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魂に響く悪魔的爆音ライブ!『メガテン』シリーズ30年分の熱量を全身全霊でブチかます「真・女神転生 30周年感謝祭 in KT Zepp Yokohama」がスゴすぎた

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 2023年5月5日、KT Zepp Yokohamaはとてつもなく強大な熱気に包まれた。

 それもそのはず、この日は『メガテン』シリーズの熱狂的なファン、“メガテニスト”な人たちが集うリアルイベント「真・女神転生 30周年感謝祭 in KT Zepp Yokohama」が開催されていたのだ。

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 1階と2階の展示コーナーには、大盛況の美術展覧会のような長蛇の列ができて、デモニカスーツのコスプレ(バケツ頭)をした人や、縄印学園の制服柄の洋服を着る人、海外からのメガテニストなど、さまざまな人たちが一堂に会するイベントとなった。

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 イベント1日目に行われた生演奏ライブでは、数あるメガテンシリーズの中から『真・女神転生Ⅲ -NOCTURNE』がフィーチャーされており、今回の取材は同作からメガテンシリーズに触れた筆者が感じたこと、メガテンの思い出などを交えつつ、ライブの模様をお伝えしていく。

 公式ページの開催概要に「※本公演は約3時間を予定しております。」と書かれているのを見て、「そんなに!?」と困惑しながらも、久しぶりのメガテンイベント、久しぶりの生演奏ライブに胸を躍らせて会場内に足を運ぶ。

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 開演時間が迫ると、会場内には「邪教の館~呪縛~」が流れ始めて、なにかの儀式が始まるような妖しい雰囲気が漂う。そして、開演が近いことを知らせるアナウンスが響き渡る。

 「会場が混沌に包まれるまで、しばらくお待ちください……。」

※注意書きとお詫び
 本稿では『真・女神転生Ⅲ -NOCTURNE マニアクス』のネタバレを含みます。また、派生作品である『DIGITAL DEVIL SAGA アバタール・チューナー』の隠しボスについても、一部言及しています。
 『真I』『真II』に関しては、筆者がリアルタイム世代ではないため、拙い知識で書くことは憚られるので、ファンの皆さまには申し訳ないのですが……本稿では割愛させていただきます。

文/Leyvan


歴代戦闘BGMメドレーからの「通常戦闘」で開幕から最大火力

 開演前の僅かな間、会場が静まり返った後、ステージのスクリーンに歴代シリーズの戦闘画面とともに、通常戦闘のBGMがメドレーで流れる。

 『真I』から『真V』まで一通りの映像とBGMが流れると、一寸置いてタンッタンッタンッタンッ、とリズムをとりながら『真III』版「通常戦闘」の生演奏がスタートした。

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 轟雷と爆炎のように鳴り響くギター。地母の晩餐のように足元から突き上げて唸るベース。銀河烈星拳の如く怒涛の勢いで飛び込んでくるドラム。タルカジャをかけるように演奏に広がりや彩りを与えるキーボード。

 会場全体が震える音圧で、耳だけではなく全身で音を浴びる刺激的な音楽体験はライブならではの贅沢だ。

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岩田彬良(Bass / Band Master)

 KT Zepp Yokohamaの会場は客席からステージがそれなりに近いため、2階席のやや後方で聴いていたにもかかわらず、演奏者の表情や指運び、息遣いがしっかりと感じられてパフォーマンスをダイレクトに楽しめる。

 凄い。普段のスマホや音楽プレーヤーで音源を聴くときとは、まるで感じ方が違う。

 生バンド演奏ってこんなにエキサイティングなものだったんだ、と思い出させてくれる圧倒的な迫力。

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岡島俊治(Drums)

 2017年に行われた「真・女神転生シリーズ 楽曲人気投票」で堂々の1位に輝いた「通常戦闘」を1曲目からぶつけてくる構成に、通常版『真III』で鬼畜なバックアタック【※】を仕掛けられて全滅したときのようなインパクトをおみまいされた。

※バックアタック
『真III』で敵に先制攻撃をされたとき、稀に背後から強襲を受ける。マニアクス版ではない通常版の『真III』では、バックアタックされたときの敵の物理攻撃がクリティカルになるという悪魔的仕様だった。背後から襲いかかるモムノフに戦慄したことを今でも忘れない。

『真III』は劇物。衝撃的で、とんでもなく“ワル”なゲーム

 演奏終了後、邪教の館の主のコスをしたMCのマフィア梶田さんと、同じくMCの松澤千晶さんが登場。

 マフィア梶田さんは、初めてプレイしたメガテンの思い出として、「『真III』は劇物。こんなゲームを遊んでいいのかというぐらい、衝撃的なゲームだった。とんでもなく“ワル”なゲームで、正義よりも悪に惹かれる年頃にそんなゲームをやっていたら、こんな大人になってしまった」とコメントした。

 私が初めてプレイしたメガテンも、PlayStation 2版『真・女神転生Ⅲ -NOCTURNE』だ。
 主人公の人修羅とほぼ同じ年頃で多感だった当時の私には、あまりにも刺激が強かった。後に発売されるアトラス作品の『DIGITAL DEVIL SAGA アバタール・チューナー』や、『ペルソナ』シリーズも含めて、多大な影響を受けたのは間違いない。

 人修羅の目線でプレイしていた少年だったのに、今ではヒジリと同じく怪しげな記者になってしまった。そして、大きな業を背負ったヒジリのようにメガテンのイベントを観測して記録するために記事を書いている。

 その後、登壇したアトラスサウンドチームにメガテンシリーズの作曲についてMCが尋ねると、曲名をつけるときは、最初から曲名を考えてから作るのではなく、曲を作ってみてから、「んー、これは池袋!」というように、あとからフィーリングで決めていることが多いという。

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 メガテンの曲名はとてもシンプルながら、どれも印象的で耳に残る。

 トークステージでは、そんなやりとりが交わされた後、再び『真III』の楽曲の演奏が行われる。

 スクリーンには『真III』のタイトルデモ画面が映されて、その後に「東京受胎」の演奏が始まった。

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(画像は真・女神転生III NOCTURNE HD REMASTERより)

 ゲーム冒頭の新宿衛生病院の屋上で、「東京が死ぬ瞬間」の印象的なシーンと演奏が見事にリンクして、会場にいる全員が東京受胎を目の当たりにしたような体験をする。

 ステージ上部に輝くライトが、まるでカグツチのように眩く見える。

 ドクン、ドクンと響く低音が鼓動のように身体中を駆け巡る。

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曲を聴くと喚び起こされる戦いの記憶。「マタドール先生」や「チンパト」の思い出が浮かぶ

 東京受胎が終わると、「魔人」の演奏に移り、会場は一転して「とてつもなく恐ろしい雰囲気」に包まれた。

 マニアクス版でプレイヤーを苦しめた手強い魔人たち。その中でも一際印象に残っているのは、やはり最初に出会う魔人マタドールだ。

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 『真III』の戦闘システムでは、きわめて重要な命中率と回避率を一気に最大まで高める「赤のカポーテ」を使用して、こちらの攻撃を避けながら全体攻撃スキル「血のアンダルシア」を繰り出す強敵で、作中でも最難関といえるかもしれない。

 あまりにも強く、補助スキルの重ねがけや敵味方の強化・弱体効果の打ち消し、属性攻撃スキルへの対策等など、プレスターンバトルにおける強敵との戦い方をスパルタ式に教えてくれる。

 そんなマタドール先生の授業を乗り越えるために、ギンザ大地下道にてファイアブレスでイソラ焼きをしてレベル上げに明け暮れたことを思い出す……。

 続いて、「通常戦闘〜大マップ〜」のイントロが流れると、会場からワァー!と大きな歓声があがった。

 この曲を聴くと、妖獣チンの群れに「羽ばたき」を連発されて全滅したとき(俗称、「チンパト」【※】)のことで頭がいっぱいになる。

※チンパト
ファンの間では、『真III』で敵にやられて全滅することを「パトる」と表現する。語源はゲームオーバーになったときの画面演出が、名作アニメ『フランダースの犬』でネロとパトラッシュが天使に連れて行かれるシーンのように見えることから。またセーブポイントからか……もう疲れたよ……。

 そして、やはりスクリーンには狙いすましたように妖獣チンがバッチリと流れる。

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 これまではとても静かに演奏を聴いていた観客が一気に沸き上がり、その後の「タイトルループ2」の演奏で、会場の熱気は最高潮に達した。

「東京」が流れた瞬間に、ガラリと空気が変わる

 『真・女神転生IV』の大マップ画面で流れる楽曲「東京」の演奏では、直前の「タイトルループ2」の演奏とは対照的に、メロウな曲調でゆったりとしたムードで包み込まれる。

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本間大健(Guitar)

 この曲を聴くと、東のミカド国から旅立ち、ナラクを抜けて、はじめて東京の地に降り立ったときに、「いつものメガテンが始まった……!」と息を呑んだことを思い出す。

 これまでの常識が、今までは「こういうものだ」と思っていた認識が覆される感覚。

 メガテンシリーズをプレイしていると度々そんな感覚を味わうが、このメガテンライブでも、たった1曲の演奏で場の空気が塗り替えられる感覚や、「聞き慣れたBGMが生演奏だとこんな風になるのか!」と、認識が変わる瞬間を何度も味わえる。

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藪野遥佳(Key.)

 その後は続けざまに戦闘曲の「Battle-a2」、「Battle-b2」、「Battle-c5」と激しい演奏が繰り広げられて、『真III』の楽曲に勝るとも劣らないカッコよさと会場の盛り上がりに思わず「ニヤリ」と笑みがこぼれた。

 ここでライブ前半が終了して、15分間の休憩を挟む。このライブは約3時間の長丁場で、「まだ半分近くもあるの?!」という気持ちと、「もう半分終わったのか」という気持ちが同時に押し寄せる不思議な体験だった。

 LaiD Back Devilの熱い演奏と会場の熱狂の中にいると、時間があっという間に過ぎていく。

ハイテンションでアッパーな“神殺し”の楽曲たち

 ライブ後半は『真・女神転生IV FINAL』の演奏から始まった。

 「ラージマップ」は、前作の「東京」よりも明るく伸びやかで、どこまでも強く、神をも超えるほどに強くなって前へ前へと突き進んでいく主人公のナナシ(デフォルトネーム)のようにアグレッシヴな印象を受ける。

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田島岳(Key.)

 この曲調の変化は戦闘曲においても感じられて、「Battle-f1(通常戦闘)」や「Battle-f2(中ボス戦闘)」、最後に演奏された「Battle-f4 多神連合」でもアッパーな気持ちにさせられる。

 ゲーム内容においても、『真IV F』『真IV』からベースシステムを受け継ぎながら、より遊びやすく、刺激的な戦闘を楽しめるようアッパーに調整されており、スリリングながらも進めやすいゲームバランスが絶妙だった。

 個人的には、推し悪魔の天使エンジェルがゲーム終盤でカラーリング違いの強化版(下級天使なのにLv82!)になって登場したことが嬉しくて、せっせと強化しては連れ歩いていた。

ライブ初披露の『真V』楽曲にて、音がリアルにバックアタックしてくることを体感

 ライブでは初披露となった『真V』の楽曲も見逃せない。Day1では「Battle -Da’at-」、「Battle -edifice-」、「力在る者」、そして「Battle -humans, demons, and…-」の4曲が演奏された。

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岡聡志(Guitar)

 最新作だけあって記憶にも新しい曲の数々だが、音響的にもっとも印象的だったのは、これらの演奏中に野太い低音が正面からではなく、反響して座席の後ろから、膝裏を突き上げて迫ってくることだった。

 1曲目の感想で「バックアタックされたときのようなインパクト」と表現したが、まさかリアルに音がバックアタックしてくるとは……。

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 演奏終了後には、MCのトークで『真V』の真エンドを見たという人、『真V』で人修羅を倒した人はどれほどいるかと観客に問いかけていたが、かなりの割合の人が挙手していたのも印象的だ。

 また、『アバタールチューナー』の人修羅についても言及されていたが、『アバタールチューナー』で裏ボスとして登場した人修羅は、それはもう激烈に強くて、「地母の晩餐」のおそろしさは忘れられない。

 キャラクターを限界まで育成し尽くして、対策を練ったうえでも、運が絡むようなギリギリの戦いになる人修羅戦は、RPG史上で最も手強いボスなのではないかというほどの評判になっている。

 いずれにしても、人修羅はメガテンシリーズにおいて、アトラス作品において、それほどまでに強大で、特別な存在なのだ。

30周年という節目に、みんなで迎えたスタッフロール

 Day1ライブもいよいよ大詰め。『真III』をフィーチャーしているDay1では、「ボス登場」から「コトワリボス戦闘」、さらにはラストボス戦闘の2曲、そして「スタッフロール」と、最終局面に相応しい構成だ。

 今回、ライブで聴くのを非常に楽しみにしていた「ラストボス変形前戦闘」と「ラストボス変形後戦闘」。

 まるでクラブで流れるダンスミュージックのようで、当時はこれがRPGのラスボス戦の曲なのか?!と驚いたが、間近で見るラスボスの姿がミラーボールのようにも見えることから、なんだか妙にしっくりきたことを憶えている。

 今回のライブの中でも、特にこの2曲が収録音源と、会場の音響で生演奏を体感したときの差が大きい。
 これが立ち見の会場だったら、その場で踊り続けたくなるほどのグルーヴを感じて、もはやただのファンとして、ひたすら演奏を楽しんでいた。

 そんなノリノリのラストボス戦闘曲が終わって、最後の曲である「スタッフロール」を迎える。

 エンディングのコメントでは、アトラスサウンドチームから「スタッフロールには格別の思いがある。30周年の今、皆さまと一緒に迎えたスタッフロールだと思っている」と思いの丈を語り、3時間にも及ぶメガテンライブは閉幕した。

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悪魔ではない…デビルサマナーの気配…?

 閉幕しても鳴り止まない拍手。まだ、“あの曲”を聴いていない……。

 メガテンライブDay1の最後の最後、ついに時は訪れる。

 とてつもなく恐ろしい悪魔の……

 ……いや、鬼神をも哭かしむる
 デビルサマナーの気配を感じる……

 ここにとどまりますか?
           ▶はい
            いいえ

 スクリーンに映し出された映像に、観客がどよめく。

 本当に、とどまりますか?
           ▶はい
            いいえ

 二度目の確認画面で、予感は確信に変わり、「待ってました」と言わんばかりの大歓声。
 そして『真・女神転生III -NOCTURNE マニアクス クロニクルエディション』で登場した、人修羅を追いかけるデビルサマナー、葛葉ライドウの映像で観客の興奮は最高潮に。

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 満を持して、『真・女神転生Ⅲ -NOCTURNE マニアクス』の名曲「ダンテ戦闘」が演奏された!

 原曲よりもややスローテンポな演奏で、力任せな勢いよりも貫禄や風格を感じさせる曲調。この直前に「通常戦闘」のロングバージョンも演奏されたのだが、スタンディングで縦ノリしている人が多かった前曲とは対照的に、しみじみと聴き入る様子が伺えた。

 会場のスクリーンでは、クロニクルエディション準拠のデビルサマナー「???ライドウ」の姿が映っていたが、個人的な思い入れとしてはデビルハンター「魔人ダンテ」の印象も強いため、映像出演を期待していなかったと言えば嘘になる。アトラスさん、次回はよろしくお願いします……。

 2020年発売の『真・女神転生III NOCTURNE HD REMASTER』でもDLCコンテンツとして「マニアクスパック」が配信されて、HDリマスターされたボイス入りのダンテと命がけの鬼ごっこができることに歓喜したものだ。

 アンコールとして本当の締めくくりに最高の演出、最高の選曲をしてくれたことに感謝しかない……。

一音一音、魂が込められたライブ演奏に活力をもらった

 約3時間、全32曲(アフターステージも含めると35曲)にも及ぶメガテンライブは、終わってみればとても短い時間だったように感じる。

 30年のメガテンシリーズの歴史を駆け抜けるように追体験した。そんなライブだった。

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 LaiD Back Devilのバンドマスターを務める岩田彬良さんは、エンディングにて「30年の皆さまの思いがありますから、それに負けないエナジーで一音一音、魂を込めて弾かせて頂きました。」とコメントした。

 その言葉どおりに、本当に魂が込められた全身全霊の演奏で、会場にいる人たちの魂に強く響いたのではないだろうか。

 また、同じくエンディングでMCの松澤さんは「メガテンは多感な時期に触れるか、大人になってから通るかで感じ方が全然違うと思います。」とコメントしていたが、これは本当に仰るとおりだと思う。

 最後に個人的な話で恐縮なのだが、私がリアルタイムで『真III』をプレイしていたときのことを書かせていただきたい。

 あのとき、まさに人修羅や橘千晶、新田勇たちと同年代だった私は、勇のコトワリである「ムスビ」に共感していた。

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(画像は真・女神転生III NOCTURNE HD REMASTERより)

 ボルテクス界でさまざまな苦難に遭い、アマラ経絡の中で無数の思念体に触れて変貌した勇。自分以外の全てを拒絶して遠ざける彼の中には、底知れない絶望があった。

 ムスビは、誰とも干渉しない個人主義で自己完結の世界を構想しながらも、結局のところは自分だけでは達成できない目的を果たすためには人修羅を利用する勇のように、破綻していて他力本願なコトワリ。
 まともに考えれば、そんな歪んだ世界を実現したとしても成り立つわけがない。

 だが、当時の私は、作中の鬱屈した思念体たちのように、歪な世界を作ろうとする勇に引き寄せられた結果、ムスビエンドに辿り着いたのだった。

 あれから20年経った今では、少なくとも、勇のコトワリに縋ろうとしていたあのときよりは強くなった。

 自分なりの世界の見つめ方であったり、価値観を持つようになった。

 しかし、今でも自分の中には絶望という闇と、怒りという悪魔が潜んでいる。

 ときには、それを抑えきれなくなるのではないかと思うことがある。

 人生の中では、メガテンのようにLIGHTな心境になったり、あるいはDARKな気持ちに蝕まれたりと、自身の傾向が大きく揺れ動くときもある。

 自身と社会とのバランスをとっていけるときもあれば、そうではないときもある。

 それでも、己の力で過酷なボルテクス界を生き抜いた人修羅のように、変わりゆく混沌とした現実世界を生きていけるのではないか。

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(画像は真・女神転生III NOCTURNE HD REMASTERより)

 今回のメガテンライブは、自分にリアルを生き抜くためのエナジーを、メガテン的にいうならば「生体マグネタイト」のようなものを大量に注入してくれた気がする。

 また、長く続くコロナ禍でこういった声出し可能なライブを体験できなかったが、ようやく楽しめるようになってきたという喜びも実感させてくれた。

 次のメガテンライブも、縁があればぜひともまた参加したい。きっと、今回よりもさらに大きな力で満たしてくれることだろう。

 メガテンシリーズの歴史でも記念すべき大きなイベントで、貴重な取材の機会を与えてくれたアトラスの皆さま、関係者の皆さま、誠にありがとうございました。

 最後まで読んでくれた読者の皆さま、メガテニストの皆さま、ありがとうございました。

 コンゴトモヨロシク・・・・・・

 「真・女神転生 30周年感謝祭」Day1 セットリスト

 1.通常戦闘(『真・女神転生Ⅲ -NOCTURNE』)
 2.銀座
 3.廃墟
 4.戦闘
 5.Boss
 6.2D:魔界
 7.3D:魔界
 8.戦闘
 9.中ボス戦闘
 10.東京受胎
 11.魔人
 12.通常戦闘~大マップ~
 13.タイトルループ2
 14.東京
 15.Battle-a2
 16.Battle-b2
 17.Battle-c5
 18.ラージマップ
 19.Battle-f1(通常戦闘)
 20.Battle-f2(中ボス戦闘)
 21.Battle-f4 多神連合
 22.Battle -Da’at-
 23.Battle -edifice-
 24.力在る者
 25.Battle -humans,demons,and…-
 26.ボス登場
 27.コトワリボス戦闘
 28.ラストボス変形前戦闘
 29.ラストボス変形後戦闘
 30.スタッフロール
 31.通常戦闘(Long ver.)
 32.ダンテ戦闘
 33.Battle -ferocity-
 34.通常戦闘~大マップ~(Re ver.)
 35.通常戦闘~アマラ経絡~
 ※33.以降はアフターステージのみ

ステージ写真/撮影:大山雅夫

ライター
ゲーム、模型、ファッション、ドール、オーディオなどさまざまなジャンルの沼を渡り歩くスワンプウォーカー。関心のあるものに後先考えずに全てを捧げる狂戦士。手がけた代表的な記事は 「人はなぜ少女にメカをくっ付けるのか」 「うつ病の自分が『DEATH STRANDING』を遊んで、“実感”を取り戻した話」など。
Twitter:@Leyvan44

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