余計な情報を一切排した没入感重視のゲームデザイン
ところで、本作にはプレイ中の画面にはミニマップやマーカーのようなUIがありません。これは本作の特徴の1つで、ゲームへの没入感を高める工夫となっています。
「ミニマップやガイドがないと、どこに行けばいいか分からない」と心配されるかもしれませんが、大丈夫。モーディマーには「祈り」という能力があり、これを使用すれば次に行くべき場所が光の柱となって示されるほか、次の目的も右上に表示されます。
ゲーム中に迷ったならとりあえず「祈り」でなんとかなります。そのほか、インタラクトできるオブジェクトが強調表示されるなど、とても便利な能力です。
また、ゲーム中のストーリーや登場人物、発見した証拠品などは、すべてモーディマーが持つ「日誌」に記録され、いつでも振り返ることができます。容疑者の推理やストーリーの考察などに役立てることができるでしょう。
「非=世界(アンワールド)」に潜入し、事件の謎を解き明かせ
もう1つ、事件の捜査において重要な「非=世界(アンワールド)」について触れておきましょう。
「非=世界」とは、時間や空間を超越した場所に存在する、この世ならざる場所です。人々の「悪」「恐怖」「死」そして「罪」といった意識が反映された世界で、ここに潜入することができるのは、モーディマーのような特殊な能力を持った人間だけです。
「非=世界」での目的は、「記憶の断片」を集めて事件の記憶を再現し、人々の嘘や隠し事を露わにすることにあります。捜査で得た情報や証拠品を元に、事件解決のための最後の1ピースを求めてこの世界を訪れるわけです。
「非=世界」には、守護者ともいえる存在「穢れ」が上空を徘徊しています。「穢れ」を倒す方法は存在せず、見つかれば即座に死亡となる危険な存在です。この世界では普段とは一転、ステルスプレイが求められるようになります。
「穢れの仔」という敵も徘徊しています。「穢れ」ほど危険ではありませんが、これも見つかれば「穢れ」を呼び寄せるので、戦うか回避するか、何らかの対処が必要です。
「非=世界」でも「祈り」は重要な能力となっており、「記憶の断片」の位置を指し示してくれるほか、「祈り」の最中は敵に見つかりにくくなるという効果も。「祈り」中のステルス力はかなり高く、敵のそばを通ってもほとんど気づかれません。現実でも非=世界でも祈れば救われるシステム。神の導きに感謝しましょう。
自らの選択が世界に与える変化をダイレクトに実感できる。善と悪が逆転するジレンマ
本作は、倫理観が逆転したような世界観のもと、プレイヤーの選択が織り成す変化に富んだストーリーを存分に楽しむことができます。とあるイベントでの選択が、まったく別のイベントに予想もしない形で影響してくる、ということもよくあります。「あの時助けていただいた……」的なイベントが用意されているのが嬉しい。周回プレイも楽しめそうです。
法と秩序の番人として、不信仰者を徹底的に断罪する。それが理想のインクイジターです。一方で、時には登場人物に共感し、心優しき審問官として罪人の心を救いたい、と思うこともあるでしょう。ですがそれは“罪”。このジレンマが悩ましいところです。
あなたの選択によって、モーディマーがどのような異端審問官(インクイジター)となり、ケーニヒシュタインでの物語がどのような結末をたどるのか。思いのまま自由に選択し、物語を紡ぎましょう。