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33年の時を経て蘇った“スーパーリアリズムアクション”『闇の仕事人 KAGE Shadow of The Ninja』。ファミコンの隠れた名作が令和に復活、原作の魅力はそのままに遊びやすく、幅広い攻略も可能に【TGS2023】

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 33年前の1990年8月10日。(当時の)次世代機『スーパーファミコン』の発売を控え、円熟期を迎えたファミリーコンピュータ(ファミコン)で、ひとつのアクションゲームがナツメ(現:ナツメアタリ)より発売された。
 そのゲームの名は『闇の仕事人 KAGE』。パッケージの表記から『スーパーリアリズムアクション・KAGE』とも、あるいは単純に『KAGE』とも称される。

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▲原作のファミコン版『闇の仕事人KAGE』(※筆者の私物)

 現代とは異なる歴史を辿った未来のアメリカを支配し、圧政を敷く皇帝「ガルダ」を打倒するため、2つの影……”忍者”と呼ばれる者たちが戦う。
 さながらSF忍者活劇なストーリーを描いた本作は、アクションゲームとしてはいたって正統派のステージクリア型。個性的なシステム、アクションといった際立った特徴などは控え目の内容だった。

 だが、その完成度は高く、アクションゲーム好きを唸らせる傑作に仕上げられていた。特に確かな上達を感じられる絶妙な高難度、変化に富んだステージと個性の強い敵たち、そして本作の後に育成RPG『メダロット』シリーズの作曲家として名を馳せた水谷郁氏によるノリノリでカッコイイ音楽がその象徴だ。

 そんな『闇の仕事人 KAGE』は、ナツメアタリ名古屋事業所のデビュー作。本作をもって「ナツメアタリ(旧ナツメ)はアクションゲームに強い」と、遊んだプレイヤーに印象付けたという。

 その『闇の仕事人 KAGE』が、装いも新たに現代に復活!
 前述のナツメアタリ名古屋事業所にて、ファミコン時代からコンシューマゲームを作り続ける現役開発者3名で構成されたスペシャル開発チーム「TENGO PROJECT」の最新作として、2024年春に発売予定となっている。

 TENGO PROJECTはこれまでに『ワイルドガンズ』『ザ・ニンジャウォーリアーズ アゲイン』『奇々怪界 謎の黒マント』のスーパーファミコンの名作として評価される3作のリメイクおよび続編を開発。今回の『闇の仕事人 KAGE』はそれらに続く第4弾で、初のファミコン原作タイトルのリメイクとなる。

 『闇の仕事人 KAGE Shadow of The Ninja』と、サブタイトルに海外版の名も冠された本作は、東京ゲームショウ2023で初のプレイアブル出展が実現。試遊では本編冒頭のステージ1を体験できた。

 原作とは異なり、これまでのリメイク(および続編)と同じ16ビットスタイルに一新された本作。原作のファミコン版経験者たる筆者は、「どこが変わったのか確かめねば……!」との使命感に駆られて、現地にて早速体験。そのレポートをお届けする。

取材・文/シェループ


基本武器が2種類になり、柔軟な立ち回りが可能に!

 まず、基本のゲーム内容は原作と変わっていない。横スクロールのステージクリア型アクションゲームだ。

 プレイヤーは「ハヤテ」と「カエデ」、いずれかの忍者を操作して、手持ちの武器で敵を倒したり、仕掛けを乗り越えたりしながらステージを進んでいく。最終的にステージ終盤にて対峙する大ボスを倒せばクリアとなって、次のステージへと進む。アクションゲームとしてはまさに王道中の王道とも言える作りとなっている。

 忍者2人の基本武器は近接主体の「カタナ」。他に「鎖鎌」に「手裏剣」、「手りゅう弾」があり、いずれもステージ内でアイテムを手に入れることによって切り替わる仕組みになっていた。ちなみに「手裏剣」と「手りゅう弾」は回数制限ありの武器。また、同じアイテムを連続して獲得すると威力が上昇するパワーアップシステムもある(逆にダメージを受けるとパワーダウンする)。

 リメイク版は、武器周りのシステムが大きく変更。まず基本武器が「カタナ」と「鎖鎌」の2種類になった。会場にはNintendo Switch版が出展されていたことから、そちらに準じた説明になるが、Yボタンでカタナ、Xボタンで鎖鎌が繰り出される仕組みに変更。

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▲原作ではアイテムを取る必要があった鎖鎌が最初から使える!

 これにより、近距離と遠距離を使い分ける戦術が可能になり、雑魚敵に対処しやすくなっている。原作のファミコン版は前述の通り、武器が1種類しか持てず、それぞれの特徴を踏まえた使い方(※カタナなら敵にギリギリまで接近する、鎖鎌は最大リーチに達するまでの時間を勘案するなど)を心がける必要があったことから、ある程度の慣れと練習が求められた。

 リメイク版は最初から2種類使えるため、かなり直感的に対処できるようになっている。また、雑魚敵の耐久力も原作はやや固めだったが、リメイク版は緩和。倒しやすくなったことで、倒しきれず接触してダメージを受ける事故も起きにくくなっている。

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 また、「手裏剣」と「手りゅう弾」はストック式の武器になった。これらを手に入れると持ち物としてストックされ、ZRボタンを押しっぱなしにし、Yボタンを押せばカタナと切り替えられるようになっている。しかも、武器の中にはガトリングガンといった原作には存在しなかった新種も追加されている。

 武器に限らず、回復アイテムもストック式に。原作は単純に該当するアイテムを回収すれば即座に回復という仕組みだったが、今回はストックから選んで使わないと回復できない。逆に言えばボス戦まで回復アイテムを温存し、戦闘中にピンチになったら回復ということができるようになり、やりようによっては力押しで攻め込む戦術が可能に。原作は回復のチャンスもない真剣勝負が基本だったことから、かなりゲームバランス面での変化が現れている感じだ。

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 他に制限時間が導入されていたり、ステージの構造が僅かに一新、新種の雑魚敵が登場するといった変更点も確認できた。また、タイトル画面を放置し続けるとオープニングストーリーが語られるのだが、それも原作から若干変わっている。端的に言うと、舞台設定が架空の巨大都市に変更されていた。ただ、皇帝「ガルダ」を打倒する目的そのものは原作から変わりなしだ。

気になるリメイクでの追加要素は……続報を待て!

 「果たして原作からどう変わったのか?」との興味から触ってみた率直な感想は「遊びやすい!」。特にカタナと鎖鎌が使い分けられるようになったことで、柔軟に雑魚敵へ対応できるようになったのは原作を知る身としては大変刺激的だった。

 見た目を大きく一新したなりに、新要素が所々に散りばめられているのも見所。特に驚いたのが最後に対峙するボスである。最初は原作のファミコン版と同じ動きと攻撃で襲い掛かってくるのだが、ある程度ダメージを与え、一定の時間が経過すると……? これ以上は実際に現地でお確かめいただきたい。

 また、難易度も各種システムの変更などから原作より気持ち下げられている印象を受けた。とは言え、決して易しくなった訳ではない。ライフをすべて失えばその時点でゲームオーバーとなって、ステージの最初から問答無用でやり直しである。

 ただし、現地にて案内を務められていたTENGO PROJECTの岩月博之氏に伺ったところによれば、この仕様は製品版でも採用するか未定とのこと。難易度も今回の試遊バージョンでは選択機能は確認できず、原作とほぼ同じ仕様だったのだが、こちらも最終的にそのままになるのかは未定とのことだ。

 そして、筆者個人がとても気になっているトピックとして新ステージの存在がある。

 『闇の仕事人KAGE』は、『ワイルドガンズ』に続くナツメアタリオリジナルの作品である(※ニンジャウォーリアーズ、黒マントはタイトー原作の作品)。そんな『ワイルドガンズ』のリメイク作『ワイルドガンズ リローデッド』には、原作のスーパーファミコン版にはない、まったく新しいステージが追加されていたのだ。

 「それすなわち、今回の『闇の仕事人KAGE』にも……!」と思い切って伺ってみたのだが、それについては「今後の続報をお待ちください!」とのことである。
 ……楽しみにしていますッ!

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▲原作のファミコン版『闇の仕事人KAGE』もデモ展示されていた。(※プレイは不可)

 原作のファミコン版は知る人ぞ知る作品であるに加え、今となっては中古も高騰気味で手を伸ばしにくくなっている。

 そんな中、今回復活するリメイク版は、原作とは若干変更されている部分こそあれど、「ナツメアタリ(旧ナツメ)はアクションゲームに強い」という説を追体験できる作品になる可能性が考えられる。原作経験者の視点から見ても新要素が多数あり、グラフィックが全面的に一新されていることから、「あの敵はどう変わったのか?」というビフォーアフター的な遊びも楽しめるだろう。
 音楽も原作に引き続き水谷郁氏が手掛けているほか、岩月氏も一部楽曲を書いているとのことで、その仕上がりが期待される。

 王道ながら堅実という原作に遊びやすさが加わって、より磨きを増した作品になることを予感させる本作。
 原作を知らない方でも、横スクロールアクション好きならぜひ要注目のタイトルだ。


ライター
新旧構わず、色々ゲームに手を伸ばしては積み上げるひよっこライター。アクションゲーム(特に『メトロイド』、『ロックマン』)とストラテジーが大好物。フリーゲーム、VRゲームの動向もひっそり追いかけ続けている。
Twitter:@shelloop

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