2023年、秋。
“伝説の龍”桐生一馬が『龍が如く』の主役として返り咲いた──!
『龍が如く7外伝 名を消した男』が発表されたタイミングで、桐生一馬が主役であることはわかっていた。
ただ、実際に再びこの手で桐生一馬や新しい物語を体験してみると、これまたなんとも味わい深い感覚があったように思う。
あの頃と同じように……。
緊迫したシーンで、キャバクラに直行する。
雑魚敵をチャリンコでボコリまくる。
なぜか毎回忘れている古牧流・虎落としを真っ先に習得する。
桐生一馬を動かしていると、開始時点からなんともノスタルジックな気分になる。
まずこれが前提。
そのうえで、『龍が如く7外伝 名を消した男』は、『龍が如く7 光と闇に行方』(以下 『龍が如く7』)と『龍が如く8』の空白を埋める作品と括ってしまうにはもったいないほどの完成度を誇るお化けゲーだった(1年ほどで仕上げたとは到底信じられない)。
そんなお化けゲーを楽しんでいたある日、電ファミの「龍が如くスタジオ」担当(副編集長)から、こんなチャットが届いた。
「(川野さんが)適任だと思うので、『龍が如く7外伝 名を消した男』の記事を1本お願いします」
この時点で、お伝えしておきたいことがある。
私はライターではない。電ファミの営業なのだ。
しかし、営業の前に枕詞を付けるのであれば、“龍が如くを愛する”営業であることは間違いない。
『龍が如く』シリーズと出会った2005年からナンバリング、スピンオフタイトルを含めて、すべてプレイ済み。
電ファミの仕事をはじめてからは、こんな記事も執筆したりした。
龍が如くスタジオが公開したドキュメンタリー映像が面白すぎたので、見てくれないか
はじまりから約20年が経ったレジェンド的シリーズタイトルであり、現役バリバリ。
ファンの心をこれでもかと掴んで離さない。
そんな『龍が如く』シリーズの最新作『龍が如く7外伝』が長年のシリーズファンも納得の仕上がりだった理由について触れていきたい。
文/川野優希
実家に帰ってきたような安心感
改めてになるが、桐生一馬を操作していると、まるで実家に帰ってきたかのような安心感があった。
桐生一馬が主人公を飾ったナンバリングタイトル『龍が如く6 命の詩。』から既に7年が経過。
主人公を春日一番にバトンタッチした桐生一馬が急遽、外伝で主役にカムバックするという話題は、多くのシリーズファンにとってうれしいニュースだったに違いない。
そんな伝説の元極道が主演を務める今回の『龍が如く7外伝 名を消した男』(以下、『龍が如く7外伝』)。ざっくりとしたあらすじは以下となる。
愛する者たちを守るため、自分の死を偽装し、人生を捨てた伝説の元極道、桐生一馬。
かつて日本のフィクサーとして暗躍した「大道寺一派」という組織に身を寄せ、その秘密エージェントのひとりとなり、ときおり任務を与えられている。
大道寺以外の人間にその生存が知られることは決して許されない。
公式でも発表されている通り、名を消し、表舞台を退いた桐生一馬。彼がなぜ『龍が如く7』 で再登場を遂げたのか。
この裏側が描かれるのが、『龍が如く7外伝』の本筋だ。
ヤクザ者として、筋を通すことを何よりも重んじる桐生一馬が、どうしてあのシーンであの場にいたのか(渡瀬勝と共に“臨時雇いのボディガード”が姿を現したときは、鳥肌が立ち、家の中で叫んだのを覚えている)。
この裏側の描き方、たどり着くまでのストーリーテーリングが本当にうまかった。「納得」のひと言に尽きる。
ただ、ここで詳しく語るのは控えさせていただく。ネタバレで知るにはあまりにももったいない。まずは、気になったらとにかくプレイしてみてほしい。
魅力的なキャラクターたちと 新たなバトルスタイル
本作の魅力を語るうえで欠かせない『龍が如く7外伝』に登場する新しいキャラクターについて。発表時点から『龍が如く』シリーズファンの目を引いたのは彼だろう。
近江連合直参鬼仁会 会長 三代目 西谷誉
西谷誉…..?
あの“嶋野の狂犬”真島吾朗の極道人生に大きすぎるほどの影響を与えたあの漢?
名作『龍が如く0 誓いの場所』で圧倒的なインパクトを残した“西谷誉”の名を継ぐ者が登場すると発表されたときは正直驚いた。
さらに演じるのは、キム・ジェウク氏。
なぜ、日本人の役者ではなく、キム・ジェウク氏がキャスティングされたのか。その理由も本編を進めることでわかってくる(こう説明するとシリーズファンにはぼんやりわかってしまうかもしれないが)。
西谷のほか、本編をプレイしていて、個人的に印象深かったキャラクターは大道寺一派の管理者・花輪喜平である。
遊びはじめた当初は、彼がここまでのキーマンになるとは想像もしていなかった。
なんかパッと見地味だし、桐生さんにも冷たいし。それがそれが、なんとも素晴らしい展開を作っていくのだから侮れない。
個人的にはぜひこのふたりに注目していただきたいと思う。
もちろん、赤目(ファーストサマーウイカ)もかわいかった。
そして、本作はひさしぶりのアクションバトルとなっているのだが、なかでも新たなバトルスタイルである「エージェント」が本当に楽しい。
桐生一馬が身を寄せる大道寺一派の体術をベースにワイヤーやドローン、タバコ(爆弾)などを駆使して相手を制するという、これまでになかったアクションが目白押し。
個人的に、ワイヤー(蜘蛛)とドローン(蜂)をメインに据え、雑魚からボスまで徹底的に使い抜いた。
ワイヤー(蜘蛛)はランクを上げると、複数人を一気に拘束することが可能。
雑魚敵にエンカウントするとすぐさまワイヤー(蜘蛛)を使用し、バッタバッタと投げ倒す。
その後、チャリンコでブン殴る。
ドローン(蜂)については、アルティメットヒートモードで使用すると「何台召喚できるんだ?」という数のドローンが登場し、敵に猛攻撃を仕掛ける。
まず、ドローン(蜂)で相手を痛めつけてから、じっくりと戦うこともしばしば。
また、このバトルだけは“桐生一馬”として戦いたいと思うときは、使い慣れた“応龍”のみで挑むなど、気分によって戦略を変えられることも『龍が如く』の魅力のひとつ。
外伝にして、さらに進化したバトルも本作の醍醐味と言えるだろう。
こういうのがいいんだよ
『龍が如く7外伝』のボリュームが短めであることは、事前に告知されていた。
『龍が如く7』と『龍が如く8』をつなぐ物語であり、あくまでも外伝である、と。
確かに圧倒的なやり込み要素と骨太で長尺なストーリーが「龍が如く」のウリではある。
ただ、『龍が如く』にはもうひとつ、圧倒的な強みがある。
それは「キャラクターの魅力」だ。
『龍が如く』シリーズをプレイしたことがある人に「推しキャラは?」と質問したら、ひとりやふたりや3人は名前が上がるはず。
ちなみに私は秋山駿、峯義孝推しである。
ファン心理としては。桐生一馬を筆頭に自分の好きなキャラクターで新しい物語を遊べるだけで満足だったりもするのだ。
実際、『龍が如く7外伝』をプレイしていると、何度もあの名言(?)が浮かんできた。
こういうのでいいんだよ。こういうので(『孤独のグルメ』井之頭五郎より)。
龍が如くスタジオの新作。
魅力的なキャラが紡ぐ新しい物語。
キャバクラとカラオケがある。
これだけでも十分に満足だったりする。
本作をきっかけに、似た立ち位置のタイトルが今後生まれてくれたとしたら、どんなに素晴らしい世界なのかと思う。
「龍が如くスタジオ」様、ぜひ「外伝」のシリーズ化をお願いします!
公式からも『龍が如く7外伝』の開発期間が約1年だったことは名言されており、コンスタントにこのクオリティの作品がリリースされれば、IPとしての人気もさらに高まると思う。
勝手なことを言うが、“龍が如く 外伝 3部作”などが世に出てくれたら狂喜乱舞する。
『龍が如く7外伝』がプレイできただけでも幸せなのだが、一定の幸福を得ると人間は欲深くなってしまうものである。
自分が強欲であることは自覚しつつも、この場を借りて発信しておきたいと思った次第だ。
ゲームに飽いた人たちへ
約20年前。
当時、19歳だった自分は「ゲームに飽いた人たちへ」というキャッチコピーを見て、『龍が如く』を手に取った。渋谷のTSUTAYAだった気がする。
飽きるほどゲームで遊んだこともない若造だったが、なぜだかこのフレーズが気になった。
あれから20年が経ち、自分も「ゲームに飽いた人たち」という当時のターゲット層になったと思う。
ただ、改めてこのキャッチコピーを振り返ってみると、こうも思う。
約20年間。『龍が如く』だけはまったく飽きることがなかった。
ナンバリングタイトルは勿論、スピンオフも含めてずっと『龍が如く』で遊び続けてきた。
号泣間違いなし。『龍が如く』が名作たる所以
最後に。
今回の執筆にあたり、予定を繰り上げてメインストーリーをクリアしてみた。
エンディングを迎えた瞬間に浮かんだ言葉は、「ありがとう……龍が如くスタジオ……!!!!!」だった。
“外伝”という冠がしっくり来るストーリー展開。クライマックスに向けてのカタルシス。
目頭を何度も熱くしながら到達したスタッフロール。
これから発売する『龍が如く8』へのプロローグとしては、これ以上ない仕上がりだったように思う。
また、ひとつの外伝作品として見ても極上の仕上がりだったと伝えたい。
とくに物語後半の展開はマジで良かった。
確かに楽しみにはしていたが、期待のハードルを3段飛ばしくらいで越えていった。
敢えて言葉を選ばずに言うのであれば、『龍が如く6』でシリーズから離れてしまった人にとくにオススメしたい。
主人公の交代、バトルシステムの変更など、『龍が如く7』はこれまでのシリーズと比べてドラスティックに舵を切っていた。
多少、アレルギー反応が出た方もいると思う。
ただ、本作はあのころのままだ。ゲームシステムも、主人公も。
何だったら『龍が如く7外伝』をプレイしてから、『龍が如く7』を遊んでみるのもアリだ。
もちろん、もっとも推奨したいのは、『龍が如く8』発売にタイミングを合わせて遊んでみることだが(恐らく年末年始を使えば間に合うはず)。
断言しよう。『龍が如く7外伝』を遊ぶと『龍が如く8』の期待値がストップ高になる。
マグマのように沸々と気持ちを昂らせるもよし。タイミングを合わせて一気に『龍が如く8』に突入するもよし。
『龍が如く7外伝』は、そんな気持ちにさせてくれる快作であったと、改めて伝えておきたい。