不定形なシナリオを評価するために、さまざまなシナリオの見方をする
最後の質問は「シナリオ職の社内での評価基準を教えてください」というもの。アカツキゲームスからは、まず期日についての説明が行われた。
期日を守るのはもちろんのこと、「自分以外が原因で期日を守れない」というトラブルが起きたときにしっかりと対処できたかが評価につながるという。
また、要件を満たすということも重要で「僕は面白いと思ったので評価してください」は事故につながりかねない、という厳しい意見も。あくまで、企画側やディレクター、他職種のチームが求めていることをしっかり抑えることが、前提としてできていることが評価基準となっているそうだ。
また、社内で「これは良い」と判断されたものに関しては、たとえユーザーからの評価が期待通りではなかったにしても、担当者だけでなくチーム全体の責任として受け止めるため、そのせいで個人の評価が落ちるということはない。
自分だけで抱え込むのではなく周りに相談することもスキルのひとつであるため、人に頼ったからと言って実力がないと判断されることはないそうだ。少しでも理不尽な思いをすることなく、シナリオという不定形なものを何とか適正に評価するための手法が考えられている。
やはりシナリオというものは定量的に測るのが難しいセクションであるため、サイバーエージェントでは半期ごとに目標を立てて評価をしている。繰り返しにはなるが、ユーザーからの評価だけではなく、しっかりとシナリオの良さを見られる人が、技術面を評価できるようにしていくとここでは強調された。
会社に所属してシナリオを書くためにはコミュニケーションも重要
加えて会場からの質疑応答の時間が設けられた。ここでは、「シナリオ職の方を採用する時に与えられる課題と、その評価基準はどのようなものなのか」という質問が投げかけられた。
サイバーエージェントでは新卒採用で何かしらのプロジェクトのシナリオを書いてもらって、それに対して担当の社員がフィードバックをした上で、さらにもう1度書き上げるということをしているそうだ。
執筆技術以外の評価ポイントでいうと、会社で働くシナリオ職は「会社に所属する意味」を見出す必要があるという。
コミュニケーションは大きな要素のひとつであり、他のシナリオ職メンバーであったり他の職種のメンバーと円滑にコミュニケーションをとりながら、もの作りをしていける力が評価される。
他方、アカツキゲームスではシナリオディレクターの課題が例に挙げられた。あえて課題の多いシナリオを渡して、これをどのように直すかの技術を見るのだという。この時に重視される一つが、フィードバックの「語り口」だ。たとえばすべて命令口調のような、あまりにキツい言い方になっていると、シナリオチームで活躍するのは難しいかもしれないとのことだ。
まとめ
今回のトークセッションで語られたテーマはは、まさに「ゲーム会社で働くシナリオライターの仕事術」そのものであった。チームで個々の弱点をカバーしあい、自分の強み・個性を理解して活躍することが重要という話は、大人数でのものづくりの本質とも言えるだろう。
会場に集まったシナリオライターたちは各々で会話を楽しみ、雰囲気も終始良く、これからもこのイベントが盛り上がっていくことは間違いない。シナリオの道40年のベテランが、シナリオライターになりたての人にアドバイスをする場面も見られ、本イベントの目的がしっかりと果たされているという印象を抱いた。
「ゲームのシナリオライター」とひとくちに言っても、コンシューマーからスマホゲームやマーダーミステリー、アニメやライトノベル出身だったりとさまざま。だからこそ、普段は聞くことのできない話や、自分になかった視点を獲得できる機会でもある。
この記事を読んでイベントのことが気になった方は、ぜひ今後参加してみてはいかがだろうか。