人に薦めたくなる“良いもの”とは、何だろうか?
さまざまな観点があると思うが、ひとつは「価格に対して満足度の高いもの」ではないかと思う。
価格を考慮しないのであれば、高級でハイスペックなものが良いのは、ある意味では当たり前である。
自分はそこまで贅沢なものじゃなくてもいいから、必要十分で実用的なものがほしい……。
そんな人のニーズにしっかりと応えてくれるのが、今回紹介する「HyperX Cloud Stinger 2 ワイヤレス」だ。
結論からいうと、快適な装着感と不足のない機能性、聴きやすい音質で、製品価格に対して十二分に満足のいく出来である。
本稿では、そんな「HyperX Cloud Stinger 2 ワイヤレス」の魅力をお伝えしていきたい。
文/Leyvan
快適な装着感とムダのない機能性。PCでもPS5でも使用可能な2.4GHzワイヤレス接続は遅延を感じさせない
まずは外観と装着感から見ていこう。
全体的なデザインはシックな印象であり、「いかにもゲーミング」というような主張のない、いい意味で普通のヘッドセットといった趣だ。
そして、ヘッドセットにとって非常に重要な装着感はとてもいい。
楕円形のイヤーパッドで耳をすっぽりと包み込み、側頭部にかかる側圧も適切な強さでフィットするので、ちょっとやそっとではズレることはない。
軽量なプラスチックが使われており、本体重量は289グラムに収まっているので、長時間使用しても首や肩への負担はあまり感じない。
個人的には、ヘッドホンは300グラムを超えてくると、ジワジワと重さを感じる事が多いが、本機は十分に軽量で、合皮のヘッドクッションとイヤーパッドも接触部との負荷がうまく調整されている。
次に、接続性に関してだが、ワイヤレスモデルの本機は、USBドングルを使用してPCやPS5などのデバイスとの接続を行う。
デバイスとの通信は2.4GHzワイヤレス接続なので、音の遅延は全くといっていいほどに感じない。これはBluetoothヘッドホンにはない、2.4GHzワイヤレスの明確な利点であり、これがゲームプレイにおいてワイヤレスゲーミングヘッドセットが有用である最大のポイントだ。
本体に付属するマイクは、マイクアームを上に上げると自動でマイクがミュートになり、口元に下ろすとスムーズにマイクがオンになる。通話品質は問題なく、風防用のマイクスポンジも付属品として用意されている。
そのほかにも、ワイヤレス製品で気になるのはバッテリーライフだが、満充電から最大20時間連続再生できるので、これも十分な性能といえるだろう。
全方位から迫り来る「ペラペラソース!」と「あ~りえんなぁ!」に囲まれる恐怖!PS5で『バイオハザード RE:4』を遊んでみた
先述したように、本機はPS5でもしっかりとUSBステレオヘッドセットとして認識し、マイク入力も本機のマイクを設定できる。
実際に、PS5と本機を接続して、PS5の本体機能である「3Dオーディオ」を有効にしたうえで『バイオハザード RE:4』をプレイしてみたが、全く問題なく使用できた。
筆者の環境では、普段はテレビの音声出力にはDENONのサウンドバー「DHT-S216」を使用しており、コンソール機で遊ぶときは、基本的にこのサウンドバーを通してプレイしている。
その環境と比べてみると、やはりオーバーヘッド型のヘッドセットで聴く立体音響は、音の位置の「見え方」がまるで違う。
360度、上からも下からも迫り来る「ペラペラソース!」と「あ~りえんなぁ!」に囲まれて、背後から飛んでくる手斧にも、「ウッ!」という掛け声を逃さずにキャッチできるので、画面外からの危険を音だけで事前に察知するということが自然にできる。
このように、3Dアクションやシューターで定位の優れたヘッドホンを使用する強みは、なんといっても「音で索敵ができる」ことにほかならない。
「HyperX Cloud Stinger 2 ワイヤレス」では、そういった音の優位性をしっかりと感じることができた。
音声を聞き取りやすく迫力も十分。長時間のゲームプレイには聴き疲れしない音質がうれしい
次に、装着感や機能性と並んで注目したい音質についても触れていきたい。
筆者が普段、もっとも愛用しているヘッドホンはゼンハイザーの名機「HD25」だが、「HyperX Cloud Stinger 2 ワイヤレス」の音質にがっかりするようなことは無い。
まず、第一に良いと感じたのは、音声が聞き取りやすく、自然に聞こえることだ。人の声はもっとも耳にする音なので、自分の記憶している音との違いに敏感で違和感をおぼえやすい。これが自然に聞こえるかどうかは非常に大きなポイントだ。
音の傾向については、全体的な印象としてはクールな音色で、やや低音域と高音域が持ち上げられたドンシャリ傾向にある。そして、残響が強めで空間的な聴かせ方をするのが本機の特徴だと感じた。
解像度や定位の正しさなどの基本性能は、ワイヤレスであることと価格を考慮すれば十分に良い。
また、個人的にとても嬉しいのは、音量を上げても歯擦音や音声のサ行が耳に刺さるような刺々しさがなく、うまく抑えられている点だ。
筆者の場合、高音に対して敏感で、高音が鋭く、強く出るヘッドホンだと聴き疲れしてしまうこともあるが、本機はそのようなストレスを感じることはなく、長時間使用しても疲労感は少なかった。
長時間の使用が多いゲーミングヘッドセットでは、聴き疲れすることがないかどうかは非常に重要な要素だろう。
それでも、人によっては「ここが気になる」という部分も出てくるかもしれない。そんなときは、「NGENUITY」アプリからイコライザーをオンにして、強すぎると感じる帯域を下げたり、もう少し聞き取りたい帯域を持ち上げて調整するといい。
50mmの大型ドライバーと密閉型ハウジングで、低音域はしっかりと鳴る。残響の強さも相まってコンテンツの迫力と臨場感を高めるサウンドで、空間オーディオにも対応しているので、ゲームだけではなく映画鑑賞にも向いている。
空間オーディオに対応したサウンドは、「DTS ヘッドホン:X」を有効化することで本領発揮
「HyperX Cloud Stinger 2 ワイヤレス」のセールスポイントである空間オーディオについてもお伝えしたい。
Windows PCで本機が対応している空間オーディオ「DTS ヘッドホン:X」の機能を活用したい場合は、「NGENUITY」アプリからドライバをインストールする。次に、「DTS Sound Unbound」アプリをインストールして、機能を有効化する必要がある。
次に、Windows PC「サウンド」設定の「立体音響」の項目から「DTS ヘッドホン:X」を選ぶことで、空間オーディオ機能が有効になる。
もっと空間の広さを体感したい場合は、「Spatial Sound」の項目をオンにすると、音像がぐっと拡張されて、さらに広々とした空間を感じることができる。
ただし、その場合はやや誇張された音の響き方になるので、この設定に関しては、好みや用途に応じて使い分けるといいだろう。
「DTS ヘッドホン:X」を有効にした状態でのサウンドの印象だが、通常のステレオ再生に比べると、鳴り方が一気に「シアターの音」になる。
具体的には、音の距離感が耳元から大きく離れて、頭の周辺を覆うように定位する。そのうえで、空気の振動を感じるような低音が発生源から重く響く。コンテンツが空間オーディオに対応していれば、積極的に利用したいと感じさせる体験だ。
一方で、音の明瞭さ、ステレオ音声のコンテンツを視聴する際のまとまりのよさという面では、やはり通常のステレオ再生に軍配が上がる。これはどちらが絶対的に優れているかではなく、コンテンツに応じて使い分けたい。
必要な性能と機能をハイコストパフォーマンスにまとめた、「使える」ヘッドセット
冒頭に結論として述べたように、「HyperX Cloud Stinger 2 ワイヤレス」は、長時間でも快適な装着感と良好な機能性、耳馴染みの良い音質で、製品価格に対して十二分に満足のいく出来ばえである。
本稿執筆時点でのAmazonの販売価格は15760円で、この価格で手に入るワイヤレスゲーミングヘッドセットとしては、間違いなく「使える」製品だと感じた。
ちょうどいい価格に、ちょうどいいスペックを備えて、これといった不満を感じさせない仕上がりは、手にとった人に大手ゲーミングブランドの製品としての確かな実力と満足感を与えてくれるはずだ。
オーディオが趣味である筆者は、ゲームをプレイする際にさまざまなメーカーのヘッドホンを使っているが、今回の試用で「ゲーミングヘッドセットもいいものだ!」と再認識した次第。
予算が合うのであれば、「HyperX Cloud Stinger 2 ワイヤレス」は数あるゲーミングヘッドセットの中でも、非常に有力な選択肢となるだろう。
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