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Jリーグ以外の社会人クラブも登場!? 究極のサッカー監督シミュレーション『フットボールマネージャー』は、日本のサッカーをどこまで表現しているのか

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Jリーグクラブと都道府県代表の社会人クラブが、ジャイキリ上等の「全日本カップ」で対戦!

というわけで、プレイヤーの分身となる監督を作成し、筆者が個人的に応援している故郷・徳島のJ2クラブの監督に就任して、プレイを始めてみた。

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役員会と今シーズンの目標を話し合い、選手に自分の方針を伝えたりして、リーグ戦開幕までの準備を行っていると、最初に戦うことになるのがプレシーズンマッチ。自分の指揮するチームも他のJ2クラブも、対戦相手はどうやら格下のカテゴリーになるようで、J3クラブがズラリと並んでいる。だがそこに混じって、気になる名前を発見した。

浜松の「HANEDA SC」に仙台の「SUNNY」、東京都武蔵野市の「MUSASHINO CITY FC」。クラブ名こそ微妙に異なるものの本拠地と突き合わせれば一目瞭然、これはJ3のさらに下となる日本の4部リーグ(ちなみにゲーム内でのリーグ名はNippon Soccer League。略してNSLですかね)に所属しているクラブで間違いない。えぇっ、このゲームに収録されているサッカークラブって、Jリーグだけじゃなかったの!?

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静岡県浜松市を本拠地とするHANEDA SCは、Nippon Soccer Leagueで10回の優勝を誇る名門クラブ。Jリーグにライセンスを持たないセミプロながら、Jリーグ昇格を目指している他のクラブを圧倒しているこのクラブは、おそらく「NSLの門番」と呼ばれているに違いない(笑)

そこで気になってゲーム内を検索してみると、他にもいろんな名称のクラブがズラズラッと出てきた。全国リーグの4部リーグだけでなく、さらに下のカテゴリーに属するクラブも各都道府県リーグの所属という形で収録されている。

こうした4部以下のカテゴリーは、プレイヤーが監督に就任して指揮することはできない。また前述したようにクラブの名称も変更されているし、エンブレムやユニフォームもそれっぽい配色になってはいるがあくまで架空のもの。とはいえクラブのプロフィールや過去の戦歴に関しては、モデルとなっているクラブの現実のデータをかなり反映しているようだ。

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宮崎県延岡市を本拠地にしている4部リーグの「MINEPAIR」は、静岡県浜松市の「HANEDA SC」とダービーを繰り広げていると、ゲーム内のデータに記載されている。じつはMINEPAIR(の元ネタ)は2022年まで、HANEDA SC(の元ネタ)とは親会社・子会社の関係になる企業のサッカー部だった。そのためこの2チームの対戦はダービーと呼ばれていたわけだ。ところがこの企業が別の企業の傘下となったため、2023年からは新たな企業名で活動を続けている。……と、日本でも濃い目の国内サッカーファンぐらいしか把握していない情報が、全世界のプレイヤーに向けてサラッと開示されているのが『フットボールマネージャー』の凄まじいところだ

プレイヤーの指揮できないクラブのデータがなぜゲーム内に存在しているのかというと、そこにはいくつかの理由がある。まずは4部リーグのクラブの場合、年度が進むとJ3に昇格するクラブが出てきて、プレイヤーが指揮するクラブの対戦相手となる可能性があるためだ。

また、Jリーグクラブは通常のリーグ戦以外にカップ戦にも参加しており、その中には「全日本カップ」という大会も存在している。この大会はJ1〜J3だけでなく、日本全国の社会人クラブも参加するというプロアマ混合のトーナメントだ。……こう書けば名称は架空でもサッカーファンならすぐ分かる、最近は元日に決勝戦をやらなくなったあの大会ですね(笑)。

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そんなわけで5部以下のリーグに所属する地方クラブも、都道府県代表として全日本カップに出場するため、ゲーム内にデータが存在するようだ。ちなみに「全日本カップ(の元ネタ)」と言えば、アマチュアのクラブがJリーグクラブに勝利するジャイアントキリングで知られているけれど、さすがにこのゲームではデータ勝負になるため、ジャイキリはけっこう難しいのではと思うのだが、どうだろうか。

さて、4部リーグ以下のクラブがゲーム内に存在しているのには、カップ戦よりもっと重要な理由がある。それは選手の発掘・育成の場であるという点だ(あくまでゲーム内の監督の視点から見た話だが)。

J1の強豪クラブなら海外や国内の有名選手を高額な予算で引っ張ってこられるのだろうが、J2やJ3のクラブにはなかなかそこまでの余裕はない。そこで4部以下のカテゴリーで結果を残している選手を発掘して、優秀だが契約金の安い選手にオファーするのが大事になってくる。

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また、将来は有望だがまだトップチーム入りできる実力のない若手選手を、保有権を維持したまま下部のカテゴリーにレンタル移籍させて試合経験を積ませるというのは、現実のサッカークラブでも当たり前に行われていることだ。『フットボールマネージャー』でも重要な育成手段となっており、さまざまなオプションでレンタル移籍の契約を交渉できるほか、契約後にはレンタル先での活躍ぶりも随時報告されてくる。

生々しい数字と地道に育てた選手を引き抜かれる紆余曲折から、Jリーグ下位クラブの悲哀を追体験

プレシーズンマッチからつい収録クラブの話題に寄り道してしまったが、筆者はそこからプレイを進めて、J2での戦いを続けている。そこで感じた素直な感想は、なんというか……「海外のゲームらしいなぁ」ということだ。日本で作られたゲーム、特に実在のスポーツチームを扱ったゲームに見られる日本的な情緒や忖度が、この『フットボールマネージャー』には良い意味でぜんぜんない(笑)。

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移籍や契約の交渉は、ボーナスや出場機会などの条件設定がなかなかに具体的で生々しい。もちろんサポーター目線では知らないだけで、現実の交渉もこうした生々しいものなのかもしれないが。選手に対する評価も「キャリアとしては下り坂に入った」とか、実名なのにけっこうズバリと書かれていて、明確で分かりやすいが、その選手のファンだと心をえぐられるかも。

さらに、クラブの予算や1試合の入場者数、年間チケットの購入者数といった数字が、ストレートに飛び交うのも遠慮がない。これまでの『フットボールマネージャー』だと海外のプロサッカークラブが舞台で、日本人にとっては現実感の薄い桁数の金額がユーロとかで示されていたのだろうけど、今回は金額もズバッと日本円だ(一応、設定でユーロなどにも変更できる)。

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その数字の額がまた、現実のJリーグでふだん見聞きしている数字と比較的近いのも、地味にスゴイところで。「あぁ、J2で成績が低迷していると、入場者数はやっぱり5000人を割り込んじゃうよなぁ」とか、妙に納得してしまう。このあたりは海外クラブでは味わえない、自分が日常的に暮らしている地域のプロサッカーリーグを扱っているからこその肌感覚だ。ただし、選手やスタッフの給与が月給ではなくて週給表記なのは、クラブや選手のローマ字表記と同様に、世界的な仕様の統一のためにやむを得ないところだろうとは思う。

特に筆者の場合、J2クラブ(しかも2023年は成績が低迷して、シーズン途中で監督が交代したクラブだ)でプレイしていることもあって、ゲームから生まれる展開も生々しいというか、J2下位の悲哀を感じるようなことが多い。外国人選手はちょっと成績が下り気味になったら移籍への興味を明言し始めて、海外からオファーでも来ようものならすぐ練習をサボったりするし(笑)。逆に国内の若手選手だと、ちょっと活躍してJ2ベストイレブンに選出されたりすると、すぐにJ1から監督が視察に来たりするし(笑)。

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また本作では、選手のケガが発生する確率がけっこう多め。ケガの種類も大小さまざまで、「肉離れで練習を数日休む」程度で済むこともあるけれど、主力選手が数カ月の離脱となると、チームへのダメージが大きい。

筆者の場合、同時期にフォワードが3人、一斉にケガで試合に出られなくなった結果、そこからチームバランスが崩れて順位が急降下し、半年で解任になったほどだ(苦笑)。とはいえこれは現実でも、選手層の薄いプロサッカークラブだとよく見かける話。そういう意味でも再現度が高いと言えるだろう。

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開発スタッフも初心者へのオススメとして語っていたが、『フットボールマネージャー』の醍醐味はやはり「ヨーロッパのビッグクラブで監督に就任して、莫大な予算を使って世界的なスーパースターをかき集めて銀河系軍団を率いる」といったところだと思う。

それに対して日本のJリーグ、特にJ2やJ3のクラブでプレイすると、若手選手や海外の無名選手を地道に成長させて、ある程度活躍するようになってチームの成績も上向いたところで、J1や海外に引き抜かれてまたイチからやり直し、みたいな感じにどうしてもなってしまう。

でも、それこそまさにJリーグ下位クラブが直面している現実であって。そういう意味では生々しさを感じるほどのリアリティがあるゲームだし、そこを乗り越えて強いチームを作り上げ、現実の成績と見比べて溜飲を下げるのも、本作で味わえる楽しみだと言えるだろう。ビッグクラブにはビッグクラブとしての、低予算の下位クラブには下位クラブなりの戦い方を満喫できるフトコロの広さが、『フットボールマネージャー』にはあると思う。

Jリーグの未来の変化に歩調を合わせた、日本での長期展開に期待したい

今回実際にプレイしてみて、「究極のサッカーシミュレーション」と呼ばれるのも確かに納得できた。

最初に説明したように本作はあくまで監督の立場からのシミュレーションだが、選手のスカウトや契約から作戦の立案まで、チームのマネジメントに関係するありとあらゆることに関与できる。というか、できることが多すぎて、筆者もいまだに全容が把握できていないほどだ。

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それでもゲームをプレイする上では、各分野ごとにアシスタントを雇うことができるので、基本的にはアシスタントに全部任せて、そのオススメに従って決断を下していくだけでも、特に問題なく進行できる。

そうやってシーズンを進めていく間に、特に気になるところを自分でチョコチョコッと変更してみて、その結果どうなるのかを観察し、自分に合った戦術や進め方を少しずつ見つけていく、というのが現実的な遊び方だろう。

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ただし各アシスタントにも能力があり、高い能力のアシスタントを雇うには当然ながら、より高い給与が必要になるので、選手の強化とどうバランスを取るのかがまた悩みどころだ。

ちなみにアシスタントなどのクラブスタッフやライバルとなる他の監督にも、実在の監督やJリーグの元選手がけっこう登場しているので、思わぬ名前と再会することがあるかもしれない。

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これまで語ってきたように『フットボールマネージャー』は、Jリーグサポーターから見ても本当に楽しめるゲームだとは思うが、一方でまだまだと感じるところもある。

特に日本人選手の顔グラフィックはまだぜんぜん足りていない……と、ここまで書いたところでゲームを確認したところ、執筆時点の最新アップデートで実名選手の顔写真が大量に追加されている!

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このように発売後でも着実に進化している本作だが、今後は現実世界で発生する選手の移籍などに関しても、オンライン経由でどんどん更新されていくはずだ。なにより開発スタッフが「今後も継続して日本で展開していく」と語っているだけに、日本でも多くの人がプレイして、数多くの意見を開発スタッフに届けられれば、これからもっと改善されていくに違いない。

2023年に30周年を迎えたJリーグは、今も変化の途上にある。2024年シーズンはJ1、J2、J3のチーム数がすべて20チームに統一されるし、以前から議論の続いている開幕時期の変更と秋春制への移行も、いよいよ現実味を帯びてきている。現状でも日本サッカーやJリーグをキチンと理解してゲームに反映させている『フットボールマネージャー』の開発スタッフであれば、そうした将来の変化にもしっかり対応してくれるだろうという安心感がある。……あっ、そういえば筆者の応援しているJクラブも、2024年からエンブレムのデザインが変わるので、そちらの対応もお願いしますね(笑)。

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これを読んでいるあなたもぜひ、お気に入りのJクラブで『フットボールマネージャー』をプレイしてシーズンを数年、数十年と重ねていって、自分だけのJリーグの未来を先取りしてみてほしい。

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ライター
過去には『電撃王』『電撃姫』『電撃オンライン』などで、クリエイターインタビューや業界分析記事を担当。また、アニメに関する著作も。現在は電ファミニコゲーマーで企画記事を執筆中。
Twitter:@ito_seinosuke

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