2023年11月7日にセガより発売された『フットボールマネージャー2024』は、海外で非常に人気の高いサッカーシミュレーションゲームだ。
本作は選手やチームに関する膨大なデータを用いて、世界50カ国以上のプロサッカークラブで監督に就任できる。選手の獲得や移籍、戦術の立案からトレーニング方法までを指示して、リーグ戦に勝利してクラブの発展と監督としての成功を目指す。
11月7日にリリースされたPC、PlayStation 5、Xbox、Nintendo Switch、モバイルのダウンロード版に続いて、2024年1月12日にはPlayStation 5とNintendo Switchのパッケージ版も発売が予定されている。
海外では20年もの歴史を誇り、現実のプロサッカークラブで選手スカウトの参考にされているほど高い評価を得ているシリーズだが、日本での展開はなかなか実現せず、熱心なファンは有志による日本語化MODでプレイされていた。
今回ついに待望の日本語版がリリースされただけでなく、J1、J2、J3のJリーグクラブも正式ライセンスを取得しており、プレイヤーが直接指揮できる。
海外サッカーファンには比較的知られているが、今回から登場するJリーグのファンにとっては、上で紹介したような経緯のために、あまりなじみのないゲームではないだろうか。そこでここでは、Jリーグサポーターの視点から『フットボールマネージャー』の魅力や特徴について考えてみたい。
文/伊藤誠之介
※この記事は『フットボールマネージャー 2024』の魅力をもっと知ってもらいたいセガさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
海外での登場から20年を経て、ついに公式日本語化を果たした『フットボールマネージャー』
『フットボールマネージャー』の名前を初めて聞いたのは、自分の応援しているJ2クラブがPSP版の『サカつく』で初登場して大喜びしていた頃だから、2009年ぐらいのことだと思う。
海外サッカーに詳しい友人から「PCで、もの凄いサッカーシミュレーションゲームがある」と聞いて気になったものの、当然ながら英語版。アクションゲームやFPSなら英語版でも気にせずプレイしていたのだけど、さすがにデータ重視のガチシミュレーションを英語で遊ぶのは厳しいなぁ……と、その時はプレイを諦めてしまった。だってJリーグも出てこないし(笑)。
発売元がセガなので、いずれ日本語版がリリースされるのでは……と期待していたら、何年待ってもそんな気配はなく。いつの間にか『フットボールマネージャー』のことは自分の頭の中から消えていた。だからこうして日本に正式上陸する以前、PC版で有志によって日本語化などのMODが作られていたことも、不勉強ながら知らなかった。
ところが、である。筆者が存在を知ってから約15年、海外で最初の『フットボールマネージャー』が発売されてからじつに20年の歳月を経て、2023年に『フットボールマネージャー 2024』が、ようやく日本でリリースされることになった。いざ登場するとなったら徹底しており、PCだけでなくPS5やXbox、Switchにモバイルまで、幅広い機種に対応している。公式の日本語化はもちろんのこと、J1からJ3までのJリーグクラブも完全網羅。……って、えぇーっ! Jリーグだってぇ!!
『フットボールマネージャー』にまず最初に興味を持つのはやはり、「海外サッカーが好きな人」だと思う。ヨーロッパの5大リーグあたりに応援しているクラブがあり、世界のスーパースターたちの動向を常にチェックしているような人にとっては、なじみのある選手とクラブが詳細なデータで再現されているだけに、本当に魅力的なゲームだと感じるはずだ。
その一方で、ふだんJリーグのクラブを応援しているけれど外国のサッカーにはイマイチ興味がないという筆者のようなタイプだと、正直言って「どうなんだろう?」と思うかもしれない。ゲーム内の文字がやたら細かい上に、クラブ名や選手名はローマ字表記と、見た目はいかにも海外製ソフトという印象がぬぐえない。そのために「Jリーグといっても名前だけで、データの中身はほとんど架空なのでは?」「海外とは異なる日本サッカーの特徴的な部分は、上手く表現できずにスルーされているんじゃないの?」みたいな目で、つい見てしまうかもしれない。
だが今回、筆者が実際にプレイしてみた上での結論を先に言うと、Jリーグや国内サッカーのファンにこそ、この『フットボールマネージャー』を体験してみてほしいと強く思う。なによりJリーグに関しては正式ライセンスを取得しているだけあって、クラブのプロフィールからゲーム開始時点の在籍選手まで、すべて現実のデータそのまま。エンブレムやユニフォームなどもバッチリ本物だ。
さすがに世界で評価されているだけあって、データ面が質・量ともに圧倒的なのはもちろんだが、海外クラブをリアルに再現するメソッドを日本のJリーグクラブにもそのまま適用しているからこそ、これまでのJリーグを扱ったゲームとはひと味違う新たな魅力が引き出されていると感じるのだ。
PC版とPS5/Xbox版、Switch版では、ゲームの機能や操作感覚が少しづつ異なる
まず最初に、『フットボールマネージャー』の基本的なゲーム内容を押さえておこう。
『フットボールマネージャー』というタイトルが示しているとおり、このゲームでプレイヤーは、世界各地のプロサッカークラブの監督に就任することになる。つまりプレイヤー自身もサッカークラブに雇われている立場となるわけだ。
あくまで監督シミュレーションなので、プレイヤーが行うのは練習や作戦の指示だけ。ピッチ上の選手をプレイヤーが直接操作するといったアクション要素は存在しない。試合に関しては結果だけを見ることも、TV中継風の画面で推移を見守る(途中で選手交代などの指示も可能)ことも選択できる。
監督は選手の雇用やトレーニング、戦術の立案からメンタルケアまで、多岐に渡る分野で采配を振るうことができるが、それらはすべてチームを強化して結果を残すため。
クラブを経営している役員会にホームスタジアムや練習施設の拡充を提案することもできるが、その提案に耳を貸してくれるかどうかは、監督としての実績次第だ。逆に、役員会と取り決めていた目標を達成できそうになければ、シーズン途中で解任されてしまうかもしれない。
本作ではおそらく大半のプレイヤーが、自分の好きなクラブや気になるクラブを選んで、その監督に就任する形でプレイするのではないかと思う。だがそれだけでなく無所属の監督としてプレイを開始して、オファーがあった中から指揮するクラブを選び、そこで結果を残したらさらなるキャリアアップを目指してクラブを渡り歩いていくという、名将ロールプレイ的な遊び方も可能だ。
大量のデータを活用するシミュレーションゲームである『フットボールマネージャー』は、PC版をメイン機種として展開されてきた。海外では約20年(前身である『Championship Manager』から数えれば30年以上)もの長い歴史を誇るこのシリーズがスタートしたのも、PC版からだ。
そのためコンシューマ機のPS5版やXbox版では、シミュレートされる要素がPC版に比べると多少簡略化されている。さらにNintendo Switch版は、自分の育成したクラブで他のプレイヤーと対戦するといったオンライン要素が省略されている(選手の移籍データなどのオンラインアップデートは対応)。逆に考えると、「1人で黙々とクラブを育てていくことを楽しむ」のであれば、Switch版でも十分だと言える。
前述したように、PC版ではユーザー独自の日本語化や、選手やリーグのより詳細なデータといったMODが作成されている。だが、せっかく公式の日本語対応が行われたのだから、MODが適用できないコンシューマ版でもどれぐらい遊べるのかというのは、気になるところだろう。
そこで今回は、コンシューマ版でも最もカジュアルなNintendo Switch版でプレイしてみた。
前述のとおりオンライン対戦などはできない一方で、Switchならサッカー遠征の移動中に電車やバスの中でプレイしたり、スタジアムに持っていって自分の育成したクラブをサッカー仲間に見せたりといった遊び方もできるだろう(もちろんPS5版やXbox版でも、リモートプレイやクラウドを活用すれば可能だが)。
ちなみにSwitch版は、携帯モードでプレイする際に画面を直接タッチして操作することもできる。Nintendo Switch版とApple Arcade版だけが『フットボールマネージャー 2024 Touch』と、独自の名称になっているのはそのためだ。
『フットボールマネージャー』はもともとPC版のマウスによる操作がメインということもあり、コントローラーでの操作はややクセがある。それに対してSwitch版のタッチによる直感的な操作は、思った以上に快適だと感じた。ただ、細かいデータをタッチしたり、スワイプでデータをスクロールする際には(筆者の指の太さのせいかもしれないが)誤選択が起こりやすいので、コントローラーと併用すると良いだろう。
『フットボールマネージャー』にはさらに、『フットボールマネージャー2024モバイル』も用意されている。こちらはPC版やコンシューマ版よりもさらに簡略化された入門編とのこと。ちなみに『フットボールマネージャー2024モバイル』は、Netflix会員なら無料でダウンロードしてプレイできる。
いずれにしても自分のプレイ環境やライフスタイルを考えて、興味のある機種を自由に選べばよいと思う。正直言ってSwitch版でもそう簡単には遊び尽くせないぐらい、細かいディテールが大量に盛り込まれているのだから。