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睡眠×エンタメ=「眠タメ」とは!? 集英社が培ってきたノウハウも活用して生まれた睡眠記録アプリ『よひつじの森』のこだわり

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 睡眠記録アプリ『よひつじの森』PR事務局は、「睡眠図書館」と銘打ったイベントを、東京・両国にある眠れるシアター「Theater Zzz」で2023年9月6日から8日までの3日間開催する。その初日に、プレス向け体験会が開催された。

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 この体験会では、イベントが行われるきっかけとなったスマートフォン向けアプリ『よひつじの森』について、本作のディレクターと脚本を担当したENDROLL CEOの前元健志氏より、アプリの概要や開発背景、今後の展開などについて説明が行われた。

 「睡眠図書館」という言葉から連想するのは、本を読んで眠る空間だ。その一方で、図書館という言葉にも通ずる「読む体験」は、本ではなくアプリを中心にしている。アプリで読むことができるのは、よひつじのヨルというキャラクターの物語である。そのキャラクターが登場するアプリを企画・開発しているのが前元氏率いるスタートアップ企業のENDROLLである。また、出版社として開発やアプリのリリースをしているのが大手出版社の集英社だ。

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▲ENDROLL CEOの前元健志氏。

 ENDROLLといえば、ARゲームを多数手掛けてきていることでも有名だ。しかし、今回リリースされた『よひつじの森』はARゲームではない。同社は2017年の創業以来、一貫して行ってきているのが「生活を楽しくするためのエンタメコンテンツを作る」ということである。同社のミッションは「Gamify your LIFE」で、これは「人生の楽しみ方を創る」という意味を表しており、ARやゲームを作ることを目的にしているわけではない。

 そうした中で、現在最も注力していることが生活とエンタメを掛け合わせることである。今回の『よひつじの森』もそのひとつで、生活が楽しくなる仕組みを作ることを目的としているのだ。

 本稿では、今回の体験会で発表されたアプリの概要や特徴などについてレポートしていく。

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▲「睡眠図書館」のイベント会場なった眠れるシアター「Theater Zzz」では、アプリ内に登場するひつじのぬいぐるみがあちらこちらに配置されていた。

取材・文/高島おしゃむ

眠れない人のために一緒に寄り添ってくれるアプリ『よひつじの森』

 『よひつじの森』は睡眠という時間に、物語や音楽などを掛け合わせることで睡眠の時間自体が楽しくなる工夫を凝らしたアプリだ。このアプリを開発するときに、最も大事にしたポイントが「眠れない人の心に寄り添う睡眠エンタメアプリ」ということである。

 ただ眠れるようになるアプリではなく、『よひつじの森』を通して夜の不安感などに寄り添うようなものになることを目指している。

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 前元氏は、集英社と取り組みを行うときに多くの企画書を作成している。睡眠アプリを作ることが決まった後で、どういった機能を入れるのがいいのか考えた。一般的な睡眠アプリではいびきを解析するなど、科学的なアプローチを含めて睡眠をデータ化するというものがほとんどであった。

 どんな睡眠アプリを作るべきなのか悩んでいたところ、前元氏は不眠症で悩んでいる高校時代の友人に電話を掛けてみた。そこで、どんな気持ちなのか実際に本人から話を聞いたのである。眠れないことで多くの病院にも通い、様々な薬を試しても改善されない。眠ることができない自分に対して責めてしまう、ということがわかったのだ。

 そのときに前元氏が思ったことは、眠れなくても別にいいのではないか?ということであった。もちろん眠ることができないことで様々な支障はあるものの、誰か近くにいる人が「眠れなくても大丈夫。でも一緒に眠れたら楽しいよね」と言ってあげることができたらいいのにと考えたのだ。

 いろいろな睡眠に対するアプローチがある中で、メンタルヘルス的な部分に注力してアプリの開発が行われることになったのである。その結果生まれたのが、眠れない夜を楽しむアプリ『よひつじの森』だ。このアプリで行うことは、とてもシンプルである。アプリを開いて目標の時間に眠りにつくことと、眠る前にスマホを触らないことだ。

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 こうした習慣が続けられるように、夜寝ているときにお気に入りの音楽をカスタマイズして聴けるようにしたり、睡眠の記録が可愛いひつじの形になって出てくるようなものにしていたりする。アプリを続けるインセンティブとして、物語が進んだりキャラクターが喜んでくれたりといった、エンタメ的な要素を盛り込んでいるのだ。

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 具体的には、設定した目標時間に近づくとひつじのキャラクターであるヨルくんから「もうすぐおやすみの時間です!」といった感じの通知が届く。アプリを開くと、継続することで集めた多くの自然音が用意されており、その中からお気に入りの組みあわせを選んで「おやすみモード」を選ぶ。

 この「おやすみモード」を始めた後で、SNSなど他のアプリを触るとヨルくんが呼び戻しに来てくれる。朝起きたときに、わたひつじというキャラクターが生まれて睡眠ログが記録される。このわたひつじが持ってきてくれた「星のかけら」というアイテムを元に、キャラクターが森を旅して新しい音楽を見つけたり新しい仲間と出会ったりする物語が進行していくようになっているのだ。

 アプリの体験としては、良い睡眠週間を継続することでひつじとユーザーの間で旅の物語が進んでいくようになっているのである。ひつじとユーザーはアプリの物語を通して、夜明けの海を目指していくことになるのだが、そこにたどり着いたときに真実が明かされるといった見どころも用意されている。

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 『よひつじの森』を作っていく上でこだわったポイントは、大きく分けて3つある。ひとつ目はやることがとても少なく、シンプルなところだ。これは機能が少ないという意味ではなく、ユーザーが今何をすればいいのか常に明確になるようにしている。早く寝たいといった心理的なストレスを抱えているときに、あれもこれもできたり、高刺激なコンテンツがあったりすると、心にはあまり良くない。そのため、次に何をすべきなのかは、基本的にひとつだけにしている。

 ふたつ目は、眠れないことを絶対に否定しないということだ。睡眠とエンタメを組み合わせたものの中には、眠れなかったときに罰則があるものも存在する。しかし、『よひつじの森』ではできなかったことは否定しない。たとえアプリを起動しなくても、ペナルティはない。他のアプリを起動してしまうなど失敗した場合であっても、翌日には違う種類のわたひつじが生まれてくれる。そして、アプリに来てくれたことに対してキャラクターたちは感謝してくれるのだ。

 3つ目は、睡眠週間を身に付けることができたら、卒業してもいいアプリであるというところだ。『よひつじの森』には、明確な終わりがひとつ用意されている。それは、物語で夜明け海に到達することだ。ビジネスとしては睡眠アプリは長く使い続けてもらう方がいい。その一方で、睡眠習慣自体は自分の心の持ちようで身に付けられる可能性がある。そのため、習慣を身に付けた場合はやめてもいいように、明確な終わりが付けられているのだ。

出版社と睡眠は意外にもシナジーが高い?

 続いて、『よひつじの森』プロデューサーでもある集英社の漆原正貴氏が登壇。ENDROLLと集英社が一緒にアプリを共同開発することになった背景について説明が行われた。

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▲集英社の漆原正貴氏。

 出版社と睡眠に、どんなシナジーがあってこんな取り組みをおこなっているのか疑問に思う人もいるだろう。これまでも、睡眠とエンタメを掛け合わせたものはそれほど多くなかった。しかし、実は親和性が高いのではないかと考えたのだ。

 出版社で作品作りをする立場としては、読者に面白い物語やキャラクターをどんどん届けていきたいと考えている。しかしながら、昨今漫画ひとつとってみてもアプリで配信されているものがあるなど、昔と比較して作品の数が膨大になってきているのだ。そうした中で、読者に作品やキャラクターと接点を持ってもらおうと思っても、かなりハードルが高い。そこで考えたのが、逆転の発想である。

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 読者が毎日やることとエンタメを組み合わせたら、毎日読者と触れあえる物語やキャラクターを作ることが出来るのではないかと考えたのだ。毎日やることを色々と考えた結果、選ばれたのが睡眠であった。体感的にも、睡眠について悩みを抱えている人が多いと感じてきていた。しかし、決定的な解決作はあまり見つかっていない状況でもあったのだ。

 睡眠を改善するといったアプローチは、いろいろと存在している。それらを試したところで、眠ることができないと思っている人が多いことも事実だ。エンタメとして出来ることとしては、眠れないという苦しい状態に対して寄り添うことだと考えたのである。

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 いろいろなアイデアを出し合いながら今の企画に落ち着いていったのだが、漆原氏がこの『よひつじの森』に感じている魅力はキャラクターがいいところだという。集英社の強みのひとつは、これまで様々な作品を通じてどんなキャラクターが読者に届くのか、どんな物語が喜ばれるのかといったノウハウを持っているところだ。今回の『よひつじの森』も、そうした集英社らしい作り方が行われている。

 『よひつじの森』には5000人以上が参加するファンコミュニティが出来ているが、こちらはアプリをリリースする前に集めた人たちである。その参加者たちにたいして、様々なキャラクターや物語を体験してもらいアンケートを取り続けた。好感度が低かったときは、何がダメだったのか徹底的に分析して変更を行っていったのだ。

 また、当初はアプリを使用しているときにひつじのキャラクターから「まだ寝ないんですか?」というひと言が通知で送られてくるようになっていたのだが、これが眠ることが出来ない人たちにとってはプレッシャーになってしまうという意見が寄せられた。こうしたものは、利用者に向き合ってみないとわからないことだ。

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 そうした部分を徹底的に改善し、眠ることが出来ない状態の人たちにたいしてどんなキャラクターなら本当に寄り添うことができるのか考えた。もちろん可愛らしさも重要のため、前元氏と漆原氏は、一緒に何度も牧場に足を運んで、ひつじの動きも研究している。そこからリアルなひつじの可愛さと、眠ることができない夜に出会うキャラクターとしての魅力を融合することができたのだ。

 出版社とスタートアップ企業がタッグを組んでこうしたものに取り組んでいくのは、一般的には珍しい。立場的には漆原氏がプロデューサーで前元氏がディレクターということになっているのだが、実際にはそうした認識ではなく前元氏やENDROLLが作家で、漆原氏が編集者といった感じで向き合ってきたという。

 今は作家とひと言でいっても、その幅は多用になってきた。そのため、スタートアップだからただの下請けということではなく、最初に会ったときから面白い世界観を持っている会社であったため、この人たちが作り出すエンタメを見てみたいと思ったのだという。

iOS版に続きAndroid版も9月に提供開始

 睡眠サポート飲料やスリープテックなど睡眠関連事業が拡大を続けてきているなかで睡眠自体をエンタメと掛け合わせた「眠タメ」の注目が高まってきている。『よひつじの森』の今後の展開としても、今後さらに力を入れていく予定だ。

 『よひつじの森』はiOSでのみ提供されていたが、9月6日よりAndroid版の事前登録が開始された。それを皮切りに、アプリ自体もパワーアップしていく。具体的には3つの指針があり、ひとつは物語が更新制になっていく。現在は夜明けの海を目指すというお話だが、新章ではその夜明けの海の向こうを目指していくことになる。こちらでは、新しいステージや新しいキャラクターが登場する。それに加えて、関連商品の充実やコミカライズなどのメディアミックスの現在準備中だ。

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 今回のイベントである「睡眠図書館」だが、そのきっかけとなったのが今年の夏に行ったアンケートだった。500名を対象に実施したところ、例年になく暑い日が続いたということもあり、睡眠不足を感じている人が6割以上いることがわかった。そこで、9月8日の休養の日に向けて何か企画が出来ないか考えていたところ、気軽に立ち寄って疲れを癒やす空間を作ることができないかということで実施されている。

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 この「睡眠図書館」では、リラックスティーを飲みながらこの会場でのみ体験できる『よひつじの森』のオリジナルストーリーが楽しめるようになっている。図書館というコンセプトであるため、訪れた人に何か持ち帰ってもらえるように特別な栞が来場者特典としてプレゼントされる。

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▲「睡眠図書館」で提供されるリラックスティー。『よひつじの森』に登場するキャラクターにちなんで、薄い色のほうがヨルティーで濃い色の方がナハトティーとなっている。

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 「睡眠図書館」では昼寝を推奨しているものの、それだけではなくデジタルデトックスでスマホから手を離し、テントの中で物思いにふけるといった楽しみ方もできるようになっているのだ。

 日頃睡眠不足に悩まされている人は多いと思うが、1度こちらの『よひつじの森』をダウンロードしてみて、新たな睡眠とエンタメの世界観を体験してみるのもいいのではないだろうか?

ライター
ライター/編集者。コンピューターホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。 現在はゲームやホビー、IT、XR系のメディアを中心に、イベント取材やインタビュー、レビュー、コラム記事などを執筆しています。

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