3月16日にAbema Towersで開催されたゲームシナリオライター交流会「シナリオ食堂」。本イベントは株式会社サイバーエージェントが主催する「ゲームシナリオ」に携わる方へ向けた業界交流イベントなのだが、当日は想像以上の盛り上がりを見せた。
初開催となる今回は、株式会社サイバーエージェント シナリオユニオンと株式会社アカツキゲームス・シナリオ職(ROOTS)で活躍しているシナリオディレクター、ライターの方々が登壇。彼らのゲームシナリオについてのトークセッションが目玉となっている。
「ゲームシナリオ制作の実務経験がある方」であれば誰でも参加できるということでさまざまな方が集まり、用意されたお寿司やお酒、ジュースを片手に日頃の悩みの相談や、新たなつながりを作るよい機会となった。
今回のイベントは応募の時点で120から130人、会場にも100人を超えるシナリオライターが集まり、主催者たちもこの人数に驚嘆していた。
基本的に個人作業が多いシナリオライター達が一堂に集まる機会。また、シナリオライターとして第一線で活躍している人物からの話を聞ける機会もなかなかないだろう。
現役シナリオライターの方にはもちろん、ゲームシナリオに興味がある方にも貴重な機会となった本イベントの様子をお届けしよう。
※この記事はゲームシナリオの魅力をもっと知ってもらいたいアカツキゲームスさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
そもそもシナリオ職って何をしているの?
まずは、アカツキゲームスのシナリオ職である「ROOTS」について。ROOTSはクリエイティブだけではなくて、マネジメントも重要視しているのが大きな特徴だ。
アカツキゲームスにはシナリオ職がもともと存在していなかったらしく、2017年からシナリオという役職の重要性を伝えるべく有志の活動としてはじまり、その後企画職として公式化、プロジェクト化を経て「シナリオ職」という役職が誕生したとのこと。5年間で成長してきた組織でプロジェクトを横断した形で運営していったそうだ。
「ROOTS」という名前は、シナリオという存在がいろいろなプロジェクトの根幹にあるという重要性を伝えるためにつけられたという。
次は、サイバーエージェントのゲーム・エンターテイメイント事業部(SGE)について。サイバーエージェントのゲーム事業は子会社制をとっていて、10社以上の子会社が各社でゲーム制作をしている。
また、サイバーエージェントにはSGEのシナリオディレクターとライターで創設された「シナリオユニオン」という組織が存在しており、そこではシナリオ職の採用・育成から、各プロジェクトへの協力、プロデューサー向けにシナリオ理解を深める講義、社内用のシナリオバイブル制作などが行われている。
シナリオライティングを他の職種の方に発信する活動であったり、新しく子会社の中で立ち上がる新規タイトルへのサポートであったりと、シナリオに関わる多くの業務のサポートをしている組織になっているそうだ。
リモートワークでも重要なのはチーム間の連携
主催者の紹介を終えると、「シナリオ食堂」参加者からの質疑応答が行われた。
まずは「各社のシナリオ職の働き方を教えてください」というもの。アカツキゲームスからは、仕事環境についての回答が行われた。
アカツキゲームスは任意でのリモートワークが中心になっており、プロジェクトの状況や必要な場合には出社するという形をとっている。コロナが流行した頃に移行を開始したが、そのころちょうど社内で並行してリモートワーク移行の挑戦をしていたおかげで、ネットワークをスムーズに導入できたそうだ。
2020年にアカツキゲームスに入社した内藤遼人氏でも10回ほどしか出社していないというフルリモートぶりで、今回開催されたシナリオ食堂で初めて対面で顔を合わせたメンバーもいるとのこと。ちなみに、この日の内藤氏は杖をついており、久しぶりに外に出ようとした結果、腰を痛めてしまったらしく、フルリモートには運動不足による体の不調といった注意点もあると冗談を交えながら念を押していた。
組織としては、1on1の最小単位でのコミュニケーションも重視している。プロジェクトごとにチームリーダーと1on1、半期ごとに職種リーダーと1on1を行い、アンケートを取って組織の現状を共有しているそうだ。
また、シナリオ職は孤独になりがちなので、そういう時に相談しやすい環境を作るためにノウハウを共有したりオンライン懇談会などを開催したりして、繋がりも意識している。孤独感を和らげたり、各メンバーの発表する場を開催することによって学べる機会も提供でき、一石二鳥だ。
一方でサイバーエージェントはリモートワークの日が決まっているらしく、火・木がリモートの日、月・水・金が出社の日となっている。ただ、必要に応じて仕事に集中するために出社することも自由になっている。
また、横の繋がりという文脈でいうと、子会社ひとつひとつは違う会社ではあるが、一般的な子会社間ほどの距離関係はなく、隣の部署ぐらいの距離感で、常にチャットでコミュニケーションをとることもでき、定期的にミーティングを実施することで情報共有も密に行っている。適材適所の配置転換や異動も柔軟に行われているそうで、分け隔てなく横の繋がりがあるそうだ。
「強み・個性」は誰でもあるから、使いどころこそ重要
次の質問は「活躍している人物像を教えてください」というもの。アカツキゲームスからは、チームでシナリオを作ることの説明から行われた。
昨今のソーシャルゲームのシナリオはものすごい物量となっており、リリース後も常に作り続けなければいけない。新機能の追加などのゲームの仕様の変化によっても書くものが増えていくので、膨大な物量に対抗するためにはチームワークが重要になってくる。なので、同じシナリオライターたちと共に協力して作品を作っていく姿勢が重要視されるそうだ。
また、ソーシャルゲームには大きく分けて自社オリジナルIPものと、漫画作品などを原作とした既存IPものの2種類があるが、どちらも大量のインプットがどうしても必要になる。他社から預かったIPやファンの期待を裏切らないためにも、長年続く物語や多数のキャラクターに対する愛情やモチベーションを忘れてはいけない。
最後に、チームワークを活かす方法が語られた。チームメンバーはみなが同じ能力を持っているというよりも、各々が何かひとつ強みを持っていると認識するべきだ。そうすることで、個々の強みや個性を活かすタイミングが見えてくる。
「弱み」というものは会社の中のチームでサポートすることによって解決できるため、それよりも「強み・個性」を活かしてチームをけん引することが重要だそうだ。
サイバーエージェントでも、上記に挙げられた3点が活躍している人物像として共通しているとのこと。それに加えて、「いいものを作るために手段を選ばずに動ける人」ほど、活躍しているという。
すなわち、私はこういうものを作りたい、より良いものにしたいと思った時に、自分から動いてほかの子会社の人にヒヤリングできる人、つまり自分の会社やチームだけにとどまらずに、能動的に話を聞きにいける人が印象的に活躍している。さらに、サイバーエージェントの場合は先ほど述べたように、子会社の繋がりがあるため、そのような活動をしやすい環境でもあるという。