu-ray BOXを手に取る可能性はかなり薄い。つまり、「シャインポスト」を見た方が対象となるのは間違いない。

 この前提で、改めてテレビアニメ「シャインポスト」の魅力について考えてみたい。

 なので、上記した記事では、一切ネタバレを書かなかったが、今回は少々その点にも触れていくこととする。

文/川野優希


人はなぜ、Blu-ray BOXを購入するのか?

 本題に入る前に、なぜ人は令和に突入してもBlu-ray BOXを購入するのか。この点について触れておきたい。

 90年代や00年代の円盤文化から、サブスク配信のサービスが主流となってきた。

 アニメを視聴しようと思えば、各配信サービスで手軽に見ることができる。録画失敗……というあのショックと向き合う必要もない。いい時代だ。

 そんな状況で、Blu-ray BOXを購入する理由とは何か。このお題について向き合いたい。

 特定のサブスク配信サービスは「配信が終わる」可能性がある。

 これは一つの理由だろう。事実、僕もサブスク配信が終了した海外ドラマのBlu-ray BOXを購入したことがある。

 ただ、配信が終わったから購入したのか?と考えると、ちょっと違う気もする。

 どこかで買うタイミングを探していた。そんな気もするのである。というか、どうしても見たくなったらレンタルすればいい。

 今回、「シャインポスト」の記事についてオファーをいただいてからずっと考えていた。

 今、Blu-ray BOXを購入する理由は何だ?と。

 僕の中での結論はそのコンテンツの「ファンクラブ」に入るようなものであり、2期への期待を届けるための行動であり、素晴らしい作品を手掛けてくれたクリエイターや役者への感謝の気持ちを表すものだと思った。

 最高のアニメを作ってくださった方への敬意。Blu-ray BOXを購入するというのは、言葉だけでは表現できない感謝の気持ちを伝えることなのである。

※映画を見終わった後にパンフレットやグッズ、円盤を思わず買ってしまうことに近いかもしれない

 修正カットや映像特典を楽しむのもよし。インテリアとして、自室の一等地にBlu-ray BOXを飾るのもよし。

 最高の作品である「シャインポスト」。その今後を応援する気持ちを高める一つのアイテムとして、今回のシャインポストBlu-ray BOX1・2を手にとってみるのはどうだろう。

王道アイドルアニメの中にあった唯一の幻想

 さて、ここからは改めて、「シャインポスト」について考えてみたい。

 「シャインポスト」の記事を書いて以降、「シャインポスト」がめちゃくちゃ面白い、と友人に布教し続けた。また、記事の評判を見た友人からは、「シャインポストってそんなに面白いの?」と言われることもあった。

 その度に断言してきた。あのアニメはヤバいと。

 ヤバいが一般用語となってから久しいが、もう少し噛み砕いて考えてみたい。

 前述した通り、今回の読者は「シャインポスト」を恐らく見ているはず。なので、軽めなネタバレは共感のポイントだと信じ、前回書けなかったことを書いていく。

 僕が一番最初に「お?」と思ったのはこの設定だ。

 「TINGS」のマネージャー・日生 直輝は「人の嘘が分かる能力」を持っている。嘘を付いている人が輝いて見えるのである。リアル人間嘘発見器。圧倒的なチート能力だ。

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(画像は「シャインポスト」アニメ公式サイトより)

 「シャインポスト」はリアリティ路線の作品。この嘘を見抜く能力がなければ、超王道のアイドルアニメだ。

 ただ、この「嘘が分かる」という唯一のフィクションが、物語を大きく動かすファクターとなっている。

 例えば、第1話「青天国春は《輝かない》」

 「TiNgS」は所属事務所の社長に3ヶ月後のコンサートで中野サンプラザを満員にできなければ、解散を宣告された危機的状況。その状況を打破するために、日生直輝をマネージャーとして迎えようと必死になっているシーン。

 そんな「TiNgS」の3人へ、日生直輝はこんな質問を投げかけた。

 「一つ聞いてもいいかな?君たちはどんなアイドルになりたい?どんな夢を持っているんだい」と。

 その直後に「絶対に嘘はつかないでくれよ?」と伝えたものの、メンバーのうち2人、玉城杏夏と聖舞理王は光り輝いた。

 つまり、嘘をついた。

 ここが最初に「おぉ」となったポイントである。人間っぽいなぁと。

 人は本音と建前を持って生きている。絶対に嘘をつかないで欲しいと言われても、目標一つ本音を言うことができない。

 玉城杏夏と聖舞理王には何かがある。そうじゃなければ、夢や目標を聞かれて、嘘をつく必要もないのだ。ここからどんな物語が展開されていくのか楽しみになると同時に、自分のことで考えても思い浮かぶことがあった。

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(画像は「シャインポスト」アニメ公式サイトより)

 もう10年くらい前になるのか。サラリーマンとして、ある程度大きな組織で働いていた時のことだ。

 その会社は定期的に目標を聞いてきた。この3ヶ月や1年でどんなことを目標に設定し、何を成し遂げるのか?ドキュメントを記入して、マネージャーに提出する。それがルールだった。

 当時、それが非常に苦痛だった。「目標なんて、ないぞ」と。

 正確にはその部署での目標をあまり思い浮かべることができなかったのである。本音を言えば、ぜんぜん違うことをやってみたいと思っていたのだが、そんなことを上司に伝えれば、部署異動の希望あるいは退職したいと思われても不思議じゃない。

 なので、いつも「嘘」を書いた。こんな感じでいいや?と。その嘘はバレなかった。

 創作の話を現実に持ち込むのも少し違うと思うのだが、もしも「嘘を見抜く能力」を持った上司で、その嘘を指摘されたらどうなるのか。

 正直、怖いと思うだろう。「この人なんなの? 心の中を見透かしてきて、怖い」と。

 この「嘘をついている人が輝いて見える」という能力が面白いのは、嘘が分かるだけで、心が読めるわけでもなければ、本音が分かるわけでもないことだ。

 本心と違うことを言ってることだけは分かっても、心の中で本当に思っていることは、本人から喋ってもらうしかないのである。

 結果、玉城杏夏と聖舞理王は自分の本当の気持ちと向き合い、壁にぶつかりながらも乗り越えた。

 じゃあ、唯一輝かなかった青天国春はどうなのか?というと、あなたがご存知の通り、これが後半の物語で効いてきた。

 また、2人組のデュオ“ゆきもじ”として序盤から登場してきた祇園寺雪音と伊藤紅葉。この2人が物語に大きく絡んできたことで“本当の青天国春”が明らかになった。

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(画像は「シャインポスト」アニメ公式サイトより)

 嘘はついてない。嘘はついていないが、本音で生きている訳でもなかった。

 これまで自分の壁、弱点を描いてきた「シャインポスト」だったが、青天国春がメインのストーリーでは、才能があり過ぎる人間の苦悩を描いた。

 努力を努力と感じずに練習をし続けられる才能。アイドルとしての天性の才能。

 そんな“化け物”と一緒に活動しなければならなかったのが、青天国春がかつて在籍していたアイドルグループ「HY:RAIN(ハイレイン)」のメンバーたちだった。

 特に青天国春の才能に当てられたのが、幼馴染である黒金蓮。まぁ、一言でいうなら、僕の「シャインポスト」の推しキャラである。

 “Spring”パーカーを身にまとう黒金蓮という存在

 青天国春が本当の意味で、「TINGS」の一員となった第9話「青天国春は《信じない》」。この次の話でいよいよ本格的に登場したのが「HY:RAIN」の黒金蓮である。

 要所要所で物語に登場し、クールなキャラという印象があった黒金蓮だが、これがまた想像の斜め上の拗らせた存在として「TINGS」の前に姿を現した。

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(画像は「シャインポスト」アニメ公式サイトより)

 まず、着用しているパーカーからヤバい。アメリカの人気ブランド「シュプリーム」にインスパイアを受けたかのようなデザインでデカデカとプリントされていた文字は「Spring」

 青天国“春”を意識したとしか思えないパーカーを身にまとい、青天国春を「TINGS」から「HY:RAIN」へと取り戻しにきた。事務所同士の話し合いなどすっ飛ばし、メンバーが他のグループのメンバーに直談判だ。

 そこで口にした言葉は「時が来た」

 「…ぷっ」と吹き出す未来の“黒のカリスマ”の顔が浮かびつつ、破壊王・橋本真也氏を彷彿とさせる迷言を連発。思わず「それだけだ」と付け加えたくなってしまう。

 青天国春以外に興味なし。バックダンサー、添え物だとバッサリ。

 まさか、青天国春以外は眼中になしという、ちょい病んだキャラクターだと誰が想像できただろうか(髪型も以前の青天国春を意識したもの)。

 そして、その直後、「TINGS」は彼女に続いて登場した「HY:RAIN」のコンサートシーンを見ることとなる。

 少し話は逸れるが、現在の再生数は27万。第一弾PV、視聴者をぶち抜いた第6話EDの「Yellow Rose」に続く数字を記録している。

 まぁ、このライブシーンがとんでもないのだ。

 前回の記事でがっつり書いたので、本稿では触れてこなかったが、「シャインポスト」最大の魅力は超絶作画である。

 「TINGS」のライブシーンでは、それぞれのキャラクターの上手さを描き分けていた一方で、「HY:RAIN」ではとんでもないパフォーマンスであることを作画と演出で描ききった。

 多分、僕が今まで見たアニメのライブシーンで一番繰り返し見たのが「GYB!!」だ。それくらいにこのライブシーンは凄まじかった。アニメーター、各スタッフの実力をこれまでかと見せつけられたような気持ちになる。とにかくとんでもないので、永久保存版として、手元に置いておくのもいいと思う。

 また、「GYB!!」のライブシーン映像ではなく、PVは「HY:RAIN」が本格的に登場する以前に公開されていた。

 だが、このタイミングで「GYB!!」を聴くと、ぜんぜん違う印象になる。

 黒金蓮(HY:RAIN)が青天国春を取り戻す。そんな彼女の健気で譲れない気持ちを歌った曲が「GYB!!」だったのだ。

 そもそも、「TINGS」がメンバーの頭文字であるように、「HY:RAIN」もメンバーの頭文字を取ったユニット名となっている。

H 青天国 春(なばため はる)
Y 苗川 柔(なえかわ やわら)

R 黒金 蓮(くろがね れん)
A 唐林 青葉(からばやし あおば)
I 唐林 絃葉(からばやし いとは)
N 氷海 菜花(ひうみ なのか)

 天才・青天国春と同じステージに立つために、全力を尽くして自分を鍛え直した彼女を納得させる。

 TVアニメ「シャインポスト」最終回への展開は、実はポンコツで愛されどころの多い黒金蓮を中心に回っていった。

サブタイトルの妙技

 「シャインポスト」のサブタイトルは、キャラクター名と《》で括られた言葉で構成されていた。

 これは小説版を読んでいる方は分かりやすいと思うが、《》内の言葉は嘘を現している。

 第10話のタイトルは、黒金蓮は《戻りたい》。

 黒金蓮は青天国春とあの頃の二人に戻りたいのではなく、新しい自分(たち)ともう一度、夢を一緒に追いかけたい。これが本音だったのだろう。

 改めて、サブタイトルだけ並べてみるが、これを元に考えを巡らせてみるのも中々、面白いのでオススメである。

第1話 青天国春は《輝かない》
第2話 青天国春は《不安定》
第3話 《引き立て役》の玉城杏夏
第4話 玉城杏夏は《目立たない》
第5話 《我侭》な聖舞理王
第6話 聖舞理王は《褒められたい》
第7話 伊藤紅葉は《戻らない》
第8話 祇園寺雪音は《許せない》
第9話 青天国春は《信じない》
第10話 黒金蓮は《戻りたい》
第11話 玉城杏夏は《挫けない》
第12話 TINGSは《輝かない》

※第12話のタイトルが《輝かない》になっているのが、何とも堪らない

Blu-ray BOXが手元に来た

 さて、ここまで「シャインポスト」について書いてきたが、ここからはBlu-ray BOXについて触れていきたい。

 今回の記事を書くにあたって、「シャインポスト」のBlu-rayをPC上で流している。記事を書きながらアニメも右側のディスプレイで流れている。

 DISC1が終了。DISCを入れ替えるかと、メニュー画面を見ると、オーディオコメンタリー ON/OFFの文字があった。そう、Blu-ray特典として、鈴代紗弓さん(青天国春役)、蟹沢萌子さん(玉城杏夏役)、夏吉ゆうこさん(聖舞理王)のオーディオコメンタリーがあったことを忘れていた。

 ある意味で2周目に早速突入。アニメ本編の想い出やそれぞれの役について話すだけでなく、超絶脱線した話も飛び出していた。

 この3名の特徴をいうと、声優を主として活躍している鈴代紗弓さん、夏吉ゆうこさんに対して、蟹沢萌子さんは普段アイドルとして活動している。

 声優の難しさや現場で緊張していた頃の話は、確かに違う現場に来るとそうだよなぁと感じさせるものだった。

 そんな話を聞きながら第1話を見ていると、また違った印象を受けた。

 続いて、Blu-ray BOX2の第12話にもオーディオコメンタリー長谷川里桃さん(祇園寺 雪音役)、中川梨花さん(伊藤 紅葉役)、 芹澤優さん(黒金 蓮役)が登場。

 こちらは芹澤優さんが、舞台を中心に活躍している長谷川里桃さんとタレント活動も多い中川梨花さんの2人を引っ張る形で様々なトークを展開していた。

 最終回を見ながら役者の話を聞ける体験はやっぱりいい。これを見るために、Blu-ray BOXを手にとって欲しいレベルで見応え、聞き応えがある内容となっていた。

ファンの存在

 最後に。僕が「シャインポスト」でいいなぁと思ったのはファンの描き方だった。

 アイドルやアーティストのステージは演者やスタッフだけでは成立しない。

 見て、応援してくれるファンがそこにいるからこそ、最高のコンサートが完成するのだ。

 「シャインポスト」はパフォーマンスの後に必ず客席を映す。この演出が堪らなく好きだ。

 僕自身、現場に足を運んだ時、会場を見渡したり、その歓声で涙腺に来たりする瞬間が数えきれないほどあった。

 こうしたファンの存在もキチンと描いてる。この点も「シャインポスト」が心に残る作品となったひとつの要因だろう。

 また、アニメの細かなこだわり演出については、公式YouTubeチャンネルでショート動画がかなり投稿されているので、改めてチェックいただきたい。

 さて、少しはBlu-ray BOXに興味を持っていただけただろうか。いや、「シャインポスト」について改めて、興味をお持ちいただけただろうか。

 2023年3月11日には、中野サンプラザで「シャインポストTINGS LIVE JOURNEY ep.02 “Re-Live” with HY:RAIN & HOTARU」が実施される。

 そして、その先には待望とも言える「シャインポスト Be Your アイドル!」がリリースされる。

 まだまだ「シャインポスト」は続いていく。

 「シャインポスト」のBlu-ray BOXはBOX1が2023年2月22日(水)、BOX2が3月24日(金)にそれぞれ発売される。

 最高級のアニメグッズとして、2期を期待するための推しグッズとして、手にとっていただければ幸いだ。

 TVアニメ「シャインポスト」の2期にも心から期待しつつ、筆を置きたい。

ライター
宣伝・編集・執筆...色んな仕事をしています、川野優希です。
Twitter:@ougaan21

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